柳田稔の発言 (本会議)
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○柳田稔君 私は、民主党・新緑風会の柳田稔でございます。
ただいま議題となりました野田総理大臣の所信表明演説に対し、会派を代表して質問いたします。
冒頭、一言申し上げます。
東日本大震災及び福島原発事故から半年が過ぎました。お亡くなりになられた方々及び親族の皆様に改めてお悔やみを申し上げます。また、今なおふるさとを離れて避難所などでの不自由な生活を強いられている約八万二千人の方々にもお見舞いを申し上げます。新たな政権のスタートとともに、内閣と党を挙げて早期の原発事故の収束、震災復旧・復興に全力を挙げて取り組むことを与党の一員としてお約束申し上げます。さらに、さきの台風十二号による豪雨の被害に遭われた方々に対しましても、心からお見舞いを申し上げます。
さて、我が民主党政権は、二年前の本日、九月十六日にスタートいたしました。我が国にとって政権交代は正しかったと私は思います。過去の政治から脱却し、新たな政治、国民の生活が第一を実現することは本当に大変なことだったと実感をいたしております。一歩ずつ進んでいるわけでございますが、一方、一年ごとに総理大臣が交代するということは国民の皆様に大変申し訳ない結果と言うしかございません。
そこで、まず最初にお聞きします。
三人目の総理として、民主党政権が崖っ縁に立っているとの危機感を持って政権運営に当たるお気持ちはおありだと思いますが、総理の決意をお聞かせください。
次に、政治姿勢について伺います。
所信表明演説の中で、政治に求められているキーワードとして「正心誠意」を強調されました。自らの心を正し、政治家としての良心に忠実に、国難に立ち向かう重責を果たしていく決意を込めたものと思います。同時に、総理は、国民の声に、心の叫びに真摯に耳を澄ますとも訴えています。まさにその言やよしでございます。しかし、せっかくの良い言葉も、実行を伴わないと、ただのたわ言に終わってしまいます。総理は、民主党の代表選におきまして、自らをドジョウに例え、泥臭くても粘り強く政治に取り組む考えを主張されました。謙虚な人柄がにじみ出たものと多くの同僚議員の共感を呼んだのは事実でございます。言葉に出す以上は、断固実行あるのみであります。
総理が敬愛する維新の英傑西郷隆盛は、尾辻副議長、私の郷里鹿児島の大先輩でございます。野田総理の政治信条を改めてお聞かせください。
野田内閣が抱える最大の課題は、言うまでもなく、大震災の復旧・復興であり、原発事故の収束であります。特に、所信表明演説の中で、福島の再生なくして日本の信頼回復はありませんと宣言されましたが、私も全面的に賛成いたします。
といいますのも、私の選挙区広島県は、長崎県と並んで一九四五年八月に原子爆弾投下によって多大なる被害を受けたからであります。今は百万都市広島市となっていますが、被曝の被害は六十五年が過ぎた今でも残っています。放射性物質による汚染には、人知を超えたものがあることは否定はできません。とりわけ、子供たちや妊婦の方々の被害に深く考慮すべきであります。その意味で、総理が除染に力点を置き、健康管理に優先的に取り組むことを表明されたのは的を射たものでございます。
一度ならず三度も「ヒバク」に直面した国民の心の痛みを忘れてはなりません。改めて、放射性物質対策に取り組む覚悟のほどをお示しください。
次いで、復興対策を加速させなければなりません。そのためには、第三次補正予算を早期に成立させ、被災地に資金を投入しなければなりません。その際に気になるのは、財源のつくり方であります。
総理は、歳出の削減、国有財産の売却、公務員人件費の見直しを列挙した上で、時限的な税制措置に触れておられます。これは、これまでの発言の流れでいえば臨時増税にほかなりません。そのとおりでよろしゅうございますか。
その上でお尋ねします。
総理は、増税の具体的な税目や期間、年度ごとの規模について、政府及び民主党税制調査会の審議で得る複数の選択肢から選ぶと表明されています。今のところ、所得税、法人税の基幹税で九兆円規模の臨時増税を予定していると伝えられております。また、増税の規模を圧縮するために、日本郵政株式の売却も検討していると報じられています。実際のところはどうなのか、率直に語っていただきたいと思います。
次に、財政再建について質問します。
急激な円高、国際金融市場の不安定化などが起き、産業の空洞化、財政の悪化により、国家の信用が損なわれようといたしております。財政再建は早急に取り組むべき課題であります。
総理は、財務副大臣、財務大臣として二年間にわたり我が国の財政の対応に取り組んでこられました。最も財政金融事情に通じておられると思います。国の歳入が半分を国債に依存し、そのため国の債務残高が一千兆円に迫る危機的な状況にあると指摘されていますが、このことは私も十分に理解しております。
総理は、こうした状況を打開するために、財政再建のために取り組む三つの道を示されました。すなわち、政治と行政が襟を正す歳出削減の道、経済活性化と豊かな国民生活がもたらす増収の道、そして、将来世代に迷惑を掛けないために更なる国民負担をお願いする歳入改革の道でございます。
言葉遣いに大いに気を遣っているのがよく分かります。しかし、歳入改革とは、ずばり増税ではないでしょうか。遠回しに言うのではなく、率直に新たな国民負担を求めるための増税に言及すべきだと私は思います。復興財源の必要性を訴えるところでも、時限的な税制措置という表現であえて増税の言葉を避けているような気がいたします。なぜ率直に増税と言わないのでしょうか。
総理は、就任後の九月十日に発売された月刊誌「Voice」の中で「わが政治哲学」と題する論文を発表されました。これは、財政再建を先延ばししていたら日本に大きな危機の波が到来しないとも限らないと指摘、その上で、一般消費税の導入を総選挙で主張した故大平正芳総理を高く評価し、選挙での敗北を恐れる余りに政治家自らが増税や社会保障改革の議論自体をタブーとしてしまうような無責任な在り方には断固としてノーを言わなければならないと明言しております。
国会の場でこそ国民に向かって率直に語るべきではないでしょうか。世間では、財政規律とか財政再建路線という言葉は、もはや増税そのものを意味することで定着いたしております。野田総理が繰り返し強調されているように、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合う、このことを国民に対して真剣に求めるならば、きちんと増税が必要であること、その理由はこうだ、そして、その前段階で何をすべきであるかを腹を割って話してこそ、初めて共感を得られると思います。この場でいま一度、総理の見解を明確にお示しください。
財政再建の前提としての行政刷新についてお聞きします。
総理も所信表明演説の中で述べられておるように、六十年以上を経たにもかかわらず、行政刷新は道半ばでございます。精査すればかなりの無駄が洗い出せます。こうした行政の無駄をつくる原因は一体どこにあるとお考えですか。私は、国会議員、公務員を含めて、既得権益にすがりついていることが原因の一つだと考えています。
人件費や定員の削減によって無駄を省くのが必要なことは分かっています。しかし、現状が変わらないのはこれまでの政治の怠慢だと思います。財政再建の前提として行政刷新は避けて通れません。総理の覚悟を伺います。
次に、今を生きる世代、若者についてお聞きします。
これからの日本を担っていくのは、若者世代であります。総理の所信表明にもありましたように、若い情熱は希望と誇りある日本を再生するために不可欠です。しかし、若者を取り巻く状況は大変厳しいものであります。昨年の二十四歳以下の完全失業率は九・四%となっています。全年齢の完全失業率が五・一%であることを考えますと、非常に高い数字です。加えて、フリーターの数は百八十三万人と前年から五万人増加しており、不安定な就労に従事している若者の数も多くなっています。国会に提出されています改正労働者派遣法案は、派遣労働者の雇用の安定や待遇の改善を目指したものでありますが、審議は一向に進んでおりません。総理は、若者の失業率、若者の正規雇用化に関してどのようにお考えでしょうか。総理の進める全員参加型社会における若者の雇用についてお聞かせください。
また、新卒者の就職環境についても、この数年、非常に厳しいものとなっています。今年三月卒業の就職内定率は、大学については過去最低の九一%であります。来年の就職環境も厳しいものが見込まれています。就職が厳しくなれば、その分、就職活動への準備も早まるでしょう。そうなれば、就職活動の比重が大きくなり、大学教育の意味は低下してしまいます。卒業後三年以内の既卒者採用を促進する新卒者就職実現プロジェクトはありますが、就職活動の厳しさは変わりません。総理は、グローバル人材の育成や自ら学び考える力を育む教育など、人材の開発を進めるとおっしゃっていました。総理の大学教育、高卒、大卒の新卒者の就職についての御所見をお伺いします。
若者の雇用への不安は、年金の納付率低下にも表れています。昨年度の二十代の年金納付率は五〇%を割り込みました。働きたくても働けない、払いたくても払えない、その上、払っても本当に年金はもらえるのだろうかという年金制度そのものへの不信感が高まっています。総理は、現在の若者に対し、年金制度をどのように説明されますか、お聞かせください。
さらに、雇用問題は、若者から家族をつくる機会を奪い、少子高齢化の一因となっています。震災後、絆の重要性が見直されていますが、私たちが絆という言葉から真っ先に思い浮かぶのが家族の絆ではないでしょうか。福島の高校生たちの言葉にあった、働き、結婚し、子どもを産み、育てる、このことは日本中の若者の願いであることを申し添えておきます。
総理は、ドジョウが金魚のまねをしてもしようがない、金魚にはなれませんとおっしゃっていましたが、ドジョウにもなれないと苦しんでいる若者がいるのです。泥臭く粘り強く生きようにも、活躍する場所が少ないのです。このような状況にある若者世代が、この国に生まれてよかったと心から実感できるようにするためには、どうすればよろしいのでしょうか。もし、今総理の目の前に、就職に悩み、自分の将来を憂えている若者がいるとしたら、どのような言葉を語りかけますか。総理の思いをお聞かせください。
次に、総理は、中間層を分厚くすることの大切さを力説されました。
日本の高度成長を支えたのが中流とも言われた人々であるのは間違いありません。総理は、今の日本が直面している貧困化や世代間格差の背景に中間層からこぼれ落ちた人々がおり、失望や怒りによって社会の不安定化を招いているとの認識を示されました。私も全く同感であります。では、どのような手だてによって再び分厚い中間層をつくり出していくのか、具体策こそが求められているのであります。この点について、総理の御見解をお聞きします。
総理の演説の中で私が注目しましたのは、新しい日本のフロンティアの開拓の方策について言及された点であります。具体的には、海洋資源の宝庫と言われる周辺海域の開発であり、宇宙空間の開発利用の戦略的な推進体制の構築でございます。
昨今、景気の低迷により、あしたに向けた明るい楽しい話がありません。未開拓の分野が多い海洋と宇宙に夢を懸けるのはすばらしいことだと考えます。海洋にはメタンハイドレートやレアメタルなどの鉱物資源の埋蔵が確認されております。また、最先端レベルにある日本の宇宙技術によって新たな人工衛星やロケットの打ち上げが可能だと思います。若い人たちに夢と希望を与えるこれらフロンティアの方策に資金を投入すべきです。総理の御所見をお伺いします。
次に、経済成長について総理のお考えをお尋ねします。
総理は新成長戦略の再強化を行うことを宣言されましたが、具体的な中身については述べられておりません。いかなる方策をお持ちなのか、その一端をお示ししていただきたい。中小企業を始めとする民間企業の活力を強化し、環境・エネルギー分野や医療関連の分野で新しい産業と雇用を生み出すおつもりのようですが、もう少し各論について触れていただきたいと思います。
同じことは農林漁業の再生についても言えると思います。所信表明演説では言及されていませんでしたが、TPP、つまり環太平洋経済連携協定について、マスコミによると、財界人には前向きに取り組むとの発言をなされたようでございます。国の礎である農業との関連で、単に前向きでいいのでしょうか。TPPには様々な問題点が含まれており、関係者の利害が正面からぶつかるのは避けられません。どのように対処するおつもりでございますか。
野田総理の誕生は国民の皆様に歓迎されました。マスコミ各社の世論調査に表れた内閣支持率が軒並み六〇%台と高いことがそのことを証明いたしました。前任者の不人気ぶりからまさにV字回復した形でございます。
しかし、民主党政権はこの二年間で信頼を次第次第に損なってしまいました。瀬戸際に立たされている政権であることを忘れてはいけません。国民は実にクールに、野田政権がどのように仕事をし、責任を果たすのかを眺めています。口先だけでなく、本当に仕事をやれるかどうか凝視しております。
最後に、野党の皆様に呼びかけたいと思います。
日本は百年に一度と言える未曽有の災害に直面し、国家の危機に瀕していると思います。このようなときこそ政党の枠組みを超えて協力しようではありませんか。熟議の場である本院、参議院の特性を生かすことを私たち一人一人が真剣に考えたいものでございます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇、拍手〕