溝手顕正の発言 (本会議)
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○溝手顕正君 自由民主党の溝手顕正です。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、政府四演説について質問いたします。
総理は、施政方針演説で、「一身独立して一国独立す」という福沢諭吉の言葉を引いて、私たち自身が自立して力強い日本をつくっていこうと呼びかけられました。病から復活された総理自身の姿とも、また震災から復興しつつある東北の姿とも重なり、大変説得力のあるお言葉だったと思います。
本日、私からは、我が国が自立に向け、直面する三つの課題、外交、経済、震災復興について総理のお考えを伺いたいと思います。
今後の日米関係と我が国の外交についてでございます。
まずは、外交問題から伺います。
日本は、戦後、安全保障をアメリカに依存し、自らは経済成長に資源を集中することで世界第二位の経済大国に上り詰めました。しかし、その後、冷戦の終結やアジアの急成長によって我が国を取り巻く環境は大きく変わってきました。
第一次安倍内閣が誕生した二〇〇六年には、北朝鮮が初の核実験を行い、翌年には、中国のGDPがドイツを抜いて世界第三位となりました。当時の安倍内閣は戦後レジームからの脱却を掲げましたが、それは、外交・安全保障面でいえば、我が国の経済力にふさわしい応分の負担をし、世界の平和と安定への責任を果たすことであったと思います。
あれから六年。我が国の安全保障をめぐる環境は日々緊張感を増し、国民の誰もが危機を実感するまでになりました。集団的自衛権の行使、憲法の改正など、前回安倍総理が目指した政策の必要性はますます高まっていると言えます。
総理は、先日の日米首脳会談で、強固な日米同盟を再確認されました。これは、ある意味では、戦後レジームの原点に立ち戻ることであり、また、我が国の新たな役割を考える第一歩になるものだと考えます。
そこで、今回の日米首脳会談を踏まえた今後の日米関係の展望と、世界の平和と安定のための我が国が果たすべき役割について、総理のビジョンをお聞かせいただければと思います。
北朝鮮の問題に対する対応について。
日米首脳会談では、北朝鮮の核実験に対する断固たる対処を確認できた点にも成果がありました。北朝鮮の核開発、ミサイル開発は、我が国にとって差し迫った脅威であり、断じて容認することはできません。日米が連携して、また国際社会が足並みをそろえて、北朝鮮に対する制裁を強力に実施し、核を放棄させることが必要です。
そこで、伺います。国連でも北朝鮮に対する制裁強化に向けた議論が行われておりますが、現在の状況はどうなっているのでしょうか。また、日本政府として各国にどのような働きかけを行っているのでしょうか、状況をお聞かせください。
また、国連による制裁とは別に、日米が協力して独自の制裁を行うことも必要です。安倍総理がオバマ大統領に提案されたように、日米による金融制裁を行えば、世界第一位と世界第三位の経済大国による制裁ですから、その効果は大きいでしょう。日米合同の金融制裁についての実施の見通しをお聞かせください。
さらに、北朝鮮への制裁が実効力を持つためには、その最大の支援者である中国の協調も不可欠です。我が国と中国とは、尖閣列島などをめぐる緊張関係がありますが、北朝鮮の核開発を認めないという点では立場は共通しています。最近、中国は制裁の強化に否定的な考えもしているようですが、総理は、北朝鮮の問題に関し、中国に対してどのような働きかけをしておられるか、お聞かせいただきたい。
今後の外交で大きなポイントの一つは、韓国との関係であります。対中国、対北朝鮮などの地域の課題に対処するに当たっては、日米韓の三か国協調が不可欠となります。韓国に対しては、領土問題、歴史問題など、主張すべきところはしっかり主張しつつ、利害が一致する点については大局的な観点から協力していくというしたたかな外交が必要だと考えます。
先月二十五日、朴槿恵大統領が就任し、韓国政治も転機を迎えております。李明博前大統領は、竹島への上陸、天皇陛下への謝罪要求など、暴挙を繰り返し、日韓の信頼関係を根底から崩してしまいました。残念ながら、協調すべき分野では協調し、主張すべき分野では主張するという戦略的で合理的な関係を結べる相手なのか、疑問を抱かざるを得ませんでした。
したがって、今回の大統領交代を日韓関係の修復に向けた転機としていかなければなりません。総理は、この韓国のこれまでの行動や、朴新大統領の誕生という状況を踏まえて、今後、韓国とどのような関係を築いていくべきだとお考えか、お聞かせをいただきたい。
また、どのような関係を築くにせよ、まずは首脳同士の対話から信頼関係を構築していくほかはないと考えますが、近々、朴新大統領と首脳会談を行うお考えはあるのでしょうか、お聞かせください。
次に、安倍総理が三本の矢と表現している経済対策についてお伺いいたします。
現在は、一本目の矢が見事に的を射て、二本目の矢である緊急経済対策をまさに放った段階だと言えるでしょう。
経済対策で何よりも重要なことは、民間企業が元気になることであります。政府が公共事業で景気を刺激することは景気回復の出発点としては大変重要ですが、最終的には、民間企業の力で経済が回っていく、需要が需要を呼ぶという状況になることが必要であります。そのためには、企業の利益が投資や消費に回らなくてはなりません。特に、雇用や給料に回るようになって初めて国民が景気回復を実感するようになり、国全体のムードが変わってきます。
当面は、デフレを脱却し、物価を上昇させることが最大の課題であり、そこに集中するべきですが、物価が上昇し始めてから雇用や賃金に反映されるまでの間、どの程度時間差があるのかという点も意識していく必要があると考えます。
産業競争力会議の中でも、半年や一年で給料は上がらない、早くても三年ぐらい掛かるとおっしゃっている委員がいます。しかし、三年も掛かるようでは、給料が上がる前に消費税が上がってしまい、需要がますます冷え込んでしまうでしょう。
二十五年には、税制改正で雇用や給料を増やした企業への法人税減税が盛り込まれています。こうした対策が効果を発揮すれば、もっと早い給料の上昇も期待できるのではないでしょうか。
安倍総理も、実際に給料が上がるまでに三年も掛かったら困るとお考えのはずであります。物価が上がっても簡単に給料は上がらないという意見に対して、どのように答えていくのか。国民が安心して前向きな気持ちになれるような御説明をお願いいたします。
政府は、二〇一五年度までに国と地方のプライマリーバランスの赤字を半減させ、二〇二〇年度までに黒字化するという目標を掲げています。これは民主党政権時代に定めた目標ですが、安倍総理も麻生財務大臣も、この財政健全化目標を実現する必要があると答弁されております。
一方で、政府は、経済財政諮問会議で議論し、財政健全化目標を達成するための中期財政計画を策定するとも言っております。この計画は、どのような内容を想定しているのでしょうか。これまでの目標と何が変わるのか、現時点でのお考えをお聞かせいただきたい。
財政健全化の方法にも工夫が求められます。極度の節約は経済ではないという言葉があります。保守主義の父と言われるイギリスの思想家エドマンド・バークの言葉でございます。その言葉には、巨額の出費が真の経済にとって不可欠だと続きます。私は、日本の財政状況で巨額の出費とまではさすがに言いません。しかし、ある程度の出費が経済にとって不可欠であることは確かです。
政府が景気を刺激し、経済成長を実現することで、税収が増え、財政健全化が達成できるのです。そのためにこそ、補正予算での緊急経済対策や二十五年度予算での公共事業の増額を行っております。
私は、景気が良くなって税収が増えるという見通しの下で行うのであれば、大型の補正予算や公共事業による景気刺激と財政再建は全く矛盾しないと考えます。総理も同じ考えだと思いますが、いかがでしょうか。御見解をお聞かせください。
経済対策の中身として重要な役割を果たすのが、事前防災です。いわゆる十五か月予算では、一般会計で七・七兆円の公共事業費が計上されています。その中で、事前防災の強化のために総額一・六兆円の防災・安全交付金が創設することになっています。これは、地方自治体によるインフラ老朽化対策や事前防災・減災対策のための使い勝手の良い交付金であるとのことです。まさに、時代のニーズに合った大変意義ある予算だと思います。
そこで、今後は、実際にどの程度地方が自由に使えるのかということが重要になってまいります。最近、様々な交付金ができており、その都度、地方の使い勝手が良いということが強調されますが、地方の立場になると、本当に使いたいところで使えるとは限らないこともあります。
例えば、海沿いにある古い市庁舎を移転して安全な防災拠点となる市庁舎を造りたいというときに、面倒な条件なしに使える交付金はあるのでしょうか。あるいは、海に近い小学校を高台にある中学校と同じ敷地に移転して小中一貫の学校を造りたいというときには、どの交付金が使えるのでしょうか。ちょうどよい交付金がないときには、自治体としては、実際のニーズではなく、交付金の条件に合わせて事業を行うことになってしまいます。
結局、どの交付金も、国が決めたメニューに当てはまるのみにしか使えないという仕組みになっております。この考え方が変わらない限り、使い勝手を良くするという、メニューを何十種類も増やしても、何百ページもある交付要領を作るという方向になります。それでは自治体の負担は増えるばかりです。
そういう発想ではなく、これには使えないということだけ決めて、それ以外なら自由に使えるようにすべきではないでしょうか。本当の意味での地方の自由度を上げるため、発想の転換が必要だと思います。防災・安全対策の交付金についてはそのような自由度を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
来年度予算案では、国家公務員の七・八%の削減に合わせて、地方公務員の給与も削減するよう、地方交付税が減額される方向です。閣議決定では、各地方団体において速やかに国に準じて必要な措置を講ずるよう要請するとなっております。
私は、地方の首長をやっていましたので、この問題は非常に悩ましく思っています。復興増税という形で国民や企業に負担をお願いしている今、国だけでなく地方公共団体も職員の給与を減らすべきというのは、全くの正論です。
しかし、その手段として地方交付税を減らすということは、財政力の弱い自治体ほど大きな影響を受けるということになります。本来、地方交付税は地方税収の偏在を是正するための制度です。それを給与削減の手段として使うのはいかがなものか、地方公務員の給料はその自治体が自主的に決めるのではないかという主張も、確かに正論です。
国の主張も地方の主張にも、それぞれ一理あるだけに難しい問題だと考えます。安倍総理は、国が地方に給料の削減を要請すること、そして、その手段として地方交付税を削減することについて、地方自治制度との整合性をどうお考えでしょうか、伺いたいと存じます。
地方財政は、最終的には地方と都市という大きな構造問題に行き着くところと考えます。
都市には人口や企業が集中するため、税収も集中します。同時に、人口密度が高ければ、道路や水道など、一人当たりの行政コストは安くて済みます。一方で、地方は税収が少ないばかりか、同じ道路や水道を造るにしても、隣の家まで何百メートルという場合も多く、一人当たりのコストがどうしても高くなります。
図書館や劇場などの公共施設も、都市では一か所あれば多くの人が利用できますが、例えば上野の博物館は、都内だけでなく埼玉や千葉からも電車一本で来られます。しかし、地方では、隣の県の博物館に簡単に行けるという人は限られているでしょう。やはり自治体ごとに公共施設や文化施設が必要になってきます。
こう考えますと、現在のように、人口を基準としての財源配分では大きな不公平が生じてしまいます。もちろん、現在の地方交付税も、人口以外に自治体の面積や道路の延長に応じて算定されている部分もあります。しかし、基本的には人口割りの要素が強いことは否定できません。したがって、人口密度の低い自治体ほど財政が苦しくなるのです。
地方への財源配分は、面積や地形など人口以外の要素をもっと重視して、同じことをやるのでもお金が掛かるという実態を踏まえて行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。この地方と都市の在り方、国土のグランドデザインにもかかわる問題であります。総理のお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
安倍内閣の経済政策のうち、最後の肝、三本目の矢は、産業競争力会議で議論を行われております成長戦略です。
金融政策と財政政策は、デフレ脱却と円高是正のため緊急に必要な対策です。この二本の矢は即効性のある対策ですが、いつまでも効果が続くものではありません。持続的な経済成長のためには、成長戦略を確立し、民間企業を元気にする民間主導の成長を実現する必要があります。
日本の企業競争力の向上のためには、産業活動に不可欠な各種コストの引下げや、企業活動を縛る税制や規制の見直しが必要であります。現状では、日本企業が海外企業と競合する上で不利な条件が余りに多過ぎます。海外とのイコールフッティングの達成は、成長戦略の最優先課題と言ってもいいでしょう。企業の海外流出を防ぎ、国内での雇用を確保するためにも必要不可欠であります。
特に、企業負担となるコストの中で第一に挙げられるのは電気料金であります。日本の電気料金は、以前から中国、韓国、アメリカなどに比べて相当割高であります。震災による原発停止以降、更に値上げされております。
エネルギー価格を低く抑えることは、企業活動についてメリットがあるだけでなく、貿易赤字の削減にとっても有効であり、政府が緊急に取り組むべき課題の一つと考えます。
電力会社も、アメリカのシェールガスなど、安い燃料を輸入しようとする動きを始めていますが、政府としても、こうした動きをより積極的に支援する必要があるかと考えます。エネルギーの調達価格の引下げについて、政府としての取組方針を伺いたいと存じます。
コストの引下げと併せて、成長分野への重点投資も重要であります。特に、私は、優れた技術を持つ企業を更に伸ばすために、特許料収入などへの税制優遇が必要だと考えます。これは経済界からの要望にも上がっております。
この仕組みはパテントボックス税制といい、ヨーロッパや中国で最近相次いで導入されております。イギリスでは、四月から特許料収入に対する法人税率が一〇%に引き下げられます。既にオランダでは税率が五%、中国では無税になっております。
こうした国々と競争していく上で、日本で研究開発を行うだけで不利になるという現状は早急に改めるべきと考えます。このままでは、元気な企業がどんどん日本から逃げてしまうおそれがあります。このパテントボックス税制の導入について、政府としての対応はいかがでありましょうか。
次に、消費税の転嫁対策でございます。
来年予定される消費税増税も大きな問題ですが、様々な、軽減税率の導入等、問題点がありますが、本日、私は転嫁対策の問題を取り上げたいと思います。
中小企業にとって、消費税が円滑に転嫁できるかどうかは死活問題であります。法制度やガイドラインなどの整備はもちろん重要ですが、そうした制度面だけでなく、個別に中小企業からの苦情や相談を受け付け、厳しい指導や摘発を行っていくことも必要だと考えます。
しかし、公正取引委員会や中小企業庁にはそれに対応するだけの人数がいるでしょうか。消費税の引上げの前後には、臨時に人間を増員して相談体制や監視体制を整備することが必要でないかと考えます。政府としてはどのように取り組むか、お聞かせをいただきたいと思います。
最後に、震災復興について伺います。
震災復興については、民主党政権時の遅れを取り戻すことが最優先の課題であります。民主党政権は、復興庁や復興国債、復興特区など、自民党・公明党の野党案を九五%丸のみしてようやく復興基本法を成立させました。しかし、器は良くても、それを動かすのに未熟過ぎて、満足に動かすことができませんでした。言わば、高い車を買ったのに運転の技術が余りに悪かった、そんな状況です。
その大きな原因は、政権と官僚との信頼関係がなかったことです。大臣や副大臣が、部下である、パートナーであるはずの官僚を敵とみなして信用しませんでした。私は、広島県で市長をしていました。市長が部下を信じないで、君たちは私の敵だ、君たちの仕事は無駄だなどと言っていたら、仕事ができるわけがありません。これは、役所だけでなく、あらゆる民間企業においても当然のこととして理解されていることだと思います。
霞が関は大ばかだとまで言った震災のときの総理大臣だった人がいますが、恐ろしいことです。それでは、どんないい器があっても動くはずがありません。
我々は、こうした膨大な時間を無駄にしてしまった状態から、何とかして遅れを取り戻そうと必死で努力をしています。しかし、被災地では人が足りません。自治体の職員が足りない、建設の作業員が足りない、水産業の人が足りない、こうした状況で、復興がなかなか思うように進みません。全国から人が集まっているようなところもありますが、全体としてはまだまだ足りません。
被災地のこの圧倒的な人手不足に対して、政府として対策を強化すべきではないでしょうか。一方では職に就けない人も多く、一方では人手不足で復興の進まない地域もある。この状況を、国全体としてもっとうまく調整できないかと考えます。総理、お考えをお聞かせいただきたいと存じます。
以上、私の地方自治体での経験や企業経営者としての経験も踏まえて質問をさせていただきました。私が最も申し上げたいのは、国民が、そして企業が元気を取り戻す政策が必要だということです。
日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一は、個人の富は、すなわち国家の富であると言いました。国が豊かになるには、まず国民が豊かになる必要があるということです。国民や企業を元気にして、経済成長によって税収を上げる、その結果として国が豊かになる、これが経済政策の王道であり、我が国財政再建もそのような順序で行う必要があります。
今年より来年が、来年より再来年がもっと豊かで幸せになるという希望を、かつて我々は当たり前のように持っておりました。この希望を日本人がもう一度取り戻せるように、我々自由民主党は内閣と一体になって取り組んでいく決意であります。このことを表明いたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕