斉藤鉄夫の発言 (環境委員会)

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○斉藤国務大臣 環境大臣の斉藤鉄夫でございます。第百七十一回国会における衆議院環境委員会の御審議に先立ち、環境行政に対する私の考えを申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いしたいと存じます。
 御存じのとおり、昨年来、世界の経済状況は非常に悪化しています。我が国の経済、雇用に関しても歴史的な厳しい状況に置かれており、需要と雇用の確保が現在の最大の課題の一つとなっていることは改めて申し上げることもないと思います。
 需要と雇用の確保を考える際には、足元の雇用の確保はもちろんのことですが、将来を考え、我が国として安定して国内で需要を見込むことができる成長産業分野を育成することが大切です。それと同時に、そのような成長産業分野の発展を通じて、アジアを中心に世界の安定した経済成長に貢献していくことも求められます。
 一方で、IPCCが地球温暖化は疑う余地がないと断定しているように、地球温暖化対策については待ったなしの状況にあります。既に、地球温暖化の影響ではないかと疑われる自然現象があらわれてきています。今後、遠くない将来において、世界各地で水資源や食料生産などに深刻な影響が生じると予想され、生態系への影響や異常気象による災害の増加も指摘されています。
 また、激しい経済情勢の変動が国内的、国際的な循環資源を含む資源の需給に大きな影響を与えており、将来に向けて安定的に資源を利用できる循環型社会の構築が不可欠になっています。
 さらに、生物多様性豊かで世界的にも高く評価される日本の自然についても、人間活動の負荷だけでなく、経済構造の変化に伴って適度な管理を受けなくなったことや、グローバル化の進展に伴う外来種の移入などにより、危機的な状況にあります。
 このような環境と経済の両面における危機に対応するため、アメリカやドイツ、さらには中国など世界各国において、環境保全の取り組みによって経済成長が制約されるという見方を超えて、環境対策を経済成長のエンジンにする取り組みに着手しようとしています。
 昨年九月には麻生総理大臣が所信表明演説で「我が国が強みを持つ環境・エネルギー技術には新たな需要と雇用を生む力がある」と述べているように、我が国では、いち早く、環境保全を経済成長への制約としてとらえるのではなく、環境と経済をともに向上、発展させようという考え方を示してきています。例えば、三年前に策定した第三次環境基本計画は、副題を「環境から拓く 新たなゆたかさへの道」とし、今後の環境政策の展開の方向の一つ目として、環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的向上を掲げています。
 これを受けて、翌年閣議決定した二十一世紀環境立国戦略では、「車の両輪として進める環境保全と経済成長・地域活性化」や「アジア、そして世界とともに発展する日本」という方向性を打ち出しています。そして、昨年七月に低炭素社会づくり行動計画を閣議決定して、二〇二〇年を目途にハイブリッド自動車や電気自動車などの次世代自動車を新車販売の二台のうち一台にするといった目標の実現に向けて取り組んでいます。
 このような状況を踏まえ、今般、私は緑の経済と社会の変革を取りまとめることといたしました。これは、今述べたような環境と経済をともに向上、発展させるための日本の先進的な取り組みをさらに発展させていくことが、先ほど述べた環境と経済の両面における危機に対応し、日本の社会が持続的に発展するために必要不可欠であると考えたからです。
 そして、この中で、低炭素社会づくりと、水循環などを含む広い意味での循環型社会づくり、自然共生社会づくりを一体的に進め、それをアジアを初め世界に広げていくための政策を示したいと思います。この実現のためには、エネルギー問題はもちろん、都市や交通の問題や農林水産業の問題など、政府全体の取り組みを含めて考えていく必要があります。
 この緑の経済と社会の変革について、国民の皆様から多数の御意見をいただくとともに、さまざまな分野の有識者の方々から直接お話を伺っているところです。これらの御意見を踏まえつつ、三月中を目途に取りまとめを行いたいと考えています。
 太陽光発電の導入促進や次世代自動車の普及など、我が国が世界最高水準の技術を持つ環境分野への戦略的な投資を経済成長や雇用創出につなげていくべく、関係省庁ともよく連携しながら、環境先進国としてふさわしい大胆な政策を打ち出していきたいと考えています。
 さて、先ほども申し上げましたとおり、地球温暖化問題については待ったなしで対応していかなければならない状況にあります。
 特にことしは、次期枠組みを決めるCOP15の開催される大変重要な年になります。この議論に向けて、我が国でも現在、中期目標づくりの検討を進めています。麻生総理大臣は、先日、ダボス会議において、六月までに日本の中期目標を発表する考えを示されました。私は、この中期目標を定める際には、地球や人類を救う観点からIPCC報告など科学の要請にこたえる必要があると考えています。
 また、中期目標は、すべての主要経済国が参加する実効的な枠組みづくりに貢献するものでなければなりません。特に、中国やインドなど経済発展を続けている国々の積極的な行動を引き出すことが必要です。こうした要件を満たすためには、日本を含めた先進国が野心的な中期目標を示すことが求められます。
 そして、この中期目標や世界全体の排出量のピークアウトに続いて、世界全体として二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量を少なくとも半減することを目指す必要があります。これを達成するため、我が国としては六〇%ないし八〇%を削減する目標を掲げています。このような長期目標を達成するためには、化石エネルギーへの依存を断ち切り、低炭素社会へ移行していく必要があります。化石エネルギーはいずれ枯渇します。低炭素社会の実現は人類の文明史論的にも正しい方向だと思います。
 低炭素社会への第一歩として、昨秋、排出量取引の国内統合市場の試行的実施を始めました。多くの業種、企業の参加を得て、本格導入の条件、制度設計上の課題を明らかにし、日本の実情に合った実効性ある仕組みの構築を進めたいと考えています。また、自動車や住宅に関する省エネ税制を大幅に拡充することになりました。今後も、環境税導入に向けた検討を含め、税制のグリーン化に向けて確実に歩みを進めます。さらに、カーボンオフセットの取り組みの普及促進や環境と経済の相互関係に関する研究の推進などを進めます。
 また、環境技術の研究開発力強化や環境配慮製品への信頼性を高めるための取り組み、環境に配慮した契約の普及、環境金融に対する支援などを進めます。消費者にも経済的インセンティブや情報提供によって低炭素型製品の選択等の環境配慮を促すため、エコ・アクション・ポイント事業への事業者や国民の一層の参加拡大や温室効果ガス排出量の見える化を進めます。加えて、持続可能な開発のための教育への取り組みも重要であり、産学官民連携による環境人材育成コンソーシアムの設立などを進めます。
 さらに、ライフスタイルや都市、交通のあり方など社会の根本を変えるため、昨年改正された地球温暖化対策法に基づく地方公共団体実行計画の策定を促すとともに、再生可能エネルギーなどの地域資源を活用したにぎわいと活力にあふれる低炭素のまちづくり、地域づくりを支援します。
 昨年から京都議定書第一約束期間に入りました。我が国としては、確実に六%削減の約束を果たすために、あらゆる施策、対策を強化しなければなりません。
 まず、太陽光発電世界一奪還を目指した取り組みや、風力発電、バイオマス利活用、小水力発電、次世代自動車などの技術の開発と普及を進めます。さらに、カーボンオフセットの仕組みを活用し、林野庁などと協力しつつ、吸収源対策の強化など地球温暖化対策と森林保全対策等を一体的に推進します。また、地球温暖化対策法の改正に伴う、排出抑制等指針に基づく温室効果ガス排出抑制のための取り組みや、新たな温室効果ガスの算定・報告・公表制度を意識した事業者単位やフランチャイズチェーン単位の取り組みを促進することによって、業務分野を初めとした事業者による温室効果ガス排出抑制にも努めていきます。
 来年、二〇一〇年は国連の国際生物多様性年に当たりますが、この記念すべき年に、愛知県名古屋市において生物多様性条約第十回締約国会議、いわゆるCOP10が開催されます。我が国は主催国として会議を円滑に開催するだけでなく、議長国として日本の取り組みや経験をさまざまな重要議題の議論に反映させ、実効性のある決定が行われるよう国際的なリーダーシップを発揮します。
 そのため、我が国の里地里山を初め、世界各国における二次的自然資源の管理、利用の事例をもとに自然共生社会づくりのモデルを構築し、SATOYAMAイニシアチブとして世界に提案、発信します。
 国内においては、昨年成立した生物多様性基本法や第三次生物多様性国家戦略などに基づき、COP10を契機として生物多様性に配慮したライフスタイルが広く国民に浸透するよう、さまざまな主体とともに生物多様性の保全と持続可能な利用を推進します。さらに、アジア各国とともに、各地の生物多様性に対する国際的な取り組みを積極的に進めます。
 昨秋、我が国の空にトキが二十七年ぶりに羽ばたきました。野生生物との共存等のための技術開発や科学的知見の充実を図りつつ、我が国の豊かな自然を守っていきます。また、国立公園、自然環境保全地域等のすぐれた自然環境を有する地域の保全対策の強化等を図るため、自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところです。さらに、希少な動植物種の保存や野鳥における鳥インフルエンザの対策を初めとして、動植物の適切な保護管理や動物愛護管理の強化に努めます。
 資源を無駄なく生かす循環型社会への転換に向けて、地方公共団体とも協力しつつ、国民や産業界などの理解と協力を得ながら、リデュース、リユースを促進するとともに、廃棄物エネルギーやバイオマス系循環資源の効率的な利用など、低炭素社会と統合した循環型社会づくりを進めていきます。また、都市鉱山とも言われる、携帯電話などからのレアメタルの回収など、より高次なレベルでのリサイクルにも取り組んでまいります。
 また、地域社会から広域圏、全国、さらにアジア全体まで含め、さまざまな段階で適切な循環が実現される地域循環圏づくりを進めます。
 循環型社会づくりは、国土の汚染を防止する観点からも進めていく必要があります。廃棄物の適正処理に万全を期すとともに、不法投棄の撲滅や廃棄物の不法な輸出入の防止に努めます。
 国民が安心して暮らせる安全で豊かな環境を保全することは、政府としての基本的な務めです。
 二〇二〇年までに化学物質の生産、使用に伴う人の健康及び環境への影響を最小化させるという国際目標の達成を目指します。そのため、国と事業者の適切な役割分担のもとに、既存化学物質の安全性に関する点検、評価のさらなる推進や新たなリスクへの対応等、化学物質管理を強化します。
 特に、小児の環境保健対策は、少子高齢社会の中、未来を担う小児の健康を守る非常に重要な施策であり、疫学調査の実施、国際的な連携等を念頭に置いた総合的な政策展開を図るべく、全力で取り組んでまいります。
 また、各地域の特性も踏まえつつ、良好な大気環境、水環境、土壌環境の確保に努めます。
 まずは、汚染土壌の適切かつ適正な処理を図るため、土壌の汚染の状況の把握のための制度の拡充、規制対象区域の分類等による講ずべき措置の内容の明確化、汚染土壌の適正処理の確保に関する規定の新設等の措置を講ずるべく、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案を提出したところです。
 大気環境については、大都市圏など環境基準が未達成の地域における大気環境の改善を進めるとともに、微小粒子状物質に関する課題に取り組みます。水環境については、湖沼や閉鎖性海域など環境基準達成率の低い水域の水質改善や、クールシティーづくりと連携した皇居外苑濠などの身近な水辺の環境保全、多様な化学物質や気候変動による影響等の新たな課題に対応します。また、効率的な汚水処理施設である浄化槽の一層の普及を進めるため、設置整備に対する支援や情報発信の取り組みの充実を図ります。特に、防災拠点における設置や先進的・省エネルギー型浄化槽の整備などに力を入れます。さらに、漂流・漂着ごみ対策を進めます。
 公害健康被害対策、石綿健康被害対策や毒ガス弾等による被害の未然防止対策を着実に進めます。特に水俣病問題については、被害を受けられた方々の速やかな救済を進める必要があります。水俣病被害者の早期救済を図るための法案が既に国会に提出されていると承知しており、御審議の結果を踏まえ、水俣病被害者の救済に向けた取り組みを迅速に進めます。
 最後に、クールアースパートナーシップを初めとするクールアース推進構想や神戸イニシアチブ、さらにはクリーンアジア・イニシアチブ等、中国を初めとするアジア諸国などとの連携や協力を具体化していきます。その一環として、途上国に対して、環境汚染対策と温暖化対策とを相乗的、一体的に行うコベネフィット対策による協力を進めます。また、アジアでの循環型社会構築に向け、アジア・スリーR推進フォーラムを発足させ、途上国支援や連携を進めます。また、アジア地域を中心に、技術、規制体系、人材をパッケージにして普及、展開することにより、途上国の環境問題を解決へと導きます。
 以上、当面の取り組みの一端を申し上げました。委員各位におかれましては、環境行政の一層の推進のため、今後とも御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 斉藤鉄夫

speaker_id: 16806

日付: 2009-03-17

院: 衆議院

会議名: 環境委員会