斉藤鉄夫の発言 (憲法審査会)
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○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。
本日は、今国会における憲法審査会の実質的に第一回目の審議に当たり、公明党の憲法及び憲法改正についてのこれまでの議論や考え方を紹介するとともに、若干個別の項目についても言及し、これからの議論に向けた問題提起をさせていただきたいと思います。
その前に確認しておきたいのは、昨年、憲法改正の手続を定めた国民投票法の改正法が、与野党の幅広い合意のもとで、いわゆる三つの宿題に対応する形で成立し、既に施行されているという点であります。
また、同改正法の附則の検討条項に沿って、十八歳に選挙権年齢を引き下げる公職選挙法改正案が今国会に再提出されており、早期の成立が期待されます。この公職選挙法が改正されれば、四年を待つことなく、選挙権年齢の引き下げと同時に憲法改正の国民投票権年齢も引き下げられる措置を講じることとしている点も重要です。そうなれば、名実ともに憲法改正の発議ができる環境が整うわけであります。
こうした外形的な環境が整備されることによって、施行から七十年近くがたとうとする中、変化の激しい時代にあって憲法はどう対応していくべきかについて、今後、国民的な議論が起きてくるものと思われます。
であるからこそ、国会、なかんずく衆参の憲法審査会の役割がますます大きくなってくるのではないか。公明党としても、党内での憲法論議を進めていくとともに、積極的に憲法審査会における議論に臨み、国民的な議論を喚起し、国民とともに、憲法のあり方、国のあるべき姿を考えていきたいと思っております。
さて、公明党は、これまで現行憲法の評価については、審査会等を通じ、現行憲法は戦後の日本の復興と平和に大きく貢献し、国民に定着していること、特に、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義の三原則は、立憲主義の立場からも今後も堅持すべきであること等を繰り返し表明してきました。
その上で、時代の進展に伴い提起されている新たな理念を加えて補強する加憲という憲法改正の方法もあるのではないか、また、加憲方式こそ最も現実的な、妥当な方式ではないかとも提案してきているところであります。
こうした認識のもと、今後議論すべきものとして、幾つかの点について問題提起をさせていただきたいと存じます。
まず、国民の権利及び義務に関し、新しい人権全般について検討していくという視点です。
新しい人権を考える場合、これをより積極的に明示すべきであり、憲法に明記することによって事前の人権保障を可能とし、時代の変化に対応した積極的な立法措置を可能にすることが望ましいという考え方がある一方、新しい人権を憲法上の権利として承認できるかどうかは、特定の行為が個人の人格的生存に不可欠であるばかりでなく、その行為を社会が認め、他の基本的人権を侵害するおそれがないかなど慎重に判断すべきであり、権利のインフレを招くべきではないとの意見、また、それらは立法においてなすべきだとの主張があり、これらを踏まえる必要があると考えております。
検討の対象としては、具体的には、環境権、プライバシー権、名誉権、知る権利、あるいは、最近欧州で議論が活発になっている忘れられる権利、さらには、犯罪被害者の権利、生涯学習権、裁判を受ける権利等が考えられます。
ここで、昨年、憲法審査会における海外視察でも議論の中心の一つとなった環境権について、論点、課題等を整理したいと存じます。
公明党としては、これまで一貫して、加憲の検討対象として、例えば環境権などが考えられるのではないかという立場を申し上げてきております。実際、これまでの憲法審査会等でも、環境権の議論に当たっては幾つかの論点、課題があることを申し上げてきました。その上で、特に、昨年の海外視察においては、より慎重な意見があるという事実を紹介したという経緯があります。
いずれにしても、環境権が加憲の検討対象の一つであることの姿勢は何ら変わっていないということを申し上げておきます。
環境権に限らず、いわゆる環境保全条項を憲法に盛り込むべきかどうかについては、さまざまな論点があります。例えば、国等の責務、政策、配慮等の規定として盛り込んではどうかという議論、国民の責務として規定するという意見、そして、国民の環境権として盛り込んではどうかなどです。
また、保全すべき環境とは何か。具体的には、人間のための環境保護なのか、生態系それ自体を保護対象とするのか、さらには、いわゆる文化的な環境なども含めるのかどうかなどの論点もあります。
さらには、環境保全条項を憲法に盛り込むことによる社会的影響、特に開発経済と環境保全とのバランスをどう図っていくのかという議論もあり、これらは、昨年の海外視察において各国の有識者からも多く指摘があった点であります。
また、憲法十三条、幸福追求権と環境基本法の理念が既にあり、それよりも上位の概念をどう提示するかという技術的な課題もあります。
今、地球温暖化、地球の各地で多発する大規模自然災害などの現状を鑑みれば、国際的な環境問題、環境保全への取り組み、協力が不可欠であることは論をまちません。そして、私たちは、この大切な地球を未来に残していくという責任を持っています。
また、環境と開発は矛盾するものではなく、環境を優先した社会づくりこそ、新しい価値、開発を創造するとも考えます。こうした視点も一方で持ちながら、憲法における環境保全条項に関する議論を進めていくべきではないかと考えます。
次に、我が国の国際貢献のあり方についてです。
前文においては、国際社会で名誉ある地位を占めたいとの記述がありますが、さらにより明確に、人道復興支援など国際貢献について打ち出していくことが重要ではないか。特に、我が国における憲法の平和主義に沿う国際貢献のあり方として、人間の安全保障という視点に立った理念がより一層強く反映されるべきではないかという意見があることを申し添えます。
次に、平和の理念をより具体化すべきだという主張です。
ことしは、戦後七十年であると同時に、核兵器による被爆七十年でもあります。例えば、我が国は、核廃絶について、唯一の戦争被爆国として、その非人道性の指摘等、何らかの規定が憲法に盛り込まれてしかるべきではないかと考えます。
次に、地方分権、地方自治についてであります。
元気な地方、人が生きる地方創生が、少子高齢、人口減少に直面する日本にとって極めて重要な柱です。その意味で、地方自治のあり方を検討し、地方自治の財政基盤を確保するため、財政的自立を明確にすること等についても検討すべきではないか。
財政に関しては、財政規律や財政の健全化のあり方、複数年度予算等についての意義づけなどの検討が必要ではないか。
緊急事態についても、衆議院解散時における対処方法を初めとして、現行法規定には大きな空白があり、憲法に書き込んだ上で法律を整備するなど、何らかの規定が必要ではないか。これらについては、東日本大震災に見られるとおり、災害大国である我が国にあっては、いつ災害が起きるかわからないという状況に鑑み、速やかな対応、検討が求められるのではないかと考えます。
最後に、憲法改正事項ではありませんが、十八歳に投票権、選挙権年齢が引き下げられるわけですから、憲法あるいは政治参加教育について、文部科学省や総務省を中心に、早急にその充実に向けた検討、実施が必要であることを申し添えておきたいと思います。
以上、全てを網羅できたわけではありませんが、検討すべき課題について概略を申し上げました。
結びに、今後の議論においては、憲法が国の根本規範、我が国のあるべき姿を示すものである以上、いわゆる理念に係る議論は何にも増して重要であり、よって、特に、国民的な合意形成に向けて、冷静かつ慎重に議論を進めていくべきであることは論をまちません。いずれにしても、憲法は国民がつくるものである、その視点に立って党内でも議論を深めていきたいと考えています。
以上です。