伊吹文明の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○伊吹文明君 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、野田財務大臣の財政演説に対し、菅内閣の基本姿勢、日本の政治を担っている民主党の政治理念について、菅総理に質問をいたします。(拍手)
まず、さきの豪雨により被害を受けられた奄美地方の方々に心よりお見舞いを申し上げます。災害による生活不安を払拭し、地域の復旧復興を急ぐため、政府が早急に万全の措置を講じられるよう強く求めます。
菅総理は、所信表明演説に対する同僚の稲田朋美議員の質問に対し、自分の言葉で答弁せよというのなら原稿を読まずに質問せよとの、売り言葉に買い言葉の答弁をなさっております。本会議における代表質問は、あらかじめ原稿を提出するのが慣例であることは御存じだと思います。しかし、答弁は、質問と違って、あらかじめ原稿を提出する慣例はありませんので、自分の言葉で、宰相としての経綸を堂々と国民に語ってください。それに基づき、同僚議員が質疑の応酬を予算委員会で行う予定であります。
そもそも、民主主義では、集団の意思は多数で決まります。しかし、その前に、意思の違いを調整する辛抱強い努力が必要であり、我が党が与党時代も、当時の野党との意見の調整、妥協を図りながら議会を運営してまいりました。しかし、今国会では、各野党が要求する小沢議員の国会での説明が民主党内で道筋もつけられないまま議運委員長の職権で本会議を立てたことは、憲政史上の汚点であり、強く反省を求めるものであります。
我が党の過去を振り返ると、田中角栄総裁、中曽根康弘総裁、金丸信副総裁、その他の先輩、同僚も、時には理不尽な報道によるものであっても、国民の批判にさらされた場合は、いかに党内に権力基盤があっても、議員辞職や離党など、みずから身を処し、国会で説明責任を果たしてまいりました。非常に重要なことは、それを実現する党内秩序と良識が存在したのであります。
菅総理、あなたに処理を丸投げされた御党の岡田幹事長は、民主党衆議院議員の小沢一郎さんと面談すらできないではないですか。公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法のもとで公的組織である政党のあり方としては、岡田さんの言葉どおり、まさに異常であります。このような一政党内の異常さが、国民の代表が集う国権の最高機関の審議に持ち込まれることは、本末転倒と言わざるを得ません。
残念ながら、きょう、小沢一郎先輩は議席に着いておられませんが、どうぞ岡田幹事長、しっかりとお話し合いをしていただきたいと思います。
我々がかつて参議院選挙に敗れ、山口二区の補欠選挙に負けたとき、あなた方は、これが直近の民意と大上段に振りかぶられました。夏の参議院選挙の議席の大幅な減、北海道五区の補欠選挙の結果は、あなた方の言葉をかりれば、直近の民意でしょう。
その直近の民意の圧倒的多数は、小沢議員のさらなる説明を求めています。この直近の民意を無視し、党所属国会議員と対話すらできない幹事長の立場を考えれば、ここは、菅さん、あなたが調整に乗り出すべきではありませんか。政党人として、議会人として、当選十回を重ねた菅衆議院議員の率直な感想を第一問として伺います。
本題の平成二十二年度補正予算です。
予算は内閣のすべての政策を金銭で表示するもので、いわば内閣の理念、意思の表現であります。予算編成の責任者たる財務大臣が各国内閣で重きをなすのはこのためであります。
平成二十二年度当初予算及び補正予算は、民主党政権の理念の表現、哲学の金銭表示とみなすべきとの理解でよろしいのか、その政治理念、民主党の目指すべきものは何なのかを説明してください。これが第二の質問です。
政府は、円高・デフレ対策のための緊急総合経済対策として、急激な円高、株安、景気の下振れリスク等への対応のため、補正予算を編成したとしています。しかし、その目的に対し適切な政策が講じられているとは、残念ながら思えないのであります。
参議院選挙の敗北、民主党の代表選挙で政治空白が生じ、景気浮揚策を打つタイミングを逸したことは否めません。二十二年度予算の予備費をもって九月に第一弾の対策を講じられたとき、必要なら補正予算を検討すると述べられましたが、あのときに一体的対策を講じなかったその姿勢が、マーケットに悪い印象を与えてしまいました。
なぜここまで補正予算がおくれたのか、また、その責任について総理の釈明を伺うのが第三の質問です。
補正予算では、前年度剰余金の増加と二十二年度税収が当初見積もりよりふえたことを前提に、国債の追加発行がないとの、平成十四年以来の異例の歳入内容となっています。
しかし、前年度剰余金の増加と税の増収見込みは、二十一年度及び当二十二年度前半の企業業績の改善によるものです。自公政権末期に、リーマン・ショックに対処するため編成された、技術開発、地方の生活関連公共事業を中心とした補正予算、すなわち金融緩和の受け皿づくりの補正予算による景気対策のたまものであったのです。政権交代後、あなた方は、あの補正予算の未消化分を執行停止し、ばらまき公約の財源として、子ども手当等、家計への支出に変えてしまったのです。
さらに、今回の補正予算の歳出内容も、金融緩和による通貨量の拡大に対する国内の受け皿が準備できず、ケインズが指摘しているように、有効需要の不足している日本経済の現状のもとでは、日本銀行による金融緩和、通貨量の増発は海外に抜けてしまい、国内景気の浮揚に効果的なものとはなってはおりません。
マクロ経済の初歩知識である乗数効果は、一単位の追加支出を企業に行った場合の方が家計に行った場合よりも有効需要の増加ははるかに大きいことを教えています。かつて、参議院予算委員会の審議の際、菅総理は、我が党の林芳正議員の乗数効果の質問の答えに窮されましたが、今回の補正予算の財源となっている剰余金と法人税の増収、すなわち、二十一年度及び二十二年度前半の企業業績の改善はいかなる理由によって生じたのかを菅総理に伺います。これが第四の質問です。
我が党が九月に官邸に持参した緊急経済対策についてでは、当初予算に計上されているばらまきマニフェストの撤回を求め、その財源を景気浮揚策に充てるよう求めております。
子ども手当、高速道路無料化、戸別補償、高校無償化の四Kばらまき政策を続ける一方で、国民から預かっている税財源で補正予算を編成することは間違いだと思います。あなたたちは、家計への給付が成長をもたらすと訴えていましたが、さきに述べた乗数効果からも、首をかしげざるを得ません。総理が繰り返し述べておられる介護等による雇用の拡大も、介護報酬を生み出す経済の活性化、成長があってのことではないんですか。
ばらまきマニフェストを撤回し、景気浮揚対策にその財源を振り向けることを求めますが、菅総理の、政治的言いわけではなく、経済学的反対論を述べてください。
恒久財源のない恒久政策は将来に借金を残すだけです。子ども手当が、その子供が将来支払うであろう税金で返済せねばならぬ国債が財源になっているのでは、子供の税金を親が先にもらって民主党に投票するという許しがたい悲喜劇を生じます。自公政権の定額給付金は一年限りの景気対策でした。家計に直接給付して支持を得るという誘惑に負けぬ姿勢が、民主主義を健全なものとする政治の責任ではないでしょうか。
我が党は、責任ある財政運営を行い、将来世代への過度な負担の先送りを断ち切るべく、財政健全化法を本院に提出いたしております。菅総理、野田財務大臣はこれに考えを同じくするところがあると伺っております。高齢化に伴い増加する社会保障の財源は、高齢者も含め、すべての人が支払いに応じ負担する消費税に求めるとの考え方を共有するか否かを、第六の質問として総理に伺います。
この法案を審議することは、与野党の財政の現状認識について相互理解を深め、国民への義務でもあると思います。国会のことは国会で決めていただきたいなどとお得意の慣用句に逃げず、審議の必要性について、第七の質問といたします。
先般の民主党代表選挙では、政治と金の問題を背負っていた小沢元代表が相手であったから、菅さん、あなたは勝ったと言われています。総選挙で国民との契約とまで言ったマニフェストは履行すべきであるという小沢元代表の主張は、民主制における選挙公約という点からは、当たり前の主張であります。しかし、これを実行すれば、我が国経済、財政、国民生活は破綻をします。
菅さん、あなたは、国家戦略大臣、財務大臣、総理大臣として国政に参画し、現実を直視した結果、民主党マニフェストの虚構と危険性に気づいたからこそ、我が党の主張に近い消費税の引き上げにまで言及されたのではないですか。
マニフェストは、財源の制約から実行が不可能であれば国民に説明をする、四年間かけて実行するなどと総理は述べていますが、マニフェストには、各年ごと、四年間の工程表が明記されていることをお忘れではないでしょう。二十二年度は七兆一千億、そして二十五年度では十六兆八千億分を完全に実施し、その財源はすべて無駄の排除で手当てするというのが国民との約束なのですよ。既に一年目の約束は果たせておらず、先送りなど許されることではありません。公約違反を認めないのはどのような説明になるのか、国民にわかりやすく教えてもらいたいのが第八の質問であります。
参議院選挙の民主党公約では工程表は消えてしまい、玄葉政調会長は、さきの予算委員会の集中審議で、総選挙のマニフェストは修正したと平然と答弁しています。総選挙の公約違反に知らぬ顔を決め込むことを認めてしまえば、できもしない公約により票をとり、権力を握り、政府を掌握すれば、できないことを説明し、許してもらいたいでは、票の振り込め詐欺ではありませんか。菅さん、参議院選挙で民主党が負けたのは、あなたの消費税発言のせいなどではありません。国民がだまされたということに気づいたからですよ。
小沢元代表の主張を立てれば国は滅び、菅総理の路線をとれば、民主主義、選挙の原点が崩れてしまう。さきの総選挙で当選され、今やじを飛ばしておられる議場内の民主党の議員の皆さん、そして、その議員の諸君の投票によって成立した民主党政権の正統性、レジティマシーそのものが崩れてしまうんです。
この矛盾を解決する唯一の方法は解散・総選挙をすることです。その際、各党が実現可能な公約を掲げ、だまして票はとらぬことです。民主党政権の正統性について、第九の質問といたします。