中曽根弘文の発言 (本会議)
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○中曽根弘文君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました参議院憲法審査会規程案について、賛成の立場から討論を行います。
現行憲法は、我が国が連合国軍に占領されていた時期である昭和二十一年十一月三日に公布され、翌昭和二十二年五月三日に施行されました。
制定過程の評価に関しては様々な見解がありますが、いわゆるマッカーサー草案の提示や松本案の拒絶などを典型例として、連合国軍最高司令官総司令部の意向がかなり大きな影響を及ぼしていたことは紛れもない事実であります。
その後、我が国は、昭和二十六年九月八日にサンフランシスコ平和条約に調印し、翌年四月二十八日の同条約の発効をもって主権を回復しましたが、現行憲法は制定以来一度も改正されることなく今日を迎えております。一刻も早く、我々日本人自らが完全なる主体として、我が国の真にあるべき憲法を作ることが必要だと考えます。
こうした制定時のプロセス論に加えまして、今や実態的にも時代に合った形の憲法が求められています。
敗戦後の焼け野原から奇跡の復興を遂げた我が国は、世界でも有数の経済大国となり、責任ある行動が期待されています。しかし、施行から六十年以上たち、内政、外交等において激しい変化に対応できない点が今や露呈をしております。
こうした実態に鑑み、世界各地域における国際貢献の在り方や、我が国自身の安全保障体制の観点からの憲法の見直しの検討も必要であります。また、国会の在り方や環境に対する新しい概念などについても検討が必要と考えます。時代がたつとともに積み重なる数々の論点について、タブーを設けずに、忌憚のない意見を交わし、建設的な議論を行っていくことが求められております。
このような状況の下、更に我が国憲法の在り方について真剣に向き合わねばならない出来事が発生をいたしました。三月十一日に発生をした東日本大震災であります。
甚大なる被害を受けられた被災者の方々の苦しみは筆舌に尽くし難いものであります。厳しい環境の中での助け合いや自己犠牲の精神、自律と献身に満ちた行為には国の内外から多くの感動の声が寄せられていますが、憲法第二十五条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と国民の生存権が明記してあります。被災者は、政府の遅い対応により、まさにこの権利が脅かされていると言えます。
被災者の方々の生活を一刻も早く安心、安定したものに取り戻すため、国家を挙げて復旧・復興を進めることが焦眉の急となっております。
しかるに、現行憲法では、非常事態に対応する規定がありません。戦後最悪の災害に襲われた今、非常時、有事の際に、国民の安全を守り速やかな復興を行うための規定、私権の制限をどう考えるかという論点も非常に重要であると思います。
まさに、今次の大震災は、我が国の憲法の在り方についても大きな一石を投じていると言えます。こうした事項については、政府内だけで議論して見解を示すのではなく、国会の場で広く議論を行うことが不可欠であります。
我が党は、昭和三十年の立党以来、自主憲法制定を党是とし、幅広く党内外の議論を行ってまいりました。立党五十年に当たる平成十七年には新憲法草案を取りまとめ、現在に至るまで憲法の全条項について真剣な議論をしてきております。
ただいま議題となっている憲法審査会の設置を定めた憲法改正手続法が成立したのは、我が党が政権与党でありました平成十九年五月十四日の第百六十六回国会であります。本来であれば、この国会が閉会した後に実施された参議院通常選挙後の国会において審査会規程が整備されるべきでありました。実に四年間も放置されてきたことになります。
衆議院においては、二年近く前の平成二十一年六月に審査会規程が制定されていることを考え合わせれば、参議院における不作為の罪は誠に重いものであると言わざるを得ません。
憲法改正手続法は昨年五月十八日に施行されており、既に憲法改正原案の発議が可能な状態になっています。にもかかわらず、参議院において審査会規程もなく、実質的に議論が進められない状態にあることは、まさに立法府の怠慢であります。
このような事態を避けるべく、我が党は、議院運営委員会の場などで、幾度となく審査会規程の制定を強く主張してまいりました。当時の西岡議院運営委員長も、民主党に対し迅速な対応を求められておりました。
しかしながら、この四年間、第一党である民主党は何ら対応せず、今日まで審査会規程制定が実現できていないことは誠に遺憾であり、しかも、規程の議決に当たり、民主党が党としての自らの考えを示さないことは大変残念であります。民主党の猛省を促したいと思います。
遅ればせながらではありますが、ようやく憲法審査会が始動しつつあることは誠に重要な第一歩であり、今後の展開に大いに期待するものであります。
ただし、単に規程を整備するだけでは意味がありません。本規程案には公聴会についても明記されているところですが、国民に開かれた形での憲法についての議論を一刻も早く進めることが必要不可欠であります。
各種世論調査からも、国民の憲法論議についての関心が高まっていることは明らかであります。
我が国と我が国国民の将来のため、速やかに本審査会規程を成立させ、そして、我が党はもちろんのこと、直ちに各党が審査会委員を選任して、会長の互選を行うべきであります。
党派を超えた憲法論議が前進することを切望し、私の賛成討論を終わります。(拍手)