尾崎勝の発言 (国際・地球環境・食糧問題に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(尾崎勝君) 日本水道協会の専務理事を務めています尾崎です。よろしくお願いします。
 本日は、お話をする機会をいただきありがとうございます。事務局からは日本水道協会が取り組んでいる海外水ビジネスについてのお話ということでしたので、準備を進めてまいりました。昨日、南アジアなどでの活動についても触れていただきたいという要望がありましたので、現在取り組んでいるインドでの活動を最後にお話しさせていただきます。(資料映写)
 まず、主題とも関係しますので、日本水道協会の概要と活動について簡単に触れさせていただきます。
 日本水道協会は、明治三十七年、協議会として発足しました。正会員は、水道事業体を運営している地方公共団体等、ほぼ全国の水道事業体全てが会員であります。昨年の十月時点で千三百五十二団体、企業などの賛助会員が五百三十二、大学の研究者など個人会員が四百九十二います。
 主な活動は、水道事業に関するマニュアル、ガイドラインの作成、論文等を掲載した月刊誌の発行、約五十コースの研修事業、全国水道研究発表会の開催、経営や技術面での水道事業体への支援、水道管の検査や水道機器の品質認証の事業、それに今日のテーマにかかわる国際活動です。
 また、震災など緊急時への対応が重要な業務であります。地震など災害時においては、全国の本協会のネットワークを生かして、応急給水・復旧を行っております。昨年三月十一日の東日本大震災に際しては、本協会に対策本部を設置し、全国から応援に駆け付ける水道事業体の調整に当たりました。写真は応急給水、応急復旧の実施状況でありますが、これらの応援により、被災地での応急給水と早い復旧に貢献したところであります。
 次に、本日の主題とも関係しますので、国内の水道事業の状況について簡単に触れさせていただきます。
 我が国の水道は世界的にも高い水準にありますが、次の課題の対応に迫られております。一つは、料金収入の低迷。中小規模水道事業体の現状、つまり経営基盤が脆弱なこと。老朽化した施設の更新・再構築。一つは、頻発する地震等、自然災害への対策。一つは水質汚染事故等の被害。一つは熟練職員の大量退職に伴う技術の継承などであります。これらの課題を広域化推進と公民連携推進で解決しようと取り組んでおります。これらの課題が、後に述べますが、国際貢献ビジネスにつながるものと考えております。
 さて、本題ですが、世界の水問題は深刻で、特に途上国では、不衛生な川の水を利用して病気になったり、水を確保するために子供や女性に大きな負担が掛かっていたり、水道があっても十分に整備されていないなど多くの問題があります。国連では、二〇一五年までに安全な水にアクセスできない人口を半分にしようというMDG、ミレニアム開発目標を定めております。世界各国が各方面から取組を行っておりますが、それでもまだ九億人近い人が安全な水にアクセスできない状況にあります。
 途上国では、気候変動やエネルギー問題などグローバルな課題とともに、それぞれの国の発展段階に応じて水道の課題が顕在化しております。水道問題の課題解決には途上国内部での努力も重要でありますが、国外からの支援も欠かせません。国際機関の支援、JICAなどのODA、また、最近経済発展が著しい新興国はPPP形態で水道整備を進めることも多く、我が国ではこの点で出遅れております。
 我が国がなぜ海外のPPP事業に出遅れているのか、これをフランス、英国との比較で見ますと、フランスでは、自治体から民間へ包括的に委託する形態で百五十年の歴史があります。一九九〇年代にフランス企業は一気に世界へ進出しました。イギリスでは、一九八九年にサッチャー首相のときに水道事業が民営化され、水道事業体の多角経営の一つで海外ビジネスに乗り出しました。
 我が国では、水道事業は地方自治体でありまして、海外ビジネスは視野になく、また、民間は水道事業運営について全般の運営をやっていないためにノウハウがありません。このため、海外でのプレーヤーがいないという問題が顕在化し、この問題を解決しようと、二十二年六月の新成長戦略で、強い経済を実現するため、水道局等の公益事業体の海外展開策を策定、推進するということが一つの目標に掲げられました。
 地方自治体の水道事業は、元々地域住民のために存在する地方公共団体が行う事業であるため、海外での業務が法的に可能かどうか不明確でありました。このことを受け、総務省を中心として政府の検討チームが附帯事業として可能との見解を出しました。ただし、留意点があり、それをクリアする必要があります。現地水道事業に乗り出す形態として、検討チームでは二つの例を挙げております。一つは、水道局の第三セクターが民間企業とコンソーシアムをつくって海外水道業務をやる形態、二つは、水道局が直接民間企業とコンソーシアムをつくって海外業務をやる形態であります。幾つかの水道事業体では、この政府の検討チーム報告が出る前から取組を始めていましたが、報告が出ましてから更に取り組む事業体が増えております。
 先陣を切っている東京、大阪、横浜、北九州の水道事業体の取組を紹介したいと思います。
 東京都の事例では、第三セクターである東京水道サービス株式会社を使う海外ビジネスの形態であります。下の図ですが、水道局は相手国中央政府や地方政府への働きかけや技術的なアドバイスを行い、第三セクターと民間企業が実際の事業を行うものです。平成二十二年一月に発表した経営計画の中でこれを位置付けて、その後、ミッション団を派遣するなど取組を進めております。ベトナムなど幾つかビジネスの芽が出てきております。
 大阪市水道局の取組の事例ですが、右の図のように、水道局だけでなく、下水道、環境部門、それに経済界とともに大阪市水・環境ソリューション機構を設置し、取り組んでおります。また、大阪市水道局では、ISO22000という資格取得と姉妹水道の関係をきっかけに、ベトナムのホーチミン水道の水道整備に協力しながらビジネスに向け取組を進めております。
 横浜市も、図のように、横浜ウォーターを設置し、海外業務を目指しております。JICA業務などで協力しているベトナム・フエ市やフィリピン・セブ市などの協力事業をてこに、ビジネスに向け取組を進めております。
 北九州市の取組は、以前からJICA事業で友好都市としてつながりのあるカンボジア・プノンペン、ベトナム・ハイフォン、中国・大連などを対象に取組を進めております。カンボジアでは、既に官民連携で計画作成やコンサルタントの業務を受注しております。図に示された九か所の都市を対象にコンサルタント業務を行うものであります。
 以上挙げた四つの水道事業体を含め、取組を始めている地方自治体は、現在十数か所になっております。これらの地方自治体が国際貢献ビジネスで目指すものとしては、ここにあるように三点を挙げることができます。
 日本水道協会では、こうした水道事業体や産業界の活動を支援するため、一部写真に載せましたが、IWAという世界の水道関係者の集まりのネットワークに加わり、情報の収集、発信、各国水道協会との連携強化、JICA、厚生省の国際関係事業に協力、ISOの委員会活動などへ参加するなど様々な活動を行っております。
 さて、南アジアでの活動ですが、本協会は、アジアでは東南アジアでの活動が多く、南アジアでの活動は少ないところですが、最近、水ビジネスを支援する厚生省の事業もあって、日本水道協会はインド水道協会との交流を深めております。交流により、互いの水道に関する情報交換を図り、また人的な交流を深め、インド側にとっては、インドの水道整備に役立つ可能性のある日本の水道技術や経営能力が見出せること、我が国にとっては、効果的な国際貢献や水ビジネスを展開するために役立つ情報、人脈が得られることを目的に実施しております。
 今年、昨年、一昨年と水道協会の訪問団がインドを訪問しております。インドは広大な国です。マハラシュトラ州だけで約一億人の人口であります。どこか焦点を絞って調査する必要があると考え、インド水道協会の本部がマハラシュトラ州ムンバイにあることなどから、ここに焦点を当て、調査、視察を行っております。
 この写真は、今年一月にチャッティスガール州ライプールで開催されたインド水道協会第四十四回年次総会のセミナーの模様であります。日本政府の厚生労働省の支援を得て、日本から水道事業体の東京都、横浜市、北九州市の代表者が日本の水道の経営や技術について発表を行い、また民間の企業からも発表が行われました。発表テーマは、都市の水道に関するものであります。
 インド水道協会の年次総会後、インド水道協会と日本水道協会の間でメモを交換いたしました。インドでは一日のうち数時間、平均三時間か四時間しか水道を使えない状況であることから、それを改善して日本のように常時二十四時間水道が使えるようにするためのインドのプロジェクトにインド水道協会と日本水道協会が協力して活動しようと確認したものであります。マハラシュトラ州でもモデル的な事業を探すことから始めることにしております。この活動が、インドの水道整備に役立ち、また我が国のビジネスチャンスにつながればと考えております。
 まとめになりますが、国際活動の目指すところを模式的に示したのがこの図であります。本協会や水道事業体の活動がアジア、世界の水道の課題解決に役立つこと、それが、我が国の水道事業の活性化、産業界の活性化につながり、ひいては国内の課題解決や一層の高水準な水道サービスにつながり、一連の好循環のサイクルになればと考えております。
 最後に、皆様の御支援を得て、我が国経済の成長と世界の水問題の解決の両方に結び付く成果を上げたいと思っております。それが、日本の水道の水準を上げ、国民のためになると信じております。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 118014302X00220120222_008

発言者: 尾崎勝

speaker_id: 5174

日付: 2012-02-22

院: 参議院

会議名: 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会