若林正俊の発言 (憲法調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○若林正俊君 自由民主党の代表幹事をいたしております若林正俊でございます。
本日は、憲法改正国民投票法制に関する主要な論点について簡潔に基調発言をさせていただきます。
まず第一は、国民投票法制の対象を憲法九十六条に定める憲法改正国民投票に限定するか、それとも、国政における重要問題についても一般的に国民投票に付することができる法制を併せつくるかという論点であります。
私は、両者は、国民主権の直接的な発露という意味で同根ではありますが、その性格は本質的に異なりますので、今回は憲法改正国民投票に限定して立法化すべきであるとの意見であります。
憲法改正国民投票は、各院の三分の二以上の賛成で発議され、その結果も拘束的でありますが、一般的国民投票は、意見が対立している国政上の重要事項について問う諮問的なものであり、その結果は憲法上も拘束されておりません。一般的国民投票制度は欧州諸国でかなり採用されており、議会制民主主義、間接民主主義に一部直接民主主義を導入するという性格のものであり、諮問的であるといっても、結果は唯一の立法機関である国会の立法権に影響を与え、あるいは何らかの形で国会を縛ることになりますので、憲法上の調整を要するなど、憲法改正そのものであると考えられるのであります。したがって、今回は憲法上義務的なものとされている憲法改正国民投票に限定して立法すべきものと考えております。
第二は、国民投票の投票権者の範囲、特に年齢についてどうするかという論点であります。
昨年の衆参各院の欧州各国現地調査では、各国の投票年齢はいずれも十八歳とされておりますが、いずれの国においても国政選挙の選挙権年齢と同じであります。我が国においても、義務教育終了年齢を考慮して、政治参加の年齢を原則的に十八歳以上とすることも検討に値すると思いますが、そのときにはこれと併せて、民法の成人年齢や少年法等関係法令の改正も併せて討議、検討すべきであると考えております。
また、国政選挙の選挙権者と国民投票の投票権者の範囲が異なれば、その名簿も別々になりますが、事務コストや名簿調製のための期間の確保、在外投票などを考えると実務的にも困難が多く、さらに有権者にも戸惑いがあると思われます。したがいまして、国民投票の投票権者は原則として国政選挙と一致させるべきとの意見であります。
第三は、憲法改正案の周知、広報についてであります。
憲法は、主権者である国民の意思によって定められた国の最高法規であります。したがって、その改正は当然のことながら国民が正しく十分に理解して行われるべきでありますから、改正案の内容が国民に周知徹底するまでの十分な期間が投票日まで確保されるようにする必要があります。
また、発議をした国会がその責任において改正案について国民に周知し広報するため、改正のその要旨、改正の趣旨を平易に解説したパンフレットなど国民投票公報を発行することが重要であり、またその内容の公正中立を確保しなければなりません。そのために、国会に衆参各院の議員の中から選任された委員による国民投票広報委員会のごときものを設置し、国民に対する周知徹底を図るようにすべきだと思います。
第四は、国民投票運動の規制についてであります。
国民投票運動は、公選法のように人を選ぶ選挙とは異なり、国家の基本政策を選ぶ投票ですから、原則は自由であるべきだと考えますが、投票の公正を確保するための最小限の規制として、投票事務に直接関係する投票・開票管理者や裁判官、検察官などの特別公務員の規制や、公務員や教育者がその地位を利用して行う運動は禁止すべきではないか、また外国人については、組織的な国民投票運動や国民の投票行動に重要な影響を及ぼすおそれのある行為についても規制を考えるべきではないかなどについて更に慎重な検討を要すると考えています。
なお、新聞社、通信社、放送機関、その他の報道機関に対する規制は、憲法二十一条の表現の自由との関連からも原則は自由とすべきものと考えますが、虚偽の事項の報道など、明らかに国民投票の公正を害することがないようにするため、報道機関による自主的な規律の取組を促すような規定については、なお検討の余地があるのではないかとの意見がございます。さらに、国民投票の期日直前のテレビ等のスポットコマーシャルについては禁止すべきではないかと思います。
第五は、国民投票の単位についてであります。同一の国民投票において賛否を問う憲法改正案に複数の項目が含まれる場合に、それらを一括して賛否を問うのか、それとも個別の項目ごとに賛否を問うのかという論点です。
国民の意見を正しく反映させるという国民投票の趣旨からすれば、個別項目ごとに賛否を問うのが原則だと思います。しかし、項目が相互に関連していて賛否が異なった場合に論理的あるいは政策的、体系的に不整合が生ずるような場合、これらは一くくりの項目として賛否を問うべきでありましょう。特に、自由民主党が新憲法草案として昨年提案したように、前文を含む全面改正というような場合には、これを項目別に分けることができないような場合もあろうかと思います。
この問題は、どこまでが関連する項目かを発議する国会自身が決めることになりますが、国民に正しい判断をしてもらえるためには、どのような提案が適切であるかを国会内で十分考慮して議案を立案するしか方策はないように思います。
以上、憲法改正国民投票法制に関する主要な論点について私の意見を申し上げましたが、ほかに投票の方式、罰則、国民投票の無効訴訟などの問題や、国民投票法制以前の問題として、議員による憲法改正案の提出の要件、改正案の審議機関、審議手続、発議の要件等、国会法の改正問題がございます。これらの問題も、憲法改正国民投票法制と一体のものとして調査、審議することが望ましいと考えますので、意見として申し上げます。
最後に、憲法改正の国民投票法制の早期の制定についてでございますが、憲法に改正手続規定があり、そこで国民投票が求められている以上、本来、憲法が公布、施行されるときには国民投票法を定めておくべき性格のものだと思います。今日まで国民投票法が定められていないのは立法不作為との意見があるほど、立法府に問題があるのではないでしょうか。
私は、憲法を変える、変えないという議論とは切り離して、憲法改正についての意見の違いを超えて、公正中立な憲法改正手続についてのルールとして、憲法改正国民投票法制をできるだけ早く制定すべきである旨申し上げて、私の基調発言を終わります。