阿達雅志の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○阿達雅志君 自由民主党の阿達雅志です。
審査会会長、幹事の皆様、本日は意見表明の機会をいただき、誠にありがとうございます。
二月二十五日の欧州派遣議員の御報告、三月四日の参考人意見聴取を踏まえ、憲法について意見を述べさせていただきます。
日本国憲法は、一九四七年五月三日の施行から六十八年を経過し、国民の間に深く定着し、日本人の共通の価値観として国民主権、基本的人権、平和主義が受け入れられてきたものと思います。日本国憲法が、この間、国家統治の基本的体制ないし根本の秩序を定める法規範という実質的意味の憲法としての本来的役割を担ってきたことは疑問の余地がありません。私も、日本国民として、日本国憲法が有する基本的価値を共有し、心より敬意を払っている一人です。
しかしながら、私は、これらの基本的価値を維持しつつも、日本国憲法の改正をすべきであると考えます。それは、一九五五年の立党以来の自民党の綱領が自主憲法制定、新憲法制定を掲げてきたからだけではありません。
憲法改正がなぜ必要か、理由は三つあります。
まず第一に、民族の誇りの問題です。制定時の主権の問題。
日本国憲法は、一九四六年六月二十五日に帝国議会で審議を開始し、同年十月に成立しました。しかし、一九四五年九月二日調印の降伏文書には、日本国政府の国家統治の権能は本降伏文書を実施するため適当と認める措置をとる連合国最高司令官の制限の下に置かれるものとすとされており、一九五二年四月二十八日発効のサンフランシスコ条約によって、戦争状態が終結し、連合国は日本国民の完全な主権を承認すると規定されるまで日本国の主権は制限されていました。
また、一九四六年の帝国議会における憲法の審議の途中においても、議長を含む衆議院議員九名が公職追放に遭っています。日本国憲法が制定された後も、平和条約によって完全な主権を回復するまでは連合国最高司令官の命令が憲法に優先していました。
もちろん、このような憲法制定の経緯が日本国憲法の規定する価値を損なうものではありません。しかし、このように日本が完全な主権を持たない中で成立し、当初は最高法規性を持たなかった日本国憲法をそのままにしていてよいのでしょうか。遅きに失した面もありますが、日本国民が完全に主権を回復した後に憲法を改めて見直し、必要であれば改正することは、民族の誇りの問題として重要であると考えます。
第二に、国家の権能の変質です。
近代憲法においては、立憲主義によって国家権力を縛ることに主眼が置かれていましたが、現代国家では国民主権が進み、国政は国民自身による政治となり、国家の権能も、社会国家、福祉国家としての積極的権能が加わっています。国家権力と国民を対立構図だけで見るのは妥当ではなくなっています。
憲法においても、国家の機能の変化に応じて社会権など新しい権利を日本国憲法の中に書き込んでいくことが重要です。環境権といった、最近になって現れてきた権利も憲法に明記することも考えられます。さらに、憲法を国家権力を縛るだけのものではないと考えるならば、憲法の前文において、日本の伝統文化、価値観といった記述を加えることも考慮すべきです。現代国家の権能に沿った憲法とすべきです。
第三に、憲法のダイナミズムです。
激しい社会の変化の中で、憲法の成文と社会の現実にギャップが生じる事態も生じています。憲法が、司法、行政、立法、それぞれの解釈によってその内容を変え、また、実際の運用によってその意味を変えていくということが起きています。いわゆる憲法の変遷を認めるとか、憲法の解釈運用を弾力的に認めるだけでなく、正式の憲法改正による方が憲法保障の強化になる場合もあると考えます。
国家緊急事態という現実の前に、憲法秩序を一時的に停止することを規定する国家緊急権を憲法に規定し、憲法秩序の停止に歯止めを掛けることも重要です。
また、地方における人口減少という社会変化の結果、一票の格差問題が憲法問題として顕在化しています。現代の政党政治、社会環境において、参議院が衆議院と別にどのような役割を果たしていくかは大いに議論のあるところです。しかし、もし参議院の役割と併せて選挙制度を変え、最高裁判所の参議院選挙に関する憲法解釈とは異なる制度を構築すべきであると考えるならば、やはり憲法改正が必要となります。
憲法が常に最高規範であり続けるためには、社会のダイナミックな変化に応じた改正が必要です。日本国憲法は、一九四六年に制定された時点では国際的に見ても非常に先進的な成文憲法であったと思います。しかし、それから七十年近くが経過しています。国家権能の変化、社会変化に応じて憲法を変えていくことが必要です。
欧州視察団の基調報告においても、各国の憲法規範の内容が一様でなく、各国が何度も憲法改正をしていたという話がありました。また、参考人聴取においても、国家及び憲法について二つの考え方をお聞きしました。こうした意見を拝聴しましても、やはり時代に即した憲法が重要であると感じました。
以上、三つの理由によって、私は日本国憲法の改正をすべきであると考えます。
以上で意見表明を終わります。