松本龍の発言 (環境委員会)

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○松本国務大臣 環境大臣の松本龍でございます。
 第百七十七回国会における衆議院環境委員会の御審議に先立ち、環境行政に対する私の考えを申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いしたいと存じます。
 我々人類は、その誕生以来、地球の恵みを享受しながら生活してきました。しかし、産業革命、とりわけ第二次世界大戦以降、我々は環境を大きく変化させてきました。また、地球温暖化や生物多様性損失などの環境問題の発生や、世界的な資源エネルギーの逼迫、あるいは食料価格の高騰といった問題に代表されるように、地球上の資源や生産力には限りがあります。我々はその有限性を十分に認識し、活動しなければなりません。持続可能な社会を築き、貧困を解消し、良好な環境を子供たちに引き継いでいくことは、我々現代の世代に課せられた使命です。
 一方で、環境は今後の経済成長を牽引する最重要分野の一つです。世界の環境関連市場は年々拡大をしており、新たな需要が生まれています。さらに、世界の各国ではグリーン経済の構築を目指すさまざまな取り組みが始まっています。私も、環境問題の解決に取り組むことを通じ、経済成長を実現してまいりたいと考えています。
 さて、地球温暖化対策については、昨年末のメキシコ・カンクンにおける気候変動枠組み条約第十六回締約国会議において、先進国と途上国の双方が削減の目標や行動を掲げて取り組むことが締約国会議決定の形で合意されました。これは、各国の利害が厳しく対立する中、世界規模の排出削減を実現して人類共通の地球益を確保する観点から、我が国が目指すすべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの構築に向けて、多くの国に対し我が国の考え方や取り組みを丁寧に説明し、その結果得られたものであると言えます。さらに、資金、技術、適応、森林保全等の途上国支援の強化が盛り込まれたことも大きな前進と言えます。
 我が国としては、COP16の決定を発展させていくため、積極的に知恵を出しながら、引き続き関係各国と精力的に対話を重ね、次回のCOP17に向けた交渉の進展に貢献してまいる所存ですが、こうした我が国の方針について各国の理解を得るには、国内の地球温暖化対策を着実に進めていることを各国に示すことが極めて重要です。このため、地球温暖化問題を人類共通の課題と認識し、我が国が中長期的に率先して取り組むための枠組みを定める地球温暖化対策基本法案を提出しており、この法案を御審議いただいた上で、ぜひとも今国会での成立をお願いしたいと考えています。
 地球温暖化の国内対策については、引き続き、中長期目標達成に向けたロードマップの精査を行います。地球温暖化対策のための税については、課税による排出抑制効果の観点と、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施する観点から、平成二十三年度の税制改正法案に盛り込んだところであり、地球温暖化対策を進める上で重要な一歩と言えます。国内排出量取引制度については、産業に与える影響等を見きわめ、慎重に検討します。また、我が国の低炭素技術、製品による途上国等での貢献を適切に評価する新たなメカニズムの構築に向けた取り組みも実施いたします。
 菅総理が施政方針演説で述べられたとおり、政府一丸となって新成長戦略の工程表を着実に実施し、成長と雇用につなげることが必要です。環境省としても、持続可能な社会づくりに向けたさまざまな取り組みを積極的に実施し、環境イノベーションの促進や、世界に先駆けた物とサービスの提供等を実現してまいります。具体的には、民生部門での温暖化対策を促進するため、家庭、事業者向けに低炭素機器のリース料の一部を助成する事業、各家庭の実情に応じたエコ診断を推進する基盤整備事業等を展開します。また、再生可能エネルギーなど地球温暖化対策技術の開発導入を促進します。これらの施策により、関連産業の成長と雇用の拡大を実現する所存です。
 我が国のすぐれた環境保全技術を活用して、アジアにおける持続可能な社会づくりに貢献すると同時に、日本企業がアジアの環境市場にこたえられるように促していくことも必要です。このため、我が国の静脈産業や水ビジネスのアジアへの展開を積極的に支援してまいります。
 また、社会資本整備、地域活性化を通じて、経済成長と地域の雇用を創出するための取り組みも積極的に進めてまいります。具体的には、持続可能な地域づくり、町づくりを進めるため、新しい低炭素社会基盤の集中整備を行うとともに、すぐれた自然観光資源を保護しながら活用するエコツーリズムを通じて地域の活性化を図る事業を実施します。
 さらに、大量生産、大量消費、大量廃棄を基本とする社会のあり方に加えて、大量流通という社会の現状についても見直していきたいと考えています。例えば地産地消など、地域において活用し循環利用することが可能な物や資源が、できるだけ地域で活用されるようにすることが重要であり、そのための検討を進めてまいります。
 昨年十月、愛知県名古屋市において、生物多様性条約第十回締約国会議が開催されました。COP10では最終盤まで議論が難航しましたが、共通する地球益、人類益に向けて参加者の思いが集まり、合意に向けた譲歩、妥協を促した結果、生物多様性に関する新たな世界目標、愛知目標と遺伝資源へのアクセスと利益配分、ABSに関する名古屋議定書への合意に達しました。今後は、COP10の成果を踏まえて、実際の行動を始めることが必要です。
 まず、国際貢献としては、途上国支援のための生物多様性日本基金の創設、運用、二次的な自然環境の持続可能な利用を促進するSATOYAMAイニシアチブの推進、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットホーム、IPBESの設立支援などを開始します。
 国内対策については、生物多様性国家戦略の見直しに着手するとともに、国立公園など保護地域の拡充や絶滅危惧種の保護施策の推進等により、生物多様性施策の充実を図ってまいります。また、昨年成立した生物多様性保全活動促進法を円滑に実施し、地域の生物多様性を保全する活動を促進していく所存です。さらに、シカを初めとした野生鳥獣の管理の充実、外来種対策、ペットなどの動物愛護を進め、人と生き物が共生する社会の実現を目指します。
 鳥インフルエンザ対策については、関係省庁、都道府県等と連携して対処します。また、極東地域での研究者の交流促進を通じた情報の共有に向けて取り組んでまいります。
 引き続き、資源効率が高く環境負荷の少ない循環型社会の構築を進めるため、意欲と能力のある優良な静脈産業事業者の支援や、使用済み小型家電からのレアメタルなどの有用金属の回収を初めとするリサイクルの充実等により、廃棄物のスリーR、すなわち発生抑制、再使用、再生利用を推進します。
 また、廃棄物処理施設でのエネルギー回収の促進等により、廃棄物処理分野における温暖化対策を強化するとともに、産業廃棄物の適正な処理を推進し、不適正処理・不法投棄対策を進めるなど、安全、安心な廃棄物処理を推進します。
 国民の安全と安心の確保は、環境行政の原点です。安全、安心な生活を実現するための取り組みを引き続き着実に実行します。
 まず、公害健康被害対策にしっかりと取り組みます。特に水俣病については、現在進めている水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法に基づく救済手続や和解協議に万全を期す所存です。将来にわたって地域の人々が安心して暮らせる地域づくりにも取り組みます。また、水俣病経験国として、水銀に関する水俣条約の制定に向け、国際的な議論をリードします。
 石綿問題については、石綿健康被害救済法に基づく被害者救済に全力を挙げつつ、建築物解体時の飛散防止対策や石綿廃棄物の適正処理など、健康被害の未然防止に積極的に取り組みます。
 有害物質の漏えい、浸透による地下水汚染の未然防止を図るため、有害物質を使用または貯蔵する施設等について構造に関する基準の遵守及び定期点検の実施を義務づけること等を内容とした水質汚濁防止法の改正について、御審議をお願いしたいと考えています。
 大気汚染防止のため、微小粒子状物質に関する総合的な対策を推進するとともに、水環境の保全を図るため、引き続き浄化槽の整備など各種対策を推進してまいります。
 また、アジアにおける安全、安心な社会の実現に向けた協力を進め、環境汚染防止分野で国際貢献を行うとともに、これを日本企業の成長に生かすことが必要です。このため、環境汚染対策と温室効果ガス削減を同時に達成するコベネフィットアプローチの協力などを引き続き実施します。
 さらに、子供たちの健康を守りはぐくむための、世界各国と協力した長期的、大規模な調査や包括的な化学物質対策の強化を推進します。
 環境問題を真に解決するためには、一人一人が環境保全の重要性を認識し、行動することが必要です。このため、環境教育や普及啓発について、今後の施策のあり方を検討したいと考えています。
 このほか、昨年の通常国会に提出している環境影響評価法の一部を改正する法律案についても、よろしくお取り計らいをお願いしたいと考えています。
 以上、環境省の取り組みの一端を申し上げました。本年は、環境省が発足して十年ということのみならず、昭和四十六年に環境庁が発足して四十年の節目の年に当たります。この四十年の間に、環境政策の前進に向けて御尽力をされた方々に改めて敬意を表するとともに、経済成長を牽引する環境政策、地球温暖化問題、生物多様性保全など、新たな課題の解決に向け、課題先取り型の環境行政を進めていく決意を重ねて表明いたします。
 委員各位におかれましては、今後とも、環境行政の一層の推進のため、御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)

発言情報

speech_id: 117704006X00120110222_007

発言者: 松本龍

speaker_id: 7314

日付: 2011-02-22

院: 衆議院

会議名: 環境委員会