石破茂の発言 (本会議)
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○石破茂君 ただいま議題となりました東日本大震災復興再生基本法案について、提案者を代表して、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。
冒頭、今回の大震災、大津波によりお亡くなりになられた方々とその御遺族に対しまして深く哀悼の意を表しますとともに、被災地において今なお苦難の中におられる皆様方のお気持ちを思い、復旧復興の任に当たっておられるすべての方々に心より敬意を表します。
この議場にいる恐らくすべての議員が、被災地を訪れ、まさしくこの世の地獄ともいうべき光景を前に、言葉を失い、茫然自失の状態に陥ったはずです。被災者の方々の悲痛な訴えをお聞きし、ともに手をとり涙しなかった者も、恐らく一人もいないでありましょう。
我々国会の責務は、一日も早く、すべての被災者の方々を困窮から救い、被災地を復旧復興させ、二十一世紀半ばの祖国日本のあるべき姿をこの地に実現させることであると信じます。
東日本大震災とこれに伴う大津波は、現代を生きる我々日本人がかつて経験したことのない、まさしく未曾有の災害であります。
平成七年、我々は、阪神・淡路大震災を経験いたしました。この震災も、極めて被害が甚大な、まことに悲惨なものでありました。しかし、今回の地震、大津波は、阪神・淡路とは全くその様相を異にするものであり、復興に当たっての取り組みも、全く新たな観点によるべきことは当然であります。阪神・淡路において成功したスキームを今回もまた踏襲するということは、認識が大きく誤っていると言わなければなりません。
阪神・淡路大震災の被害は、財政力が他の地域に比べて比較的強い兵庫県、なかんずく神戸市周辺に集中したものでありました。国の財政も、当時の国債発行残高は二百兆円程度でありました。近隣の地域には職場もなお健在であり、復旧復興に向けての取り組みはかなり迅速に行われ、神戸を中心とする地域は、見事によみがえりました。
しかし、今回は、北海道から関東まで多くの都道県に被害が及び、自治体の多くは財政力が極めて脆弱であり、少子高齢化は急速に進行し、基幹産業であった第一次産業は壊滅的な打撃を受けました。自治体そのものの機能が失われたところもまた多く、職場もそのほとんどが失われております。
津波は、とうとい人々の命、幸せな家族の住みかであった家屋、生活の糧を得る職場、それらすべてを一瞬にして流し去り、後に残ったのは、ただ大きなマイナスだけであります。加えて、かつて経験したことのない原子力発電施設の事故による被害は、現在、今なお進行中であります。
地震、津波、原発事故、電力不足という四つの事象が連鎖した形で発生している、まさしく未曾有の国難であります。国並びに地方の財政は極端に悪化し、国債発行残高だけでも阪神・淡路大震災当時の三倍を優に超えるに至っております。
こうした中で今回の大震災、大津波に対応するに当たっては、単なる復旧にとどまるべきではなく、今後の我が国のあるべき姿を先取りする形で、地域の再生、ひいては日本の再生を図っていくことが不可欠であり、そういう意味から私たちは復興再生を目指すべきであると考えております。
復興再生を円滑かつ迅速に推進していくためには、その基本理念を明確に定めること、復興再生に関する計画の策定その他の基本となる事項を定める必要があります。加えて、復興再生に関する企画立案及び総合調整と、その施策の一元的な実施を行う強力な権限を持つ行政組織の設置が絶対に必要であると考えます。
今回提出された政府案では、企画立案、総合調整のみしか行わない復興対策本部を設置するにとどまっており、また、復興再生に関する計画や資金の確保に関する具体的規定がないなど、既に大震災発生から二カ月超が経過する中で提出する法案としては、極めて不十分な内容と言わざるを得ません。
多くの本部が乱立し、多数の内閣参与が任命され、指揮系統に混乱が生じている状況が続いておりますが、ようやく出てきた法案は、ほとんど阪神・淡路大震災のときの体制をそのまま踏襲した、いわば焼き直し版でしかありません。この二カ月は一体何であったのか。空白の二カ月ともいうべきであります。
このような点を踏まえ、我々の考え方に沿って復興再生が行われるべきであるとの認識に立ち、本法律案を提出することといたしたものであります。
本法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、復興再生に当たっての基本理念を定めております。
東日本大震災からの復興再生は、単なる原形復旧ではなく、二十一世紀半ばのあるべき姿を目指すことを旨として行われなければならないこととした上で、国は、地方公共団体と協力し、かつ、被災地域の住民の意向を最大限に尊重しつつ、主体的に復興再生を推進することを明記するとともに、国民一人一人の総力と官民の英知を結集して、総力を挙げて復興再生を推進することといたしております。
第二に、復興再生に関する計画についてであります。
まず、政府は、計画期間を十カ年とする復興再生基本計画を策定することといたしております。また、被災した県または市町村は、国の復興再生基本計画を踏まえつつも、それぞれの県または市町村の被災状況に応じ、当該県または市町村の区域における復興再生に関する施策についての復興再生計画を策定するものといたしております。
第三に、復興再生に関する基本的施策を定めております。
この中では、特に資金の確保に関して、徹底的な歳出削減と財政投融資に係る資金や民間資金の活用について定めておるほか、政府は、復興再生に係る歳出の財源に充てるために復興再生債を発行することができること、その際には、あらかじめ、復興再生債の償還の道筋を明らかにしなければならないこと等についても明記しております。
第四に、東日本大震災からの復興再生に関する事務を行う東日本大震災復興再生院を設置することとし、その組織編成に関する基本方針を定めております。
この復興再生院は、企画立案、総合調整のみならず、施策の実施まで行うこととし、復興再生に関する事務を一元的に行う機関といたしております。
復興再生院の職員には、民間の知恵と活力を生かすため、広く行政組織の内外から人材を登用することとし、また、被災地域の意向を尊重するため、当該地域の職員等を採用するように特に配慮することといたしております。
加えて、復興再生に関する重要事項について調査審議するため、復興再生院に設置される第三者機関である復興再生委員会の構成員に、被災した地方公共団体の長等が含まれることを明記いたしております。
以上が、本法律案の提案理由説明及びその概要であります。
国は、地方の意見を最大限に尊重しつつ、主体的にその役割を果たさねばなりません。被害が多くの県に広域的にまたがるのみならず、新しい東日本像、さらには日本の国家像を実現するためには、これは極めて当然のことであります。
阪神大震災において復興費用は国費で約五兆円でありましたが、今回は、最低でもその二倍、恐らくは三倍以上になると予測されます。欧州の信用不安問題が示すごとく、財政と金融との相関関係は極めて密接であり、復興債を発行するに当たっては、震災対策以外の経費を可能な限り節減することは当然であり、復興債の消化、償還についてもきちんと道筋を示さなくてはなりません。震災前から、我が国の財政は既に危機的でありました。日本だけが特別であると考える考え方は、極めて危険であります。
復興再生院は、企画立案、総合調整のみならず、実施までをその任務とし、ワンストップですべてに対応できる強力な官庁、言うなればスーパー官庁として位置づけられるものであります。
省庁間の縦割り構造は、この危急存亡のときに当たっては、断固これを排さねばなりません。この点について、さきの予算委員会で私が菅総理にただした際、総理は、権限をどちらが持つかということに対して霞が関は非常に敏感な性格を持っている、権限の切り分けの作業には相当程度の力が必要であり、これをやり切るには、まさに大きな政治力が必要となるものと考えていると答弁されました。まさしくそのとおりであります。
私は、五月三日、女川町の被災地を訪れ、その惨状を目の当たりにし、その夜は、避難所に泊まって被災者の方々の声を聞かせていただきました。
だれに言えば私たちの思いが通じるのか。政治家がたくさん来て話は聞いてくれるが、ちっとも、何にも前に進まない。ここに言えばすべてが解決する、そんなところが欲しいんだ。あっちに行け、こっちに行け。我々が何であちこちに行かねばならないんだ。政治は本当に私たちのことがわかっているのか。その被災者の方の声が耳に残って、片時も離れません。
総理がいみじくも口にされた、権限について持っている霞が関の非常に敏感な性格、これを乗り越えることこそが政治の役割であります。そのためにこそ、我々は、これも総理が言われた言葉ですからそのまま使いましょう、強い政治力を発揮し、被災地の声にこたえねばなりません。
国民の資産でもある官僚組織を、スタッフとして、信頼関係を構築して使いこなすこともまた政治の役割なのであります。何の相談もせず、独断で結論だけを口にし、混乱のみを生じさせることを政治主導とは言いません。
強い政治力を履き違えてはなりません。一歩間違えば、これは、法治国家や民主主義体制の破壊につながりかねないものであることをよく認識すべきであります。
霞が関の悪癖である権限争いを、今こそ、正しい意味の政治主導で乗り越えなくてはなりません。屋上屋を重ねるとか二重行政になるとか、この二つこそ官僚組織の常套句であります。しかし、権限が束ねられることによってこそ、窓口は一本化され、地方にとって使い勝手のよい組織となるのであります。
霞が関の論理で動くのか、地方の論理で動くのか、我々はここを強く認識すべきであります。官僚組織の抵抗を恐れる余り、これにおもねるようなことがあっては断じてなりません。
すべての行政は国民のために行われる、すべての責任は政治がとる、あらゆる称賛と栄誉は現場に与えられる、これこそが、我々自民党が目指す政治と官僚組織との関係であります。この真逆の、すべての責任は現場に負わせ、称賛と栄誉は政治に与えられるようであっては、官僚組織は機能せず、国民は不幸になるばかりであります。
国民に対する真摯な気持ち、被災地、被災者に対する誠意、強い使命感と情熱、官僚組織との本当の信頼関係があれば、これができないはずはありません。それがもしできないとするならば、もはや政権を担う資格がないことをみずから明らかにしたにほかならないのであります。
自由民主党は、発災以来、全党的な議論を積み重ね、最も望ましいものとしてこの法案を提出いたしております。何とぞ議員各位の御賛同を賜りますよう心よりこいねがい、私の提案理由の説明といたします。(拍手)
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東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案(内閣提出)及び内閣法及び内閣府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに東日本大震災復興再生基本法案(石破茂君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑