八代尚宏の発言 (内閣委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○八代参考人 おはようございます。
 私は、直接この国家戦略特区のワーキンググループには関与しておりませんで、いわば外から見た形でこの問題を考えたいと思います。
 私は、かつて、規制改革会議で構造改革特区をつくるときの直接の責任者でもありましたし、あと、できた特区を全国展開するときの評価をする委員会の委員長もやっておりましたので、いかに日本にはくだらない規制があるかというのをつくづく認識しまして、何でこんな規制があるんだろうという体験を非常にしたわけであります。
 規制というのは、当然ながら、それができたときの経済社会環境に適応してつくられたものであるわけです。しかし、日本のように、戦後、急速に経済が発展し、社会が変わってくると、当然ながら、つくられたときには合理的であった規制が古くなるのは当たり前のことでありまして、そもそも、規制改革が是か非かという問題の立て方自体がナンセンスであるわけでして、経済社会の環境に適さない規制は当然変えるべきである、どの方向に変えるかをきちっと議論しなければいけないかと思います。
 先ほど八田参考人が、非常に経済学的な観点から、どういうときに規制すべきか、そうでないかというお話をされましたが、それに加えて、一番センシティブなのは、例えば雇用、労働問題ですけれども、およそ規制が労働者にとって有利であって、規制緩和が労働者にとって不利であるという非常に単純な分け方というのは、私は極めて問題だと思います。
 例えば、規制で雇用が守られるかということを言えば、既に雇われている人の雇用は当然守られる面が多いんですが、雇われていない人に対しては、むしろ規制があるがゆえに雇用機会が減ってしまう。労働者全体から見て最適な規制は何かということをきちっと考えなければいけないわけであります。
 後でもお話が出ます有期雇用契約の五年以内の規制というのは、当然ながら、有期の人が安定した無期雇用になれることを目指してつくられたわけですけれども、その結果、結局、企業が五年以内にその人を解雇してしまえば、かえって不安定になるわけですね。これまで例えば六年、七年と働いていた人が結局四年ぐらいで仕事をやめざるを得ない状況になって、本当にこれが労働者のための規制なのか、非常に疑問があるわけですね。
 ですから、なぜ特区でそういうことをするのかというと、これは、例えば一部の専門的な労働者ですけれども、そういう規制を、例外をつくることによって本当に雇用がふえるのか、減るのかというのを試してみよう、そういう一つの試みが特区であるわけで、特区は社会的な実験だと言われるのはそういう意味であって、過去の日本のように、どこかすぐれた先進国、アメリカやフランスやデンマークをとってきて、それを目指して変えるというような余地が今の日本では余りないわけでありまして、日本自身がみずから何が最適な制度、規制かを考えていかなきゃいけない。
 そのときに、単に国の審議会で議論して、これでいこうというのは余りにも危険なわけでして、やはり、自治体の協力を得て、特定の地域で何が最適な規制かを試してみる。それによっていい成果が上げられれば、全国に展開していく。特区というのは、そういう意味で極めて重要な役割を果たしているかと思います。
 だからこそ、これまで、私のレジュメ一に書いてありますように、大きく分けて四つの特区があったわけで、沖縄、構造改革、総合特区、復興特区というのがあるわけですけれども、この四つの中で類型が二つできると私は思います。
 すなわち、沖縄、総合、復興というのは、あくまで地域振興のため、地域振興を目的としているわけで、特定の地域に限って規制を改革し、あるいは財政的な支援をすることで、その地域の経済活動を発展させる。
 これに対して、構造改革特区というのは、先ほど言った社会的実験というのをより主体にしたわけでありまして、決して特定の地域の特権にしてはいけないということであります。あくまでそこは実験場であって、それがうまくいけば速やかに全国に展開する。これを評価委員会の方でやっていたわけであります。
 私は、今回の国家戦略特区は、どちらかといえば構造改革特区の遺伝子といいますか、この考え方をやはり強く受けたものであることが望ましいと思います。
 構造改革特区の比較ということですが、国が規制改革のメニューをつくって、自治体の首長さんとの協力で、トップダウンで意思決定をする。決して住民の意向を無視するようなことはあり得ないわけで、それは、代表制民主主義ですから、首長さんというのは、地域の住民、議会の利益を体現して行動、活動する、それに問題があれば地元の方できちっとチェックしていただくというメカニズムになっているかと思います。
 それから、国と地方の税制優遇の組み合わせで、投資効果の大きな大都市部にまず重点を置く。しかし、これは決して排他的なものではなくて、地方の主要な都市にも当然その成果は波及しなければいけないわけです。
 それから、構造改革特区では、ほかの特区と違って、補助金、財政的支援をあえて排除したわけです。
 この点、いろいろ多方面から批判を受けたわけですけれども、なぜ財政支援を排除したかというと、金のためではなくて、純粋に自分の地域を規制改革で発展させようという自治体の熱意を酌み取るというのが大事であって、今回は税制上の優遇措置がつけられたということはいいことです。
 もう一つ、利子補給というのも考えられているようですけれども、この利子補給というのは、やはり財源が必要ですから、ある意味で財源の制約が、総合特区のときも一部そうだと聞いておりますが、結局、財源がなくなると、もうそこで打ち切りになってしまう危険性がある。それではやはり全国に展開ができないわけで、なるべく税制上のものだけにとどめるべきではないかと思います。
 それから、今回の国家戦略特区で大きなポイントとしては、当初の規制改革メニューというのが確かにあるわけですけれども、構造改革特区では、もうこれで終わりだったわけです。だけれども、今回は、あくまでそれは第一弾の規制改革であって、実際に特区を運営している中でいろいろな問題が出てくる。規制は細部に宿ると言われますので、そのときには当然ながら追加的な規制改革もするということが大事かと思います。
 そういう意味では、まだまだ発展形であって、第一弾、第二弾、第三弾の規制改革が組み合わされるというのが今回の国家戦略特区の大きなポイントではないかと思います。
 それから、三番目の規制改革事項の評価ですけれども、先ほど八田参考人が小粒と言うことはおかしいと言われたわけですが、私の二ページ目を見ていただくと、より具体的な例が書いてあります。
 ここでは、国家戦略特区で採用された規制改革で、一見すると非常に、何でこんなものをというふうに思われると思いますが、そのこんなものすら実は今まで実現できなかったわけで、最初の外国人医師の国内診療というのはどういうことかといいますと、これまでは、アメリカ人の医師はアメリカ人の患者しか診られない、カナダ人もシンガポールの人も診てはいけない、そういう非常識的な規制があったわけです。これが今回、ようやく全ての外国人の診療が可能になった。外国人に聞けばジョークのような規制が幾らでもあったわけです。
 こういうものも、それぞれやはり閣議決定で検討するとか結論を得るというのが決まっていたにもかかわらず、過去三年間、それ以上、放置されていて、今回、国家戦略特区で全部それが、全部というか、大きく前進したわけで、これはある意味で在庫一掃セールというか、ちょっと言い方は悪いですけれども、これまでの規制改革で議論はされながら全然結論が出なかったものについて、一挙にここで片づけたということになるかと思います。その意味では非常に大きな成果があったのではないかと思います。
 それから、先ほど言った特区、有期雇用の話ですけれども、こういう雇用について、一部の地域だけ規制を緩和するのは問題だということを厚生労働省が強く主張されたわけです。これは、実は構造改革特区のときでも同じ問題がありまして、そのときに、我々としては、特区でやるというのは、いきなり全国でやっては危険だからという理由でやるわけであって、担当省庁が特区は危険だからと言われるなら、すぐに全国でやっていただいて全く結構ですと。その方が手間が省けるわけです。
 構造改革特区のときにも、実は、特区提案として出てきた規制改革がいきなり全国で緩和された方が数は多いわけです。なぜそういうことが起こるかというと、規制改革のニーズがあっても、なかなか担当省庁としては、忙しいので、法律を改正するのを怠ってきた。そのときに、特区というものが出てくることで慌てて規制改革をする。特区をわざわざつくるには余りにも恥ずかしい規制がいっぱいありましたので、そっと全国ベースで変えてしまうということもあったわけです。
 ですから、これは特区か全国か、どちらでもいいわけで、そのときにこういう国家戦略特区のような一種の機会があれば、そこで一挙に規制改革が進むということであるわけです。
 最後に、国家戦略特区の今後のあり方ということで、これは、やはり構造改革特区のときの経験からしまして、私は、今回は、かなりそういう進め方の面においても進化している面が幾つかあるかと思います。
 規制の弊害は細部に宿るために、法律だけじゃなくて政省令についてもきちっとチェックしなきゃいけない。このためには、今まで出てきた特区ワーキンググループが、きちっと次に引き継ぐ組織ができるまでは引き続き活動していただいて、この政省令のチェックをしていただく必要があろうかと思います。
 それから、同時に、特区諮問会議ができたとしても、細かい話を一々総理が出席の場でやるわけにはいきませんので、引き続き、経済財政諮問会議の専門調査会のように、そういう委員会をつくって各省との折衝を続ける必要があるかと思います。
 それから、特区の選定は、やはり提案された改革事業を持つ地域について、できるだけ幅広い行政単位が必要ではないか。例えば、県知事がやるべきだと思っていても、その中の一自治体が反対したらうまくいかないというのはやはり困るわけでして、幅広い観点を持つ、やはり県知事あるいは都知事、そういう人たちがきちっと説得できるような余地をつくる必要があろうかと思います。
 それから、あと、細部に宿るという点をちょっと補足しますと、こういう例がございまして、構造改革特区のときに、耕作放棄地を使って、農地のところにダチョウを飼うダチョウ特区というのをつくったわけですね。
 ダチョウを飼うためにはおりが必要なわけですが、ただ、おりというものは工作物ですから、それを農地の上につくることはだめだといって、後で農水省が文句を言ってきたわけです。そうしたらダチョウ特区はできないわけで、当時の小泉首相が直接電話をかけて、ふざけるなと言われたということでありますが、とにかく、そういうことを、一々総理を煩わせるんじゃなくて、きちっとしたこういう会議の場で、実際の特区の運用に妨げになるようなことを防ぐ措置が必要かと思います。
 それから最後に、スピードが大事であります。ここはまだ決まっていないわけですが、構造改革特区の例でいえば、年二回提案を受け付けて、通常国会、臨時国会双方で法律を改正して、どんどん規制改革の追加事項をふやしていく。とにかく、年一回でも遅いわけで、年二回のペースでどんどんこの国家戦略特区をふやしていって、改革のスピードが実感されるような特区というふうにぜひしていただきたいと思います。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 118504889X00520131114_008

発言者: 八代尚宏

speaker_id: 13920

日付: 2013-11-14

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会