老川祥一の発言 (議院運営委員会新たな国立公文書館に関する小委員会)

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○老川参考人 ただいま御紹介をいただきました老川でございます。
 こうして検討会議の検討内容について御報告の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
 また、小委員会の先生方におかれましては、適地の選択その他積極的にお取り組みいただいておりますことを、心から感謝を申し上げます。
 私は、今御紹介いただきましたように、調査検討会議の座長を務めておりますが、御紹介いただいたように新聞記者でございまして、必ずしも公文書管理の専門というわけでもございません。数年前に有識者懇談会に参加をさせていただきまして、その御縁でいろいろ勉強させていただいているわけですが、それ以前は、公文書館というものがあるということは存じていたのですが、どこにあるのかも知らないし、行ったこともない、こんな状態で、初めて見学をさせていただいたときに、大変びっくりしました。
 びっくりというのは二つありまして、一つは、施設がまことに簡素といいますか、率直に言うと、貧弱きわまりない。私は、ワシントンにおりましたこともありますので、アメリカのナショナルアーカイブのイメージが頭にありましたもので、これで大丈夫なのかとびっくりしたというのが率直な感想でした。
 もう一つびっくりしたのは、にもかかわらず、すごい史料がいっぱいあるということですね。明治憲法その他の現物があるだけでなく、江戸時代の徳川家の大奥の将軍がお休みになるときの女性たちとのお休みになり方等々も克明に記録されている、そういうものが残っていることにびっくりしました。
 中でも私が一番衝撃を受けましたのは、終戦詔書でした。
 ことしは戦後七十年ですが、昭和二十年八月十五日の玉音放送として昭和天皇がお読みになった終戦詔書の原本だけでなく、八月十日の天皇の御聖断から、ラジオ放送用の、十四日深夜の録音に至るまでの間に、八種類もの下書き、草稿がそっくり残っているんですね。しかも、その手書きあるいはガリ版刷り、タイプ印刷その他、八種類九通りの文書に、無数の修正といいますか、書いたり消したりがある。そんなものがあること自体全く知らなかったのですが、それを見ますと、このわずか三日か四日の間にどれほど政府部内でいろいろな議論が行われたかがわかる。政治家と軍部の激論等が目に浮かぶような、そういうすごい史料がありまして、私はそれをきっかけにいろいろ勉強したのです。
 あの戦争に至る日本の政治のぐあい、どこが間違ってどうなったのかということ、それからまた今日にも共通するような幾つかの問題点、そういうものを非常に感じましたので、先ほど越智政務官から御紹介いただいたように、これはちょうど一カ月前にできた本ですが、御参考に小委員長に寄贈いたしますけれども、草案類を全部そこに収録しました。
 原本、現物が残されているということがいかに大事か。国の歴史なり重要事項の決定過程がどうだったのかということが、これがなかったら絶対永遠にわからないだろうと思うのです。そんなぐあいで、この公文書館の充実というものがいかに大事かということを改めて感じたわけです。
 公文書管理がいかに重要か、二つポイントがあると思うんです。
 この問題もそうですけれども、国のそれぞれの政策決定過程、行政はもちろんですが、司法、立法を含めて、国家としての運営にかかわる重要な決定がどのようなプロセスで行われたかということを透明化する、これは、民主主義、国民の知る権利といいますか、国民一人一人が民主主義を支えている、そういう国民にとっていかに大事かという政策決定過程の透明化。
 もう一つは、歴史的な文化遺産というか、日本の国というのはこういう成り立ちでできているんだなという国家と国民の一体感というか、現物を実際に見ると、迫力といいますか、如実に歴史が自分の体にしみ込んでくる。そういうものを子供たちにも見せることで、やはり国民としての自覚というものが生まれてくる。
 そういう意味で、この二点とも、民主主義の根幹にかかわる大事なことだと思います。そこで現状はどうかといいますと、そのどちらの面も不十分と言わざるを得ないと思います。
 一つは、今の北の丸にある国立公文書館の施設が、非常に手狭でありますし、収蔵能力、キャパシティー、これも遠からず満杯になってしまう、こういう状態で、このままではとても立ち行かなくなってしまうということが一つ。
 それと、公文書館に所蔵されているもの以外に、重要な文書がその他いろいろな機関に分散して所在している、あるかないかもわからない、こういう状態もあります。
 現実に、読売新聞が報じましたけれども、佐藤・ニクソン会談における核持ち込みにかかわる密約文書、これも佐藤家の御自宅の中にしまわれていた、こういうようなこともありました。したがって、史料が分散している、こういう問題が一つあります。
 もう一つは、展示場所の問題。つまり、所蔵するだけではなくて、国民の前に、いつでも見られる、そういう展示機能、これが現在はほとんどなきに等しい。現実には廊下の部分を使って時々展示をされていますが、これではまだ十分じゃないんじゃないかなと思います。
 そういう意味で、もっと大きな、しっかりした大規模なものを新しくつくることが必要だということを痛感したわけでございます。
 そういうことでありますので、昨年の秋、十一月末でございますが、私は、アメリカのナショナルアーカイブ、ワシントンとメリーランド、お手元にお配りした「米国国立公文書館について」という横長の資料がございますが、ここを見たのと、もう一つは、ボストンのケネディ・ライブラリー・アンド・ミュージアム、この二カ所を見学したわけです。
 最初にナショナルアーカイブ、ワシントンの方を申し上げますと、一ページ目にありますように、本館というのはワシントンDCの市内ですね。ここには、いわゆる独立宣言を初めとする米国憲法その他十九世紀以前の行政府文書、それから、アメリカでは毎議会終了時点で全ての議会の文書をナショナルアーカイブに移管する、こういうふうになっていますので、そういう立法府、司法府の文書も所蔵されています。
 それから、メリーランド州にあります、これは州立メリーランド大学の敷地を借りてつくられている新しい附属施設ですが、ここは二十世紀以降の行政府文書。この二つがございます。
 私は、ワシントン支局時代、そこの前は何度も通ったんですが、忙しくて中へ入ったことがなくて、今回初めて入ったんですが、これまた入ってびっくり。まず、スケールが物すごく大きいです。この二ページ目の写真が表玄関です。
 それから四ページの右上の写真、入ってすぐのところが、ロタンダという半円形の空間ですけれども、ここは衆院本会議場に近いぐらいの大きなスペースで、ここに独立宣言その他の建国当時の文書が、レプリカじゃなくて現物がそのまま展示されています。
 これは、傷まないようにアルゴンガスで密閉してありまして、ちゃんと保全がきっちりできていますけれども、現物を見ることができる。夜になるとこれを全部ずっと床下に沈めて、盗難とかそういうものに遭わないように、こういう工夫もできているようです。
 さらにびっくりしたことは、しょっちゅうたくさんの人、観光客もいますし、子供たちの見学ツアーが来ていて、七ページの右下の写真をごらんいただきますと、ロタンダでの宿泊イベント、つまりここで、修学旅行みたいに大勢で地方から来て、寝袋を持ってきて一晩その場で泊まって、まさに建国の歴史を自分で実感する、こういうようなこともやられている。
 さらに驚いたことは、普通、展示といいますと、展覧会でも何でもそうですが、現物を見て、ざっと流れ作業で見て終わり。ここの場合はそうではなくて、教室がつくられているんですね。今見てきたこと、学んだことを、そこの教室で授業ができる。先生がいろいろ問題を出して、子供たちに自由に何かを書かせたり、そういう授業を実際にここで行えるようになっているということです。
 ですから、保存機能と展示・学習機能が一体で実施されるということになっておりまして、まさに狙いは、アメリカの建国の歴史、アメリカという国を自分たち自身が実感する、こういうことを非常にうまくマッチしてやっている。
 アメリカの場合は、どちらかといえば人工国家ですから、そういう努力がなおさら必要なんだろうとは思うんですが、これに対して日本の場合は、アメリカと違って、逆に、余りに歴史が長いということと、戦前の歴史に対する否定的な印象というものが非常にあって、そういう過去の歴史というものを余り熱心に伝えようとしていないという傾向が感じられるんですけれども、これだけグローバル化してきていろいろ国際社会と個人個人がつき合わなければならない時代になっていることを思いますと、展示、学習、国の歴史を実感する、そういう機能がより必要ではないのかなと思っております。保存と展示・学習機能を一体化した施設ということになるとかなり大規模になると思いますが、そういうものが必要だと思います。
 あと、ケネディ・ライブラリーその他についても時間があれば御報告しますが、ひとまず冒頭の発言とさせていただきたいと思います。

発言情報

speech_id: 118904038X00220150612_004

発言者: 老川祥一

speaker_id: 27584

日付: 2015-06-12

院: 衆議院

会議名: 議院運営委員会新たな国立公文書館に関する小委員会