持田信樹の発言 (総務委員会)

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○参考人(持田信樹君) 東京大学の持田と申します。
 まず初めに、このような意見陳述の機会を与えていただきまして、大変感謝いたします。
 時間が限られておりますので、お手元に配付されていると思いますが、参考人意見のレジュメに沿って意見を述べていきたいと思います。私の意見は、そのレジュメにある三つの法案についての意見ということになります。
 まず第一に、地方法人特別税等についてであります。
 私は、この問題を理解するためには日本の地方税の特徴というものをつかむ必要があると考えております。それは配付資料の一に図で示されていると思いますけれども、地方における法人の依存度が国際的に見て極めて高いということであります。
 そのことをどう見るかということなんですけれども、私は、税源が偏在するし、そしてまた税収というものが景気変動に振られやすい、したがって余りこれはよくないというふうに考えます。したがって、地方財政を安定して、安心のできる公共サービスを住民の皆さんに提供していくためには何が必要か。それを考えると、普遍的でそして景気変動に振られにくい、そういう地方消費税のウエートを長期的に引き上げていくということが抜本的な要諦である、このように考えております。この点については、参考資料の一を時間があれば見ていただければと思います。
 そこで、今回の特別税なんですけれども、私の理解が合っているかどうか分かりませんが、こういうことではないかと思います。それは都市と地方の格差問題、これを根底として暫定的な苦渋の選択であると、このように私自身は理解しております。
 といいますのは、一つは、交付税の総額というものがここ数年枠をはめられておりまして、大都市部の税収が上がっていきますと、その跳ね返りとして留保財源が拡大していきまして、交付税の総額の中で基準財政需要が占める割合が全く伸びないという状態が続いている、こういう制約の下で選択されたということ。それからもう一つは、本来であれば、マスグレイブも言っていますように、偏在度の高い税というのは国に持っていって偏在性の少ない税を地方に持っていく、こういう税源交換というものが国家の要諦になるわけでありますけれども、残念ながらこの税源交換に関する政府内部での合意というものが現在は形成途上である。このような制約の中では、今回の特別税というものを私はセカンドベストなものとして評価したいと思います。
 次に、この税の本質は何かでありますけれども、私は経済学者ですので、立法論はおきまして、この税の本質というのは、我が国で最初の水平的調整を加味した実質的な地方共同税であると、このように私は考えます。
 地方に税源を移譲しますと地域格差が拡大します。これは三位一体改革の重要な教訓であります。今回の特別税というのは今後の税源移譲の在り方に一石を投じるものではないかと、このように考えております。そういう留保条件を付けまして、暫定的な措置としてこの特別税というものについて私は理解できるというふうに解釈しております。しかし、地方分権の本筋からいえば、これはあくまでも暫定措置でありまして、自分たちの納めた税金が自分の地域に戻ってくるというのが地方分権の本来の在り方だろうと思います。
 そういう意味で、私は抜本的な税制改革とこの暫定特別地方税というものをセットにして議論をしていただきたいと思います。その抜本税制改革のときには、生産基準を通じまして最終消費地に税収を帰属させているという現在の地方消費税を大幅に拡充をすべきである、このように考えております。そのことは、今回の地方法人特別税の総額が消費税一%相当にほぼ等しいということ、また、この特別譲与税の配分基準が地方消費税のその他の配分基準と一致しているということから考えて決して不可能なことではないかと思います。
 なお、地方消費税は、カナダのハーモナイズドセールスタックス、協調売上税といいますけれども、この協調売上税と並んで私は世界的に見ても遜色のない大変精緻なシステムであると思います。この地方消費税の抜本改革というものを射程に入れて今回の暫定措置というものを取りあえず成立させるということについて私は理解できると考えております。
 二番目は、地方税法等の一部改正についてであります。
 これは論点は二つで、一つはふるさと納税であります。
 私は、実は、個人住民税検討委員会というものの、平成十六年と十七年ですが、座長をやっておりました。長時間にわたってこの問題については議論をしてきたわけですけれども、その趣旨というのは、要するに、現行制度であれば住所地のある自治体に全部住民税が帰属するということでいいのか、それを別のところに持っていけないかということが一つです。それからもう一つは、寄附金控除によって公益活動を促進できないか、こういう二つのベクトルが混じったところにこのふるさと納税というものが出てきたというふうに理解しております。
 問題はその方法論で、私は原理的には三つ方法があると考えております。一つは、税の一部を自動的に住所地以外の自治体に分割する方法です。それから第二は、納税者の意思で任意に住所地以外の自治体に納付する。そして第三は、寄附控除を拡大する、この三つです。
 財政学者として私の意見は、第一と第二の方法というのは、住民税の税としての性格、負担分任という性格を崩しますので、賢い選択ではないと思います。したがって、寄附控除というのが三つの方法論の中では最もリーズナブルなものである、このように理解しております。
 また、今回の制度を見ますと、実は五千円を超えた寄附金のうち、一〇%については地方公共団体以外のNPOに寄附ができるということが規定されておりますし、そして、それはしかも国の法律で決めるのではなくて地方の条例で決定するという文言が入っております。それからもう一つは、残りの九〇%については所得税の限界税率に応じて住民税の控除が低減する仕組みをつくっておりまして、これは結局どこの自治体でやってもお互いさまであるということで地域格差が発生しないような仕組みになっているということも注意すべきではないかと思います。
 そして、地方税法の一部改正についての暫定措置の問題ですね、軽油引取税と自動車取得税、この問題について私の意見を述べたいと思います。
 まず論点の一つですけれども、これは特定財源か否かということであります。私は、この問題を論ずる場合に重要なポイントというのは、道路特定財源というのはよく見ると二種類あるということではないかと思います。
 一つは、税法上、道路整備に使用することが初めから決められている税目です。これは、地方税の分野にある軽油引取税、そして自動車取得税である、言うまでもありません。こうした税目というのは、税の創設趣旨からして道路整備を目的にしております。したがって、一般財源化するという議論には余りなじまない税である。もし税収に余剰が生じているのであれば、税率の引下げや、場合によっては税の廃止を議論すべきだと思います。
 現状を見ますと、国税の方、揮発油税、石油ガス税の方を見ますとオーバーフローが発生している状態のように私は見受けておりますが、地方の方を見てみますと道路関係費に占めるこの税は二割にすぎない。したがいまして、現状では地方の道路整備は大幅に不足しているという認識に私は立っております。したがって、この自動車取得税及び軽油引取税について税率を引き下げる、あるいは廃止するというのは余り賢明な選択ではないと思います。
 いま一つのタイプというのは、本来一般税でありますけれども、特別法によって使途を道路整備としている税目であります。これは、御存じのように、国税の揮発油税と石油ガス税がこれに該当します。自動車重量税は根拠法がありませんので、当時の経緯からそうなっている。これはそもそも税の使途を特定しない普通税でありますので、道路特定財源の役割が仮に終わったとすれば一般財源化すべきという意見は私は傾聴に値すると思います。
 したがって、結論からいいますと、本来一般税であり、特措法、特別法で使途を制限している税については、四月十一日の政府・与党の決定、「取扱いについて」に沿って速やかに政治の世界で協議していただきたいと思います。
 もう一つの問題は、暫定税率のことであります。
 立法論からいえば、暫定税率と言いながら長く続けてきたというのはこそくでありますし、筋論からいってこれはおかしいというのはそのとおりだと思います。しかし、慢性的な地方の財源不足の中で道路財源というのは地方自治体の予算の一部に慣行的に埋め込まれております。それをどう見るかということが重要なポイントではないかと私は思います。
 六十年前に現在の地方財政制度の基礎を築きましたシャウプ勧告、これの付録のAを見ますと次のようなことが書かれております。問題は、減税して住民に対する地方団体のサービスを少なくするのか、それとも増税して多くのサービスをなすか、いずれが望ましいかということであります。シャウプ勧告では、日本の国民の生活と安寧の水準を高めるのに最も有望な方法の一つは、集合的消費、つまり地方公共団体の公共サービスを増加させることではないか。個人の消費支出というのはぜいたくな消費にその限りで使われてしまうけれども、地方団体に与えるのであれば日本の最大の資源、つまり国民に対する直接投資になるんだと。その投資というのは改善された教育であるとかあるいはより良い健康、そしてより大いなる保証と安全及び拡張された機会の形を取るであろうと、このように書いてあります。したがって、私どももこの六十年前のシャウプ勧告の精神に照らして、後世の歴史の判定に堪えるような判断をしていただきたいと思います。
 最後は、地方交付税法等の一部改正についてであります。
 時間がなくなりましたので、結論だけ申しますと、今の地方財政のこの惨たんたる状況を救うにはどうしたらいいかといいますと、私は、交付税総額を確保するということと、それから今回の特別法人税を創設して暫定的に偏在を是正する、それによって疲弊した地方の活力を回復するということが絶対に必要だと思います。そのためには、この地域の活性化対策、地域再生対策費四千億円、これを地財計画に盛り込んでいる今回の法案というのは暫定的なものとして理解できる、これをやらなければ本年度の地方財政は大変な混乱に陥るであろうと、このように思います。
 私の意見は以上であります。

発言情報

speech_id: 116914601X01120080422_010

発言者: 持田信樹

speaker_id: 9045

日付: 2008-04-22

院: 参議院

会議名: 総務委員会