佐藤丙午の発言 (外交防衛委員会)

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○参考人(佐藤丙午君) 拓殖大学の佐藤丙午と申します。これまで、政府シンクタンク及び大学で安全保障論、軍備管理、輸出管理を学んでまいりました。
 本日は、防衛装備庁と防衛産業技術基盤政策並びに防衛装備移転三原則に関わる問題について意見を述べさせていただきます。
 防衛装備は、国家の安全保障政策の基盤を構成するものであり、その維持発展に対して国家は責任を有するものであると考えます。日本の防衛装備の生産基盤の大部分は民間企業に属しており、したがって、その産業力と技術力の維持発展並びに競争力の育成も、国家と民間企業が協同作業として実施する必要があります。
 防衛装備は、国家の戦略目標や部隊の運用構想を反映する形で設計、構想され、技術や予算上の制約を考慮した上で製造及び調達のプロセスに進みます。一旦国家が調達した後も、防衛装備品が所定の機能を発揮するために、絶えず補修、修理を実施するとともに、技術的進展を取り込んで性能向上を図るための更新・改良作業も必要です。
 つまり、防衛装備は、構想段階から廃棄に至るまで、そのライフサイクルの中で国家と民間企業との間に広範で継続的な協力関係が要求されるものであるということです。その反面、防衛装備品のライフサイクルの各段階において、政府は、民間企業同士で競争状態をつくり出し、技術の競争的発展を期待するとともに、コスト削減を目指す必要もあります。このように、防衛装備をつくり出す防衛生産、技術基盤は政府と民間企業の緊張関係の上で構築されているものであります。
 緊張関係に影響する要素としては、まず国内の市場規模があります。平成二十七年度の予算における主要装備品等購入費と維持整備費の合計額は約二兆円であり、日本の工業生産額に占める割合は約〇・八%にすぎません。したがって、多くの民間企業では民間需要が防衛需要を上回るケースが多く、防衛部門を社内で維持する理由を正当化するのに苦労しているという声も聞きます。
 さらに、二〇一四年六月に発表された防衛生産・技術基盤戦略では、基盤を取り巻く環境変化として、基盤自体の脆弱化、欧米企業の再編と国際共同開発の進展、防衛装備移転三原則の策定の三つを挙げ、その環境の下での防衛装備品の取得方法として、国内開発、国際共同開発・生産、ライセンス国産、民生品の活用、そして輸入を挙げています。これが意味するところは、日本の防衛市場は、日本国内の企業だけでなく、国外の企業が参入し競争する場へと進化することが想定されているのです。
 もちろん、防衛に関わる民間企業、これを防衛企業と呼ぶとして、その業態は、装備品の開発、製造、修理、運用支援、維持、整備支援等まで含まれ、それぞれの業の中に人的、物的及び技術的基盤があります。防衛産業は、役務を含め、極めて裾野が広い産業であります。競争力の高低には企業ごとにばらつきがあります。また、防衛生産に関与していない場合であっても、高度な技術基盤を持つ企業も存在します。防衛省がこれら全ての企業を保護するのは困難ですが、たとえ選択と集中により維持、育成に注力すべき分野を特定したとしても、当該分野以外の防衛装備生産に関わってきた企業の存在を無視することはできないと思います。政府は、彼らが進むべき道を示す必要があります。
 国際社会において、次世代の防衛生産は、従来の防衛装備製造企業に加え、システムインテグレーター、技術等のプロバイダー、アイデアブローカーなどが重要な役割を担います。日本の防衛企業や汎用技術を保有する企業が、それぞれが適合する国際社会の防衛装備生産のネットワークの中に参入する準備が整っておらず、信頼できるプロバイダーになれない場合、そこでのレピュテーションリスクは極めて深刻なものになると考えます。
 これら全ての状況を踏まえると、現在提案されている防衛装備庁に期待される役割は、防衛装備のプロジェクト管理と取得改革に加え、日本の安全保障戦略と防衛装備開発の最適化の保証、国内の防衛企業の国際的競争力の向上の支援、そしてそれらに関連する国際協力の推進ということになります。防衛産業基盤を維持する上でこれらは不可分な関係にあり、その総合的運用は防衛省が責任を負う必要があります。
 提案されている防衛装備庁は、日米同盟の下、第三のオフセット戦略に適合する兵器システムの開発に貢献する必要もあります。現在まで、第三のオフセット戦略の下に、致死性が低く標的を無力化する兵器システムや、打撃効率を大幅に向上させる兵器などが想定されていますが、具体的にどのようなシステムが必要になるかは分かっていません。つまり、いずれのシステムもいまだ構想段階にあるので、それを議論する戦略及び技術的な対話の場に積極的に参加することで将来の兵器システムの形を構成することが求められています。
 さらに、将来の兵器システムにおいて、例えば無人化技術や致死性自律兵器システム、LAWSの使用が展望される中で、ますます汎用技術の役割は大きくなると思われます。その場合、防衛と民間企業の垣根は小さくなるため、防衛生産で死活的に重要になるのは、国内外でどのような技術が存在するか知り、それら技術を防衛装備のライフサイクルの各段階でフレキシブルに組み込む体制となるでしょう。つまり、防衛装備のライフサイクルの管理は、単に装備品の開発、取得、維持整備等だけではなく、防衛産業技術政策全般の管理を通じた日本の防衛力の強化を行う作業なのだと考えます。
 国際関係において、システム変動期の到来が指摘されています。私は、変動期を乗り越える上で、日本が国際社会に対して確固たる影響力を誇示することが平和を守ることにつながると確信しています。これは防衛装備の優越を維持することでありますが、現在は、それは国際協力を通じてのみ実現可能な状況にあります。
 その中で、二点留意する必要があります。
 第一に、防衛装備の拡散の防止です。装備関連の技術の拡散を完全に防止することは不可能ですが、少なくとも日本の技術的優位を一定の時間維持し、同時に、拡散した防衛装備が日本の安全保障政策に逆効果を及ぼすような事態を避ける必要があります。
 第二に、不祥事の防止です。防衛企業と政策決定者との関係が深くなると、不適切な防衛装備調達や開発が行われる可能性が高まります。防衛装備庁ではプロジェクト管理の実施が提案されていますが、長期にわたるプロジェクト管理では様々な職人技が編み出され、唯一無二の何かが数多く生まれるでしょう。それは、プロジェクトの成功を意味すると同時に、プロジェクトのアカウンタビリティーの低下につながる可能性を生みます。そこで不正行為が生まれないよう、監視・監察体制を強化する必要があります。
 最後に、当該分野において、日本は九〇年代の防衛生産のグローバリゼーションに乗り遅れ、技術開発でもガラパゴス化に陥ったとの評価を聞きます。防衛装備庁の新設によって全ての問題が解決できるわけではありませんが、人材の育成を含め、世界の潮流にのっとった防衛生産基盤の強化を図るべきではないかと考えます。
 以上であります。

発言情報

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発言者: 佐藤丙午

speaker_id: 2770

日付: 2015-05-28

院: 参議院

会議名: 外交防衛委員会