笠井亮の発言 (日本国憲法に関する調査特別委員会)

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○笠井委員 日本共産党の笠井亮です。
 いよいよ今国会も会期末を迎えることになりました。こうしたときに、審議未了になることが明らかな法案をめぐる議論をこういう形で開始すること自体が異例であることをまず指摘しなければなりません。しかも、去る六月一日の本会議において、自民、公明両党及び民主党提出の改憲手続法案の趣旨説明と質疑を通じて、私は両法案を廃案にすべきだとの意をますます強くしております。
 以下、三点について述べたいと思います。
 第一に、今なぜ改憲手続法の整備なのか、その根本の問題について提出者から道理ある説明は結局得られなかったということであります。
 与党の法案提出者は、改憲手続法制を整備することが国会議員の基本的責務であり、今日まで成立を見ていないことは国会の怠慢であると述べて、本法案が国会に上程され審議が始まったことを歴史的だと繰り返し発言されました。ところが、その審議を行った本会議場には、自民党席を中心に極めて多くの空席が目立ちました。提出者はこの現実をどう説明されるのでしょうか。
 法案の提出はまた世論の高まりにこたえたものとの説明もありましたが、一体どこに改憲手続法を求める世論の高まりがあるのだろうか。この間の世論調査では改憲手続法整備に反対ないし疑問視する声が多数であることは繰り返し紹介されたところであります。本委員会に付託された請願も、法案は廃案にせよ、あるいは反対というものばかりであります。
 私は、本会議質問で、この六十年、改憲手続法がつくられてこなかったのは国民が改憲を具体的に必要としてこなかったからであり、国民は改憲手続法の制定を国政の重要課題とは見ていないと指摘しましたけれども、まさに、国民はもちろん、与党の中にもそう見ていない議員がかなりおられることを示しているのではないかと私は受けとめました。むしろ、改憲機運を高めようというねらいから法案提出を急いだとのマスコミの指摘は、国民の要求のないところに無理やり法案提出を強行した政党の本音を言い当てたものだと思います。
 第二に、こうした状況のもとで両法案が提出され、会期末のどさくさにあえて委員会審議が開始されたことは、現実の改憲案づくりの動きと密接不可分に結びついたものであって、とりわけ九条改憲へと地続きでつながっていることがいよいよ明確になったということであります。
 実際、本会議では、与党提出者が幾ら改憲案の内容と手続法の議論は別個の問題と繰り返されても、自民党質疑者から、手続についての議論もいいですけれども早く憲法改正の中身についての議論に入れという注文が出されたのであります。とりわけ自民党の提出者は、新憲法草案に示された九条改憲についての答弁の中で、アメリカが起こす戦争に参戦することを目的とするものではないと言うものの、集団的自衛権の行使や、米国が世界各地で起こす戦争に参戦し武力行使を可能にしようということではないかという問いには否定がありませんでした。さらに、憲法に国民の行為規範としての役割、機能を持たせるなどの議論は、歴史的にも世界的にも全く通用するものではありません。
 他方、現実政治の舞台では、自民、公明の政府・与党が、日米合意に基づいて米軍と自衛隊を一体的に再編強化し、さらに自衛隊の海外派兵を本来任務に格上げする防衛省設置の法案を提出しております。まさに、海外で戦争をする国づくりに向けて実質的な九条改憲への道を進もうとしているのではないか。その上、改憲の動きと一体に、教育基本法改悪、共謀罪の新設など、自民党の新憲法草案を先取りする政治が推し進められていることを指摘しなければなりません。
 このような改憲をめぐる現実が進行する中で、幾ら両案の提出者、政党が公正中立なルールをとか公正中立な立場でと主張しても、また、党として改憲や加憲を決めているわけではないと言っても、改憲手続法案を提出しその成立を目指すこと自体が、結局、九条改憲の流れをつくり、促す役割を果たすものになることはいよいよ明らかではないかと思います。しかも、改憲手続の両法案に盛り込まれている憲法審査会の設置は、こうした改憲の流れを連続的に推し進めようとする、そういう仕組みにほかなりません。
 第三に、両法案ともに、改憲推進勢力にとって改憲案を通しやすい、可能なあらゆる仕組みを盛り込んでいることは否定しようもないということであります。
 与党案について私は、公務員及び教育者がその地位を利用して国民投票運動をすることができないとの禁止規定を置き、さらに買収罪などの罰則を設けていることの理由をただしましたが、提出者は規制は必要最小限のものと言うだけで、合理的な説明を聞くことができませんでした。
 両法案に共通している改憲推進の大キャンペーンができる仕組みについても、なぜ広報協議会の構成や政党の広告を所属議員数の比率で配分するのかただしましたが、反対会派に配慮しているという答えでしかありませんでした。
 さらに、改憲案の国民の承認に関する過半数の意味について、ハードルを低く設定し、最低限の国民の賛成で改憲案を通そうということではないかとただしましたが、いずれの提出者からも国民に納得の得られる説明は聞くことができませんでした。
 法案提出者は、改憲手続法の整備が国民主権の具体化だ、国民の主権を回復することだと主張されますけれども、このように改憲推進勢力にとって都合のいい法案を出しておいて、どうして国民主権の具体化などと言えるのでしょうか。
 こういう法案だからこそ、各界からも厳しい批判の声が寄せられております。
 例えば、本委員会委員あてに送られてきた第二東京弁護士会の五月三十一日付、憲法改正国民投票法案に反対する会長声明は、投票運動の禁止や罰則規定、最低投票率を設けていない問題などを指摘した上で、「今回の法案には多岐にわたって重大な問題点があり、当会はいずれの法案にも到底賛成することができない。」と結論づけております。
 地方紙でも、例えば五月二十七日付の信濃毎日新聞は、「国民投票法案 なぜいま、の疑問が募る」との社説を掲げ、「憲法論議が煮詰まっていないのに、なぜいま手続き法を決める必要があるのか分からない。」「五〇%未満の投票率でも成立し得る仕組みでは、問題を残す。」「国民投票法の制定を急ぐ必要はまったくない。」と主張しております。
 改憲手続法案をつくろうという機運が一向に盛り上がりを見せない一方、憲法九条の改悪に反対する国民の世論と運動は目覚ましい前進を遂げております。今月結成二周年を迎えた九条の会は、全国各地でその数が実に五千百七十四に広がっております。改憲手続法両法案をきっぱり廃案にし、本委員会を会期末で閉じることこそ、こうした多くの国民の願いにこたえる道であることを重ねて強調して、発言としたいと思います。

発言情報

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発言者: 笠井亮

speaker_id: 27017

日付: 2006-06-15

院: 衆議院

会議名: 日本国憲法に関する調査特別委員会