小泉昭男の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○小泉昭男君 それでは、ODA調査第一班から御報告を申し上げます。
ODA調査第一班は、去る八月六日から十一日までの六日間、モンゴル国及び中華人民共和国に派遣されました。
派遣議員は、田村耕太郎議員、中川雅治議員、足立信也議員、那谷屋正義議員、鰐淵洋子議員、そして私、団長を務めさせていただきました小泉昭男の六名でございます。
まず、モンゴルについてでございますが、モンゴルは一九九〇年に社会主義から民主化し、市場経済へと移行いたしました。それ以降、我が国はモンゴルに対して継続的な支援をいたしております。最大の援助供与国の地位にありますが、この多額のODAの効果と近年の大相撲でのモンゴル人力士の活躍なども相まって、モンゴルは非常に親日感情の強い国となっております。
今回の調査で意見交換をいたしました大蔵副大臣を始めモンゴル側の方々からは、モンゴルが民主化、市場経済化に伴う混乱を乗り越え成長に向かう中で、日本のODAが大きな貢献をしたと感謝の言葉が示されました。
本調査団が見た現在のモンゴルは、徐々に発展に向かいつつあるものの、首都ウランバートルに人口の約半数が集まり、急激に膨張した貧しい住民の生活環境は、住宅はもとより上下水道等の生活インフラも整備されておらず、衛生面でも多くの問題を抱えておりました。都心を一歩離れますと町の景色は一変し、沃野が広がりますが、市街地を取り囲むように山の頂に向かって限りなく広がるスラム街は、この国の矛盾を映し出しているようにも感じました。
このような状況にあるモンゴルで視察いたしましたODA案件について、我々が感じた点なども交えて主なものを申し上げたいと思います。
一つは、モンゴル日本センターについてでございます。
このセンターは、日本企業の経験なども生かし行う市場経済化に必要な人材の育成と、日本とモンゴルの相互理解促進を目的とした事業を行っておりますが、我が国がいわゆる要請主義を原則としてきた中で日本側から提案をして設置された施設でもありまして、モンゴルにおける我が国の理解を深めることはもとより、今後日本企業がモンゴルへ進出する際に日本的経営を分かる人材が育っていること、日本語を理解する人材がいることの意義は非常に大きなものであると思います。日本センターは既にアジアの八か国に設置されているとのことでございますが、戦略的なODAの在り方として今後も更に推進していくべきものであるとの印象を強く持ちました。
二つ目は、ウランバートル市第四火力発電所についてでございます。
この発電所は、旧ソ連製の旧式のシステムであるために熱効率が悪い、大気汚染物質の排出が多い、事故が多発するなどの問題があったことから、我が国の支援が行われてまいりました。現在この発電所にはシニア海外ボランティアが派遣されておりまして、メンテナンス、業務管理等の発電所運営にかかわる技術を伝えております。彼らの努力により職員の意識改革も進みまして、運営を効率的なものにしたと高く評価をされております。シニア海外ボランティアの方々が現地の人々と一緒に汗を流したことがこのプロジェクトの成功の大きな要素となっております。我が国のシニア世代の勤勉さと彼らが持つ技術を開発途上国に伝えていくことは、今後これまで以上に重視されてよいのではないかと感じました。
三つ目は、ウランバートル市廃棄物管理計画についてでございます。
ウランバートル市の人口急増と消費生活の進展に伴って排出量が増えてきたごみの処理及び管理についてマスタープランを作成するとともに、それを実践するためのパイロットプロジェクトを実施しております。我が国が経済成長を遂げる過程で直面したごみ問題への対処の経験をきめ細かく生かした支援でありまして、我が国の経験を生かしたこの種の支援は今後も推進していくべきであると強く感じました。
ただ、このプロジェクトに関しましては非常に残念に感じたこともございました。我々に説明をした民間コンサルタント会社の担当者が、ウランバートル市長などの同席する前で、モンゴルの人々は環境意識が低いと一見見下すような発言を交え、説明をしておりました。そのような態度というのは決して相手側に好印象を与えるものではないと思いますし、彼らも我が国の顔の一端を担っているという自覚を持って事業にかかわってほしいという、こういう感がいたしました。
以上のようなODA案件の視察と我々が実際に目にしたモンゴルの現状も踏まえて、本調査団が持つに至りました所見を申し上げます。
モンゴルに対しましては、引き続きODAを実施していく意義が十分にあると認められます。しかし一方で、モンゴルが中国や韓国との経済的結び付きを強める中で、ODAに頼った日本のプレゼンスは相対的に低下しているとの印象も持ちました。したがいまして、今後モンゴルに対しては、民間活動を含めた経済関係の深化に資するODAを実施していくこととし、資源エネルギー外交の観点からのODAなども含めて考えていくべきではないかと思います。
次に、中国について述べたいと思います。
中国は一昨年のODA調査でも対象とされておりますので、今回の調査はそれを引き継ぐ形で中国東北部の遼寧省の調査を行うことといたしました。
中国では、案件視察に先立ちまして遼寧省常務副省長と意見交換を行いました。副省長からは、これまでの円借款に対する深い感謝の意が示されるとともに、引き続きその供与を願いたいとの意見が述べられました。中国は感謝の気持ちが薄いなどとよく言われるところでございますが、感謝の度合いについては中央と地方で温度差があるのではないかとも感じました。
中国でODA案件といたしましては、まず草の根・人間の安全保障無償資金協力による撫順市社会福祉院児童施設を視察をいたしました。この施設では、約百名の孤児が暮らしておりまして、中国が著しい経済発展を遂げる中で生じた格差の結果として、多数の貧困生活を送る人々や恵まれない子供たちが存在するという現実を見る思いがいたしました。
中国の貧困問題につきましては、一昨年の調査において、もはや富の再配分という国内問題ではないかという感を否定できないとしていることと考えを異にするものではありません。一方で、我が国が草の根・人間の安全保障無償資金協力で手を差し伸べることは、支援金額の小ささの割には中国国民から大きな感謝を得られるものでありまして、国民レベルの対日理解に資するものではないかと痛感をいたしました。
このほかに、中国医科大学も視察をいたしました。この大学では、医療分野での人材育成に係る技術協力など、複数の案件を十年余にわたり継続して実施してきておりますが、人材育成に対するODAの意義を認めないものでもありませんが、継続的に行う場合などには効果的な実施がなされるよう、常に検証する必要があるのではないかという感想も抱きました。
以上が、中国での調査の主な内容でございますが、この調査の結果として本調査団が持ちました所見について申し述べたいと思います。
対中ODAにつきましては、一昨年の調査団が示しております引き続き推進することの必要性は見当たらなかったとの所見と意見を全く同じくいたします。円借款につきましては、二〇〇八年の北京オリンピック前までに新規供与を円満に終了することが既定方針とされておりますが、中国の過熱とも言えます経済発展の状況などを考えれば、この既定方針どおりに終了すべきものと思われます。
また、無償資金協力につきましても、二〇〇五年に中国の一人当たりGNI、国民総所得が一千七百四十ドルとなり、無償資金協力対象国の目安を超えましたので、原則として終了する方向で考えるべきと思われます。
ただし、無償資金協力については、日中両国の共通課題に関する分野や相互理解に資する分野では、我が国の国益の観点から考えて引き続き実施した方がよい部分もあるのではないかとも思われますので、その点については国民への丁寧な説明に努め、その理解を得た上で実施される必要があると感じました。
結論的に申し上げれば、今後の対中ODAは原則として縮小する方向で考え、技術協力や草の根支援を中心に我が国の国益に資する分野に限って戦略的、重点的に援助を行っていくべきではないかと考えます。
最後に、今回のモンゴルと中国での調査を通じまして、ODAの在り方全体についても感じた点がございましたので、一点ほど申し上げたいと思います。
国際機関経由の援助はその相当部分が日本からの資金であるにもかかわらず、被援助国側では全く理解されておりません。その援助も日本国民の税金が使われているものである以上、これについて日本側からもっとPRする必要があるのではないかと強く思われます。
以上をもちましてODA調査第一班の報告とさせていただきます。
ありがとうございました。