永井暁子の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)

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○参考人(永井暁子君) ただいま御紹介にあずかりました東京大学社会科学研究所で助教授をしております永井暁子と申します。よろしくお願いいたします。
 私の専門は、労働ではございませんで、家族社会学という領域を行っております。家族と社会との関係ですとか家族の内部構造、そして家族関係について研究しております。そういった視点から本日は御報告させていただきたいと思います。幾つかの国についてワーク・ライフ・バランスについての研究を、調査を行ってまいりましたが、本日はその中で特にスウェーデンの家族生活について御紹介させていただきたいと思います。最後にお配りいただいた資料が私の資料となっております。(資料映写)
 本日の報告内容は、今申し上げましたとおり、家族社会学を専攻しております私の観点、ですから、主にワーク・ファミリー・バランスといった視点から御報告させていただきます。その中で、スウェーデンにおける働き方、家族という視点からですけれども、スウェーデンにおける働き方、スウェーデンの家族の暮らし方、そして保育と教育について簡単に御説明申し上げたいと思います。
 スウェーデンにおける働き方の特徴としては、正規雇用としてのパートタイムというものがありまして、皆さんも既に御存じかもしれませんけれども、日本でいわゆるパートタイムと言っているようなものとはかなり違ったものとなっております。それと、柔軟な育児休業制度の利用ということについて申し上げたいと思います。三点目として、男性の育児休業取得についての促進をスウェーデン政府が図っているという点についても申し上げたいと思っております。
 スウェーデンの家族の暮らし方について強調したい点といいますのは、家族の時間を大切にする生活というものについてです。
 また最後に、保育サービスが充実しているという点と大人になってからの職業教育も充実しているという点について触れていきたいと思っております。
 ではまず、スウェーデンでの働き方について御報告いたします。
 スウェーデンでの働き方、レジュメですと二ページ目になりますが、スウェーデンでの働き方というのは、特徴としては男女ともに少ない長時間労働、長時間労働者が非常に少ないという点がこの国の特徴です。それと、男性の働き方の特徴としては、もちろんフルタイムが多いということですけれども、一方で育児休業を取得しているという点。女性の働き方の特徴というのは主に三パターンありまして、フルタイムで働いている女性、それから育児休業を利用してパートタイムといいますか、時間短縮をしながら働いている女性、それから育児休業というものは利用しないんだけれども正規雇用のパートタイムで働くというような働き方があるということです。それについて具体的に説明をしていきたいと思います。
 ここに示しておりますグラフといいますのは、お手元の資料の一番最後のページ、十一ページ目になりますけれども、家庭生活に関するアンケート調査といったものから起こしたものです。これは、レジュメの下にありますように、内閣府経済社会総合研究所と財団法人家計経済研究所が編集しまして二〇〇五年に刊行いたしました「スウェーデンの家族生活」といった報告書の中にまとめられているものです。この調査は内閣府の経済社会総合研究所から家計経済研究所に委託されて行ったものでございます。調査の方法などについてはその下に書いてございますので、御関心があれば後ほどゆっくりごらんいただければと思います。
 この調査の回答者となっておりますのは、三十五歳から四十四歳の結婚しているといいますか、パートナーのいる男女ということで、居住地はストックホルム地域ということになっております。都市部のスウェーデンの家族の生活という数字だというふうに認識してこちらのグラフをごらんいただきたいと思います。
 男女ともに短い労働時間であるということが分かるかと思います。男性でも三十五時間から四十時間で働いている、週当たりですね、働いている人が六七・一%と、ほとんどの人が占めていると。長時間労働と申しましても四十六時間以上でしかくくりをつくれないほど、例えば日本のように週六十時間以上というグループをつくるのが困難であったというか、パーセントとしては非常に低く、グループをつくれなかったほど長時間労働者が少ないという点にあります。
 また、女性の方も男性と同じように働いているかと申しますと、やはり家庭のことは女性の方がスウェーデンといえどもやることが多く、女性の場合は、男性と同じような三十五時間から四十時間で働いているというのは五一%、二十時間から三十四時間で働いているという人たちが三六・三%となります。このグループの人たちの二十時間から三十四時間というと、長いんだろうか短いんだろうかという感覚がするかもしれませんけれども、日本のJGSSという社会調査によれば、日本の女性のパートタイマーの平均の労働時間とほぼ同じぐらいになります。ですから、ほとんどこの女性の多くは正規雇用で働いていますけれども、日本のパートタイマーの女性と同じような時間で働いているということになります。
 またもう一方で、女性の方に着目してみますと、スウェーデンの女性が労働力率が高いということはよく言われておりますが、その労働力率の高さというのは育児休業といったところにもあります。日本ではM字型就労と言われているように、グラフで見られるように緑色の線になって、こちらで見られるように緑色のこういうM字になっているわけですけれども、スウェーデンの場合は八割を超える台形型の労働力率の曲線になっているわけですが、実はそのスウェーデンの労働力率から休業者を除いてしまうと日本の女子労働力と余り変わらない。つまり、育児休業を取りながら、出産後一年ぐらいは育児休業を取っているけれども、またすぐ復職する、女性が入れ替わり立ち替わり労働市場に入ってこれる仕組みがあるということが示されているということになります。
 次に、そういった点をもう少し掘り下げてみたいと思いますが、育児休業の柔軟な利用の仕方にスウェーデンの育児休業制度の特徴がございます。主に二点ありまして、育児休業制度というのは子供が八歳になるまで分割取得可能です。日本の場合は一歳までといったことですし、一回取ってしまうと連続して取るしかなかったということになります。また、時間短縮のために使うことができるということです。
 スウェーデンでインタビューをしていると、どういう聞き方をすれば最初うまく女性や男性の働き方を聞けるのだろうと思っていましたけれども、最終的に落ち着きましたのは、何%で働いていますかということでした。つまり、回答者は、八〇%で働いています、七五%で働いていますというような言い方です。だから、フルタイムの時間を一〇〇%としますと、八〇%や七五%で働いて、その八〇%のマイナス二〇%分を育児休業を使って埋めるということをやっていらっしゃる方が非常に多かったです。
 また、育児休業ではございませんけれども、子供が疾病などのときの家族看護休暇なども充実しているという点があります。
 こういった特徴は、現在EUのほかの国々にもかなり波及している点でございます。
 育児休業制度をもう少し詳しく見てみますと、この調査を行った二〇〇四年でしたか、の時点では左側の制度になっておりまして、合計三百九十日は給与の八〇%が支給される。支給元は両親保険という制度です。
 両親保険というのは、主にというか、社会保障、全般的にスウェーデンの場合は企業が負担する側が多く、労使折半というよりはほとんど九十何%企業側が持つということになります。もうそうなりますと、自分のところの労働者に取ってもらわないと意味がないということにもなるのではないかなと思いましたけれども。
 この調査時の制度ですと、父親割当て分、父親しか使っちゃいけないものが六十日、母親しか使っちゃいけないものが六十日ありまして、それ以外の母親分百三十五日、父親分百三十五日は交換可能ですので、主に父親は父親しか使っちゃいけない分六十日、これはパパの月と言われているものですけれども、を使って、それ以外の百三十五日分を母親側に譲るということが割と一般的に行われているかと思います。
 昨年改正されまして、まだまだスウェーデンの父親の育児休業の取得日数が母親より少ないということになりまして改正されました点というのは、父親割当て分を百五十日に増やしたという点です。ただ、トータルでこの四百五十日というのは八〇%の両親保険が支給されるということですから、使わないと損といいますか、というような考え方もできるということになります。
 では、具体的にどのぐらい日数取っているのかということを見てみましょう。
 女性の育児休業取得日数というのは、スウェーデンの場合、子供一人当たりですけれども、二百六十日以上が多いということです。この二百六十日というのは労働日ですので、実際には約一年、休日入れると約一年を指します。ですから、多くは大体一年から一年半ぐらいというふうな形で取るという場合が多いかと思います。取らないという方は二・九%しかいなかったということです。
 また、日本の場合は、育児休業日数を結構取っているとか、育児休業を取っている方多いんですけれども、実は取る前に辞めてしまうという方が七割いらっしゃいますが、スウェーデンの場合は妊娠、出産によって辞めるという方は非常に少ないです。ですから、これはこのままの女性の利用日数と考えても差し支えないかと思います。
 では次に、女性の復職後の働き方ですけれども、女性の復職後、育児休業明けにどういう働き方しているかといいますと、スウェーデン女性の場合、ばりばり働いているかというイメージもあるかと思いますが、そうではなくて、いろんな働き方をされている。フルタイムで復職するという方は三八%ですが、パートタイムで働いているという方が残りの六割程度を占めているということになります。七五%勤務というのが二七%で最も多く、それ以外のパーセントでも働いているといった形になります。
 では次に、男性の育児休業について見てみたいと思います。
 男性もほかのヨーロッパの国々に比べてもかなり育児休業を取る割合は多いんですけれども、やはり女性に比べると少ないということが指摘され、先ほどのような制度改正に至りました。ただ、育児休業取得日数がゼロ日という方はやはり一割程度です。
 十日以内という方が二三・一%となります。この十日というのは、妻が出産を終わって家に帰ってきて、妻と子供の面倒を見るような期間として考えられるかと思いますし、実質二週間に該当します。それは割と中小企業でも取りやすいけれども、非常に小さい規模の企業ですとこの十日を超えた本当の意味での育児休業はなかなか取りにくいというような声もインタビューで伺いました。ただし、それでもこの調査結果によりますと、三十日以内それから六十日以内といったように十日を超えて育児休業を取る方というのが結構多いということがこれでお分かりになるかと思います。
 このように、育児休業が非常に発達してきた背景としては、女性の働く場所が非常に関係していたということになります。非常に多いのがやはり公務員です。民間企業の場合は男性六割に対して女性四割という比率ですが、国家公務員の場合は半々といった形になりますけれども、市町村、県、まあこれ日本に該当させたんですけれども、市町村、県レベルの公務員というのは女性が八割を占めております。
 そういった中で、女性が育児休業を取得したり時間短縮した働き方をするということをしやすくなったという社会的な背景があるかと思います。もちろん民間企業でも現在女性は育児休業を取っておりますし、時間短縮はしておりますけれども、普及していく過程でこういった構造があったのかと思います。
 このような市町村、県の公務員で女性が多いというのは、主に市町村、県の公務員の内訳というのが、初等教育の教員、それからケアワーカー、介護系の職員といったものが公務員として雇われているということです。つまり、家事労働を社会で分配しているといったことになるかと思います。
 では次に、スウェーデンの家族生活について御説明いたします。
 スウェーデンの家族の暮らし方なんですけれども、家族の時間を大切にするという点が挙げられます。それには早い帰宅時間というものがあり、それによって家族そろっての夕食というものがあり、子育てを社会で行っているという特徴もあります。それは保育サービスの積極的な利用ということが挙げられるかと思います。
 では、先ほどの調査を基にして、日本で行った調査と比較してみました。日本って書いてある方は東京です。ですから、日本を代表するというよりは東京的な特徴が確かに出ているかもしれませんけれども、このスウェーデンって書いてある方がストックホルムですので、大都市同士の比較ということになるかと思います。
 日本の場合は一日、二日、家族が全員で夕食を取るのは週に一日、二日というところが非常に多くなっております。つまり、御想像のとおり、お父さんが帰ってこないということになります。だれと夕食を取っているかというのも聞いていますけれども、やはり母親と子供ということになります。それに対して、スウェーデンの場合ですと、毎日というのが三五・三%を占めているということになりまして、ほぼ毎日夕食を家族全員で取るというようなことになっております。それが可能となるのはやはり早い帰宅時間でして、男性の場合でも五時までに帰宅しているという人が非常に多い。五時までに帰っているというのが三七・三%になります。女性の場合は二四・九%が五時ごろまでに帰ってきている。それより前に帰ってきている方も非常に多いということになります。この中で、決まっていないというような分類の割合も多いんですけれども、これは職種を見てみますと、看護師さんですとか、そういった時間がローテーションがあるようなお仕事の方でした、消防士さんとかというような方でしたので、一般的な事務職の方ということではないということですね。
 一方、日本の場合というか、東京の場合ですけれども、見てみますと、日本の場合で六時までに帰宅する男性というのは六・八%で、内訳で見ますとほとんど自営業の方で、自営業以外の方は非常に遅い、それも一番多い頻度を示しているのが十時以降ということになります。十時以降が三〇%という一番大きい山になっております。
 ということを考えますと、日本と、東京とストックホルムということでは非常に大きな違いがあるかと思います。
 次に、保育サービスについて簡単に触れたいと思います。
 仕事と家庭の両立といったことを可能にしていくのは保育サービスが充実しているということです。ただ施設があるということだけではなくて、その内容が充実しているということです。スウェーデンでは一歳からの入園が可能となっております。また、学童保育が充実しておりまして、待機児童というようなことは基本的にはあり得ないということです。これは子育て期の就業を継続することに非常に、特に女性が継続することに役立っております。
 スウェーデンで一歳から子供を預けるということについてどのように考えられているかということですけれども、スウェーデンの場合は、一歳からの集団保育は子供の発達にとって良いことというふうに考えられているわけです。一方、一歳までは、まあ母親がということは決して言いませんけれども、父親若しくは母親、親しい親がそばにいることが大事だとされ、また日本との共通点でありますけれども、授乳を非常に重んじる傾向があります。例えばフランスの場合ですと余り授乳ということは重要視されてきませんでしたが、最近少し強調されるようになりましたけれども、スウェーデンは母親が子供に授乳するということはすごく大事なことだと思われている。だからこそ育児休業というものが発展したのだと私は解釈しております。一歳からはこのような形ということになります。
 また一方で、教育の方も非常に発達、制度としては発達しているかと思われます。教育費は基本的に無料でありますし、奨学金制度がある程度受けることが、だれでも受けることができる、それから、大人になってから充実した職業教育を受けることもできるということで、親に頼らないキャリア形成ができることになります。これはやり直しができる社会なのではないかというふうに考えております。
 お手元の資料九枚目になりますけれども、簡単に学校と保育制度について示しております。
 この中で右端の方に余暇活動センターというものが出ていますけれども、この余暇活動センターというのは日本でいえば学童保育に該当するものです。子供を預けるというイメージになるとあれかもしれませんけれども、ちょっと写真を持ってまいりましたので見ていただきたいと思うんですが、私の友人が勤めている余暇活動センターです。主に外での活動を子供たちに活動させることに重きを置いている余暇活動センターなのですが、ゴルフをしたり、落葉を拾って遊んだり、スケートをしたりといったようなことをしているということになります。非常に楽しそう、本当はもっと顔のアップが出ているようなものがあったんですけれども、それは使わないでくれと言われましたのでこういった写真だけですけれども、私も参加したいような楽しい写真をたくさん見せていただいております。
 では最後に、スウェーデンの家族生活についてまとめたいと思います。
 家族生活の基盤というのは、子育てと両立するための柔軟な働き方を可能にする政策を取っているという点、労働時間を短縮し、ゆとりのある働き方を可能にする政策を取っている点にあります。その結果、家族生活の実態として、家族生活のための時間を男女ともに確保する、つまり家族が全員そろえるということが実現されております。その結果、家族の日常生活でも一緒に過ごすことができますし、また家族での余暇が充実するといった点にあるかと思います。
 以上で本日の報告を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 永井暁子

speaker_id: 9898

日付: 2007-02-14

院: 参議院

会議名: 経済・産業・雇用に関する調査会