大久保勉の発言 (本会議)

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○大久保勉君 民主党・新緑風会の大久保勉です。
 ただいま議題となりました銀行法等の一部を改正する法律案につきまして、民主党・新緑風会の立場から担当大臣に質問いたします。
 本題に入る前に、日本の金融に対する私の思いを述べたいと思います。
 私は、議員になる前、日本の都市銀行、そして米国の投資銀行にそれぞれ十年間勤務しておりました。この間、日本の金融は大きな変化を遂げました。
 私がちょうど銀行員生活を始めたころ、日米円・ドル委員会で日本の金融の自由化が議論されました。前川レポート、プラザ合意と、金融における改革を断行する好機は幾度も訪れましたが、当時の大蔵省や金融機関幹部は、既得権益を手放すことができずに改革を後回しにして、一方でバブル経済の発生に加担するという失敗を犯してしまいました。バブル崩壊後、金融の改革は一層困難になり、また日本経済にも大きな禍根を残したことと反省されます。
 ようやく大手銀行の不良債権問題は終了しつつあります。しかし、この二十年間で日本の銀行の国際的地位は大きく低下し、いまだ収益力と顧客満足度を両立した新しいビジネスモデルを確立できているとは言い難い状況です。不良債権処理にきゅうきゅうとして、IT投資や市場開拓の点で欧米の銀行に大きく水を空けられたことが一因であります。
 このような問題意識もあり、私は、一、日本の金融の競争力を高め、基幹産業の一つとして雇用やGDPの拡大に貢献できるか、二、金融における消費者の権利を保障するものであるか、以上二つの観点が金融政策を論じる上で極めて重要であると考えます。
 そこで、質問に入ります。
 金融庁は、昨年十二月に公表した金融改革プログラムで、金融サービス立国という新しい構想を発表しました。この構想を実現するためには、銀行法の改正を行い、金融においても製造・販売の分離、そしてアウトソーシングが可能なように銀行代理人制度を創設することは有益であります。しかしながら、この法案が、これまですべての支店網を自前で構築しなければならなかった銀行の経費削減や銀行員のリストラを促す産業政策の観点だけの法案であるとすれば、賛成しかねます。あくまでも、利用者の利便性の向上、そして顧客の権利保障といった視点を欠くことはできません。伊藤金融担当大臣にこの点の明確なコミットをお願いいたします。
 金融が大幅に自由化して、情報の非対称性の下、豊富な情報を持った業者が個人の顧客に対してやりたい放題できるというのであれば、金融サービス立国の名に恥じます。実際、ここ数年、業法を大幅に緩和した後、悪徳為替先物業者や悪徳無認可共済業者による金融詐欺事件が横行し、金融先物業法や保険業法を慌てて改正するという失態が起こりました。金融サービス・市場法による消費者の権利保障のための法制度が完備していない我が国において、甚大な被害が発生して慌てて業法を改正する、言わばモグラたたきの後追い金融行政にならないか、懸念するところであります。
 今回の法改正で、数多くの銀行代理人が登場し、多様で多彩な店舗、営業形態になると、正規の代理人と虚偽の代理人とを識別するのが困難になるおそれがあります。特に銀行業務においては、保険業務や証券業務と違い、外務員資格制度がありません。そのため、虚偽の代理人の識別が困難で、預金詐欺など横行するおそれがございます。この点、伊藤金融担当大臣に御見解、また対策をお伺いいたします。
 次に、検査体制に関して伺います。
 同法案施行により、流通業、ノンバンク、あるいは証券、保険等の金融機関が銀行代理人として全国津々浦々、営業活動を行うことになると思います。また、これらの中には、銀行代理人と併せて証券や保険の代理人を兼業することも考えられます。これらの代理人は、マネーロンダリング対策を行い、銀行業務、証券業務、保険業務との間にファイアウオールを設ける必要があります。このことをより確実に実行させるためには、委託元銀行にのみ代理人の指導監督責任を負わせるだけではなく、金融当局自らも立入検査を実行することが必要であるはずです。
 そこで、金融庁、特に検査の実務を行うことの多い地方財務局にそれだけの組織や要員があるのか、お伺いいたします。
 中央レベルでは、旧大蔵省が財務省と金融庁と機能別に分離され、時代にマッチした組織改革が進みました。しかし、地方財務局レベルでは、相変わらず旧大蔵省時代の組織のままで、金融行政の実務を担う専門的人材を育成し、またそれらの人材を十分に生かす組織になっていないという批判をよく耳にします。地方財務局も組織再編を行い、財務と金融を分離し、それぞれの専門性や機能をより強化するような改革が必要であると私は考えます。このことに対して、谷垣財務大臣と伊藤金融担当大臣の御所見を伺います。
 続いて、この法案の提出のタイミングに関する質問です。
 先週、郵政民営化法案が本院で可決されました。同法律では、郵便貯金銀行は預金等の銀行業務を郵便局会社に委託することになっております。流通業や保険代理人を行う郵便局会社が銀行代理人も兼務することは、現行の銀行法上、問題が生じます。そのため慌てて銀行法を改正し、民間銀行とのイコールフッティングを取り繕っているように見えます。政府の金融サービス立国に対する決意はその程度のものであるか、私は危惧します。私は、郵政民営化法案よりもっと前にこの法案を国会に提出してそのようなそしりを回避すべきであったと考えますが、伊藤金融担当大臣、いかがでしょうか。
 続きまして、この法案の地域金融機関に対する影響に関して質問します。
 今年四月よりペイオフ制度が解禁されましたが、現在のところ金融秩序は平穏に推移しております。これは、地域金融機関の皆さんが地域密着型金融の機能強化に向けて鋭意努力されていることも理由の一つです。しかしながら、地方経済は引き続き低迷し、地域金融機関の不良債権問題は完全に解決したとは言い難く、また多くの地域金融機関は生き残り策を模索しております。この法案により、資本関係を超えた銀行代理人制度の解禁により、地域金融機関が大手銀行の代理人として存続することも可能になります。
 そこで、一、このようなことを金融庁は実際想定しているのか、二、その場合このような地域金融機関の再編が我が国の金融システム安定にいかに寄与するか、三、地方の銀行利用者の利便性と権利保障の観点からどのように考えるか、伊藤金融担当大臣に御所見を伺います。
 最近、株式市場を取り巻く環境が大きく変化しています。
 年初にライブドアによるニッポン放送の敵対的買収が起きましたが、その後、企業の合併・買収をめぐる動きが活発になっております。最近では楽天によるTBS株式の大量取得による企業合併・買収への動き、そしてワールド経営陣による自社株取得、非上場化などがあります。
 銀行監督の観点から、楽天やワールド経営陣に融資を行っている大手銀行の存在を見逃すことはできません。例えば、本日の東京新聞によりますと、三井住友、みずほコーポレート、住友信託の主力三行が楽天に対して計八百億円の融資枠を設定していると報じております。TBSに対する株式公開買い付けも視野に入れたTBS株追加取得資金になる公算が強いと伝えているところであります。
 欧米では、このような企業合併・買収に関連した銀行融資は広く行われており、また投資銀行部門の収益の柱の一つになっております。しかしながら、これらの融資は信用リスクが高く、またインサイダー取引や相場操縦など経済犯罪の温床にもなることがあります。これらのリスクや犯罪を未然に防ぐには、現行の証券取引法、会社法及び銀行法の想定の範囲外のことも多く、新たな法規制、それに加えて銀行におけるコンプライアンス上の自主規制が必要であると考えます。
 そこで、銀行が企業合併・買収ビジネスに積極的に関与していくことに対して、一、良好な金融秩序の維持、二、リスク管理、三、顧客情報管理、以上の三つの観点から、現状認識と今後の具体的対策に対して伊藤金融担当大臣の御所見を伺います。
 また、会社法との関連で、同様の質問を南野法務大臣にお尋ねいたします。
 最後に、一言申し上げます。
 郵政民営化法案が先週、参議院本会議で百三十四対百の賛成多数で可決されました。およそ二か月前の八月八日に百八対百二十五と反対多数で否決された法案が、全く同じ参議院議員により今度は可決されたのです。民意の名をかりた自己保身のための日和見、いや「こいずみより」賛成であれば、参議院の質が問われます。我々に必要なことは、国の将来を慎重に見極め、国の将来に責任を持つことであります。
 私は、郵政特別委員会で三度質問に立ちました。そこで明らかになったことは、二〇〇七年十月に今より二%以上金利が上昇している場合には、保有する国債や社債に多大な含み損が発生し、実質債務超過の状態で郵便貯金銀行が設立されるおそれがあるということであります。このような新銀行にみなし銀行免許を与えるようでは、金融庁がこれまで民間銀行に言ってきたことと、自ら政府の一員として行うこととには大きな矛盾が生じるということです。ダブルスタンダードであるという批判にどう答えるのか、伊藤金融担当大臣に伺います。
 小泉政権四年半の間に国の借金が二百四十兆円も増え、国の借金残高はGDPの一・六倍を超えようとしております。民間の身を切るような努力により、景気は踊り場を脱して上昇に転じました。また、株式そして東京を中心に不動産価格は上昇に転じております。このような状況が続くと、将来金利が上昇するのが自然です。史上例のないゼロ金利がこのままずっと続くという都合のいい前提で郵政民営化のバラ色の将来を喧伝したり、国の財政計画を練ったりするようであれば、政府の危機管理能力のなさを指摘せざるを得ません。
 また、自分の都合の悪いことは国民に知らしめず、楽観的で都合のいい情報だけを公表するようでは、財政・金融における大本営発表と言わざるを得ません。財政・金融における敗戦を避けるためには、情報を公開し、中身のある説明責任を政府が果たすことです。

発言情報

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発言者: 大久保勉

speaker_id: 33674

日付: 2005-10-21

院: 参議院

会議名: 本会議