岸本薫の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(岸本薫君) ありがとうございます。
 電力総連の岸本でございます。
 本日は、働く者の立場からこうした御意見を述べさせていただく機会を賜りました。ありがとうございます。
 私ども電力総連は、発電から送配電、設備や部材、部品の製造、建設から保守メンテナンス、保安、お客様サービスに至るまで、電力関連産業に携わる労働者で組織をいたします労働組合でありまして、加盟組合数は約二百三十組合で構成されています。
 さて、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故から四年三か月が経過をいたしました。この間、電力関連産業の現場第一線におきましては、綱渡りが続く電力需給の下での安定供給の確保、電気料金値上げに伴うお客様対応や人件費を含めたコスト削減の徹底、原子力施設の新規制基準への対応や福島第一原子力発電所の廃止措置、近年相次いでおります大規模災害における復旧作業など、多くの課題に対しまして全職場各部門が一丸となって懸命の努力を重ねてまいったところであります。
 他方では、各職場におきましては、なかなか出口の見えない閉塞感の中で、モチベーションの低下、将来の不安の広がり、若手人材の流出などによります現場力の低下など、働く者の使命感だけをよりどころとしてしまっている現状に労働組合として強い危機感を抱いているということも偽らざる事実であります。
 本日は、こうした現場実態も踏まえた上で、一昨年の第一弾、昨年の第二弾に続く、第三弾の電気事業法改正案を始めとするエネルギーシステム改革法案の審議や、今後の課題の解決に向けまして、お手元にお配りをした資料に沿って、働く者の立場から大きく二点につきまして意見を申し上げます。
 まず一点目は、資料の一枚目でありますが、電力システム改革を進めるに当たっては、労働者の権利の保障や雇用の安定、安定供給に不可欠な現場力の維持、継承が図られるような検討をお願いしたいということであります。
 このうち、今般の法案の柱であります発送配電分離に伴い講じられる従業員の人事管理規制につきましては、過度な行為規制によって、働く者の職業選択の自由や安定供給の確保に不可欠な人材の確保、育成に支障が生じないよう、是非とも御留意をお願いをいたします。
 人事管理規制を始めとする行為規制の詳細につきましては、今般新たに設置をされます電力・ガス取引監視等委員会において議論されることになろうかというふうに思いますが、その際は、先ほど申し述べました留意点を踏まえた検討をお願いをしたいというふうに思いますし、規制対象の当事者であります労働者の意見にも耳を傾けていただきますようなそうした進め方を是非お願いをしておきたいというふうに思います。
 なお、これまでの発送配電垂直一貫体制から発送配電分離という、これまでにない強い中立性確保措置が講じられる中で、経営に係る意思決定は行わず、経営者の指揮監督や指示、命令に基づき業務を行う存在にすぎない従業員に対する人事管理規制は、法案で規定される兼職の禁止で十分であるというふうに考えます。
 既に本委員会でも議論があったと伺っておりますが、今般の法案に係る制度検討を進めてこられました経済産業省の審議会におきましては、従業員に対する人事管理規制として、兼職の禁止に加えて異動、再就職の禁止も検討されていました。
 これに対しまして私ども労働組合は、憲法で保障される職業選択の自由を制約しかねず、また安定供給に不可欠な人材の育成にも支障が生じかねないとの観点から意見提出をさせていただきましたが、残念ながら、異動、再就職も規制をするという審議会の結論が変わることはございませんでした。
 ところが、審議会の結論を踏まえた法案策定の過程におきましては、内閣法制局から、私どもが意見提出をいたしました趣旨と同様に職業選択の自由との整合性の観点から懸念が示され、閣議決定直前に法案条文から削除されたということは本委員会でも明らかになったところであります。
 なお、残念ながら、経済産業省は、内閣法制局が懸念を示されました異動、再就職の禁止につきまして、法律に基づく罰則付きの規定とはしないものの、法律上の明文化規定がないまま、行政指導などによりまして事後的かつ実質的に規制をしていくことを検討していると聞き及んでいるところであります。
 恐らく、都市ガス大手三社さんの導管分離に際しましても同様の事後規制が検討されていくものと推測をいたしますが、同じ競争中立性の確保といった点で、情報通信におけるNTTさん、あるいは郵政事業におきましても、また電力改革を先行して進めておられるEU諸国におきましても、異動、再就職規定は要請されていないと承知をしています。
 私どもとしましては、それが罰則付きであろうがなかろうが、明確な法律上の根拠なくこうした規制が講じられることは、法治主義にも沿わないというふうに思いますし、職業選択の自由との整合性などの観点で余りに過剰な規制ではないかと考えておりますことを御理解いただきたいというふうに思います。
 次に、今後の改革プロセスにおける労使自治、スト規制法の在り方について申し上げます。
 この度の改革は我が国電気事業の歴史上かつてない大きな変革でありますが、私ども労働組合としては、国の政策変更によって、今日までの電力の安定供給を支えてまいりました労働者の雇用の安定、現場力に支障が生じるようなことは何としても避けなければなりません。そのためにも、当該労使間で今後の事業体制の変更や企業の再編などに際しまして、丁寧な交渉、協議などを通じ、全ての職場とそこで働く労働者の合意形成を図っていくことができますよう、今後数年間の改革プロセスにおきまして、憲法や労働基準法、労働組合法に基づく労使自治と団体交渉を保障いただきますようお願い申し上げます。
 次に、一昨年の第一弾改正以来、本委員会でも真摯な議論をいただきましたスト規制法の在り方につきましては、昨年の本委員会で採択をいただきました附帯決議を踏まえ、厚生労働省の審議会で検討が進められてまいったところであります。申すまでもなく、私ども電気事業で働く者には、ガスや情報通信、運輸、郵便など、他の公益事業で働く方々とともに労働関係調整法における公益事業規制が課せられておりますが、これに加えて、私どもの労働組合に加盟をする一般電気事業者、いわゆる電力会社で働く労働者と日本原電、電源開発で働く労働者だけがスト規制法の規制対象となっています。したがいまして、新規参入者である新電力さんで働く皆さん、今回、同様にシステム改革が進められるガス事業やNTTさんなど情報通信事業などで働く方々には、このような規制が存在しないわけであります。
 また、私ども電力労働者は紛れもない民間労働者でありまして、公務員の皆さんのような雇用保障も人事院勧告制度のような代償措置もございません。国民の日常生活に不可欠な公共財を扱うという意味で同じ公益事業に働く民間労働者のうち、なぜ私ども電力労働者だけに限定をし、諸外国でも例を見ないような規制が課せられているのか、強い問題意識を持ちながら、厚生労働省の審議会におきましても、憲法に定める生存的基本権である労働基本権はひとしく私どもに保障いただきたいと、同法の廃止を訴えてまいったところであります。
 しかしながら、同審議会では、電力需給が逼迫をし供給不安が残っている、システム改革の進展と影響が不透明であるといった、ある意味、憲法上の権利との関わりとは直接的に関係しないような理由から、現時点では同法は存続やむなしと結論付けがなされたことは大変残念であります。なお、審議会報告書では、スト規制法の在り方については、システム改革の進展の状況とその影響を十分に検証した上で今後再検討すべきとされています。
 一方、今回の法案では、附則第七十四条におきまして、今後の段階的な改革の実施に際して、厚生労働省がスト規制法の存続理由として懸念を示されておりました電力需給の状況、改革の進展状況などが検証されることになっているわけであります。
 この検証規定の趣旨は、今後の各段階の改革を進めるに当たりまして、電力需給の状況、改革の進展状況をしっかりと検証、確認をし、課題があるならこれをしっかりと克服をした上で実施をするというふうに理解をいたしておりますし、そのような検証、確認がなされた上で、例えば二〇二〇年から発送配電分離が実施をされるとするならば、それはその時点で厚生労働省がスト規制法の存在理由とした課題が解決をされるということを意味するものであると考えます。
 つきましては、法案附則の検証規定に基づく検証に併せ、少なくとも発送電分離の実施までにスト規制法の在り方につきましても再検討をいただき、私ども電力労働者の労働基本権の回復に向けた結論を導いていただきますようお願いを申し上げます。
 大きくもう一点は、二項目でございます。
 先ほども申し上げましたとおり、我が国電気事業の歴史上かつてない大きな変革を伴う今般の改革は、決して後戻りが許されないものであります。その一方で、るるお手元に記載をいたしてございますが、原子力発電所の長期停止に伴う電力需給の逼迫と電気料金の値上げの二重リスクをいかに解消していくか、大規模災害への対応を含めて、これまで発送配電一貫体制の下で実施をしてまいりました各部門の協調連携を発送配電分離以降どのように維持をしていこうとするのか、原子力をめぐる課題が山積をする中で、今後の競争環境において安全確保を大前提にこうした課題解決を担う現場力をどのようにして守っていくのかなど、一昨年の第一弾改正法のプログラム規定あるいは第一弾、第二弾改正時の附帯決議などで提起をされました多くの課題が未解決、あるいは現在検討中、これから検討するといった位置付けにあると受け止めています。
 電力の安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、お客様の選択肢や事業機会の拡大という今般の改革の目的の実現に向けた大前提として、是非ともこうした課題を確実に克服をしながらステップ・バイ・ステップで進めていただきたいということをこの場で強くお願いを申し上げたいというふうに思います。
 最後になりますが、私ども働く者といたしましても、今般の改革は真に中長期的な国益やお客様利益にかなうものとなるよう願うものでありますし、国民の皆様の御期待をしっかりと受け止めまして、改革後の新たな環境の下で変化をばねとし、気概を持ってチャレンジをしていく所存であります。申し上げるまでもなく、いついかなるときも電力の安定供給は決して無機質なシステムではなくて、二十四時間三百六十五日、現場第一線で働く人の営みによって成り立っています。
 本日は貴重な時間を頂戴をいたしまして、今般の法案の審議や今後の諸制度の検討に当たり、是非とも対応いただきたい課題につきまして御意見を申し上げました。これまで長年電力の安定供給に携わってまいりました現場第一線で働く者の総意といたしまして、これから課題に対するしっかりとした対応がなされないままに改革が進められたり、あるいは改革の矛盾やゆがみが働く者にしわ寄せされることは決してあってはならないと考えておりますことを最後に申し上げまして、私からの意見といたします。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 岸本薫

speaker_id: 8575

日付: 2015-06-09

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会