岡崎トミ子の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○岡崎トミ子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。
「生きさせろ」、「過労死から逃げろ」、今年のメーデーではついに生存を訴えるデモが行われ、フリーターや日雇の派遣労働者、障害を持つ方々、路上生活者、生活保護受給者など、呼び掛け人の予想を大きく上回る若者らが参加したと報じられました。
雇用の世界がますます不安定な方向に、そしてますます格差を拡大する方向に変わっています。最も顕著なのがパート労働者や派遣労働者など、いわゆる非正規労働の増加です。それは、この十年間で五百万人増えて千六百万人、今や働く人の三人に一人が非正規雇用者です。これは、労働者を保護する適切な措置を欠いたまま行われた労働の規制緩和の下、企業が厳しい競争環境の中で労働コストを削減するために正規労働者を減らし、非正規労働者を増やしてきた結果です。この十年間で正社員は一割減り、非正社員は六割増えているのです。正規労働から非正規労働に転換した多くの方々にとって、この転換が自らの選択によるものとは言えないことを忘れてはいけません。
そして、元々低く抑えられていた非正社員の給与は更に下がり続け、正社員との格差はますます広がっています。これがイザナギ超えの景気回復と言われる今日、労働の現場で起こっている格差拡大の実態なのです。この格差は、一方でワーキングプアを生み出し、他方で過労死をもたらす長時間労働を生み出しながら、貧困化とともに進行しています。失業率がわずかばかり改善したからといって、全く喜んでなどいられません。
格差拡大の中、非正規労働で生計を立てようと頑張っている皆さんがどういう生活をされているか、私は野党議員の仲間たちと聞き続けてきました。その実態を伺うにつけ、九三年、私自身もかかわったパート労働法制定時に、差別禁止を義務化せず、事業主に対して雇用管理の改善を図るために必要な措置を講ずる努力義務を課すものにとどめてしまったこと、その後も差別禁止ができなかったことにじくじたる思いを禁じられません。
非正規労働者に対する保護を欠いたまま行われた労働の規制緩和が格差拡大に寄与してきたことを、政府はどのように総括しているのでしょうか。総理の答弁を求めます。
さきに触れた正規雇用と非正規雇用の所得格差の拡大は、個人の努力だけでは克服できません。特に、現行の最低賃金は生活保護の水準を下回る場合もあり、例えば、フルタイムで朝九時から夕方六時まで、月曜日から金曜日まで毎日働いても月収は十万円から十二万円、労働者全体の平均給与の三割程度にしかなりません。これでは国民年金の保険料を払うのも困難です。事実、無年金の危険を抱える非正規雇用者がおよそ二百三十万人もいるという推定もあります。国民生活に大きな不安を投げ掛けている国民年金の空洞化は、こうした給与の格差拡大と無縁ではありません。
私たち民主党は、格差是正のために、通常の労働者とパート労働者の均等待遇、長時間労働の是正、中小企業への支援の充実を図るとともに、最低賃金を少なくともフルタイムで働けば十分に生活できるレベルまで引き上げる必要があると考えます。
この点について、政府提出の最低賃金法改正案では、地域別最低賃金の「労働者の生計費を考慮するに当たつては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するもの」となっていますが、生活保護に係る施策とは何を指し、最低賃金はそれをどの程度超える額に設定し、その結果として幾つの都道府県で何円程度最低賃金が上がるのか、総理大臣に明確な答弁を求めます。
今回の改正の目玉は、パート労働者に対する差別的取扱いの禁止にあるはずです。千二百万人に上るパート労働者の中には正社員と同じ仕事をしている人も多くいますが、パート社員であるというだけで労働条件に大きな格差があります。給与はもちろん、正社員に支給されるボーナスや家族手当等がパートには支払われなかったり、教育訓練の機会が乏しかったりと、処遇において不合理な差別的取扱いを受けています。さらには、食堂や更衣室の利用にも差別が設けられている場合もあります。
こうした現状に対して、民主党は、すべてのパート労働者を差別的取扱い禁止の対象とし、均等待遇を実現すべきことを明確に打ち出しています。均等待遇は今や世界の常識であり、その実現は一九九三年に初めてパート労働法を作ったときから積み残されてきた課題だったはずです。
ところが、政府案は差別的取扱いの対象を三つの要件を満たす正社員と同視すべき短時間労働者に限定してしまいました。正社員と職務の内容が同じで、転勤や配置転換等の人事管理条件が同じ、そして期間の定めのない労働契約を締結している労働者しか差別禁止の対象としていないのです。このようなパート労働者が本当にいるのでしょうか。いたとして一体どれくらいいるのでしょうか。衆議院の質疑では、差別禁止の対象となるパート労働者がどの程度いるのか、本当に存在するのか、ついに明確な答弁はありませんでした。改めて、正社員と同視すべきパートがどの程度いるのか、総理に伺います。
三要件に当てはまるパート労働者が本当にいたとして、では、当てはまらない労働者はどうなるのでしょうか。圧倒的多数を占めると思われるこの方たちについて、政府案のように均衡処遇の努力義務しかなければ、正社員と少しでも仕事が違ったり、期間の定めのある労働契約を締結したり、あるいは配置転換や転勤を予定しなければ、使用者は均衡処遇のために努力をしたと言いさえすれば差別を放置しても許されることになりかねません。
このパート労働法の改正は、再チャレンジ支援策の柱とも言われますが、格差拡大は仕方がない、その上でほんの一握りを救えばいいというのでは到底柱とはなり得ません。安倍政権の再チャレンジ支援の本質が見えたようなものです。
元々、パート労働の問題は、女性の貧困の問題という側面を強く持ってきました。一人で生計を支えようとしながら、子育てなどの事情や様々な就職差別によって正社員と同じようには働けない女性が大勢います。夫婦がともに働いている家庭でも、女性が育児や介護、家事について主要な役割を担っていることが一般的な現状です。こうした事情で、例えば転勤ができなければ差別禁止の対象外になってしまうのです。多くの女性たちが、この法案は差別拡大法案だと怒っています。
このようなこの法案がかえってパート労働者の格差を正当化し、拡大するおそれがあるという批判、女性のパート労働の実態にこたえていないという批判を総理はどのように認識しているのでしょうか。
また、具体的にパート労働者の労働条件の変更について、使用者が一方的に不利な変更を行うことをどのように防ぐのか、総理に答弁を求めます。
さて、非正規労働者の増加が働き方の選択肢が増えた結果だというならば、正社員への転換も当然選択肢として用意されなくてはなりません。それでなくても、チャレンジ支援という観点からは最も重視されるべき課題の一つです。
政府案では、正社員への転換を推進するために、正社員募集のパート労働者への周知、配置転換を希望する申出の機会の付与、正社員への転換試験制度の創設のどれかを実施することとしています。なぜ、どれかなのでしょうか。そのうちのどれかを実施するだけで、どの程度正社員への転換が増えるのでしょうか。総理に伺います。
民主党が主張するように、正社員募集の際には、現に雇用している同種の業務に従事するパート労働者で正社員への転換を希望する人に応募の機会を優先的に与えるとともに、他の応募者の就業の機会の確保についても配慮しつつ、できる限り優先的に雇い入れる努力義務を設けるべきであると考えますが、総理大臣の見解を伺います。
次に、パート労働者の厚生年金適用拡大について伺います。
政府は、パート労働者への年金適用も含む厚生年金法の改正案を提出しました。パート支援を再チャレンジの目玉に掲げる総理官邸が、時間を掛けて準備しようとした厚生労働省を押し切ったとも言われています。では、よほどの内容かといえば、新たに年金適用になるのはわずか十数万人だと言われます。現在適用になっていないおよそ九百万人のうちのわずか十数万人です。あれだけ賛否が議論された厚労省の案でさえ、労働時間が週二十時間以上のパート労働者およそ三百十万人を新たに対象としていました。これは、中身よりとにかく提出することを最優先した結果ではありませんか。残業代等を除く月給が九万八千円以上、勤務年数一年以上、従業員三百人以下の中小企業は除くなどの条件を満たすのは、時給が高い専門職のパートだけではありませんか。
適用拡大を当初案より大幅に限定したのはなぜか、また、将来的にはパート労働者の適用を広げていくのか、総理大臣の見解を伺います。
民主党は均等待遇を求めていますが、それは正社員の待遇の引下げによって実現されるのであってはなりません。衆議院では、与党の議員が民主党案を正社員保護法案だと批判しましたが、正社員の労働条件の水準を確保しつつパートの労働条件を引き上げて均衡を図ることのどこが間違っているのでしょうか。それとも、総理を始めとして与党は、均衡に向けて正社員の引き下げることもやむを得ないと考えているのでしょうか。
政府案には、例えば転居を伴う転勤や残業に応じられない正社員をパートに転換してしまうことを防ぐような規定はあるのでしょうか。転換された、あるいは転換されようとしている労働者が調停等を申し立てる権利は確保されているのでしょうか。総理の答弁を求めます。
衆議院で、与党議員はまた、民主党案が非現実的だと批判しました。しかし、現状を変えて、求められる姿に変えるのが政治の役割のはずです。例えば、我が国では職務給が確立していないために同一価値労働同一賃金原則の条件が満たされないというのであれば、だから何もしないというのではなくて、我が国の短時間労働者と通常労働者との均等な待遇の事例を積み上げ、労使代表による検討を重ね、社会的なコンセンサスを得ていけばよいではありませんか。
職務給制度の構築を目指した均等待遇の在り方を検討する仕組みをつくっていく考えはないのか、総理大臣に答弁を求めます。
最後に、安倍政権がどのような雇用社会を目指しているのか、お尋ねします。
この間、総理は、真に向き合うべき格差や雇用といった諸課題をおろそかにして、美しい国づくりや戦後レジームからの脱却のスローガンの下、国の関与を強めるだけの教育基本法改正、幅広い国民合意を放棄して憲法改正に道を付ける国民投票法の制定、理念がなくて財政負担だけは確実な米軍再編支援など、国民から懸け離れた独善的な実績づくりにしゃにむに進んできました。こんなことでは、現実はいよいよ取り返しの付かないところまで進んでしまいます。
終身雇用、年功序列、内部労働市場での雇用調整、企業による職業訓練といった日本型雇用モデルが崩れており、格差問題への取組の中で新たな雇用モデルの構築が求められています。新しい働き方のルールをつくるに当たっては、例えば育児や介護、就学、社会的活動等との調和を尊重すること、つまりワーク・ライフ・バランスの実現が重要です。そのことによってこそ労働も充実するという発想が大切だと考えます。だからこそ民主党は、どのような雇用形態であっても働き方に応じて公正に報いられる社会、しっかり働きさえすれば安心感を持って将来設計ができる社会を目指しているのです。
これに対し、安倍政権ではどのような雇用社会を目指しているのか、政府の雇用政策でワーク・ライフ・バランスが実現できるようになるのか、総理に答弁を求めます。
今回の十四年ぶりのパート労働法改正案、貧困状況の中で必死の頑張りを強いられてきた女性たちを始めとしたパートの皆さんへの差別を禁止して応援するのかと思ったら、対象を極めて限定し、しかも対象にならなかった労働者との格差をかえって広げてしまう。それどころか、正社員の労働条件をも引き下げる危険を持ったこの政府案に対して、極めて強い懸念を持っています。働いて生活できる、働いて自立できる、働いて将来の希望が持てる雇用社会に向け、すべてのパート労働者への均等待遇を実現しようではありませんか。
与党の皆さんにも何が大切なのかという原点に立ち戻った真摯な議論をお願いし、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕