沖藤典子の発言 (少子高齢化・共生社会に関する調査会)

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○参考人(沖藤典子君) 沖藤典子でございます。高齢社会をよくする女性の会副理事長、ノンフィクション作家をいたしております。
 本日は、発言の機会を与えていただきましたことを大変有り難く存じております。
 添付させていただきました資料は二種類ございまして、高齢女性の就労についての調査研究、これが二〇〇四年度の研究でございます、それともう一つ、本年三月二十九日に福島みずほ大臣に提出いたしました男女共同参画社会基本計画改定に向けた要望書、この二点でございます。こうした活動にのっとりまして、日ごろ、当会の活動及び私自身の活動の中から得ましたお話をさせていただきます。
 レジュメを用意いたしました。両側の参考人はパワーポイントを使っておりますが、私は口パワーポイントというか、これはある面では後にお話しする情報格差の一つの典型的な例ではないかと思ったりもいたしますが、なかなか機械になじめませんで、専ら紙資料でございます。
 まず初めに、長期的視点から、高齢期女性の貧困の根絶といいますのは、やはり高齢期の女性の貧しさというのは、人生百年の計がなかなか成り立たないところで生きざるを得なかった女性たちが多いという現実の反映であると思います。
 人生百年の計というのはまさに国家百年の計に通じるものでございまして、この「はじめに」のところで雇用、税制、年金、保育・家庭生活維持支援、介護休業制度の拡充、男性や経営者・管理職の意識変革、女性自身の意識変革等々を挙げましたけれども、こうした点について女性が本当に若いうちから様々な教育なり情報なりを得て人生を支援されて生きていく、そのことによって貧しい高齢者が根絶されていくのではないかと考えております。そういう長期的視点から、まず高齢期の女性の貧困を考える必要があると思います。
 次に、高齢女性に配慮した安心、安全なまちづくりといたしまして、本日のテーマでございますが、二点に分けて問題点を整理してまいりました。
 一つは、高齢女性の貧しさとそれによる諸問題、女性単身世帯五十五から七十四歳の年収の低さでございます。
 これは、平成二十年、内閣府男女共同参画局が行いました高齢女性の自立した生活に関する調査の一部でございます。年収が百二十万円未満は、男性一七・三%に対しまして、女性は二三・七%に達しております。四人に一人は年収が低い。逆に、三百万円以上の男性は二九・三%に対して、女性はわずか一三・九%にすぎません。このように、年収の低さというものが高齢女性の大きな特色だと思います。
 そして、こうした年収の低さを背景といたしまして、高齢女性は就労希望が多いという事実、このことは当会の、先ほど申し上げました高齢女性の就労についての調査研究に表れていることでございます。特に、六十代、七十代女性に対して様々な働きの場が必要なんですが、就労動機の第一位は経済的理由です。第二位は自分の技能、能力を生かすため、第三位が社会参加して人間関係を広げるということでございまして、高齢女性の就労希望をどのような形でかなえていくのかということが大きな問題になろうかと思います。
 当会のこの調査は、実はサンプル数も少なく会員に限定した調査でございますので、代表性という点ではいささか難があるわけでございますが、現代の高齢女性のある種の側面を表すと思いますので、資料の五ページをお開きいただけますでしょうか。ここの上の表に今どういう仕事をしているかということがありまして、保健・福祉・介護の専門職、医療・看護含むというところに高齢女性の働く場が多いということ、このことを一点ここで押さえておきたいと思います。
 次に、高齢女性の貯蓄格差でございますが、世帯の平均貯蓄額は二千四百八十一万円、総務省の家計調査、平成十九年でございますが、実は一千万円以下が三五%あるということです。これは、よく高齢期の貯蓄格差として言われていることでございますが、恐らく高齢になるにつれて、特に女性は貯蓄額が低下するのは当然だろうと思われます。
 例えば、私が取材した例で申し上げますと、父親が入院して、また介護で貯金を使ってしまったと。残り、母親をどうするかと。娘は働いていて、母親は日中独居。ここから介護保険の問題も始まってくるんですけれども、介護保険が支給限度額をオーバーしてしまって、自費負担が増えて払い切れないと。彼女は仕事をしなければ母親の介護費用が生み出せない。しかしながら、日中だれが母親の世話をするのか。自費負担と言われても、父親でお金を使い果たしてしまったので母親の分はないという、非常に切実な事例もございます。
 そういうわけで、世帯に貯蓄があるからといって高齢女性が安心とは言えない。父親がどのぐらい金を使い果たすのか果たさないのかということで、非常に不安定な老後というものが映し出されていると思います。
 今の話に引き続きまして、介護保険における自費負担の増加ということが非常に今大きな問題として高齢女性たちに打撃を与えていると思います。
 特に訪問介護の区分支給限度額オーバー、それによる自費負担が今六万円、七万円という方が増えております。そして、通所介護を利用しなさいと言われるわけなんですけれども、人によっては通所介護が合わないという人もいるわけです。そういう方々はホームヘルパーを利用するのですけれども、利用に限界があるという中で途方に暮れている家族が多いということを申し上げたいと思います。
 そしてまた、認定がありながら介護保険を利用していない方が八十万人ほどおります。この方々の利用していない理由というのは調査されていないように思います。多分、この費用負担の問題や自分に適したサービスが利用できないということへの疑問もあるのではないかと思います。
 そしてまた、特に認知症高齢者グループホームでは低所得者対策というのがございませんので、金持ちの人は入れるけれども低所得の人は入れないということがありまして、ここでは補足給付の増額と認定区分の問題と給付額の再検討が必要だと思います。
 さらに、レジュメの二枚目に参りますが、介護役割による病と貧困の悪循環が高齢女性に起こっております。
 皆様御存じのように、老老介護は約三五%が七十歳以上でございます。そういう中において、先ほどから言っております同居家族がいる場合の生活援助の制限というのは、高齢女性にとってはもう共倒れの危険性を非常に大きくはらんでいるものでございます。
 最近、二〇〇九年の十二月二十五日でございますが、老健局の振興課の課長の公印付きで通知が出されまして、同居家族がいる場合の生活援助の制限を、老老介護の場合、日中独居の場合、家族が虚弱な場合について一律機械的に判断しないようにという通知が出されましたけれども、これは全保険者に徹底しているかどうか、かなり疑問のあるところでございます。私としては、運営基準にしっかり入れていただきたいと願っている部分でございます。
 このように、共倒れの可能性を持ちながら高齢女性が高齢の夫の介護をしている。そういう方々が結局自分の病を見逃してしまっている。私の知人にも乳がんの発見を遅らせてしまって入院しているという人がおりますが、病と貧困が悪循環することをやはり介護保険で断ち切っていくようにしなければならないと考えております。
 と同時に、高齢女性に広がっている格差は、健康格差として、特に女性に、介護になる要因として関節疾患とか転倒、骨折等、女性特有の疾患がございますので、そういうところでの健康支援というのが非常に重要だと思います。
 さらに、このことは外出格差にもつながっておりまして、移動手段がないために今買物難民になっている女性たち。タクシーを使えればすぐ行けるところでも、自分の足で歩いていくのには非常に困難が伴う、そういう女性が非常に多いと思います。また、運転免許の取得も、これは高齢になると運転免許は使えなくなってまいりますけれども、やはり女性の運転免許取得率が低いということも関係していると思います。そういうことで外出格差が起こっております。
 それから、情報格差も、私のような者もおりますので、これが広がっております。よく市町村等々で公募委員等を募集しているんですが、そういう場合も、相手が使えなければ情報も入ってこないし応募することもできないというようなことがありまして、高齢女性に広がる格差として、経済的な要因のほかに健康格差、外出格差、情報格差があると思います。
 さらに、介護問題からコミュニティーを考えてみますと、高齢期において何が必要かといいますと、私は、清潔な生活環境と適切な栄養を提供すると。介護保険では軽度者をどうするかということが様々議論されておりますけれども、私は生活援助は非常に重要だと思っております。特に、食事サービス、体の骨格をつくっていく食事サービスを、配食型であれ会食型であれ、きちんと守っていくということがこれからのコミュニティーとして非常に大事なものだと思っております。
 そして、コミュニティー資源としての介護周辺人材の育成。先ほど高齢女性の就労の実態で見ましたように、六十代以上の女性が介護関係で働いている場合というのが非常に多いわけです。そういう方々を今後どのような形で活用していくのかということは、大きなこれからのコミュニティーを考えるときのポイントだと思います。
 特に、見守りとか話し相手、ごみ出し、町内会の催しの参加、医療の訪問マッサージとか車いすで行ける観光、緊急事態発生時の対応など、こういうことがコミュニティーの中でどのぐらいやり通せるかということで高齢者の生活の質というものが決まってくると思います。
 ところが、現在の介護保険は、大規模事業所が加算を取って各地に支店を出すという形で、NPOとか小規模事業所が閉鎖に追いやられております。そういうところで働いていたのが高齢女性たちでございますので、事業所が閉鎖されると収入がなくなり、そこでまた貧しさに追い込まれていくということでございます。
 ですから、このスケールメリット主義の政策というのはコミュニティーを崩壊させると思います。そして、その一方ではボランタリーな組織、ボランティアはいないかと、軽度者はボランティアで守ったらどうかという意見があるというのは私は非常に矛盾だと感じております。
 また、次に申し上げたいことは、都市計画の中核として介護施設や高齢者住宅などを置いていただきたいと思います。昔は町の中心は小学校だと言われておりました。今は介護施設であってもらいたいというのが大きな願いでございます。しかも、その介護施設にも耳の不自由な方、目の不自由な方という、そういう共生型の施設というのもあっていいのではないかと思います。
 たまたま私は相模原市に住んでおりますが、その市でこういう共生型のユニットケアの特養が最近オープンいたしまして、そういう様々な方々が住み合う。しかも、そこには保育所も併設されておりまして、今のところは職員だけの保育所ですが、将来的には地域に開放した保育所にしていきたいということを言っておりまして、介護施設が今や町の中心的な役割を担うものとして多様な人たちが集まる場所になっているということでございまして、今後ますます都市計画と介護施設の関係は深まっていくであろうと思います。
 そのことはまた、特に孤立死とか無縁死とかいう現在の状況、様々言われている不幸な事態を予防する大きなかぎになるのではないかと思います。
 よく言われる言葉ですが、老いたる者と幼い者が共生する、老いたる者と若者が共生する、障害のある人と私たちとが共生する、またさらに、公・民の大規模集合住宅には地域密着型施設とか保育所、共働き家庭などとの共生ができるようにというように願っております。
 特に、これから共働き家庭とのことを考えますと、例えば配食サービスとか会食型の食事サービスを高齢者だけではなくて共働き家庭なども利用できないか、そういう仕組みがつくれないかということを強く願っているものでございます。
 またさらに、大西参考人の方から災害の問題が出ましたけれども、災害弱者としての高齢女性というのがありまして、また、高齢女性が災害のときに抱える問題は、排せつの問題、衣服の問題、暖房の問題、健康管理等々非常に大きなものがあると思いますし、それと同時に、一つ小さなエピソードとして、高齢社会をよくする女性の会が阪神大震災のときに行った援助といたしまして、化粧品を化粧品会社から供託を受けましてお届けいたしまして、大変女性たちに喜ばれました。そういう女性ならではの心遣いというものも大切だと思います。
 あと、今非常に高齢女性の中で話題になっておりますのが保証人制度です。だんだん係累が少なくなっていく中でだれに保証人を頼んだらいいんだろうか、あるいは、だれにお金を預けたらいいんだろうか等々の問題がございますので、様々な保証人制度や成年後見制度の問題にも是非取り組む必要があるかと思います。
 最後に、今後の課題を申し上げます。
 先ほど、軽度の方は介護保険から外して地域の中でボランティアが見たらどうかというような財政論の立場からの御意見が非常に多くあるわけですが、私はそれに対して非常に危機感を抱いております。特に、私が住んでおりますところを見回してみましても、近隣は皆六十代過ぎ、七十代前後の方々です。近隣が高齢化する中でどうやって安全を守り合うのかということで一段の工夫が必要だと思います。
 ボランティアも非常に大切なことなのでございますけれども、ボランティアもまた高齢化している、志望者が減少している、こういう状態の中でどうやって高齢者が多くなるコミュニティーを維持し再生を図っていくのかということが課題であろうかと思います。
 最後に、現在八十五歳以上の女性高齢者について特化して申し上げますが、この方々は大体が靖国の花嫁であり戦争未亡人であり岸壁の母など、様々な戦争経験者が多いわけです。この方々にサービスの、特に介護サービスなどの制限を掛けるということは私は大変残念なことだと思っております。国家の礼儀としてお見送りが必要なのではないかと考えておりますことを申し添えて、話を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 沖藤典子

speaker_id: 29608

日付: 2010-04-07

院: 参議院

会議名: 少子高齢化・共生社会に関する調査会