岸信夫の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○岸信夫君 第三班の御報告をさせていただきます。
ODA第三班は、去る八月十六日から二十五日の十日間にウズベキスタン、カザフスタンの中央アジア二か国を訪問してまいりました。折しも小泉総理の両国訪問が設定されたために、当初の予定よりも若干早めに繰り上げての訪問となったわけです。
今回の二か国は、ソ連邦の崩壊に端を発しまして一九九一年に独立した中央アジア五か国の中で我が国からのODAの援助額が多い二か国であります。また、石油や天然ガス、希少金属、ウランなどの資源に恵まれた地域でありまして、我が国にとって両国の民主化の促進と資源開発における協力関係の構築には大変関心の高いところであります。
小泉総理の訪問も、こうした両国との協力関係の構築、関係強化を目指したものであったと思いますが、我々ODAの状況調査をこの時期に行ったということも大変時宜を得たものであったんではないかというふうにも思っております。
両国での視察先について、詳しいことは派遣報告書をごらんいただきたいと思いますが、それぞれ、政府の関係者あるいは農業高校、女性のための職業訓練センター、あるいは日本人材開発センターなどを訪問いたしました。また、青年海外協力隊員あるいは現地の企業駐在員など、現地で活動されている邦人の方々からも意見交換を行ってまいったわけであります。
この訪問先の二か国でありますけれども、同じ中央アジアでソ連崩壊により誕生した国であるという共通点はありますけれども、国柄としてはそれぞれ民族も異なっておりまして、また指導体制、経済の発展状況も違うので一くくりにしにくいところはございますが、それぞれについて意見を申し上げます。
ウズベキスタンにつきましては、DACの被援助国リストの中でも低所得国に位置付けられております。日本からの支援に対して大きな期待を寄せておりまして、歴史的にも非常に親日国であるというふうに言われております。体制について、九一年から続けてカリモフ大統領が統治をしております。ソ連時代の旧態依然とした官僚機構や党組織がそのまま残っておりまして、大統領に権力が集中している状況です。よって、市場経済への段階的移行を目指す漸進主義を取っておりますけれども、経済発展は大変後れていると言わざるを得ません。
我が国の援助により供与された機材については総じて活用されておると言えるわけです。例えば、現地の客車の修理工場などでは、特に自国の客車の修理のみならずほかの国から、周辺国からの注文にもこたえておりまして、現地の雇用また外貨の獲得にも貢献しています。
また、民族的、宗教的な理由から、女性の社会的地位が概して低い国と言われております。その女性の地位向上のための職業訓練センターへの草の根支援などでは、理容技術の習得した女性が多く就職の機会を得て自立の促進が図られているといった一定の効果を上げております。
しかし一方で、支援イコール機材供与といった受け止め方がされておるということが大変気になった点であります。旧ソ連時代から技術があるとの自負から、今自分たちに足りないのは機材であると、あるいは機材を買うための資金である、こういう意識が大変強いわけです。本来、技術移転のための機材納入であったり、あるいは専門家の派遣であったりということでありますけれども、その技術移転が十分行われていないといった問題が見られました。援助案件にかかわるノウハウ、あるいはシステムなどのソフト面も併せて供与していくこと、そして国全体にそのODAの効果を波及させるためのモデルとしての役割を担わせるべきである、こういうふうに考えます。
看護教育改善プログラムで派遣されている青年海外協力隊員とも意見交換を行いました。受入先の病院では、機材の導入には大変関心が高いわけですけれども、技術や業務の改善には大変消極的であるということで、現場での難しさに大変苦慮しておられました。
我が国の行う支援が人材育成や技術移転に主眼を置いているということを相手に十分理解させておくということが必要なんだと思います。当国での看護師の役割が日本と異なっていて、そのことも阻害要因にはなっているようですけれども、これは現場だけでは解決できない問題も抱えておると思います。
かつて、中央集権でモスクワからすべての指示が下りてくる体制が長く続いていたためですか、トップダウンの国であります。ですから、現場の下部の組織においては自ら責任を取って事を進めようとしない、失敗を恐れて現状を変えようとしない傾向が大変強いといった社会的背景もあるんだと思います。
日本人材開発センターにおいては、日本の文化に対する理解促進や意欲のある経営者に対する経営指導などが有効に行われておりました。しかしながら、当国の銀行システムやあるいは税務システムに問題がまだありまして、企業活動の障害になっております。せっかくそうしたセンターで育成した人材が十分に能力を発揮できない。結局、そういった優秀な人がその国のために働く機会を得ずに海外に流出してしまうといった問題も見られております。市場経済システムに対する支援の必要性というものを強く感じました。
経済改革のペースが大変遅い国で、貧困もまだはびこっておるということから、我が国の支援の継続も必要なんでありますけれども、一方で、地方都市のアンディジャンにおける住民に対する発砲事件などで人権に対する問題が懸念されておるところです。
欧米の各国との関係も悪化しているということですが、逆にロシアや中国などが資源を目当てにまた関係を強めてきている、こういうような状況もありまして、我が国としてもこのウズベキスタンにどういったものを求めていくかということも含めて考えていく必要があるんだと思います。
カザフスタンについては、同じく九一年の独立以来、ナザルバエフ大統領が強力な指導力を発揮して民主化、市場経済化を推進しております。石油資源開発による資金が経済効果をもたらして、首都のアスタナあるいは最大の都市であるアルマトイでは活気が感じられました。GDP一人当たり三千ドルを超えておりまして、もはや無償資金の対象ではなくなっております。石油資金の回っている都市部では急速にビル開発などが行われております。首都のアスタナなどは本当に見た目は近代都市を思わせるような状況でありますけれども、一歩裏に入りますとまだまだ貧困が続いておる。そして、地方においては地域の格差、あるいは所得の格差が拡大しているというような状況であります。
小児病院や救急医療センターを視察してまいりました。そういったところは確かに機材においてはそれなりの改善が見られます。しかしながら、小児医療のシステムあるいは救急支援体制というものがシステムとしてうまく機能しているかというと、そうでもなさそうである。地域的な格差もかなり残っております。こういったところを改善する余地はまだまだあるんだろうというふうに思います。国としてのシステムづくりに明確なビジョンを持たせる、その上で、しっかり理解をさせた上で機材を供与していくべきであると思います。
セミパラチンスクの核汚染問題など環境汚染も大きな問題となっております。原因をつくったロシアが積極的に取り組むべき問題ではありますけれども、現実にはロシアはかなり引き揚げて、面倒を見ていないというようなところもあるんだと思います。非常にその都市におりますと財政的なゆとりというものも感じるわけですけれども、一方で全くお金の行き届いていないところもあって、同国の歳出構造の在り方に対する疑問が強く生じました。
カザフスタンの人材開発センターは、現地の大学がカウンターパートとなって事務所を提供しているわけでございますけれども、ウズベキスタンに比べますとプレゼンスがまだまだ低いようにも感じました。予算の問題もあるかもしれませんが、日本語の講座や相互交流を促進するための事業が、このODAとして実施するのが適切なのかどうか、あるいはもっと国と国との関係あるいは文化政策としての位置付けで、別の形での予算付けを計上するなど、在り方を検討する必要があるんではないかということを感じました。
我が国とカザフスタンの関係は、もはや援助国と被援助国の関係というよりも相互に協力し合う関係ということに高めていく、関係を高めていく必要があると思います。同国の持つエネルギー資源に対する我が国のアプローチにつながるような関係を築いていく、構築していく必要があるというふうに考えております。この地域、大変そういうことで、我が国が援助を続けるにしてもどういう目的でやっていくのか、我が国の立場をはっきりした上でやっていく必要があるというふうに感じました。
以上です。