阿部知子の発言 (本会議)
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○阿部知子君 社会民主党・市民連合を代表して、野田内閣総理大臣所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)
まず、冒頭に指摘をいたしますが、十月二十九日の所信、さらに各党質疑への御答弁を拝聴しながら、現下の社会経済情勢に対する野田総理の危機感の乏しさ、加えて、政権交代後三年を経た初心の後退、さらには、進むべき方向性への具体策のなさ等を感じたのは、私のみではないと思います。二十回以上繰り返されたあすへの責任も、むなしく響きます。
昨年三月十一日の東日本大震災から数えて二度目の冬を迎えようとする今日、復興のためと称して打たれた数々の経済政策は早くもその効果が薄れ、月例経済報告もこの三カ月間連続で弱含み、生産や雇用にも陰りが見えています。
世界経済という外的要因のみならず、日中関係の悪化という政治リスクの中で、対中貿易の落ち込みや観光分野に与える影響も極めて大きな懸念材料です。
このような状況下で、総理は、なぜ、もっと胸襟を開いて、早急に大胆な補正予算を組むことの必要性と協力を野党に呼びかけないのでしょうか。総理の見解を伺います。
さきに決定された予備費等を用いた四千二百二十六億円の経済対策は、誰が考えても余りにも場当たり的で、かつ、本格的な経済対策が先送りされることによって、戦略性の乏しいものになっています。おまけに、二〇一四年四月に消費税増税が予定されるとあれば、中小企業の皆さんは、身をすくめるような思いで先行きに不安を持っておられます。
二カ月連続で日銀の金融緩和が行われても、実体経済を立て直す産業政策、経済対策が伴わなければ、その効果もありません。
今こそ、政権交代の当初に構想した国家戦略室の機能を十分に発揮させて、まず、私ども社民党からも強く主張した、低炭素社会の実現と再生可能エネルギーの普及に全力を挙げて取り組むべきだと考えます。これまで歴代六人の大臣が国家戦略を担当されましたが、そうした力強いメッセージが実現されることは、今日までありませんでした。
ちなみに、省エネを初めとする低炭素社会の実現や再生可能エネルギーの普及は、家庭やオフィス、そして産業界を含めた国民各層の参加のもとに、すぐれて地方分散型のエネルギー・産業構造への転換を可能とするものであり、地域活性化と雇用にも直結するものと考えます。総理に、実効性のある取り組みについてお尋ねをいたします。
次に、冒頭で指摘いたしました初心の後退、すなわち、野田総理が述べられた、雇用を守り、格差をなくし、分厚い中間層に支えられた公正な社会への道筋がどうなったのかを伺います。
確かに、政権交代以降、リーマン・ショックで五・四%まで上昇していた完全失業率は、景気の持ち直しに伴い、つい最近まで低下傾向を示しておりました。しかし、そうした中にあっても、いわゆる非正規労働者の比率は上昇する一方であり、去る十月三十日に発表された労働力調査によれば、この種のデータがとられた平成十四年以降、男女ともに最も高い非正規雇用率となっています。
平成二十三年、男女計では三五・一%を非正規労働者が占め、男性では一九・九%、そして女性では何と五四・四%と、働く女性の二人に一人以上が非正規であるという現実です。
労働力人口が減少する中で、女性たちの就労は、社会にとっても、また一人一人の女性にとっても極めて重要な人生の支えであるにもかかわらず、低い賃金かつ不安定な身分に置かれているということを、総理は一体どうお考えでしょうか。
政権交代の当初に連立三党の共通政策として掲げた労働者派遣法改正はもちろんのこと、労働契約法の改正も抜本的とはほど遠いものとなっており、このままでは、不安定就労が生涯にわたる格差を生み続けることは必定です。
野田総理が政治生命をかけると言って民自公の三党合意のもとに成立させた消費税増税法は、果たして、社会の安心や活力を生むことにつながるでしょうか。
消費増税が、低所得者層や中小企業に与える重い負担はもちろんのこと、子育て世代も含めた年収三百万円から八百万円の幅広い世帯であっても、社会保険料負担の増大とも相まって生活を圧迫することは、各種調査の指摘するところであります。
景気低迷、家計の収入減の続く中での消費増税によって、総理の言うところの、まさに分厚い中間層が崩壊しかねないわけですが、総理は、このことをどうお考えですか。
政権交代後の出来事の中で、三月十一日の東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一原発事故への対応は、政権として最優先の課題であったと思います。そのおのおのに、政府はどう取り組んだでしょうか。
東日本大震災からの復興のために、二〇一一年度、一二年度予算で組まれた十七・五兆円の予算の中に、その使途が必ずしも被災地の復旧や復興を第一に考えたとは到底思われない事業が多数指摘されました。
中でも、二千九百五十億円に上る国内立地推進事業費補助金は、その大半が、被災地以外の全国の企業に対して、サプライチェーンを支えるという名目で支出され、一方で、被災地での中小企業等グループ補助金は、五度にわたる公募を実施し、被災地からの要望が高いにもかかわらず、なかなか採択されないという事態が起こっております。
これは、全国展開の資金力もある大企業よりも、被災地に密着して復旧復興の核となる企業の支援を優先すべきであるという、国民の思いにも反しております。
復興の基本方針が日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はないとしていることが、こうした歯どめのない全国補助を可能にしたわけですが、総理は、そもそも、復興構想会議等でうたわれた復興の基本理念をどうお考えなのでしょうか。
かつて、大正十二年に十万人以上の死者を出した関東大震災直後に約一万三百世帯の被災者からの聞き取り調査を行った経済学者の福田徳三は、その著書「復興経済の原理及若干問題」の中で、人間の復興という概念を繰り返し提唱し、それを具体化するものとして、生活本拠地である住宅の確保と、生を営む権利としての失業の防止を強く打ち出したと言われます。
住居や仕事の見通しもなく苦しむ被災者の現実より重いものはなく、まず、その方々にこそ支援が届けられるべきであります。
経済産業省としてもこうした被災地の中小企業や商店の実情を聞く作業を改めて行うことを提案いたしますが、枝野産業経済担当大臣はいかがお考えですか。
今回の東京電力福島第一原発事故を経験して、多くの国民は、原発事故の被害は事故後も長きにわたって続き、また、放射能に占領された故郷には帰ることもかなわないという現実を知りました。野田政権は昨年十二月十六日に事故収束宣言を出しましたが、それはせいぜい原発サイト内に限られたものであり、拡散した放射能は今も川や湖、海、大地、大気を汚し続け、健康被害の懸念も絶えません。
原子力の安全規制をつかさどるとして去る九月十九日に発足した原子力規制委員会の委員は、今もって国会同意人事を経ておらず、総理が国会閉会中に任命したのみという変則的な状況にあります。
その原子力規制委員会は、十月二十六日に、十六ある原発サイトで福島並みの事故が起きた場合の放射能の拡散予測を公表いたしましたが、今般決定された原子力災害対策指針で緊急時防護区域(UPZ)とされる三十キロメートル圏を超える放射能の拡散があり得ることを多くの箇所で示しました。
そのデータに一部誤りがあったとして周辺自治体からは不信の声が上がっておりますが、今後策定されることになる事故発生時の避難対策をも含む地域防災計画は、果たして、事故後に、再びふるさとに、居住地に戻れない事態をも想定したものになるのでしょうか。長浜原子力防災担当大臣に見解を伺います。
さらに、さきに建設工事が再開された青森県大間原発にあっては、東京電力福島第一原発事故以前の設置基準に基づくものですから、事故を踏まえて再考されるべきと考えます。
大間原発には、あわせて活断層の指摘もあり、また、津軽海峡を隔てて函館市まではわずか二十三キロメートルの距離で、その間、何も遮るものがありません。世界に前例のないフルMOXの原子炉ということで、プルトニウム飛散の可能性も含めて、極めて危険性が高いと考えますが、バックフィットの適用も踏まえての枝野経済産業担当大臣のお考えを伺います。
大飯原発の再稼働判断も、いわば暫定安全基準に基づくものです。活断層の再調査も近く行われますが、みずからの責任で再稼働を判断された野田総理は、これをまず停止させるべきではありませんか。
今後の原発の再稼働も新規立地も、全て原子力規制委員会の安全評価の上に成り立つという昨日の御答弁でしたが、一方で、原子力規制委員会は最終判断には関与しないということも表明しておられます。
一体、誰が最後に国民に対しての責任をとるのでしょうか。総理の認識を明確にしてください。
あわせて、総理は、繰り返し現実的な原発ゼロへの道に言及されましたが、その一方で、原発輸出に関しては、今回の復興予算の中にちゃっかりとベトナムでの事業化可能性調査に五億円を計上しております。到底、復興と関係あるものとも思われません。
また、自国では事故が起こって原発を卒業するということを表明しているのに他国には輸出するという矛盾を、総理はどうお考えですか。
冒頭で指摘したように、今、我が国は、尖閣諸島をめぐる中国との確執によって、経済までも冷え込む事態となっています。韓国との竹島問題、ロシアとの北方領土問題においても緊張関係が生まれています。
日本の直面するこうした問題について、米国の歴史家であるジョン・ダワー氏は、一昨日の朝日新聞に掲載されたインタビューの中で、全ては一九五一年のサンフランシスコ講和条約の中で取り残された課題であり、その後のアメリカの政策との関係であるという指摘をされていますが、これはまことに的を射ていると思います。
東アジアの中に位置する我が国が、同時に日米関係を見据えながら、今後どのように行動していくのか。いたずらに中国との対立をあおるのではない、粘り強い働きかけも必要になります。総理はいかにお考えか、お伺いいたします。
また、そうした意味では、総理が熱心に進められる通商交渉も、平和構築の大きな手段ではあると思います。ただし、現在、日中韓FTA交渉は、冷え込んだ外交関係ゆえ、なかなか進展を見せておりません。
その一方で、TPP、環太平洋パートナーシップには、国内からも強く懸念の声が上がり、十分な情報開示も、国民的議論もありません。こうした状況下でTPP協定交渉への参加表明をされることはよもやないと思いますが、総理、いかがですか。
日米関係にあっても、沖縄の普天間基地の移設問題が解決せぬまま、沖縄県民が強く反対するオスプレイ配備の強行や米兵により繰り返される性的暴行事件によって、沖縄の怒りは今や極限に達しています。
単に一時的な、米兵の夜間外出を禁ずるだけでなく、まず、早急に日米地位協定の改定に着手し、犯罪に対しての具体的かつ実効性のある再発防止策を確実にすべきです。玄葉外務大臣のお考えを伺います。
最後に、野田総理が消費増税法案の成立を図ろうとしたときから、既にその選択は主権者である国民に委ねられるべきでありました。その後に発覚した復興予算の不適切な執行状況も、この間の民主党政権の空洞化した政治の帰結だと思います。
一日も早い衆議院解散・総選挙こそが政治に対する国民の信頼を取り戻す唯一の方策であることを申し述べ、私の質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕