松岡徹の発言 (本会議)
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○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。ただいま議題になりました二〇一〇年度予算案について、民主党・新緑風会・国民新・日本の会派を代表して質問いたします。
昨年九月に民主党を中心とした連立政権が誕生した結果、日本の政治を取り巻く状況が劇的に変化したことを国民の皆さんとともに心から喜びたいと思います。
自公連立政権の時代は、いわゆる市場原理主義の経済政策の下、我が国は弱い人や貧しい人を切り捨てる貧困大国あるいは格差大国の道をひた走ってきました。その結果、六人に一人が貧困という実態を生み出し、また、非正規労働者も三人に一人の割合で存在し、ニートと呼ばれる若者たちは増える一方でした。このような貧困と格差の増大にストップを掛け、少しでも希望の持てる社会にしてほしいという国民の熱い期待が、自民党から民主党への政権交代を実現させる原動力になったのであります。
予算案に関する質問に先立ち、鳩山総理大臣始め関係大臣に是非とも確認しておきたいことがあります。
最近、私たち民主党の小沢幹事長が政治資金規正法違反の容疑で東京地検特捜部の事情聴取を受けましたが、検察庁の捜査の在り方に関連して、取調べの全面可視化法案がマスコミで話題になりました。一部では、民主党が検察庁に圧力を掛けるために法案を検討しているとの批判がなされましたが、これは完全なミスリードであり、国民の皆様に誤解を与えています。
民主党の可視化の取組は今に始まったことでなく、二〇〇三年七月の参議院法務委員会の附帯決議で、取調べ状況の客観的信用性担保のための可視化等を含めた制度・運用について検討を進めることとされ、その附帯決議を踏まえ、私たち民主党は、二〇〇四年に取調べの全面可視化に関する条項を追加した刑事訴訟法改正案を衆議院に提出。その後、両院に議員立法を五回にわたって提出、参議院において二回にわたり可決、成立いたしました。
昨年五月にスタートした裁判員制度においては、これまでの調書主義を打ち破ることが期待されているはずです。また、裁判員として参加する一般市民を冤罪に加担させるような誤りは絶対にあってはならないことであります。
昨年、民主党は、裁判員制度実施に向けた環境整備等に関する意見書をまとめ、特に可視化の義務付けと全証拠リストの開示の義務付けを当時の森法務大臣に提出いたしました。一般市民を冤罪に加担させないためにも、部分的な可視化ではなく、取調べの全過程の可視化のための制度整備が裁判員制度定着の前提条件であると考えますが、千葉大臣の御所見をお伺いいたします。
鹿児島の志布志事件、富山の氷見事件等、冤罪事件が再び明るみになるとともに、昨年は栃木の足利事件の再審が開始されたことは記憶に新しいところであります。そして、昨年、冤罪の可能性が指摘されてきた布川事件の再審開始決定が確定、再審請求中の狭山事件についても、第三次再審請求にかかわる三者協議の中で東京高裁が検察側に対して初めて証拠開示を勧告し、再審に向けた動きが見られます。
鳩山総理は、布川事件の再審開始決定の確定に当たり、服役の長い年月が何を意味するかを裁判官一人一人、国民すべてが考えていかねばならない問題だとコメントされましたが、これら幾度となく繰り返されてきた冤罪の再発を防止するために、その構造的な原因を明らかにし、それを取り除いていくことが望まれているのではないでしょうか。これら繰り返される冤罪事件について、鳩山総理の御所見をお伺いいたします。
そもそも、これら冤罪事件が後を絶たず生み出される最大の原因はどこにあるのでしょうか。私は、このような冤罪の原因は自白の重視、そのための捜査段階における密室での自白強要及び裁判における調書主義にあると考えます。我が国の刑事裁判は、自白調書に強く依存しています。そのことが取調べの過程で強制や誘導が行われることを誘発し、ひいては虚偽の自白がなされる危険を内蔵しているのです。
無辜の人を裁いてはならない、このことは当然のことであり、また冤罪は真犯人を取り逃がし、犯罪被害者の方々等の期待を裏切ることにならないでしょうか。このような冤罪を二度と生み出さないという強い決意が必要だと思います。そのためには、密室での自白強要の防止、調書の偏重に基づく捜査や裁判の見直しが必要であり、いわゆる被疑者取調べの全面可視化は不可欠ではないでしょうか。鳩山総理の御所見を伺います。
民主党は昨年の総選挙におけるマニフェストにおいて、取調べの可視化で冤罪を防止すると明記いたしました。国民のための司法制度に改革するためにも、二度と冤罪被害者を生み出さない決意を国民に示す意味でも、速やかに取調べの全面可視化を実現すべきと考えますが、千葉大臣の可視化法の今国会成立に向けた決意並びにいつごろ提案されるのかという見通しについてお伺いいたします。
次に、予算編成に先立って行われた事業仕分についてであります。
新たに設置された行政刷新会議が主導して、無駄な予算の洗い直しを目指し、民間の識者らも加えて、公開の場で徹底して無駄な予算にメスが入れられました。事業仕分では、概算要求額から六千七百七十億円を削減し、廃止と判定された事業は七十八事業、その九割以上が予算の計上を見送りました。その結果、無駄な予算の削減額は、当初に見込んだ金額を下回りこそすれ、約一兆円に及びました。各省庁の事業予算の中身でどんなところが無駄なのかが分かり、国民の目には実に新鮮に映りました。もちろん、初めての試みでありました。
そこで、鳩山総理にお聞きします。総理は閣僚に対し、予算を要求する大臣でなく査定する大臣になれと訓示しましたが、その期待は果たせたのでしょうか。事業仕分の成果をどう見られておられるのですか。
次に、仙谷行政刷新担当大臣にお聞きします。今回の事業仕分の総括をどのように行い、どういう反省点があったのですか。今後、同じような事業仕分の手法を取り入れるとすれば、どのような点を手直ししていかれるのですか、お聞きいたします。
本年度第二次補正予算では、雇用対策のために六千百四十億円の予算が組まれました。
また、来年度予算案では、雇用保険の適用基準を緩和する措置をとり、雇用のセーフティーネット機能を強化されています。また、雇用や中小企業対策等に使える予備費を特別枠として一兆円確保し、さらに研究開発や人材育成に取り組む中小企業を支援する制度を創設する等の施策を打ち出されました。
雇用は、国民が生活のよりどころとなる所得を得ると同時に、自己を実現するための重要な手段です。来年度予算の雇用対策においていかなる実効性があるのか、長妻大臣に御所見をお伺いします。
二〇〇九年十二月の十五歳から二十四歳の若者の失業率は八・四%と、他の年齢に比べて極めて高くなっております。これからの我が国を担う若者の雇用対策は重要な問題です。しかしながら、政府は、昨年の事業仕分で、自立を目指す若者を支援する若者自立塾を事業廃止するとの結論を出しました。当面、緊急人材育成・就職支援基金で来年度は対応するようですが、政府として本格的にニート等の若者の自立支援を打ち出していくべきではないでしょうか。長妻大臣の御所見をお伺いします。
二〇〇二年に議員立法で成立しましたホームレス自立支援法は、十年の時限立法であります。中間見直しの二〇〇七年以降、厚生労働省による全国実態調査が毎年行われていますが、基本方針はほとんど変わっておりません。
野宿に至るまでや野宿から脱する過程、そしてまた、再度野宿に至る等の過程において、ホームレス対策施設だけではなく、生活保護施設やNPO等の民間施設、病院等の多様な中間施設が存在しており、法施策の不備を民間支援団体に頼っているのが実態であり、野宿生活者が減ったというのは一面的な判断と言えます。支援団体との連携等、調査手法の見直しを検討すべきではないでしょうか、長妻大臣にお聞きします。
野宿生活者に限定したホームレスの定義や認識、自立の概念を見直し、社会的包摂、ソーシャルインクルージョンの観点から、ホームレスを生まない社会づくりに向けて多様でトータルな支援を構築すべきです。
今後、民間団体との連携や共働、施策実施の地域間の不均衡の是正、生活保護制度や職業訓練の在り方、住民参加型の町づくり支援等について検討することが重要です。
二年後にホームレス自立支援法の期限切れを迎えます。いのちを守る政治を掲げる鳩山政権が新たなホームレス自立支援施策を打ち出していくべきときだと考えます。法失効後の対応も含めどのような方針で臨まれようとしているのか、長妻大臣にお考えを伺います。
昨年十月、政府は、初めて相対的貧困率を公表しました。それによると、相対的貧困率は、一九九八年の一四・六%から二〇〇七年には一五・七%へと上昇しています。この数字を見たとき、国民の生活はどのような状況に追い込まれていると総理は御認識でしょうか。貧困の現状について政府はどのように受け止めているのか、長妻大臣に御所見をお伺いします。
特に考えなければならないのが、母子家庭等の一人親世帯の貧困の問題です。OECD報告では、我が国の一人親家庭の貧困率は五八・七%と、二番目に高いアメリカの四七・五%を大きく引き離して、加盟国中、最悪の水準にあります。最も危惧されているのが、こうした親の貧困が子供の貧困につながる、いわゆる貧困の連鎖であります。
政府は、こうした状況を背景に、昨年十二月、厚生労働省内にナショナルミニマム研究会を立ち上げて、生活保護の実態や相対的貧困率等について検討を始めてこられました。この検討が、今後、どのようにして政府の施策に反映されるのですか。貧困の連鎖を断ち切るために、政府としてどのような考えの下に施策や取組を進めていくのか、長妻大臣のお考えをお聞かせください。
また、親がいない、身寄りのない子供には、来年度は子ども手当としての支給は行われないと聞いていました。政府は、こうした問題に対応して、安心こども基金を活用した対応を検討しているようですが、次代を担う子供の成長や発達を社会全体で支援するという原点にいま一度立ち返る必要があるのではないでしょうか。検討の状況、見直しの方向性について、長妻大臣にお聞きします。
鳩山総理は昨年の所信表明演説で、政治には弱い立場の人々、少数の人々の視点が尊重されなければならない、そのことだけは、私の友愛政治の原点として、ここに宣言させていただきますと、また今回の施政方針演説においても、いのちを守りたい、働くいのちを守りたい、世界のいのちを守りたい、地球のいのちを守りたいと格調高く述べられました。鳩山総理のお考えになる政治の原点、御決意に私自身大いなる感銘と共感を持ち、賛意を表すものであります。
鳩山総理が示された政治姿勢を具体化するために重要な政策の柱は、我が国の人権政策を確立していくことではないでしょうか。
この人権政策を具体的に確立、実施していくことは、日本国憲法第十一条の基本的人権の享有、第十四条の法の下の平等、第二十五条の生存権等の精神を実質化、具体化していくことにつながると考えますが、鳩山内閣における人権政策の重要性についての認識にかかわって、鳩山総理の御所見をお伺いいたします。
その上で、現在の我が国の状況を考えると、残念ながら深刻な人権問題が依然として数多く発生し、人権を侵害された弱い立場の人々が泣き寝入りを強いられているという悲しむべき実情があります。
被差別マイノリティーや弱い立場の人々に対する排除や攻撃はますます深刻化しています。鳩山総理は、障害を持った人々や在日外国人あるいは被差別部落の出身者に向けられた、インターネット上の見るに堪えない差別書き込みや、他人の戸籍謄抄本を不正に入手し、興信所、探偵社に横流しをしている事件、また、いまだにその人の出身や立場等を理由とする就職や結婚の際の差別事件が後を絶たないこと等を御存じでしょうか。差別や人権侵害によって被害者は働く道を閉ざされ、結婚の希望を打ち砕かれ、時にはいのちをも奪われる状況を御存じでしょうか。
法務省の人権侵犯事件調査処理規程に基づく様々な人権侵害の申告が年約二万数千件以上も上がっています。このような立法事実を見るのであれば、国内人権救済機関の設置は喫緊の課題と言えますが、このような立法事実に対する鳩山総理の御所見をお伺いいたします。
二〇〇一年、人権救済機関の必要性を示した人権擁護推進審議会の答申が出されて九年が経過してなお、法整備はいまだに実現していません。先ほど示しました差別、人権侵害の実態が存在するにもかかわらず、立法措置がなされず、政治責任、政府責任が果たされていないままであります。
また、政府から独立した救済機関の必要性については、一九九三年の国連総会で採択された国内人権機関の地位に関する原則、いわゆるパリ原則に日本政府も賛成し、国内人権機関を創設する義務があるにもかかわらず、その後五年が経過しても放置していることに対して、一九九八年に国連自由権規約委員会から早期設置の勧告を始め、社会権規約委員会、人種差別撤廃委員会、子どもの権利委員会、女性差別撤廃委員会からも同様の勧告を今日まで度重ねて受け続けています。国連人権理事会の理事国を務める我が国は、本来国際的な人権保障の先頭に立たなければならない立場にもかかわらず、自らの国際社会における役割、責任を放棄していると言えます。
また、二〇〇五年には、民主党は、人権侵害の被害の救済及び予防に関する法律案を国会に提出、廃案となりましたが、今日時点においても民主党の正式な法案として存在していると理解しているところであります。
今通常国会において実効ある国内人権機関を立ち上げる法制度、いわゆる人権侵害救済法の制定が必要であり、人権政策確立への試金石であると考えますが、立法不作為の政治責任と国際的責務に対する認識、マニフェストを踏まえた鳩山総理の法整備への御決意をお示しください。
人権侵害の被害者や被差別当事者、マイノリティーや社会的弱者が置かれている実態を見れば、我が国の人権政策とそれを支える法や体制の整備はまだまだ不十分と言わざるを得ません。
諸外国においては、積極的に政府から独立した人権委員会を設置するとともに、人権政策推進体制を体系的に整備しています。人権侵害や差別がどんな被害を生み出すのか的確に把握、対処し、憲法の言う基本的人権の具体化と人権施策を推進する行政機構の整備は必要不可欠ではないでしょうか。個別の法整備や課題解決に向けた取組ももちろん必要ですが、人権政策を推進する人権省を設置すべきだと考えますが、鳩山総理の御所見を伺います。
一九二二年、大正十一年三月三日、差別や人権侵害がいかに人間性を踏みにじり、尊厳を傷つけることかを指摘し、人間を尊敬することにより人権社会をつくり上げること、人の世に熱あれ、人間に光あれとうたった水平社宣言は、我が国初の人権宣言と言われています。鳩山総理の言ういのちを守る政治を実現するためにも、人間としての尊厳を大切にする人権政策の確立が極めて重要な課題であると考えます。
私たちは鳩山総理のいのちを守る政治実現を大いに期待し、私の質問を終えます。(拍手)
〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇、拍手〕