白眞勲の発言 (本会議)
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○白眞勲君 民主党・新緑風会の白眞勲でございます。
私は、ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定について質問いたします。
民主党は、アジア地域における相互協力と信頼醸成を進め、FTA、EPAの締結を推進し、農業分野などの貿易面のみならず、人の移動の自由化、エネルギー、環境、教育、保健、犯罪対策など、様々な分野でアジア各国、地域との連携を強化し、アジア地域を不戦地域とすることを各国共通の目標と目指しております。その視点から、まず麻生外務大臣の核保有議論容認論によるフィリピンを始めとしたアジア近隣諸国からの懸念について御質問いたします。
麻生大臣は、非核三原則は堅持する立場に変わりはないとの前提には立ってはいるものの、核保有の議論を封殺すべきでないと度重なり表明しております。しかしながら、これからも非核三原則を守るのであるならば、核保有、つまり核を持つべきかどうかを議論する必要はないはずです。したがって、麻生大臣の主張は論理矛盾であると言わざるを得ないのであります。
これは、例えば夫婦間において表現するのなら、妻がこれからも結婚生活は堅持すると言いつつも、私たちの離婚について議論しようと夫に言っているようなものであります。さらに、妻から議論は封殺すべきでありませんと言われたら、言われた夫は返す言葉がないと思います。それを聞いた周囲の人たちは、きっとあの夫婦は仲が良さそうに見えるけど本当は違うんじゃないかと思われるでしょう。夫婦のことは外からでは分からないからなんて勝手な想像をされるに違いありません。
これと同じようなことを与党の政策責任者や国家の外交の最高責任者である外務大臣が言っているとしても過言ではありません。要するに、かかる発言を重ねているということは、米国を始め、今回の議題となったフィリピンを含め、アジア近隣諸国など国際社会から我が国の方針変更に向けた動きとして疑念を持たれてしまうのであります。また、この種の協定の締結においてもその影響を受ける可能性がゼロではありません。その意味で、今回の発言は厳しくその責任を問われるものであると考えますが、外務大臣のお考えはいかがでしょうか。非核三原則を堅持する立場に変わりはないと言いつつも、核保有議論を封殺すべきでないとおっしゃっている矛盾点について納得いく説明をしつつお答えください。
特に、北朝鮮の核実験が強行された今日、日本国内でもやられたならやり返せみたいな意見があることは事実です。しかしながら、我が国は決断さえすればすぐにでも核を持つ能力も実力も兼ね備えているのにもかかわらず核を持たないという選択をしたのであって、私たち政治家はもっと知恵を出し合って、外務大臣、それこそあなたが率先して世界にこのことをアピールしつつ、世界平和に貢献すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
さて、世界貿易機関、WTOの新多角的貿易交渉、ドーハ・ラウンドが今年七月末に凍結され、世界的な規模でFTAやEPA締結の動きが加速するとの見方があります。そうした中で開催された今回のアジア太平洋経済協力会議、APECは、大変重要な意味を持つ会議であったと認識しております。特に、今回のAPECで注目されるべきことは、米国から提案されたAPEC加盟二十一か国・地域のアジア太平洋の自由貿易圏構想が提案され、研究に着手することが明記されたことであります。
私たちは、基本的に二国間FTA、EPAは積極的に進めるべきであるという立場でありますが、今回の米国提案の構想について外務大臣はどのようにお考えになっていますか。さらに、米国との二国間EPA、FTAの締結については今後どうするおつもりなのか、外務大臣、お答えください。
また、既に中国はASEANと日中韓の十三か国によるFTAを提示しております。我が国も豪州、ニュージーランド、インドも加えた東アジアEPA構想を提唱しており、中国との間で主導権の駆け引きが行われております。この件に関し、日本として今後どのように対処をしていくつもりなのか、外務大臣、お答えください。
次に、韓国との交渉についてお聞きいたします。
二〇〇三年当時、日韓FTAについて二〇〇五年内までには実質的に交渉を終了すると首脳会談で合意したのにもかかわらず、二〇〇四年以降交渉が二年も中断、膠着状態に陥っております。これについて日本政府は、韓国側が依然として関税交渉には慎重な姿勢を示しているとしつつ、まずは交渉のテーブルに着くべしとの立場です。これに対し韓国側は、この日本側の立場に対し態度を硬化、韓国側が製造業で損害を被る割には日本側の農水分野での関税撤廃品目が消極的だとし、新たな提案が日本側からないから交渉が中断しているのだと説明しております。
双方それぞれの言い分が異なる感じがするのですが、日韓FTAの合意に向けて政府はこれからどのようなロードマップで交渉をするつもりなのか、再開に向け粘り強く働き掛けを行うといったような抽象的な答弁ではなく、具体的な方策をお示しください。外務大臣、お答えください。
今回の日比EPA協定では、日本の国家資格の取得などを条件に看護師と介護福祉士を受け入れるという、日本の労働市場の開放にかかわる内容を初めて盛り込みました。
ここで一つお聞きしたいのは、我が国がEPA、FTAの交渉をしていく上で、いつも苦境に立たされる最大のポイントは農業分野であるわけで、これすなわち、政府が今まで行ってきた場当たり的でなし崩しの農政により我が国の農業基盤が脆弱になったからに尽きます。これからアジア諸国との交渉を進める上で、農業分野での日本側の不利を打破するための交換条件として、農業を開放する代わりに労働者の受入れをするのであるならば、とんでもないことであります。
さらに現在、タイを始めとする東南アジア諸国等との間で経済連携協定に係る交渉が進められているようですが、どの国においても労働者の受入れが今後も焦点になってくるように聞いております。
ところで、柳澤厚生労働大臣は、先日の衆議院本会議で、フィリピン人看護師と介護福祉士の受入れにつきましては、労働力不足対策ではなく、あくまでもフィリピンとの経済連携協定の枠内で例外的、特例的に行うものであると答弁されています。この例外的、特例的という意味は、フィリピンに限って看護師及び介護福祉士の受入れをするのであって、今後締結されるであろうほかの国々に対しては受け入れるつもりはないのかと思ったのですが、現在、フィリピンに次いでインドネシアとのEPAにおいても看護師、介護福祉士を受け入れることに合意し、さらに、観光関連の研修生までもホテル従業員として受け入れるとのことです。この例外的、特例的とはどういう意味なのか、厚生労働大臣、お答えください。
また、今後もこれら労働者について経済連携協定を絡めて例外的、特例的にどんどん受け入れるつもりがあるのかないのかも併せて厚生労働大臣、そして外務大臣、お答えください。なお、状況を見て総合的に判断するといったような御答弁は勘弁していただき、率直にお答えください。
今まで政府は、専門的、技術的分野の労働者の受入れについては積極的に推進するが、単純労働者の受入れについては十分慎重に対応するとの立場を取ってまいりました。しかしながら、現実には開発途上国への技術移転のための制度である研修・技能実習制度の導入や日系人労働者の受入れ、多数の不法就労者の存在等により、事実上、安価な労働力として単純労働者を受け入れているとの指摘があります。
我が国は、製造業における国際競争力の強さを背景に世界有数の経済大国としての地位を占めておりますが、その傍ら、自動車や機械などの基幹産業でさえ、下請も含めた製造工場では外国人労働者が不可欠な存在となっております。もし仮に単純労働を担う外国人労働者の受入れが厳しく制限されることになれば、下請製造業から関連企業へと影響が波及し、人手不足倒産が多発すれば、結果的に日本人労働者の雇用機会の喪失にもつながることが懸念されます。
一方、我が国における少子高齢化は急速に進展しており、それに伴う将来的な労働力減少も懸念されており、少子化対策が極めて重要な政策課題となっております。しかしながら、この政策効果が現れるまでは時間が掛かるわけで、当面、労働力不足に対してはまずは高齢者や女性の活用等に努めるべきだと考えますが、それでも不足する場合、解決策として外国人の単純労働者の受入れについての議論があると思われます。
そこで、政府はこの外国人単純労働者の受入れをどうするのか。つまり、受け入れるのか受け入れないのか、もし受け入れないのであるならば、この労働力の減少をどう補うのか、その点に関しどう考えるのか。官房長官、あいまいな答えじゃなく、きちんとお答えいただきたいと思います。
また、この外国人研修・技能実習制度を利用して来日した外国人のうち、失踪者は五年間で一万九十七人にも上っております。さらに、厚生労働省の平成十五年の推計でも、永住者等を除く我が国で就労する外国人労働者約七十九万人のうち、専門的、技術的分野で働く外国人は十九万人にすぎず、多くは単純労働者として就労していると見ており、政府の方針と実態が乖離している状態です。この外国人研修・技能実習制度とその実態とが懸け離れた現状に対し、政府はこれまでどのような対策を取ってきていたのか、厚生労働大臣、お答えください。
また現在、政府がこうした矛盾に目をつむっているため、外国人の単純労働者の生活、労災や偽装請負など就労上の問題、地域住民との摩擦等、様々な大変な問題が現実に生じております。日本にいる外国人労働者に対し、政府としてはどのような対策を取ってきていたのか、そしてその取った施策の評価はどうだったのか、厚生労働大臣、お答えください。
また、この外国人研修制度の抜本的見直しも検討しているとのことですが、制度自体を云々する前に、そもそも、将来我が国の外国人労働者をどうすべきかという根本的な方針が定まらないまま一省庁が検討しても、場当たり的、付け焼き刃的な見直ししかできないと思いますが、官房長官、厚生労働大臣、いかがでしょうか。
これらの日本の総合的な労働市場の将来について、この協定との関連性を政府は認識し、考えた上で今回のフィリピンとの協定を結んだのか、それとも何も考えないで協定を締結したのか、外務大臣、お答えください。
今回の協定では看護師と介護福祉士合わせて一千名を受け入れるわけですが、この方々は入国後に六か月間の日本語研修を実施するとのことです。しかしながら、全く日本語のできない方が来日され、つまり、あいうえおから日本で勉強していただいたとしても、果たして半年の研修でどこまで日本語能力が身に付くのか疑問です。もちろん個人差もあるでしょうが、仮に私ならば、全く知らない言語を半年で必死に勉強した後、その国の言葉で書かれている薬の説明書を読んで一〇〇%理解しろと言われても嫌です。いわんや、日本語は平仮名、片仮名、漢字が入り交じっている言語で、本当に六か月程度で薬の説明書が読めるようになるのか甚だ疑問であります。
また、会話であっても、例えで言うと、韓国語で心臓はシムジャン、腎臓はシンジャンと言います。このシムジャンとシンジャン、恐らく大抵の日本人には区別が難しいでしょうが、これと同じようなこと、つまり、日本語にもフィリピンの方には分かりにくい言葉が会話で生じる懸念があるわけです。人の生命に直結する問題であるわけで、医療事故防止の観点から事は重大であります。受け入れる病院側も不安ですし、患者はなおさらです。
そのような不安を少しでも防止させる意味からも、せめて入国の際、日本語検定二級程度の日本語能力を持つ方を条件に来ていただき、こちらで半年の看護、介護や専門用語の研修をするような制度に改めるべきだと思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。
フィリピンの看護師は四年制大学の卒業生であり、医療知識や技能の水準では世界で定評があるとのことです。ところが、実際、日本に来ていただいたとしても、日本語能力等の問題で看護や介護の現場には直接入れずに、安価な労働力として研修期間の短期雇いを繰り返されてしまうといった懸念も排除できません。この点について厚生労働大臣の認識はいかがでしょうか。
既に述べましたとおり、たとえ優秀な海外からの人材を受け入れるとしても、我が国の外国人労働者の受入れ体制などが現状のままであるならば、今後、様々な国との間で締結されるだろう二国間協定により、例外的、特例的に泥縄式に受け入れられた労働者の方々が結果的に安価な労働力として利用されてしまう懸念を払拭することができない現状があり、この状況を一刻も早く解決する必要性があると思います。
したがいまして、政府は、EPA、FTAの締結に当たり、農業政策の抜本的改革と基盤の強化を行い、国際競争力を高めるとともに、今後の外国人労働者受入れに対する方針の確立を大至急、それこそ議論を封殺させることなく行うことが望まれるものでありますが、官房長官の御認識はいかがでしょうか。
最後になりますが、EPA、FTAによりアジア内の人、物、お金の往来が盛んになることが、アジアのみならず世界平和の実現に貢献するものであると強く主張しつつ、私の質問を終わります。
白眞勲でございました。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕