鈴木達治郎の発言 (科学技術・イノベーション推進特別委員会)

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○鈴木参考人 おはようございます。鈴木でございます。
 このたびは、このような貴重な機会を与えていただき、まことにありがとうございます。福島原子力発電所事故を踏まえて、原子力政策について所信を述べさせていただきます。
 まずは反省の言葉です。原子力に長い間携わってきた研究者として、また、一年余りですが、原子力行政の責任を担う一人として、このような深刻な事故が起きましたことに対し、私自身、深く反省しております。特に、事故により故郷の地を離れることを余儀なくされた住民の皆様には本当に申しわけなく思っております。
 既に、今回の事故をめぐり、特定の組織とか個人の責任を指摘する御意見もありますが、今回の事故については、私は、原子力に携わってきたすべての人それぞれがその立場で責任を共有すべきものと考えておりまして、私自身、痛恨の思いでいっぱいであります。
 一方、事故直後から現場で日夜作業をされている方々や、収束に向けて協力を申し出てくださった方々には、感謝の思いで言葉もありません。さらに、個人的な話になりますが、国内外の友人や専門家から、それぞれの立場を超えてアドバイスや激励の言葉を多くいただいております。この場をかりて厚く御礼を申し上げたいと思います。
 では、本題の原子力政策についてお話しします。
 まずは、今回の事故に際し最優先で取り組むべき課題として四点、その上で、今後のエネルギー、原子力政策について三点ほど申し上げます。
 まず、事故関係についての第一番目は、この事故の持つ国際的な重要性と我が国の責任についてです。
 従来より、原子力では、世界のどこで深刻な事故が起きても世界じゅうに影響を与えるという認識のもと、安全の確保については国際協力、協調が基本となっております。今回の事故についても、我が国はもちろん、世界の原子力開発に深刻な影響を与えることが考えられます。この事故にかかわる情報は、国内のみならず世界と共有しなくてはいけません。我が国としては、情報の共有、収拾策、対応策の検討、今後の安全対策など、あらゆる面で国際社会に向けて情報を発信し、協力していく責任があると思います。
 また、事故当初より、情報の提供や説明の仕方などについて、国民とか国際社会から信頼を十分に得られていないという御指摘がありますが、これについては私は大変憂慮しております。今後、情報提供のあり方については、外部の第三者機関などの活用も含め、国民や国際社会から信頼される方法を検討していかなければならないと考えています。正確さと迅速さは実はトレードオフの関係にありますが、迅速さを優先させて、できるだけ情報を公開することにより、正確さは多くの人の検証を受けることでカバーできると考えております。
 第二に、事故調査のあり方です。
 この事故の重要性を考えますと、早急に事故の原因究明、改善策提言に向けての事故調査を開始する必要があると考えます。既に、枝野官房長官から独立の調査委員会という言及がありましたが、これまで以上に客観的で透明性を持った、国際的にも検証可能で信頼される調査の進め方が必要ではないかと考えています。
 事故調査は、もちろん日本政府が最終的に取りまとめる責任を有していますが、調査の透明性、信頼性を高める意味でも、また世界の知見を有効に活用するという意味でも、海外の専門家や国際機関に何らかの形で関与してもらう方法を考えるのが望ましいと私は考えています。また、航空事故調査委員会のように、ある程度の調査権限を法的に持たせ、調査のためには運転員などの免責も可能となるような仕組みも必要かと思います。
 三番目に、収束から地元復興に向けての体制づくりについてです。
 先日発表された東京電力のロードマップは、最終的な廃止措置に向けての第一歩です。今後も、数多くの技術的、政策的課題に挑戦しなければいけません。破損された使用済み燃料の取り扱い、大量の高濃度放射性汚染液の処理処分、汚染された大量の瓦れき対策や汚染土壌の処理など、従来の枠組みや規制では対応できない課題が山積みです。その際、この問題が国際的な重要性を持っていることや、世界の知見を集積すべきという観点から、国際的な連携を強化した体制にすることが必要と思います。
 また、周辺住民の安全確保と生活支援、風評被害の最小化あるいはなくすこと、それから賠償のあり方、避難解除から住民の復帰と長期的な地域の復興まで考えた包括的な計画が必要であり、そのための資金確保、技術開発など、縦割りを排した効率的な実施体制が必要だと思います。これらに長期的に対応できる体制を構築する時期に来ているのかと思います。
 これらの努力により、福島という言葉が、原子力災害の代名詞ではなく、災害から見事に立ち直る事例の代名詞となることを切に願っております。
 第四は、福島以外の既存原子力発電所及び施設の安全確保についてです。
 既に、原子力安全・保安院が緊急安全対策を公表していますが、既存の原子力発電所、これは停止中の原子力発電所も含みますが、その安全確保は、周辺住民にとっても、短期的なエネルギー需給を考えても、最も優先順位の高い政策課題と認識しています。原子力発電所以外にも、核燃料サイクル施設や研究施設など、重要な施設が数多く存在します。これらの安全確保も重要な課題であり、特に使用済み燃料の安全確保は早急に対策が必要と考えています。
 また、今回の事故は、核セキュリティー、いわゆる核テロリズム対策上も重要な意味を持っていると思いますので、この点についても対策を強化する必要があるかと思っています。
 ここからは今後のエネルギー政策についてです、原子力政策を含めて。
 世界的なエネルギー情勢や地球温暖化対策という観点から考えますと、原子力は重要な選択肢であると私自身は今でも考えております。しかし、原子力を進めるためには、安全の確保と国民の信頼が大前提であり、徹底した原因究明と、それを踏まえたこれまで以上の幅広い国民的議論が必要であると考えています。
 そこで、重要と思われる点を三点ほど申し上げたいと思います。
 第一に、エネルギー政策、原子力政策の意思決定プロセスの改善とそれへの国民参加のあり方です。
 原子力の役割や位置づけは、全体のエネルギー政策であるエネルギー基本計画で、これは閣議決定ですが、議論すべきものと考えますが、まず、この議論を国民的議論とするようなプロセスが必要です。
 この事故を踏まえ、国民が納得いく議論を行うには、これまでにない議論の場や手法が必要かと考えています。例えば、アメリカの原子力の将来に関するブルーリボン委員会のような首相直轄の特別賢人会議、または、国民参加を担保するようなやり方では、スイスで行われた市民参加による電力と社会会議などが参考になると考えます。
 次に、この政策議論の質を上げるためには、徹底した情報公開のイニシアチブが必要だと思います。
 これは、実は昨年、原子力委員会が発表した成長のための原子力戦略において、新しい情報技術を用いてだれもがアクセス可能なデータ公開イノベーションということを提言させていただきました。
 我が国では、政策決定にかかわるデータが不十分だと思います。また、国民が自由にアクセスできるような体制も余り整っていません。これが政策に対する透明性、信頼性不足につながっています。例えば、これまで日本には不足していると言われる独立不偏の立場からの科学技術の社会的影響評価、これはテクノロジーアセスメントと呼ばれますが、このような機関の設立なども検討すべきではないかと個人的には思っております。
 第三に、原子力予算についてです。
 原子力委員会は、原子力予算の企画、審議、決定をすることとなっていますけれども、今回の事故を踏まえて、この予算についても、福島の恒久措置を考えますと、優先順位を十分に検討し、聖域をつくらずに大幅な予算の見直しが必要だと考えています。
 最後になりますが、原子力委員会そのものの存在意義についても一言だけ述べさせていただきます。
 今回の事故対応でも痛感いたしましたが、助言組織としての原子力委員会の役割についても再検討する時期になるかと思います。安全規制体制の見直しに加え、原子力を含むエネルギー政策全体を総合的に検討する体制が必要と考えます。原子力の比率が非常に高いと言われていますフランスでも、代替エネルギー・原子力庁として総合的なエネルギー官庁になりました。この事故を契機に、エネルギー政策にかかわる省庁体制についても検討することが望ましいと考えます。
 私からは以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 鈴木達治郎

speaker_id: 33395

日付: 2011-04-26

院: 衆議院

会議名: 科学技術・イノベーション推進特別委員会