今野浩一郎の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(今野浩一郎君) 学習院大学の今野といいます。よろしくお願いします。
 私は、専門が人事管理なものですから、今日はその人事管理からお話をしたいというふうに思っておりますので、したがいまして、タイトルも人事管理から同一価値労働同一賃金を考えるというふうにしてあります。
 まず、具体的に入る前に、今日のお話をするときに、ちょっと私の思いみたいなのをお話ししておきたいと思うんですが、この法律が扱う内容というのは、これからの労働とか雇用を考える上で非常に重要だなというふうには考えております。したがって、非常に重要でありますので、影響も非常に大きいですので、企業の中の人事管理の実態というのをきちっと理解をしていただいて考えていただきたいというふうに思っております。
 そのときに、当然のことながら、企業によって人事管理って多様ですので、今日、イケアさんの話がありましたけれども、イケアさんはイケアさんのタイプがありますが、違うタイプの人事管理っていっぱいありますので、それぞれのタイプについてここでお話ししても分かりにくくなりますので、それを、ベースにある、通底している基本的な考え方についてお話をさせていただいて、それで皆様の議論の参考にしていただければというふうに考えております。したがって、ちょっと理屈っぽくなるかもしれませんが御勘弁いただきたいと、大学の教師だからしようがないというふうに考えていただければと思います。
 それで、お手元の資料を見ていただきます。
 まず、人事管理にとって企業内での処遇とか賃金の決定の基本的な考え方って何かというと、いろいろありますが、最後の最後まで行くと、ここに書いてあるように、会社に同じ貢献をする社員には同じに払おうじゃないかと、これが基本原則です。これ、通常、人事管理では公平性原則というふうに呼んでいて、昔から言っている言葉です。ちょっと恐縮なんですが、欧米なんかではインターナルエクイティーと言うんですが、内部的に公平性を保てというのと同じ意味ですので。
 ですから、公平性原則というのは国を越えてどこでも基本原則としてあるというふうにお考えいただきたい。そうすると、今回ここで議論になっている同一価値労働同一賃金とか均等・均衡処遇とかいうのに掛からない、ちょっと類似したコンセプトであるというふうに考えていただければと思います。
 ただ、問題は、この貢献をどうやって捉えるかなんです。
 この貢献については、例えば企業は、元々の大きな問題の一例を申し上げますと、そこにも書いてありますが、営業の人がいて技術の人がいて、同じ給料を払う、同じ貢献だからといったときに、営業の仕事と技術の仕事は全く違いますよね。違うものを貢献が一緒だというふうに捉えて同じ賃金を払うわけですね。そうすると、どういう観点から見て同じとしたのかということが、これが非常に大きな元々の問題なんです。
 したがって、お手元の資料では、②のすぐ下にありますが、仕事等の違いを超えて貢献をどう捉えるかということが先ほどの公平性原則があった下で非常に重要な問題だと。この点については、人事管理は昔から頭の痛い課題としてずっと取り組んできたというふうにお考えいただきたいと思います。
 今日は時間がないので省きますが、詳細は。そうやっていろいろ経験してきた中の幾つかの経験のタイプとして、例えば、日本は能力を重視して公平性を出そうと、アメリカは職務を重視して公平性を出そうと、ヨーロッパは職務ですが、アメリカと違って仕事のくくりは大ぐくりにしておいて公平性を出そうとか、いろんなタイプがあるというふうに思っていただければと思います。したがって、一言で言うと、どのタイプもある種の合理性を全部持っているわけです。そうすると、今までの経験が教えることというのは、そういう意味では、公平性原則をベースにする基準というのは多様な合理性があるんだということがこれまでの経験かなというふうに思います。
 したがって、一番最後に書いてありますが、今回は雇用形態の多様化ですよね。ということは、多分、働き方の違う人について公平性原則をどうやって適用するかということですので、したがって、これまで人事管理がずっと扱ってきた公平性原則の応用問題だというふうに私は考えていて、その点だけ見ると、別に新しい問題ではないというふうに思っております。これが前段です。
 急がないと時間がないですね。次のページをめくっていただきたいと思います。
 それでは、この雇用形態の多様化ということに絞って議論をお話ししたいというのが二ページ目になります。これもモデル化してしゃべっていますが、伝統的に日本の企業ってこういうやり方をしていましたというお話をします。
 その前に、①のすぐ下に、雇用形態の多様化に対応する労働者に共通することは制約社員と書いてありますが、実は、パートにしても契約社員にしてもいろんな多様な社員がいるんですが、そういう人たちを共通して見ると、働く時間とか働く場所とか仕事内容に制約を持っている人なんです。そういう意味では共通しているんです。いろんなタイプがいますから、そういう人たちをタイプごとにやってもしようがないので、共通してそういう人を制約社員と呼ぼうというのが私が今一生懸命言っていることなんです。そうすると、従来の正社員は、何でもします、どこでも働きます、何時間でも働きますということだから無制約社員と、そういうふうに私は考えているというふうにお考えいただきます。
 それを前提に、①の矢印の二個目を見ていただきたいんですが、従来の伝統的な日本の人事管理というのは、無制約社員は基幹的業務をします、制約社員は周辺業務をしますという職域分離を明確にしておく、職域分離を明確にしておいて違う人事管理を適用すると。例を挙げると、無制約社員型の正社員は年功賃金にするけれども、制約社員型の例えばパートの人には職務型の賃金をするとかというように、違う人事管理を適用するというやり方をしてきました。それがここに書いてある一国二制度型人事管理というふうに私が呼んでいるところです。これが伝統型のタイプなんですが。
 ②です。今起きていることというのはどういうことかというと、例えば、無制約の正社員の人でも、育児の問題があります、介護の問題があります。さらには、ここには書いていないですが、病気で通院している人が今物すごく増えています。こういう人たちというのは、無制約で入ったんですが、そのときになって制約社員化しているわけですよ。ですから、無制約社員イコール正社員といっても、その中が、私の言葉で言うと制約社員化してきちゃっているということがあります。
 今度は、もう一つは、制約社員の方も非常に基幹的な業務をする、例えば店長さんがパートとかいう人が増えていますから、制約社員の人が基幹業務をするようになってきちゃっている。ということは、私が先ほど言った制約社員と無制約社員の職域分離が壊れてきちゃっている。したがって、日本の企業は今までの一国二制度は変えなきゃいけないという状況に置かれているというふうに考えていただきたいと思います。
 そうすると、方向は、②の二番目の矢印のところに書いてありますが、求められることは、無制約社員、制約社員にかかわらず、ここの言葉で言うと、雇用形態の多様化にかかわらず、社員の人にしてみれば活躍できる、企業からすると戦力化できる、そういうような人事管理に組み替えていかないとうまくいきませんよという状況になってきていますということです。
 こういうことを踏まえて、じゃ一国二制度に代わる人事管理はどうやってつくっていこうかということが次の話題になって、今回の法律とも、ここから先が考え方としては具体的に関連してくると思うんですが、細かいことはもう時間がないので、結論というか出口だけお話をしますと、次のページを見ていただきたいと思います。絵が描いてあります。
 これは、先ほど言ったように、公平性原則というのは、同じ貢献をしている人には同じに払おうじゃないかと、そういうことですので、その貢献はどういう状況で起こるのかということを理解しようということで作った絵になります。
 一番左側は、ある社員を例えば採用しますというのが人材確保です。その社員は仕事に入ります。そうすると、仕事のプロセスの中に入ります。そうすると、その社員は、ある能力を持って、その能力を業務上のニーズに合わせて発揮をして、ここでは投入と書いてありますが、発揮して、特定の仕事をして、その結果として成果、ここの言葉で言う貢献が表れるというふうに考えますと、実は、貢献に貢献するファクターというのは、能力とか業務ニーズに合わせて能力を投入する行動とか、あるいはどんな仕事をしているのか、こういうことで決まってくるということになります。
 そうすると、賃金決定要素というのは、仕事とか業務ニーズに合わせて能力を投入する行動とか仕事ということになります。これをきちっとこの観点から、先ほど言ったように無制約社員、制約社員とかいうのは取っ払って、これでもって全ての社員の貢献度を測ろうという考え方はどうだろうかというのが、私のこれは私案です。
 それに対して、賃金決定原則を下に書いておきました。一番右側の仕事については、仕事原則とありますが、同じレベルの仕事をやっているんだったら同じに払おうじゃないかということになります。
 次の業務ニーズに合わせた能力ですけれども、会社にしてみれば、例えば、一番分かりやすい例は、今度中国に工場を出します、ここの工場が我が社にとって生命線です、そうすると、その生命線の工場に行ってくれる社員と、いろんな事情があって行けない社員というのは、我が社に対する貢献度は違うんです、能力とかそれまでやっている仕事は一緒でも、貢献度は違うということで、真ん中ですけれども、そういうのを制約配慮原則と私は呼んでいるんですが、同じ仕事でも働く制約度が違えば賃金は異なるということになります。
 さらに、能力については、能力の大小あるわけですが、特に日本の企業の場合は、若年層で、そこに書いてありますが、能力養成期、特に、いわゆる正社員として採られた方たちは、最初の五年、会社によって違いますけれども、三年、五年、十年は養成しますので、そうすると、養成する時代はやはりどれだけ能力が上がったかということが非常に重要ですので、そういう時代には仕事より能力を重視する賃金の方が合っているということになります。それをここで育成配慮原則と書いてあります。
 いずれにしても、この三つの組合せで、それは会社の状況はいろいろ違いますから、これを上手に組み合わせる、つまり、この三つを一つのアンカーとして決めていってくださいということになります。
 さらに、もう一つ重要なことがあります。仕事のプロセスに投入されるというか入る社員も、実は、企業というのは、世界どこもそうですが、幾つかのタイプがある。例えば、日本の例でいうと、一番いい例は、我が社の将来幹部になってほしいので長期的に養成して長期的に活用してという社員がいるのと、今この仕事をやってくれという社員がいると。そうすると、この社員というのは、企業にとっては社員のタイプが違いますので、そうすると、社員タイプごとに人材をマーケットから採ろうとすると、これは労働市場でのマーケットが違います、そうすると賃金が違ってきますということが一番左側の市場原則ということです。
 ですから、あとは、具体的な賃金制度は、こういうことを考えながら、前のページを見ていただきたいんですが、二ページ目の一番下に書いてありますが、今言った諸原則の具体的な適用というのは、結局、個別企業で事情が違いますので、そういうのを考えながら労使できちっと考えてやってくれということだろうというふうに考えております。
 最後のページを見ていただきます。最後にとあります。もう時間ですね。求められていることでいきますかね、一つだけ。
 ここは雇用形態の多様化に従って処遇等をどうしようかということが主要なテーマだと思いますが、この真ん中に書いてありますが、人事管理上からすると、雇用形態の多様化した、例えばパートの人でもいいんですけれども、そういう人たちがきちっと企業内でキャリアを踏んでいけるような仕掛けをきちっとつくっておくというのが実は非常に重要で、ですから、人事管理上は、賃金とともにそういう人事管理の仕組みというのをきちっとつくっておくということが非常に重要だというふうに思っています。
 最後、私が言いたいことは②に書いてありますので、読んでいただきたいと思います。
 済みません、少し時間をオーバーして失礼いたしました。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 今野浩一郎

speaker_id: 3957

日付: 2015-08-19

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会