松山政司の発言 (本会議)
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○松山政司君 自由民主党の松山政司でございます。
自由民主党・無所属の会を代表して、野田内閣総理大臣に質問をさせていただきます。
最初に、東日本大震災、そして先般の記録的な集中豪雨や台風の災害によって亡くなられた方々の御冥福を改めてお祈りいたします。また、それら自然災害による被害、そして福島第一原子力発電所の事故の影響でいまだ不自由な暮らしを余儀なくされている多くの被災者の方々、さらには、深刻な風評被害で苦しまれている現地の方々に心からお見舞いを申し上げます。
さて、九月十三日の野田総理の所信表明演説と、それに続く衆参両院本会議における代表質問を拝聴をいたしました。昨日も、我が党の中曽根議員会長が、政権交代以降の民主政権の政策や政権運営に関して総括をし、厳しい評価を下すとともに、野田政権の先行きに非常に強い懸念を示されました。
私の思いも中曽根議員会長と全く同じであります。同時に、今の国会の議論を被災地から見れば、一種の違和感も覚えるのではないでしょうか。その違和感とは、震災後六か月も経過した時点でこんなやり取りをしていていいのだろうかということであります。あれほどの大地震と津波により甚大な被害を受けた日本国の立法府である国会が、震災から半年もたった今、まだこんな議論をしていていいのかというもどかしい思いであります。
自分も既に何度も現地に入っておりますが、現地の方々の悲痛な叫びと政府・与党のスピード感のなさとのギャップには、私自身もいら立ちを覚えます。
この危機的状況に政治の空白をつくってならないと言い続けた菅前総理の、言ってみれば被災地の方々を人質に取ったかのような居座りのために、復興はかえって遅れてしまいました。震災前には退陣寸前だった菅政権にとどめを刺さなかったばっかりに、被災者の皆さんを逆に一層苦しめることになってしまった、私にはそんな後悔の思いが込み上げてまいります。何としてでも菅総理を引きずり降ろし、総選挙に持ち込み、国民の信任を得た政権で一気に復旧・復興への道筋を付ける、たとえ一時的な空白があったとしても、結局はその方が早道だった、そんな反省の思いがあります。
しかし、こうなってしまった以上、野田総理の下で速やかに懸案を処理し、国民に信を問うべきと考えておりましたが、何と野田総理は、今国会、震災復興や財源問題だけでなく、円高対策、外交、防衛、数多くの懸案があるにもかかわらず、会期を四日間とすることを強行的な多数決で決めてしまいました。
このことだけを取っても、残念ながら前総理と同じように、野田総理にも震災復興そして日本再生への気概と覚悟が欠如している、明々白々であります。それが分かった以上、私たちは断固たる態度で野田政権に対峙してまいる所存であります。
本日午前中に、三十日まで会期を延長することになったようであります。我々にとっては不十分な会期ではありますが、その会期の中でしっかりと野田政権の政策をただしてまいりたいと考えます。各大臣におかれましては、真摯に議論に応じていただきますようにお願いを申し上げる次第であります。
さて、具体的な質問に入っていきたいと考えますが、その前に、総理の所信表明演説において一つだけ指摘をさせていただきたいと思います。それは、あの所信表明演説の中にマニフェストのマの字も出てこなかったということであります。これはある意味、画期的な事実であります。
さきの衆議院選挙において民主党が高らかに掲げ、結果的に国民をだまし政権交代をもたらしたマニフェストですが、これは明らかに実現不可能なものでした。マニフェストという言葉自体を野田総理が使われなかったことは、民主党三代目の総理にしてやっとこれを引っ込められたものと推察をいたします。そして、そうであるならば、国家国民のために大変喜ばしいことと存じます。
どうか野田総理には、絵にかいたもちに終わったマニフェスト政治の過ちを大いに反省していただき、その上で今年八月の三党合意などの公党間の約束を遵守していただかなければなりません。
本日、私は、野田新内閣の内政問題、特に経済、財政、税制、TPP、そして円高などへの問題を中心に質問をし、我が党の政策と比較をしつつ、これまでの民主党の政策の問題点を指摘させていただきます。どうか国家国民の幸福のために、前向き、建設的な野田総理のお答えをいただきますよう、よろしくお願いいたします。
では、まず第三次補正予算について伺います。
これまで震災対応のため、五月に四兆円の第一次補正予算、七月には二兆円の第二次補正予算を編成をいたしました。いずれも当面の復旧のための必要な応急措置の予算であります。
本格的な復旧・復興のための第三次補正予算は、その必要性が長らく叫ばれていたにもかかわらず、来月、十月にならないとその姿が見えてこない状況であります。ここまで遅れた原因は、言うまでもなく、菅前総理が自らの保身のための時間稼ぎとして中途半端な第二次補正予算を編成したからであります。しかし、第三次補正予算の一刻も早い編成が待たれる状況の中、この臨時国会を短期で閉会してしまうという野田総理も、復旧・復興を故意に遅らせているという意味では菅前総理と全く同罪であります。
この状況下では、本来は政府原案ができ次第すぐに審議に入れるように国会を開いておくというのが至極当然ではありませんか。なぜ国会を一度閉じるんでしょうか。恐らくどのような説明をもってしても我々は納得できませんが、最大限誠意ある回答を求めます。そして、次の国会はいつ召集するお考えでしょうか。第三次補正予算の編成状況と併せてお答えをください。
我々自由民主党では、既に七月の第二次補正予算の段階で、被災地の本格的な復旧・復興と日本経済全体の再生のため、総額十七兆円の補正予算を編成をいたしました。具体的には、被災地の早期復旧、被災者の生活支援、被災地の産業再生、被災地自治体の支援、原発事故対応、災害に強い国土づくり、そして我が国産業の基盤強化など様々な項目にわたって、それぞれ一兆円から数兆円の大胆な対策を打つものです。与野党の徹底的な議論と対話を唱える野田総理は、今回の第三次補正予算の編成に当たって、当然こうした野党の提言も参考にされていることと存じます。
そこで、伺いますが、総理は、この自民党の補正予算案をどのように評価をされ、どのような点を政府案に生かしていくか、お考えをお聞かせください。
政府の第三次補正予算は十兆円以上の規模になると言われております。第二次補正予算の二兆円と合わせて十二兆円以上ということになります。それでも我々の十七兆円の補正予算より相当少ないわけですが、この中に、本格的な復旧・復興のための対策と、経済対策が入るわけです。それぞれ十分に行えるのかどうか、大変疑問です。
総理、十兆円以上という第三次補正予算の規模、何を根拠に出てきたんでしょうか。そのうち、どの程度が復旧・復興、どの程度が経済対策に充てられるのか、現時点のもので構いませんので、見通しをお教えください。
第三次補正予算では、被災地の復旧・復興を図ることと併せて、全国的な災害に強い国土づくりのため社会資本整備を行うことが肝要であります。自民党の補正予算では、災害に強い国づくりとして、港湾、空港、道路等の整備、孤立地域対策、学校の防災拠点化、耐震補強など、三兆円を措置するというように提案をしています。
政府案にも当然、被災地のみならず、全国を視野に入れた防災社会資本整備が盛り込まれることと思いますが、その基本的な考え方、具体的な施策、予算規模をそれぞれお聞かせください。
また、政府は、今年度予算で全国の公共事業について一律五%の執行留保を行っています。これは三千億円に相当し、留保した額は被災地の港湾、道路などインフラ整備に充てるためだということでした。
そこで、お伺いします。
執行留保した予算のうち、既に実際に被災地に使われた額は幾らでしょうか、お答えください。もし多くが使われていないのであれば、単に執行を留保してため込んでいても何の意味もありません。直ちに留保を解除すべきです。必要な額は、第二次補正予算で計上した八千億円の予備費や第三次補正予算で手当てすれば済むことでございます。この点について、総理の見解を求めます。
次に、復興のための財源でございます。
財政事情が厳しい中、復興財源は、税制措置のほか、歳出の削減、国有財産の売却、公務員人件費の見直し等々で捻出することを総理も表明されています。税制措置は、政府税調が週内にも案を提示すると伺っております。税外収入についても、四兆円は確保できるなどと伺っております。しかし、様々な情報が錯綜しておりますので、総理、全体像を整理をして、今後の決定プロセス、スケジュールをお示しください。中でも特に、公務員人件費の見直しは必ずやるということでよいですね。念のため確認させていただきます。
自民党では、さきに述べた十七兆円の補正予算のみならず、震災の発生直後から数多くの提言を取りまとめて政府に申し入れてきました。提言は、第一次から第三次までだけでも五百七十七項目という提言、それ以降も含めると八百項目を超える数に上ります。
それに比べ、政府の震災対応の貧弱さは目を覆うばかりでありました。もちろん、実際に被災地に駆け付け、献身的な活動をされた自衛隊、消防、警察、そして国土交通省東北地方整備局、それらの方々の御活躍は実にすばらしいものでした。しかし、それを支えるべき政府の予算案や法案は、ツーリトル・ツーレートと酷評されたように、余りにも中身が薄く、遅きに失するものでした。
そのため、我が党を含む野党が提出する議員立法、修正案の方が政策面でも質の高いものであり、政府・与党がそれを丸のみして成立をさせるという状況に至ったのでございます。
自由民主党が原案を作成し、ほぼそのままの内容で成立した法案は、復興再生基本法、津波対策推進法、原子力損害賠償仮払い法など、数多くあります。また、被災地に明日を生きる希望を持っていただくために大変重要な、被災者の方々も待ち焦がれている二重ローンの救済法案、私学災害復旧助成法案、そして災害臨時交付金法案、参議院を通過をし、現在、衆議院で審議中であります。
野田総理、このように野党が政策を立案し、政府・与党がそれを追認するという状況を情けないとは思いませんか。なぜ、このようなていたらくになってしまっているのでしょうか。総理の考えるこれまでの総括をお聞かせをください。
また、二重ローンの救済法案、私学災害復旧助成法案、災害臨時交付金法案、これらは衆議院での審議、採決を残すのみであり、我々参議院としては、当然、この緊急かつ重要な法案、今臨時国会で成立させていただけるものと信じています。政府の対処方針を明確にお示しください。
もう一点、原発事故による緊急時避難準備区域の病院では、職員や患者が激減し、地域医療が壊滅の危機にある中、九月十三日閣議決定をされた仮払い法施行令では医療機関が対象外とされました。東電の本払いはいまだ端緒にも就いておらず、このままでは来月にも医療機関が次々と倒産してしまいます。今国会中に対応すべきだと思いますが、総理のお考えをお伺いします。
ここから震災対応以外の政策について質問をしたいと存じます。
まずは、円高対策です。
総理も所信でお述べになりましたが、今日のような歴史的な円高が続くと、輸出企業がダメージを受けるのみならず、中小企業、下請企業、多くの企業が海外に生産拠点を移し、国内産業の空洞化、雇用問題の深刻化が進むおそれがあります。
実際、NHKの調査で、大手企業の三割が工場の海外移転を考えていると結果が出ており、経済産業省の調査でも、このまま円高が半年間続くということになれば、大企業の四六%が製造、研究開発拠点を海外に移すと答えています。何としても早期に対策を取る必要がございます。
総理は、財務副大臣、財務大臣と経験をされ、この問題に精通をされているはずです。その総理が所信で述べられた円高対策は、立地補助金の拡充、円高メリットの活用など、円高を前提とした政策であります。もはや円高自体の是正は不可能というお考えのように見受けられます。
そこで、伺います。
円高メリットの活用というのは、円高を容認するということですね。そうでないなら、円高自体を是正する方策として介入以外にお考えになっているものは何か、お聞かせをください。
次に、環太平洋戦略的経済連携協定、いわゆるTPPについて伺います。
総理は、来週訪米し、オバマ大統領と首脳会談をされると伺っております。その場では、日米同盟の将来像や円高問題等に加え、TPPに関しても話合いが行われるかもしれません。しかしながら、国内でのコンセンサスがない段階で、よもや前のめりに積極的な姿勢を示されることがあってはなりません。また、今年十一月にはハワイでAPECが開催をされ、米国はそこでの大枠の合意形成を目指しているとされます。私は、そこで国内の合意もないままにTPPへの交渉参加表明が行われることがないか、大変懸念をいたしております。
総理、TPPに関して、国内でのコンセンサス形成をどのように行っていくお考えでしょうか。また、国内でのコンセンサスがないままに交渉参加を表明することがないと確約をしてください。
TPPに加入した場合の効果に関しては様々な見方があります。内閣府、農林水産省、経済産業省、それぞれTPPの効果を試算していますが、一致した見解は得られていません。しかしながら、私は、歴史的な円高が進み、震災や原発事故からの復興も進んでいない現状においてTPPにおいそれと加盟することは、我が国の農業や食料安全保障にとって破滅的な結果をもたらすのではないかと危惧いたします。
農林水産省の試算では、TPPに加盟した場合、米の生産は九割減少すると、三百四十万人の雇用が失われ、食料自給率は一四%に低下をするというふうに言われています。これは、我が国の農業や地域社会の崩壊を意味します。野田総理からも、農家の末っ子同士の間に生まれた子供とおっしゃるのでありますから、何が起こるか実感としてお分かりになると思います。
また、食料安全保障を考えても、食料自給率一四%という事態は容認できません。食料価格の高騰や急激な為替変動に対して脆弱な国家となり、外交的な立場も弱くなります。お金を払い、頭を下げて外国から食料を輸入する国家となるわけです。紛争や災害、どんな緊急事態が世界中で起こるか分かりません。そうならないように、国家戦略として食料自給率五〇%を目指しているのではありませんか。TPPへの加盟は、その目標と明らかに矛盾をします。
一体、政府として総合的にTPPの経済効果や雇用に関する影響をどう考えているんでしょうか。各省の見解ではなく、統一見解を総理からお示しください。当然、最近の円高や震災の影響も織り込んだ数字を示していただきたいと存じます。もし今日この場で示せないのであれば、いつまでに出されるのか、時期を明示していただきたい。
また、政府が閣議決定している食料自給率五〇%という目標とTPPへの参加は矛盾しないのでしょうか、お答えください。
TPPについては、拙速に結論を出すのは、十分に議論を重ね、コンセンサスを形成することが何よりも大切であると再度指摘をさせていただきます。その前提として、政府から偏りのない情報を分かりやすい形で提供していただきますよう、お願いをいたします。
次に、社会保障と税の一体改革について伺います。
菅政権において鳴り物入りで始まった改革でございます。しりすぼみに終わったとの印象は拭えません。
総理は、所信で、菅政権が取りまとめた政府・与党の社会保障・税一体改革成案を土台として、真摯に与野党での協議を積み重ね、次期通常国会への関連法案の提出を目指しますと述べられました。しかしながら、与野党の真摯な協議を言う前に、民主党内、そして連立与党内の中でどの程度コンセンサスが取られているのでしょうか。民主党内の都合で表現を曖昧にし、さらに閣議決定ではなく閣議報告という軽い扱いにしておいて、野党には真摯に協議せよと言うのは虫がよ過ぎるのではありませんか。
社会保障と税の一体改革について、民主党内、そして連立与党内では完全にコンセンサスが取れていると理解していいですね。お答えをいただきたいと存じます。
もし、民主党内、連立与党内に異論がある状態であるならば、野党に協議を呼びかけるのは、その意思を完全に統一をしてからにしていただくよう、お願いをいたしておきます。
消費税問題に関しては、政府・与党の一体改革案では二〇一〇年代半ばまでに段階的に一〇%まで引き上げるといった表現で、引上げ時期がぼかしているのは納得できません。選挙を控え、政権与党が国民に耳障りな増税を主張するのを避けたとしか思えません。
野田総理は、消費税に関して、総理就任後に発行された「Voice」十月号の「わが政治哲学」の中で、選挙での敗北を恐れる余りに、政治家自らが増税や社会保障の改革の議論をタブーとしてしまう無責任な在り方には断固としてノーを言わなければならないと主張しています。
総理には、この場でも断固として自らの主張をしていただきたい。消費税を、いつ、どれだけ引き上げるのか、理由とともにお答えをください。
税制改革に関連して、燃油の免税措置廃止の問題について伺います。
現在、農林水産業に使用する軽油については軽油引取税が、A重油については石炭石油税が免除されています。これらの免税措置は共に来年三月までで終了する予定となっており、継続が危ぶまれています。農林水産業など、地域経済の基幹的な多くの産業で大きな負担増となる甚大な問題であります。
特に、被災地はもちろんのことでありますが、漁業関係者にとっては、経費の四割が燃油代であり、まさに死活問題です。ただでさえ魚の価格も安くなり、漁具や油代は高くなるという逆境の中で、何とか生計を維持しているのが零細漁業者の現状です。免税が廃止をされれば、多くの沿岸漁業者が廃業に追い込まれるおそれがございます。
政府税調でも当然検討の俎上に上っていると思いますが、燃油免税措置の廃止の問題に関して、急激な負担増を回避する観点から、制度を恒久化して地方経済の安定と活性化につなげていくといったお考えがあるのかどうか、お聞かせをください。
震災直後に東北の被災者の方々から伝わってきた我慢強さ、そして秩序のある行動、さらには自分のことを後回しにして隣人のことを思いやる心は、世界の人々を日本人ここにありと驚嘆をさせました。我々は必ずやこの国家的危機から立ち上がる力を持っているんです。
我々自民党、今後とも国民のため、また被災者のため、全身全霊を傾けてこの危機的状況に対処してまいります。そのために、野田政権に対しても是々非々の姿勢で向き合う所存でございます。
野田総理も、所信で、与野党が徹底的な議論と対話によって懸命に一致点を見出すことを呼びかけました。我々自民党も望むところでございます。どうか、野田総理は、演説で表明されたこのことを、言葉だけではなく行動に移していただきたい。逃げずに、ごまかさずに、徹底的に我々と議論をして、一致点を見出すこと、努力をしていただきたい。
短期間で逃げるように国会を閉じ、土に潜ってしまうのではなく、正々堂々と頭を出して我々と真正面から向き合ってください。そのことを最後に強く強く主張させていただき、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇、拍手〕