川口章の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)

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○参考人(川口章君) 御質問、どうもありがとうございました。
 藤本先生の御質問は四点にまとめられると思います。第一が、ワーク・ライフ・バランスと出生率の関係ですね。特に国際比較なんかでどうかということ。第二点が、女性の賃金上昇と子育ての機会費用の関係。第三が、拘束時間が比較的短くて自由な労働時間が選べるような、そういう仕事が増えているのかどうかという御質問。第四点が、日本はいわゆる家族主義的な社会から脱却できるのかという点。この四点だったというふうに理解しております。
 まず、第一点について回答いたします。
 世界的に過去二十年間ぐらいワーク・ライフ・バランスの充実度でありますとか女性の就業率とそれから出生率の関係のデータがかなり蓄積されまして、女性の働きやすい社会では出生率が高いのか低いのかという議論が盛んにされています。現在、ある程度一致といいますか傾向が分かってきていると思います。といいますのは、共通しているのは、ほとんどの国では、長期的に見ると、女性の就業率が高まると出生率が落ちると。つまり、女性の就業率の高まりと出生率は負の相関関係にあるということが時系列で見ると分かります。
 しかしながら、女性の就業率が上がると急激に出生率が下がる国と、女性の就業率が上がっても余り出生率の低下を招かない国と、その程度の差がかなり大きいということです。日本とか南ヨーロッパの国々は、女性の就業率が少し上がりますと出生率が非常に大きく低下します。それに対してアメリカとか北欧では、女性の就業率が上がっても出生率の低下はわずかでした。
 この違いが何かといいますと、そこでワーク・ライフ・バランスの充実度が介在していると。つまり、ワーク・ライフ・バランスが充実している国では、女性の就業率がどんどん高くなってもそれほど出生率は下がらないと。国によっては、逆にむしろ多少上昇しているような国も見られるということでございます。
 第二点、女性の賃金と機会費用、子育ての機会費用の関係でございますが、これは、まず機会費用というのは何かと申しますと、例えば時給の低い女性と高い女性ですね、例えば八百円の時給で働いている女性と大卒で二千円ぐらいの時給で働いている女性、時間当たりに直して、それぐらいの賃金で働いている女性を比べますと、例えば残業をせずに家に帰った場合、時給八百円で働いている女性は残業一時間減らすことによって八百円のロスしかないと。ところが、時給二千円で働いている女性は、残業一時間減らして家に帰ると、そこで二千円分入るはずの収入が入らなくなるということでございます。したがって、女性の賃金が上がれば上がるほど、仕事を休むことによる収入の減少が大きくなると、これが機会費用であります。ここから女性の賃金上昇が出生率を下げているのではないかという議論がなされております。
 第三に、拘束時間が比較的自由な労働というのは増えているのかどうかということでございますが、これは先ほどの家本さんのお話にもありましたように、IT産業でありますとか、特に知的な労働を行っている人たちは比較的自由な時間の配分が可能であります。実際、今日、女性の社会進出が進んでおりますのもそういう分野で、比較的高学歴の女性で比較的自由な時間配分が可能な人たちが社会進出をしているということでございます。
 こういう分野は今後とも増えると思うんですけれども、ただ、そういう知的な労働では比較的自由な時間配分が自分で調整できるけれども、相変わらず大多数の、例えば工場労働でありますとかいうところではなかなか自由な時間配分は自分では計画できないということで、これをほうっておきますと、やはり女性内で階層化というのが進むおそれがあるのではないかというふうに私は考えております。
 それから第四点目ですが、日本は家族主義から脱却できるのか、つまり子育てでありますとか介護でありますとかそういう福祉を家族に頼っている、これが日本とか南ヨーロッパの特徴なんでありますけれども、これから脱却できるかどうかということですが、これは非常に時間の掛かることだと思います。ただ、その中でどういう方策が効果を持つかというと、やはり私は職場でのワーク・ライフ・バランス、仕事の仕方をだんだん変えていくということが重要ではないかと思います。
 先ほどの松田さんとか家本さんの御体験もありましたように、職場でそういう育児休業を男性も取れるとか、あるいは育児に参加できるというような環境が整っている職場では、やはり男性も取る人が次第に増えているわけですね。私も大学ですから比較的時間の自由が利くようなところですけれども、大学でもやはりほかの民間企業と比べますと、育児に参加している教職員が多いというふうに認識しております。
 したがって、そういう職場のワーク・ライフ・バランスを充実させていくことによって男性の意識も変わってくる、それによって社会全体の意識も次第に変わってくるのではないかというふうに考えております。
 以上です。

発言情報

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発言者: 川口章

speaker_id: 34813

日付: 2007-02-21

院: 参議院

会議名: 経済・産業・雇用に関する調査会