安井美沙子の発言 (本会議)

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○安井美沙子君 民主党・新緑風会の安井美沙子です。
 私は、会派を代表しまして、ただいま議題となりました両法律案に反対の立場で討論いたします。
 反対の第一の理由は、復興特別法人税を一年前倒しで廃止することです。
 これについては、代表質問に始まり、予算委員会、財政金融委員会等で連日疑問が噴出しましたが、政府はいまだに国民が納得できる答弁をしていません。
 復興特別税は、全国民で負担を分かち合うことで東日本大震災の復興を成し遂げるため、自民党、公明党も含めた三党で合意して導入したものです。民主党は当初、今を生きる世代で幅広く負担をお願いするという趣旨で、復興特別法人税や復興特別たばこ税の導入とともに、復興特別所得税を十年とすることを提案しましたが、自公との協議の結果、二十五年と長きにわたり負担するものとなった、その事実を忘れないでいただきたいと思います。
 こうした経緯を踏まえれば、いまだ困難な生活を余儀なくされる被災者の方々でさえ復興特別所得税を負担していただいているのに、黒字法人だけが負担を軽減されるのでは、復興を国全体で支えるというきずなと連帯の精神が損なわれます。それに対し、いやいや、復興特別法人税の前倒し廃止により企業の賃金引上げの呼び水になり得るのであり、それが家計を潤し、ひいては消費拡大につながるという経済の好循環こそが望ましいのだと耳がたこになるほど答弁を聞きましたが、いま一つ説得力がありません。
 まず、賃金引上げにつながる保証がないこと。これまでにベアを実現したのはごく一部の大企業だけであり、その昇給幅は家計の負担増を相殺するレベルには届かず、可処分所得は実質マイナスになります。そもそも、呼び水としての効果を発揮し得る企業の分母は全体の三分の一以下に当たる納税法人のみですから、大部分の雇用者にとっては関係のない話です。
 一方で、復興特別税をいじるのは望ましくないけれど、消費税対策という観点から、個人に対する復興特別所得税を減税するか繰延べする方がまだ理解できるという声も多く聞かれました。
 あと十日余りで消費税が三%上がります。ただでさえ、電気料金やガソリンの値上げ、保険料や医療費の窓口負担の引上げ等、家計を直撃する要素のオンパレード。加えて、子育て世帯には急遽、高校無償化に所得制限が課せられました。春からお財布のひもをきゅうっと締めなくてはやっていけないのではありませんか。
 こんな中、所得税の二・一%を復興特別所得税として納めるのが一般家庭にとってどれだけ大変なことか、政府は実感できているのでしょうか。復興所得税を減税か繰延べすれば、家計を助け、消費税増税による景気の腰折れを緩和できるのに、経済の好循環という原則論にこだわって国民生活の現実を見ようとせず、国会での多くの声を無視する政府の姿は遺憾です。
 政府としては、拙速に法人税本体を下げるわけにはいかず、あと一年しか残っていない復興特別法人税を原資として差し出すのが手っ取り早いという算段だったのでしょう。余りに筋が悪い話で、到底容認できません。
 反対の第二の理由は、本格的な逆進性対策がないことです。
 簡素な給付措置はあくまでつなぎの対策で、支給対象も限定的で、一回限りの措置です。税と社会保障の一体改革における三党合意では、給付付き税額控除の導入についても検討するはずだったのではありませんか。政府・与党は、莫大な財源が掛かり、利権の温床となりかねない軽減税率の導入にこだわり続け、いまだに何も決められないでおり、責任を果たしておりません。
 軽減税率は、一見、生活必需品の税率が下がって暮らしへの影響を緩和する救世主のように見えるかもしれませんが、食料等の生活必需品は高所得者層も購入する以上、減税効果が本来必要とされない層にも広く及び、税収を大きく毀損することから、望ましいものとは言えません。
 民主党が提案し続けている給付付き税額控除においては、家計調査に基づき、基礎的な消費支出に掛かる消費税相当額を一律に税額控除し、控除し切れない部分について給付をするもので、公平かつ本格的な低所得者対策となっています。政府・与党は、ポピュリズムに陥ることなく、制度設計のスピードを速め、国民の理解を得ていくべきです。
 反対する第三の理由は、租税特別措置の切り込みが全く行われていないことです。
 法人関係の租税特別措置の中で今回廃止となるのは、集積産業用資産の特別償却制度のたった一項目で、その増収見込額は十億円にすぎません。その一方で、減税額は五千億円を超える規模となっており、増収措置の五百倍の減税となっています。
 かねてより民主党は、法人関係の政策減税は隠れ補助金と同様であり、効果の検証をした上で、必要なものは本則化すべきと主張してきました。今回、租特が膨れ上がったのは、意思決定が中立的な立場の有識者を中心とする政府税制調査会ではなく、法的な権限、責任を有しない自民党税制調査会でなされたからではないでしょうか。クローズドな場で隠れ補助金を積み上げていくやり方には、業界との癒着が見え隠れします。自民党が先祖返りしたと言われても仕方ありませんし、納税者である国民の理解や納得が得られるものではありません。
 このほか、所得税につきましては、給与所得者の実額控除の機会を確保せず、給与所得控除の上限の引下げだけを行い、年収一千万超のサラリーマンを狙い撃ちしていますが、これも考え抜かれた結果とは思えません。働き盛りは子育て盛りでもあり、教育費や住宅ローンなどで負担も大きいはず。こんな国では少子化は止まりません。
 さらに、自動車関係諸税につきましても、国の自動車重量税の当分の間税率の廃止や地方税の自動車取得税の廃止など、車体課税の抜本的な見直しを行うべきですが、政府の対応は財源確保に奔走しているだけにしか見えません。軽自動車が地方の足であることは、郡部を選挙区に抱える国会議員なら誰でも分かることです。政府は、地域経済より海外の交渉相手を見ているのではないでしょうか。
 以上、主な反対の理由を申し述べました。
 なお、本法律案には、所得拡大促進税制の拡充、交際費課税の緩和、税理士法改正など、民主党の主張によるものも含まれておりますが、全体としては到底受け入れることができません。
 最後に、今後の税制改革を展望しつつ、一言申し上げます。
 政府におかれましては、一刻も早く本格的な第三の矢の中身を内外に示していただきたいと思います。日本再興戦略では、最大の潜在力である女性の活躍の推進を重要政策に位置付けています。女性の就業率や管理職の割合を二〇二〇年までに大幅に引き上げる目標を立てていますが、それを実現するための決定打が見えません。政策に整合性と実現性を持たせるためには、今回の税制改正において、配偶者控除の見直しを真っ先に持ってくるべきでした。ここに来てようやく産業競争力会議や経済財政諮問会議で議論が活発化してきたようですが、遅きに失したと言わざるを得ません。第三の矢は、第一の矢、第二の矢と違って、効果が発現するまでに時間が掛かるのです。それまでずっとカンフル剤を打ち続けていてはアベノミクスも持続可能ではありません。
 来年の税制改正においては、第三の矢の中身が明示されていることを前提に、それと整合性のある法案を御提出いただくことを政府に要請し、反対討論といたします。(拍手)

発言情報

speech_id: 118615254X00920140320_026

発言者: 安井美沙子

speaker_id: 23442

日付: 2014-03-20

院: 参議院

会議名: 本会議