池上岳彦の発言 (総務委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(池上岳彦君) 池上でございます。
本日は、三つの法案について参考人として意見を述べる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私は地方財政を研究しております。そして、地方分権についても研究しておりますので、その観点から今回の改正案について若干の意見を申し述べたいと思います。
まず、最初に確認すべきことですけれども、地方分権のためには地方税を充実させる、それによって地方の公共サービスを実施する財源を保障するということが必要だということでございます。今お話しになられた横尾市長も委員を務められている地方分権改革推進委員会の活動に基づいて国から地方公共団体への権限や事務の移譲が進むわけですけれども、それに応じて地方の経費も増大します。また、教育、保健、福祉、環境といった広い意味での対人社会サービスを担っているのはほとんど地方公共団体ですから、そこで国庫補助負担金の廃止、縮減を更に進めると同時に、その事務を地方公共団体が担うための地方税の拡充と、そのための税源移譲というのが必要であろうというふうに思っております。
そこで、具体的に申し上げたいのは、個人住民税と地方消費税の拡充という点でございます。平成十八年度税制改正において所得税から個人住民税所得割への約三兆円の税源移譲が実現しました。今後も、税源移譲を考えていきますと、私は、個人住民税所得割の標準税率を更に引き上げる、そういう意味での税源移譲も私は可能だと考えております。
そして、もう一つ有力なのが、よく話題になります地方消費税の問題でございます。消費というのは所得あるいは資産と比較しまして税源の偏在度が小さい、さらに税収も比較的安定的であるという点から地方税に適してはいると言えますので、消費税についても国税から地方税への税源移譲が必要であります。
それから、これは余り触れられていないことなんですが、最近話題になっていることとも非常に関連しますので、個別消費税の問題でございます。個別消費税の分野の中にも地方税として拡充すべきものはあると私は考えております。例えば、病気であるとか事故であるとか、あるいは環境に対する負荷といったものに結び付きやすい、例えば酒、たばこ、ガソリンといったものに地方税を課します。そうすれば、その消費を抑制すると同時に地方の社会サービスの財源の確保にも貢献することができます。また、そういったものの消費は地域間の偏在度は小さいということがございますので、税源移譲の対象としてふさわしいというふうに私は考えております。
それに関連して、現在大きな問題になっております道路特定財源の一般財源化、特にガソリン税等の問題ですけれども、私の意見は与野党いずれともやや異なっております。大きな論点、レジュメにも書いておきましたが、四つあります。
第一は、道路特定財源か一般財源かという問題でございます。現時点での燃料の消費量あるいは自動車の購入量とかそういったものは今後新たに道路を建設する必要性と直接結び付くものではないわけでございまして、したがって道路整備に使い道を限定した特定財源制度というのはやはり望ましくないので、一般財源に転換することが必要であろうというふうに考えております。
二点目は、本則税率か暫定税率かということでございますが、重要なのは本則か暫定かという問題ではなくて、暫定税率を廃止したとしても本則税率自体は引き上げることは可能ですから、一般財源にするのであれば、これは時限立法というふうにする必要はございませんので、本則税率に一本化すべきであるということになります。
三番目は、現在の税率が全体として適切かどうかという問題でございます。これはなかなか難しいかと思いますけれども、要するに、日本の税率を国際比較してみますと、課税額というのは先進国の中ではかなり低い方であるということは明らかでございまして、むしろ税負担は軽いというふうに言えるかと思います。現在よく言われますように、地球温暖化防止というものは重要な政策課題ですから、本則税率に一本化したとしても税率自体を引き下げるという必要は私はないというふうに考えております。
そして、最後は国税、地方税という選択でございます。ここが重要なんですけれども、先ほど述べましたとおり、ガソリンに地方税を課せばそれを社会サービスの財源確保に充てることも当然できるわけでございまして、しかもガソリンの消費というのは地域間の偏在度というのは比較的低いということが言えますし、逆に大都市部じゃない方が財源になるということもございますので、地方税としてむしろふさわしいというふうに私は考えております。
要するに、ガソリン税を始めとして道路特定財源とされてきた国税、あるいは先ほど片山参考人も言われたとおり、地方税として、道路目的税になっている分も含めてですけれども、すべて地方の一般財源すなわち地方普通税という形にすべきであるというふうに私は考えております。そうしますれば、地方の財源自体は減りませんので、それぞれの地方団体が自己決定によってそれを道路整備に使うんならばもちろんそれは自由ですし、他の目的に使用することも自由である、それも地方分権の道であろうというふうに言えるかと思います。
ただ、そのような改革を行おうとしますと、ガソリン税は製造者段階で課税されているというのがございますので、当面はそういう形を取りながら、地方譲与税のような形で、ただしガソリンの消費量に応じて各団体に配分せざるを得ないと思いますけれども、ただ将来は小売課税への転換ということもあり得るかなというふうに思っております。
それから、四番目の論点です。レジュメですと裏の方に参ります。団体間格差の是正方法についてでございます。
今回の法案では、地方公共団体間の財政力格差の是正についての改革が含まれております。地方税財政制度全体の中で団体間格差を是正すべきことは当然であります。ただ、問題は個々の提案が地方税財政の原則に照らして正当かどうかというところでございます。
一つは、法人事業税の一部を地方法人特別税に転換するという改革についてであります。
国民は、住民あるいは消費者という立場以外でも、例えば事業者という立場でも地方の公共サービスを受けておりますので、事業規模に応じた地方税を負担すべきであります。そういう観点から事業税というのが課されているわけですけれども、地方税の分割基準というのは課税標準となる経済力の分布に合致するものですから、法人事業税の場合、その分割基準というのは事業規模を示す指標に基づくべきであります。
今回の改正案のように、法人事業税を半分地方法人特別税という国税にしまして、それを人口半分、従業者数半分という形で配分するということになりますと、これは課税権に対応しない配分ということになりますので、これは自主財源ではなくなったということでございます。ただし、それは抜本的な税制改革までの暫定措置ということにされておりますけれども、ただ、私思いますに、地方税における配分基準とそれから財政力格差是正を含む財政調整制度の配分基準というのはやっぱり混同すべきではなくて、それを混同させるような前例をつくるというのは決して望ましいとは言えないだろうというふうに考えております。
むしろ、法人事業税における最大の課題というのは外形標準課税の拡大、特に事業規模を表すものとして最も適切と思われる付加価値割の比重を高めることであろうというふうに思いますし、それは税収の安定化とともに地域間の税収格差も縮小させるという効果を持っているかと思います。
もう一つは、いわゆる昨年来話題になりましたふるさとへの貢献というんですか、ふるさと納税というんですか、そういう趣旨を含んだ地方公共団体向けの寄附金控除の拡大についてであります。
確かに、国民は、本人若しくは家族の事情によって一生の間に何度も居住地を移動するという例が珍しくございません。そこで個人が所得を得ている時点で住民税を納めるだけではいわゆる生涯を通じた受益と負担のバランスというのは取れません。ただ、現在、居住地に納めている地方税というのは現時点の地方公共サービスを支える財源ですから、いわゆるふるさとに貢献するといっても、それは現在の居住地団体に対する納税義務を減少させるものではないというふうに私は考えております。
むしろ、受益と負担のバランスを考えるためには、過去に育った地域であるとか、あるいは老後に住む地域も含めて、全国的に例えば一定水準のサービスを受けることができる仕組みをつくって、そこに全員が貢献する、つまり納税するという仕組みが実は重要であります。それは何かというと、これは要するに財政調整制度としての地方交付税でございまして、それがしっかりしていれば、それ自体がふるさとへの貢献ということになるんだと思います。そちらが重要でございます。
今回の改正案は、寄附の対象をふるさとのみならず地方公共団体全体に広げて、そして税額控除を行おうとするものですけれども、根本的な問題は、地方税である個人住民税の寄附金控除を国がどこまでコントロールすることが適当であるかということかと思います。
居住地以外の地方公共団体に対する寄附金を居住地の税額から控除することは、要するに自主財源の一部が団体間の水平的な補助金になってしまうと。それを国が強制するということでございますから、これは地方分権の推進には合わないというふうに思います。もし国が自らの、つまり国の政策としてふるさとなどへの貢献を促進したいのだというのであれば、それは所得税における寄附金控除に範囲を限定すればいいことでございまして、逆に個々の地方公共団体が、いや、そういう制度をつくりたいんだというんであれば、それは課税自主権の問題だということになりますので、全国的な制度として強制する必要はないだろうというふうに思います。
したがって、根本的な問題、つまり抜本的な改革としては、やはり地方交付税を改善し充実させること、こういう問題を避けて通ることはできないというふうに思います。特に、今、横尾参考人からもお話がありましたように、地方六団体が提案している地方共有税への転換、つまり定期的に法定率というのを変更する、それから対象となる税収は国の一般会計を通さないで特別会計に直接繰り入れる、それから特例加算とかあるいは特別会計借入れといったものはもうやらない、それから、これが大事なんですけれども、国と地方公共団体の代表が参加する地方行財政会議、そこで制度改革を検討して、その提案については国はその結果を尊重する、そういった改革が必要であると思います。
それから、地方共有税の原資につきましては、現在、地方交付税の原資に国税五税がなっているわけでございますけれども、その国税五税のうち消費税、要するに比較的偏在度が低いと思われる消費税を一部外して、その分を地方消費税に移譲すると。逆に、地方税でありますけれども、法人住民税がございます。法人住民税の一部を、それを地方共有税の原資の方に移すといった、いわゆる一種の税源交換、要するに財政調整制度の中での原資の組替えということになりますが、そういうものも必要になってくるのではないかというふうに思います。
という形で、私の意見は以上のとおりでございます。
ありがとうございました。