辻英人の発言 (経済産業委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(辻英人君) ありがとうございます。全国ガスの辻でございます。
 本日は、ガス関連産業で働く者の声を聞いていただく機会を設けていただき、御礼申し上げます。
 お手元の資料を用いながら意見を述べさせていただきます。
 一ページには、今回のガスシステム改革に対する私どもとしての全体的な受け止めを記載しております。
 まず、ガスシステム改革全般については、お客様、社会の総合的な利益増大という改革の最終的な目的に真にかなうものであれば、働く者として精いっぱい対応してまいります。改革の目的に真にかなうかどうかという点が極めて重要であり、常に目的に立ち返ることが大切であると認識をしております。
 次に、小売全面自由化については、お客様サービスの一層の向上や保安レベルの維持向上に向けて、働く者として前向きに対応してまいります。様々なプレーヤーが切磋琢磨する市場環境の中で、私たち自身がお客様から選択いただけるために努力してまいる所存であります。
 導管部門の法的分離につきましては、働く者として幾つかの懸念を抱いており、適切な行為規制などについて十分な検討が必要と考えます。加えて、今後、検証規定、責務規定を確実に実施していただくことで働く者の懸念を払拭していただく必要があると考えております。
 二ページ、三ページには、今後の課題認識を大きく四点挙げております。
 一つ目は、働く者の雇用の安定、現場力の維持、継承についてです。
 システム改革の成否の鍵を握るのは最終的には人材であると認識しております。そうした観点から、ガス関連産業に働く者の雇用の安定や人材の確保、育成、関連技術、技能の継承といった視点を十分考慮していただきたいと考えます。
 加えて、改革の過程においては、労使自治の原則を尊重するとともに、労働者の声、現場実態を十分踏まえていただきたいと考えております。
 二つ目は、産業特性を踏まえた制度設計についてであります。
 保安の重要性が高い、中小事業者が多い、導管網が整備途上にある、家庭用も含め既に競合が厳しいといったガス産業の特性を十分踏まえて制度設計を行っていただきたいと考えます。
 特に、保安の重要性という点では、小売全面自由化以降においても保安、災害時対応のレベルが低下することのないよう、新規参入者も含めた全ての関係者が協働して各々の役割、責任を果たすための詳細な制度設計を行っていただきたいと考えます。
 加えて、中小事業者が多いという点では、中小ガス事業者は地域密着型企業として各地域の生活や経済を支えている重要な担い手であることも念頭に置いた制度設計を行っていただきたいと考えます。
 三つ目は、Sプラス3Eのバランスについてです。
 システム改革の最終的な目的は、お客様、社会の総合的な利益増大にあると認識しております。料金の最大限の抑制は大切な視点ではありますが、安全性や供給安定性、環境適合性も含めたSプラス3Eの視点をバランスよく踏まえた制度設計を行っていただきたいと考えます。
 加えて、システム改革の目的の一つである天然ガスの利用拡大につながる各種施策を講じていただきたいと考えております。
 四つ目は、法的分離に伴う懸念事項の払拭についてです。
 今回の法律案には法的分離の前後で検証を行う規定が盛り込まれておりますが、様々な観点から十分な検証を行っていただき、その上で、あらゆる可能性を排除することなく必要な措置を講じていただきたいと考えます。また、政府の責務規定として示されている内容についても、必要な施策を確実に行っていただきたいと考えます。
 行為規制については、保安、災害時対応への影響にも配慮し、人事などの面において過度な行為規制とならないようにしていただきたいと考えております。
 四ページ以降は、今申し上げた課題認識を補足する資料として添付をしております。
 まず、四ページにつきましては、先ほど触れたガス産業の特性を電気事業との違いという観点からまとめております。詳細はお読み取りをいただければ幸いであります。
 五ページになりますけれども、ここは法定上の保安責任範囲について、欧州のガス事業や日本の電気事業との比較を示しております。
 日本では、ガス事業者が建物内も含めた全てのガス管の保安責任を負っております。このほか、ガス機器の使用時の危険性をお客様に周知する義務や、建物内に設置された湯沸器等の一部の機器について調査や点検を行う義務を負っております。このように、日本のガス事業においては、保安面での関わり方が他に比べてより広く深いという点が大きな特徴であります。
 六ページは、お客様、社会からの期待という切り口から整理したSプラス3Eの視点であります。
 お客様、社会からの御期待には、エネルギーを安全に使いたい、いつでも安定的に供給してほしい、より安価で多様なサービスを受けたい、あるいは環境性を重視したいという様々な御期待があるものと認識をしております。
 私どもガス関連産業に働く者は、こうした御期待に応えるべく、記載のとおり、これまでに様々な取組を行ってきております。今後もそうしたお客様からの御期待にしっかりとお応えをしていくという観点で見た場合、特に導管部門の法的分離については現場で働く者として大きく三つの懸念があります。
 七ページを御覧ください。
 一つ目の懸念は、保安、災害時対応への影響であります。これが最も大きな懸念になります。
 今回の法律案では、災害時などに全てのガス事業者が連携協力する旨の努力義務規定が盛り込まれていますが、法的分離後においても、特に災害時対応における連携の仕組みが十分機能するために、これからの詳細検討が大切であると認識をしております。
 今後の詳細検討に当たり、現場から寄せられている声を紹介をさせていただきます。まず、大規模災害時には、複数の部門で必要なスキル、経験を身に付けてきた人材の確保が重要となることから、法的分離後も導管部門と他部門との人事交流が可能となる制度設計としていただきたいということ。また、非常時に組織の垣根を越えて柔軟かつ機動的な人員配置ができるよう、指揮命令系統が混乱しないよう、導管部門と小売部門が十分連携できる環境を整備していただきたいということ。加えて、仕組みではカバーし切れない現場の一体感や働く者の気持ちの連携、現場の肌感覚といった面をこれからも大切にしていただきたいということであります。
 こうした声の背景には、次のような働く者の意識が根底にあると捉えております。例えば、いずれ別々の採用、育成を経ていくことになれば、共通の価値観や高い保安マインドの醸成、さらには現場の勘といった暗黙知の継承が本当にできるのか、常日頃から顔が見える、人物を知っていることによる円滑なコミュニケーションや情報共有を今後も保っていけるのか、相互の業務内容を知る機会がなくなれば業務の隙間をカバーしにくくなるのではないか、こういった意識であります。
 二つ目の懸念は、導管網整備への影響です。ガス管がなければお客様にガスをお届けすることはできませんし、お客様を獲得できる見込みがなければ導管投資の判断は難しくなってしまいます。法的分離後も導管網の整備に向けて投資意欲が湧くような仕組みを整備していただく必要があると考えます。
 三つ目の懸念は、企業体力への影響です。働く者としても前向きにチャレンジしていこうとしている天然ガスの利用拡大や総合エネルギー企業化の道が遠ざかってしまうことがないよう、企業体力への影響も含め、十分な検証を行っていただきたいと考えます。多様な背景や持ち味を持った事業者が総合エネルギー企業として切磋琢磨することが、エネルギー市場の活性化や健全性の確保の観点からも重要であると認識をしております。
 以上が法的分離に関して働く者として抱いている懸念事項であります。
 八ページには、大規模な地震が発生した際の現行の部門間の連携状況を示しております。
 地震が発生しますと、出社基準に従い、社員が自動的に出社する決まりになっており、出社したメンバーで緊急組織を編成します。また、初動対応において必要なスキル、経験を身に付けた要員を一人でも多く確保することが重要なため、導管部門以外からも応援をもらうことになります。初動体制の中で赤字で示しております被害情報の収集や電話受付、あるいはガス漏れの位置を確認するといった業務には、小売部門と導管部門の社員が交ざった混成部隊が編成され、現場での作業に当たるケースがあります。
 これまでの経験から言えることは、二次災害の防止や早期の復旧には迅速かつ的確な初動対応が極めて重要だということであります。初動対応に当たるのは基本的には自社の社員であるため、法的分離に当たっても十分配慮が必要になると思っております。実際に、東日本大震災の際には、小売・スタッフ部隊も含め全社を挙げて緊急電話受付を行ったことで、導管部隊がガス漏れ対応等の現場作業に専念でき二次災害を防止できたケースや、小売部門に従事している者の中からスキル、経験を有する社員を臨時で集めて現場作業に当たり、復旧を早期化できたケースもありました。
 資料の説明は以上であります。
 今日段階では改革の骨格が示されたにすぎず、詳細はこれからという内容が多くあります。国会での御審議に加え、省令等の詳細において十分な御検討を行っていただくようお願い申し上げます。また、懸念点が解消されないまま改革を進めては、かえってお客様、国民の皆様に御迷惑をお掛けすることにもなりかねないと感じております。真に実効性ある検証を行っていただくよう、改めてお願いを申し上げます。
 最後になりますが、私たちガス関連産業で働く者の中には長年培ってきたDNAがあると思っております。それは、いかなるときもお客様の安心、安全を守るという強い使命感と、いざというときに仲間を助け合うという一体感であります。今回の法律改正によってエネルギー市場がどのように変わろうとも、そうしたDNAをしっかり継承していけるよう努力してまいります。
 以上、私からの意見とさせていただきます。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 118914080X01520150609_009

発言者: 辻英人

speaker_id: 1650

日付: 2015-06-09

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会