井上哲士の発言 (憲法審査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 日本国憲法は、十一条で基本的人権は侵すことのできない永久の権利だと定めた上で、十三条で包括的な幸福追求権を保障しており、その上で個別の詳細な人権カタログを定めるという懐の深い構造になっております。
 環境やプライバシーを本気で擁護するならば、憲法の根拠に基づいて立法で具体化することが必要かつ可能であります。現に、これらは、言葉としては現憲法の条文には明記されていないものの、憲法の民主的な解釈から当然導き出されるものとして裁判の規範ともなり、行政ののっとるべき重要な原則として定着をしております。
 新しい人権を追加するためだけに改憲する必要は乏しく、立法で解決できるというのが参考人の共通した意見だったと思います。
 小山参考人は、憲法を改正するのであれば、新しい人権は当然その有力候補になるとしつつ、新しい人権のためだけに憲法の改正をする必要はない、立法府がその責務を十分に果たせば、逆説的に新しい人権条項は要らないかもしれないと述べられました。
 高橋参考人は、環境権が大事だというならば法律によって実現するということがまず最初にやるべきことであり、現になされてきたとした上で、ぎりぎりまで環境を配慮した法律を作って、これ以上は駄目だ、でも国民はこれ以上の環境整備を求めているんだということになったときに初めて憲法で書こうということになるが、現在の立法体制はそこまでは行っていないと述べられました。
 土井参考人は、まず立法で広く合意を形成しながら、これならいけるんだという話になった段階でちゃんと憲法に書いて守っていくべきだと述べられました。
 一方、三十年にわたって自民党の改憲論議に付き合ってきたと述べられた小林節参考人からも、改憲論議をファッショナブルにさせるため、改憲論議の突破口としての新しい人権を考えておりました、新しい人権は必ずしも改憲によらなくて済むという発言があったことも重要だと考えます。
 去年の憲法記念日のときに、朝日新聞がアメリカの法学者が行った百八十八か国の分析というのを報道して大変話題になりました。世界の憲法にうたわれている権利の上位十九までを日本国憲法が全て網羅している、大変先駆的なものだというのがこの研究者の結論でありました。
 日本の憲法は、世界でも最も先進的な人権条項を持っております。問題なのは、幸福追求権を定めた上で、こうした先進的な人権条項のある憲法であるにもかかわらず、現実はそうなっていないことにあります。現実に合わせて憲法を変えるのではなくて、憲法のこの先進的条項に合わせて現実を変える努力こそ国会に求められていると思います。
 被災地の実情については先ほどもありました。今なお多くの方々が厳しい避難生活を強いられ、原発事故の被災者は、現在と未来への展望も持てずに、自分たちは見捨てられた、憲法が適用されていないと、こういう発言も参考人からもありました。今こそ憲法の原則に立った被災者の生活やなりわいの再建に政治、国会が全力を尽くすことが求められていると思います。
 また、社会保障の問題でいいますと、憲法二十五条を根拠とする生活保護制度の改悪が行われようとしております。国が生活に困窮をする全ての国民に対して必要な保護を行って、その最低限度の生活を保障することを生活保護制度は目的としております。最低限度の生活とは、国民が単に辛うじて生物としての生存を維持できるという程度のものではなくて、人間に値する生存を意味するものであります。ところが、現実は、自助や共助の名の下に、生活保護を必要としている人が窓口で排除されたり削減をされている、それに更に拍車が掛けられようとしております。
 憲法の生存権をしっかり守り生かすことこそ、私は、今、国会と政治に求められることであって、社会保障の拡充こそ憲法の要請であるということを強調しまして、意見表明といたします。

発言情報

speech_id: 118314183X00620130612_012

発言者: 井上哲士

speaker_id: 20704

日付: 2013-06-12

院: 参議院

会議名: 憲法審査会