山本隆一の発言 (内閣委員会)

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○参考人(山本隆一君) 資料を用意いたしましたので、御覧になっていただければと思います。
 まず最初に、参議院内閣委員会でこのような参考人意見陳述の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。私は、医師、まあ元医師といいますか、今でも医師免許証は持っているんですけれども、医師で、専門は、医療情報のセキュリティーとプライバシーを専門にしております。それですので、主に医療健康情報の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、二ページ目に、医療介護分野における現状の個人情報保護法制下の課題というふうにして六点挙げさせています。
 一つ目が、やはり保護法という名前があるからかもしれませんけれども、やっぱりどうしても保護に非常に傾いた運用がされる傾向に特に民間でございます。それから、活用しないということに対しての対策が余り積極的にはなされていないというふうに考えております。
 それから、日本の個人情報保護法制は情報取得主体によって異なるルールで運用されている。これ、衆議院の内閣委員会でも話題になっておりましたけれども、いわゆる二千個問題と言われている、民間、それから行政機関、地方自治体、独立行政法人で異なるルールで運用されているという問題がございます。
 それから、不正利用に関して実効性のある悪用防止の手だてが不十分ではないかと。
 それから、個人情報の定義が曖昧であると。つまり、匿名化がうまく定義ができないという問題がございました。
 それから、今日も番号法の方の御議論もございますけれども、番号があるということは、自分の情報がどこに存在して、どう扱われているかを知るということができますので、これは自分の情報のコントロールという意味では非常に重要な、個人情報保護では非常に重要な役割と思いますので、やはりこのIDが必要であろうと。
 それから、遺伝する情報、これも幾つか問題がございます。その中でも、もちろん最も大きなのが、本人が同意しても、実際はその影響を受けるのが子供であったり孫であったりすると。つまり、個人情報保護法の場合は、本人と情報を収集する人が一者、二者で、それ以外は全て第三者になりますので、ここがどういうふうに扱っていけばいいかということが不明瞭であると。
 その下に、今回の改正点の概略を書きました。これは委員の先生方よく御存じと思いますので説明は割愛いたしますけれども、上の六つの課題のうちの大部分はこれでかなり改善されるというふうに考えております。
 次のページをおめくりいただいて、絵ばかりで恐縮ですけれども、上の方は、これは医学の教科書でございまして、私が学生の頃からこれらのタイトルは皆同じで、もちろん表紙は違いますけれども、非常に有名な医学の教科書であります。
 それで、これらの中に書かれていることは何かというと、これは基本的には患者さんのプライバシー情報のエッセンスでございまして、もちろん名前等は消えていますけれども、元々は患者さんの診療情報から作られたもので、医学はまだ人間の情報からしかできないといいますか、試験管やネズミの実験でできるのはごく一部でございまして、大部分はやはり臨床情報からできると。
 したがって、医療の情報というのは、これは使わなくてはいけない、本人のためだけではなくて、医学のため等、やっぱりそれは適切に使わなければいけない問題だと。
 下の方に二つ絵を描いておりますけれども、右側は、これはアメリカのHIPAAプライバシールールができてから医学の研究が非常に難しくなって、費用も掛かって、なおかつ患者さんのプライバシーは守られていないという内容がインスティチュート・オブ・メディスンからレポートで二〇〇九年に出ております。それからもう一つの方が、イギリスのアカデミー・オブ・メディカル・サイエンスの出したレポートで、極めてよく似た内容ですけれども、イギリスの場合はデータ・プロテクション・アクトですけれども、これが強化されてから医学の疫学研究が非常に難しくなって、場合によっては不可能である、なおかつ患者さんのプライバシーが守られていないというふうなレポートが、それぞれイギリス、アメリカから出ております。
 どこの国も、ですから、こういう個人情報保護法制と、それから公益目的の利用のバランスというのが非常に悩んでいるところだろうというふうに考えております。
 次のページをおめくりいただいて、私、実は厚生労働省が構築をしておりますレセプト情報、それから特定健診のデータベース、俗にNDBと呼ばれていますけど、これの利活用に関する有識者会議の座長をしております。
 これは、非常に個人情報保護法的には、何といいますか、胃の痛くなるような審議をいつもしているデータベースでございまして、内容は御承知かと思いますけれども、電子化されたレセプト、今、我が国の医療、医科それから薬科の場合はほぼ九〇%以上のレセプトが電子化されていますし、しかも非常にこの頃増えてきております。そういうデータが全て入っていると。それから、特定健診、特定保健指導のデータが全て入っていると。ただし、これは一応、名前、生年月日、性別、それから保険の記号番号等は匿名化をされているということになります。
 次の図がその匿名化のされ方なんですけれども、二回ハッシュ化しているんですね。こうすることによって、データベースだけでも分からないし、保険者の方でも分からない、誰が見てももう元には戻れないというふうな情報の変換をしております。
 現状どれくらいかといいますと、八十億件のレセプト情報が入っておりまして、特定健診、特定保健指導が約一億件、それからサンプリングデータセットは毎年十月のデータで作っていますし、様々な使いやすいデータを別途作って、公益目的の利用、それから行政目的の利用等に提供して、ただいまは民間利用もトライアルとして始めております。
 今年からはオンサイトセンターというのが試験稼働しておりまして、このオンサイトセンターって何かといいますと、箱のセキュリティーといいますか、人の出入りの管理とか、そういったことを全てオンサイトセンターが引き受ける、だから研究者は体一つで来ればいいと。その中でデータを操作をして研究をする、ただし何も持ち出せないというふうな仕組みでございまして、持ち出すときには再申請をすると。こうすることによって、研究者が情報セキュリティーのことを余り深刻に考えなくても研究ができるというふうな環境をつくっております。
 これは、後で匿名加工情報のお話をしたいと思いますけれども、一般の研究者にとってやはり情報セキュリティーというのは非常にハードルの高いことでありまして、部屋に例えば常に施錠をするとか、入退室管理をするとか、IDの管理を自分たちでするとかというのはなかなか負荷が高いということで、こういうことをしてサービスをしているところです。
 このデータベース、匿名化データかというふうな議論が、これはもう数年前にされたんですけれども、確かに一枚のレセプトを見て誰のレセプトかというのは分からない、特定健診、特定保健指導見ても誰か分からないと。しかし、同じ人のレセプトは全部つながるようにできているんですね。したがって、五年間ありますと、五年間の間に医療機関にかかった月とか、最近のレセプトは日も入っていますので、日が全て分かると。そうすると、近しい人にとったら、五年のうち、何年何月、何年何月、何年何月何日に医療機関を受診したというのはひょっとすると知っているかもしれない。そうすると、並べるだけでかなりの特定性が出てくると。さらに、非常に頻度の少ない薬品を使う、あるいは非常に頻度の少ない医療行為があったりすると、これは非常に特定性が高まってしまうので、識別できないとは言い切れないということで、匿名化データとしては扱っていないんですね。一応リスクの残った情報として扱っております。
 それで、次のページにありますようなかなり複雑な仕組みをつくりまして、あるいはそれに対して非常に厳しいガイドラインを作って提供しているところであります。
 こういったところが今の個人情報保護法の改正案では、匿名加工情報というカテゴリーを設けていただくことによって、個人情報か個人情報でないのかというふうな何となくグレーな議論をせずに済むという意味では、法律改正は非常に歓迎すべきものだと思っています。
 ただ、ここにございますように、匿名加工情報は、一応個人情報ではないんですけれども、一定程度リスクは存在するということで、安全管理の努力をしなさいということと、それから再特定する努力はしてはいけないということが条件になっております。
 ちょっと医療情報の安全管理、セキュリティーをやっている立場からすると、少し心配なのは、安全管理、セキュリティーというのはそもそもベストエフォートでございまして、一〇〇%というのはあり得ないわけですから、そのベストエフォートのものを努力義務にするというと何となくちょっと弱いような気がしていますので、少なくとも医療健康情報のような要配慮情報に関しては、一定の水準の安全管理を求める方がよいのではないかというふうに考えております。これは、第三者委員会あるいは政令でどのように引かれるかによると思いますけれども、その辺は少し注意した方がいいのではないか。
 それから、要配慮個人情報ですけれども、病歴というふうに書かれておりまして、これ病歴って一体何なのかというのはなかなか分かりにくい概念でございまして、これは政令で定めることになっておりますけれども、介護情報は含まれるのかとか、あるいは最近、消費者ベースの健康情報というのが非常にたくさんございます。サービスでちょっと針で突いてその血液を分析してくれるとか、あるいは遺伝子解析までスポーツ店がやったりとか、そういったことがございます。こういったところが病歴の情報に入るのかとかということが少し不明瞭に見えます。
 仮に、全ての医療情報、介護情報がこの要配慮情報になった場合に、現在、要配慮情報は本人の同意を得ない取得を原則禁止となっておりますし、利用目的の制限の緩和、それから本人の同意を得ない第三者提供の特例の対象から除外というふうになっております。
 信条とか人種とか社会的身分とか、それから犯罪被害あるいは前科前歴というのは、これはめったに使われる情報ではないと思いますけれども、医療や介護に関する情報は使わないんだったら集めない方がいいわけで、これは必要だから集めるわけですから、精いっぱいその御本人のためには使わなくてはいけない情報で、使うことをちゅうちょして医療が遅れるとか、そういったことはあってはならないわけですね。
 また、最初にお話ししましたように、これは医学のためにもやはり使わなければならない、医学の進歩が止まれば医療は止まってしまいますので、これはやはり使わないといけない。とは言いながら、プライバシーの侵害は絶対起こしてはいけないという性質のものだと思うんですね。
 それは、おおむね今でもそういう概念で皆さん扱われていると思うんですけれども、法律がこうなった場合に、本人の同意を得ない取得の原則禁止、これ本当に診療に差し支えないかというと、余りあり得る場面ではないんですけれども、私、昔、糖尿病外来をやっていて、患者さんが来たときに、体重が増えて、尿糖が増えて、血糖も増えていると。それで、最近食べ過ぎていますねと聞くと、いや、もう水しか飲んでいませんとおっしゃる方がよくいらっしゃるんですね。
 それで、そんなはずはないとは思うんですけれども、そんなはずはないと思うけどたまには不安定型糖尿病というのがあって、本当に僅かな事情でどんどん状態が変わるのがあるので、そうではないということを確認しようともし思えば、御家族にお話を聞くしかないんですね。本当に食べていないですかと聞いてみたら、いや、もう先生のところから帰ったら、おまんじゅう食べて、あんパン食べてみたいな。だったら、糖尿病としては、それは病態としては悪化しますけれども、少なくとも緊急に入院が必要な不安定糖尿病ではないということが分かるわけで、それは臨床上知る必要があるデータかもしれない。でも、これは本人の許諾を得ないで家族から本人の情報を得るということになります。これはまれではありますけど、やはりそういうことが必要な場合がある。
 それから、利用目的の制限の緩和。今、地域医療連携、ITを使った地域医療連携というのが非常にたくさん行われていますけれども、多くの場合は地域医療連携システムに患者さんが入るときに同意をいただいています。これは、今十個の病院と二十個の診療所でこういう連携をやっていて、ここの中で情報を交換することを御了承くださいということで同意をいただいて、その後で病院が一個増えた、十一個目の病院が出たというとき、これ本当の意味では利用目的の変更なんですね、極めて軽微ですけど。これが要配慮情報の場合は、そう簡単にはその同意を省略できないということになります。
 それから、第三者提供も、これは次のページをおめくりいただければ書いてあるんですけれども、要配慮個人情報の場合はこの法二十三条の第二項が除外されます。
 それで、現状の厚生省のガイドラインは、この四つの場合、これは地域医療連携とそれからコンサルティングと家族への病状説明、この四つの場合に関しては、極めてオプトアウトに近い聞き方なんですけれども、文章上は包括的同意と呼んでいますけれども、中身はほぼ同じでございます。これができなくなると、現場は非常に困るんだろうと思います。
 それから、次のページでは、やはり二千個問題ですね、主体が変わるということと、それから遺伝子の問題が問題だということを書いております。
 十一ページ目には、この制度の違いがなぜ困るのかというのは、これは別にルールが同じでもやっぱり障壁になるんですね。それぞれやっぱり許可を得る委員会があって、それを全てクリアしないといけない。これは、四つも五つもとなると、忙しい臨床医にはほとんどもう不可能に近いということになります。
 それから、最後にちょっと番号法の方に意見を述べさせていただきます。
 今回の改正案に関しまして言えば、番号法の本質を変えるものではないというふうに考えておりますので、また、番号法で想定している情報提供ネットワークのセキュリティーというのは相当高いレベルにありますので、たとえ特定健診、特定保健指導の情報が流れてもそう心配はないと思いますけれども、それでもやはりあれは医療情報ですので、本来はその他の、それ以外の医療情報、介護情報を扱うときと同じ基準にすべきだと思いますので、並行してこの議論を進めていくべきだというふうに考えております。
 私の意見は以上です。どうも御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 山本隆一

speaker_id: 22202

日付: 2015-06-02

院: 参議院

会議名: 内閣委員会