近藤正道の発言 (憲法調査会)
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○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
私は、あらかじめ「国民投票制度の論点」というメモを皆様のところに配付をさせていただきました。本日は、そのメモに基づきながら、国民投票制度の論点申し上げたいというふうに思います。
本題に入る前に、本調査会における論議の対象について一言申し上げたいと思います。私は、本調査会のこの間の経緯に照らし、論議の対象は国民投票制度に限定されるべきと考えております。したがって、私自身、今回、改憲発議以後の手続に限定して論点を提起させていただきました。
しかし、一部会派では、国民投票の前段である改憲発議など、国会法改正の領域についても論点を提起されておられます。これは本調査会の守備範囲の逸脱ではないかと思います。本調査会については、その活動範囲について常に厳しい論議がございました。五年間の調査を終え、私自身、議長への報告によって調査会は幕を下ろすべきだと主張もいたしました。しかし、反対にもかかわらず、国民投票制度の調査を続け、今日に至っているわけでございます。そうである以上、論議の対象は厳格に守られるべきだと考えます。
改めて、論議の範囲を明確にし、国会発議以降の手続である国民投票手続に限定して論点整理がなされるべきであると、こういうふうに指摘をさせていただきたいと思います。
本題に入ります。
初めに、総論として四点申し上げたいと思います。
最初は、憲法の意義、役割についてであります。国民投票制度が憲法改正を主要な対象としている以上、対象である憲法の意義、役割について、調査会において一応の共通理解を持つことは、後で述べます憲法の限界論ともかかわりがあり、必要なことだと思っております。憲法は何のために存在するのかという問題であります。国民の人権を守るため、国家権力を縛り、制限するために存在する。近代立憲主義の立場に立ち、国家権力を制限する規範であるとの立場に立つのか、それとも国民に対する行為規範として存在するとの立場に立つのかという論点であります。
この点は、憲法改正手続を論議する大前提として整理しておく必要があります。日弁連などは、この論点が不明確なまま国民投票制度の論議が進むことに強い危惧の念を示しております。しっかりと論議されるべきであります。
二つ目であります。なぜ今国民投票なのか、国民投票制度がないことが立法不作為に当たるのかという論点であります。
そもそも、国民の多くは本当に今憲法改正を望んでいるのか。とりわけ九条についてはどうでしょうか。私は、現在の論議は九条改憲論に強力に引っ張られたものであると思っております。国民の多くは九条改正を望んでおりません。これは各種世論調査からも明らかであります。国民が改憲を望まなかったから、憲法制定以降六十年近くにわたり改憲のための国民投票の論議が起こらなかったのであって、立法不作為は成り立たないと考えております。また、直近のNHKの世論調査でも、六六%の人々が国民投票法制について知らないと答えております。知っていると答えた二七%の人についても、その七六%、四分の三以上の人々が国民投票制度は必要ない、また急いでつくる必要はないと答えております。これがこの国の現実であります。憲法改正手続を法制化する状況としては最悪ではないでしょうか。
国民投票の中身の論議の前に、今本当に国民投票法制が必要なのか、立法不作為の事実はあるのかという問題について、しっかりと論議すべきだと考えております。
三つ目、憲法改正案と国民投票制度は切り離して論議することができるかという問題であります。
後で述べます投票方式や発議から投票までの期間、さらに憲法改正の限界の問題等に照らしてみれば明らかなとおり、この二つの問題は互いに密接不可分の関係にあり、切り離して論議することは困難であります。
また、そもそも国民投票については、憲法改正とは別に、あらかじめ一般法としてつくる方式と、憲法改正の発議ごとに、その都度一回きり使う個別法として制定する方式がございます。私たちが訪れましたフランスのデクレは後者であります。また、折衷の方式もあります。
それぞれメリット、デメリットがあり、憲法九十六条は果たしてどちらを想定しているのか判然といたしませんが、この問題も重要な論点であり、併せて冒頭しっかりと論議しておく必要があると考えます。
四つ目は、憲法改正の限界にかかわる論点であります。
問題は二つあります。一つは、憲法改正に限界はあるか。憲法九十六条は改正に限界ありとの立場に立つかという問題であります。二つ目の問題は、仮に限界説に立つとき、改憲の限界を超えた改憲案が発議されたとき、国民投票はこれにどう対処するかという問題であります。このことは国民投票の各論の論点であります争訟制度とも深くかかわる問題であります。
この問題は、とりわけ昨年の十一月に発表された自民党の新憲法草案で俄然現実味を帯びてまいりました。自衛軍の保持と海外での武力行使を可能とする自民党新憲法草案は、国民主権、基本的人権、平和主義という現憲法の根本原理のうち、とりわけ平和主義を実質否定し、大前提である立憲主義に対しても大幅な後退が見られ、どう見ても現憲法との一体性を認めることはできません。また、改正ではなく新憲法の制定とうたっております。
このように、実質的にも形式的にも改憲の限界を超え、憲法九十六条が予定する改正の域を超える全面改正や、新憲法の制定を憲法九十六条に基づく改正手続で対処することが果たしてできるのか、重要な論点としてしっかりと議論すべきであります。
そのほか、国民投票を憲法改正の場合だけに限るのか否か、実施時期をどうするのか、こういう問題点もありますが、主要な四点として提起をさせていただきました。
次に、各論について主な論点を述べたいと思います。
私どもは、憲法改正国民投票制度は現時点で必要だとは思っておりません。今つくるべきではないと考えております。しかし、仮につくるのであれば、主権者たる国民の憲法制定権行使にふさわしく、憲法の理念に立脚し、国民主権の原則にしっかりと沿う国民投票制度にすべきだと考えております。
冒頭申し上げますけれども、憲法改正の国民投票は、憲法九十六条に基づいて実施されるものでありまして、憲法十五条に基づく公職選挙法とは憲法上の根拠を異にしており、性質も全く違うものであります。性質の異なる公職選挙法の選挙運動規制を安易に憲法改正国民投票制度に横滑りさせるようなやり方は厳に慎まなければならないと思っておりまして、その観点から申し上げたいと思います。
第一は、投票者の範囲であります。
憲法は、国家の根本規範であります。そうであるがゆえに、憲法改正に当たっての国民投票制度は、国民が最大限参加できる仕組みにする必要があります。国政選挙の二十歳以上の規定を当てはめればいいという議論もありますが、一方、十八歳以上にすべきだという議論もあります。また、義務教育終了者以上との議論もあります。傾聴に値する意見であり、投票者についてはできるだけその範囲を拡大する方向で検討すべきであります。また、皇族や在外国民、定住外国人、重度の障害者等の投票人名簿の調製も検討すべき重要な論点であります。
第二は、改憲発議から国民投票までの期間であります。
根本規範にふさわしい十分な期間を保障すべきであります。問題は、投票者が憲法改正の賛否を判断するに当たって、どういう改正案か情報を集め、学習し、理解するための期間が十分に保障されるのか、また、憲法改正に反対の立場の者、政党などが十分な広報宣伝活動を行う期間が保障されるかであります。この点は、改正内容に深くかかわり、結論の出しにくい問題でありますが、憲法という国の根幹にかかわる重大な問題であることや、我が国では国民投票の経験がないことなどを勘案すれば、期間は最低でも半年は必要ではないかという考えもございます。これは日弁連も主張しているところであります。
第三は、国民投票運動についてであります。
これについては様々な問題があります。原則自由の立場に立つものであることを申し上げながら、運動の主体に関する規制、運動の期間、方法に関する規制について、その一つ一つについてしっかりと議論をしなければなりません。そして、マスメディアに対する規制は、表現の自由や国民の知る権利に直結するものだけに原則自由の立場に立つことは当然であります。そのほか、規制と罰則について公職選挙法の事例を丹念に検討しなければなりません。また、運動に対する公費助成についての論点も欠かせません。改正反対の少数派に対し公平な運動をどう保障するか、そのための公費助成の在り方も重要な論点であります。
第四は、メディアの規制と活用についてであります。
団体であれ政党であれ、公平平等にメディアを活用できるようにすべきであります。大きな政党や団体、国会議員を多数抱えている政党が議員数に比例して活用時間等で有利に扱われるというやり方は果たして公平なのかという議論もあります。憲法改正の是非についての投票は国会議員を選ぶ投票とは違うのであって、小さな団体、数の少ない政党がメディアの活用から排除されたり差別的取扱いをされたりしないよう配慮すべきだという考えによるものであります。
第五は、投票の方法等であります。
すべての改正条項を一括して賛否を問うのか、それとも改正する個別の条文、条項ごとに賛否を問うのかという論点であります。投票者が賛否の決定を迷ったり判断できないような投票方法では、結果として投票者の意思が投票結果に正確に反映されない。投票用紙とその記載方法の問題と併せ、この点は十分に論議を尽くす必要があります。
第六は、憲法九十六条に規定されているところの過半数の定義等であります。
硬性憲法の改正という極めて重要な問題を問うのでありますから、賛成票の数え方については慎重であるべきであり、有効投票数の過半数ではなく、全有権者の過半数か、少なくとも総投票数の過半数を超えたかどうかで決すべきだという論点であります。
また、国民の憲法改正案についての承認、否認の意思が正確に反映されたものとなるよう、最低投票率制度を導入すべきとの論点があります。著しい低投票率で憲法改正のための国民投票が成立し、その過半数の賛成で改正案が承認されたとするには無理があるのではないかというものであります。
そして、国民投票制度の効力に関する争訟制度、無効事由に憲法改正案の内容を含めるか否かも含め、出訴期間や投票結果の確定時期など、多くの論点があります。徹底的に議論を尽くすべきであります。
以上、議論を尽くさなければならない論点はたくさんあります。国民投票制度について様々な観点から論点を出し合い、それらの論点について一つ一つ、参考人質疑を含め丁寧に時間を掛けて論議し、認識を深めていくことが大切だと考えます。
以上であります。