岸田文雄の発言 (本会議)
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○国務大臣(岸田文雄君) 第百八十六回国会の開会に当たり、外交の基本方針について所信を申し述べます。
この一年間で、国際社会における我が国への期待は確実に高まっています。自由、民主主義、基本的人権のみならず、法の支配を重視し、アジア太平洋地域はもとより、中東、アフリカ、欧州、中南米に至るまで、世界全体の平和と繁栄の実現のため、ひたむきに努力するという我が国の姿勢に対して国際社会の支持が着実に広がっていることを、外務大臣として世界各国を訪問する中で強く実感しました。
一方、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。本年も、日米同盟の強化、近隣諸国との協力関係の重視、そして日本経済の再生に資する経済外交の強化といった三本柱を軸とした外交を引き続き強力に推進し、国益の増進に全力を尽くします。また、グローバルな課題への貢献を通じた世界全体の利益の増進のため、一層積極的に取り組みます。
来年は戦後七十周年を迎えます。我が国が戦後守り続けてきた自由、民主主義、人権、法の支配は、国民に深く浸透し、国家の根本を支える柱となっています。近隣諸国との間で歴史認識をめぐる議論がありますが、日本政府の歴史認識に変わりはありません。また、平和国家としての歩みは今後も堅持していきます。こうした基本的立場について、各国に丁寧に説明していく考えです。
国際的にも、来年は、開発課題、気候変動、軍縮、防災等、様々な分野で重要な節目の年となります。国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、世界の平和、安定及び繁栄に外交力を最大限活用して、これまで以上に積極的に貢献してまいります。国家安全保障会議という司令塔の下で、国家安全保障戦略に基づき、積極的平和主義を推進し、アジア太平洋地域及び国際社会における日本外交の存在感を力強く示してまいります。
この一年、地球儀を俯瞰する外交を展開する中で、ASEANを始めとするアジア太平洋諸国、ロシア、欧州、中南米、中東、アフリカ等との関係強化に努めてきました。
アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日本外交の基軸たる日米同盟の重要性は一層高まっています。安倍政権発足以来、日米間の頻繁な要人往来を通じて具体的な成果を得ています。今後も、日本外交の第一の柱として日米同盟をあらゆる分野で強化します。
安全保障分野においては、昨年のいわゆる2プラス2の成果に沿って、日米防衛協力のための指針の見直しを始め、安全保障、防衛協力を確実に進め、抑止力を一層向上させます。
また、在日米軍再編を現行の日米合意に従って進めながら、沖縄の負担軽減のため、できることは全て行うとの方針で全力で取り組みます。特に普天間飛行場については、その危険性の除去が極めて重要な課題であるとの認識の下、一日も早い移設に向けて政府として取り組んでまいります。
第二の柱は、近隣諸国との協力関係の重視です。
中国とは、国交正常化以来四十年以上にわたり、隣国同士あらゆる分野で関係強化に努めてきました。中国の平和的な発展は、我が国にとって利益でありチャンスです。日中関係は最も重要な二国間関係の一つであり、両国は、地域と国際社会の平和と安定のために責任を共有しています。日中両国、そして地域の利益のためにも、戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、関係改善を図ってまいります。
一方、中国の軍事力強化に関する透明性の向上を求めるとともに、中国公船による尖閣諸島沖領海内への侵入や、中国による東シナ海防空識別区の設定などの、力を背景とした一方的な現状変更の試みについては、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意の下、引き続き、毅然かつ冷静に取り組みます。
最も重要な隣国である韓国との関係強化は、地域の平和と繁栄の確保という両国の共通の利益にとって不可欠であり、安倍政権の優先事項です。引き続き、様々なレベルで意思疎通を積み重ねるとともに、冷静に問題に対処し、相互に敬意を払い、大局的観点から、来年の国交正常化五十周年にふさわしい、未来志向で重層的な協力関係を構築すべく、粘り強く取り組みます。
日韓間の貿易・投資や、第三国における日韓企業間の協力の推進など、経済関係も一層強化していきます。
我が国固有の領土である竹島については、引き続き、我が国の主張をしっかりと伝え、粘り強く対応します。
日・ASEAN友好協力四十周年を迎えた昨年、日・ASEAN関係は大きく発展しました。安倍総理大臣はASEAN全加盟国を訪問し、私も全加盟国の外相と会談し、十二月には東京で成功裏に特別首脳会議を開催いたしました。この成果の上に、本年の議長国であるミャンマーを始めとするASEAN各国との協力関係を更に強化します。
さらに、インド及びオーストラリアなどと、安全保障、経済等、様々な分野で協力を深化させるとともに、モンゴル、太平洋島嶼国との関係も強化します。
こうした近隣諸国との関係と併せて、本年最初の訪問国となったスペイン、フランスを含む欧州や中南米との協力を推進し、これら地域との対話の枠組みも積極的に活用いたします。
昨年四月、安倍総理大臣は十年ぶりにロシアを公式訪問し、それ以降、半年で四度の首脳会談を重ね、十一月には史上初となる2プラス2を開催するなど、日ロ関係全体を底上げし、今後への弾みと方向性を示すことができました。
ロシアとは、地域のパートナーとしての関係を発展させるべく、首脳レベルを始めとした政治対話を進め、安全保障、経済等、あらゆる分野での協力の進展を図ります。
最大の懸案である北方領土問題については、両国の立場に依然大きな隔たりがありますが、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、粘り強く交渉に取り組みます。
北朝鮮の動向については、引き続き、情報収集と分析に努め、対応に万全を期します。北朝鮮による核・ミサイル開発の継続は、地域と国際社会全体の平和と安全に対する重大な脅威です。関係国と連携しつつ、北朝鮮に対し、国連安保理決議及び六者会合共同声明に基づく具体的行動を引き続き強く求めます。
我が国としては、対話と圧力の方針の下、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて取り組みます。拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないとの方針の下、国際社会とも協力しつつ、現政権下での完全解決に全力を尽くします。
第三の柱は、日本経済の再生に資する経済外交の強化です。
昨年末に私を本部長として立ち上げた日本企業支援推進本部の下で、トップセールスを含め、日本企業の海外展開支援を一層強力に進めます。ODAを活用したインフラシステム輸出も推進します。海外における日本人と日本企業の安全対策の強化にも引き続き取り組みます。
また、国益にかなった高いレベルの経済連携を戦略的かつスピード感を持って推進し、TPP交渉については、引き続き早期妥結に向けて取り組みます。日本産品の海外への普及促進や風評被害対策にも注力します。
さらに、エネルギー、鉱物資源、食料等の安定的な確保のため、資源外交を強化します。
また、WTOやAPEC、G8、G20などを活用し、経済分野での国際的ルールの整備と実施に積極的に取り組みます。我が国のOECD加盟五十周年となる本年、閣僚理事会の議長国として役割を果たします。
そして、グローバルな課題についても、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、一層貢献を果たします。
まず、唯一の戦争被爆国として、核兵器不拡散条約を基礎とした国際的な核軍縮・不拡散体制の維持強化に貢献するとともに、現実的で実践的な取組を積み重ね、核兵器のない世界に向け国際社会の取組を主導します。この関連で、四月に広島で軍縮・不拡散イニシアティブ、NPDI外相会合を開催します。また、国際的な原子力安全の強化にも引き続き取り組みます。
イランの核問題については、包括的解決のための最終的な合意の形成とその実施に向けて、国際社会と連携しつつ、イランとの伝統的友好関係に基づく働きかけを継続します。
次に、女性が輝く社会の実現は、世界共通の課題です。昨年九月、国連総会において表明した我が国の支援策は、国際社会から高く評価されています。女性の力を十分に引き出し、世界に活力をもたらすべく、国際社会との協力や途上国支援を強化します。また、女性・平和・安全保障に関する行動計画を市民社会の方々とともに策定しています。
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、ハーグ条約が間もなく我が国について発効することを踏まえ、条約の適切な実施に取り組みます。
ODA六十周年に当たる本年、積極的平和主義の立場から、ODAを一層戦略的に展開します。ミレニアム開発目標の達成や、人間の安全保障を指導理念とする効果的なポスト二〇一五年開発アジェンダの構築を目指します。特に、国際保健外交戦略に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進します。
我が国は、昨年のフィリピン台風被害に対し、過去最大規模の自衛隊派遣等の支援を行ってきていますが、災害救援・防災分野の国際協力を推進し、来年三月に仙台市で開催する国連防災世界会議につなげてまいります。
また、攻めの地球温暖化外交戦略の下、気候変動の新たな国際枠組みの構築に向け、途上国支援等を効果的に活用しつつ、国際的議論を主導します。
国際的重要性を増すアフリカに対しては、安倍総理大臣のアフリカ訪問も踏まえ、昨年のTICADⅤで表明した支援策を着実に実施し、ウイン・ウインのパートナーシップ構築を目指します。
我が国は、開かれ安定した海洋の発展と公海における上空飛行の自由の確保に向け、主導的役割を果たします。また、組織犯罪対策を含む国際テロ対策を強化するとともに、宇宙やサイバー空間における法の支配の確立に向け、国際的な規範作りを推進します。
我が国は、南スーダンを含め、国連平和維持活動、PKOに更に貢献し、要員派遣や人材育成などを通じて、平和維持、平和構築を推進します。
シリア情勢の改善に向け、先般出席したジュネーブ2を通じた取組や、人道支援、化学兵器廃棄に向けた協力を通じて、可能な限り貢献を行います。また、アフガニスタンについて、これまでに表明した支援を着実に実施します。
中東和平プロセスについては、平和と繁栄の回廊構想などを通じ和平交渉を後押ししていきます。
国連創設七十周年となる来年を見据え、二〇一五年安保理非常任理事国選挙に万全を期すとともに、安保理改革を早期に実現し、我が国も常任理事国として貢献していきたいと考えます。国連などの国際機関の日本人職員の増強にも取り組みます。
また、国際社会での我が国の存在感を一層高め、信頼される日本の姿が更に理解されるよう、我が国の立場や考え方を戦略的に対外発信するとともに、和食を含む文化の発信や、若者を始めとする人的交流、日本語の普及の促進などを通じて、ソフトパワーの更なる充実を図ります。
昨年の訪日外国人数は、政府目標の一千万人を上回り、過去最高を記録しました。ビザ緩和などの措置を通じて、観光立国推進に取り組みます。
さらに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の成功に向け、スポーツを通じた国際貢献策を着実に実施するなど、外務省としても最大限取り組んでまいります。
このように多岐にわたる外交課題に適切に対処するため、外交実施体制を含む我が国の総合的な外交力を引き続き強化していきます。
戦後の我が国の平和国家としての歩みは、国際社会における高い評価と尊敬を勝ち得てきました。こうした歩みを堅持しつつ、今後は、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、平和で繁栄した世界の実現に向け、我が国ならではの貢献を一切惜しみません。
私は、そのことが我が国の立場に対する理解を一層深め、国際社会から信頼を更に揺るぎないものにすると確信しています。今後も、我が国を守り、世界の平和と繁栄を実現するための外交を全力で推進してまいります。
議員各位、そして国民の皆様の御支援と御協力を心よりお願い申し上げます。(拍手)
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