田島泰彦の発言 (内閣委員会)

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○参考人(田島泰彦君) 話ができなくて、ありがとうございます。少し短めにお話をさせていただきたいと思います。
 いろいろ日本の番号制度、あるいはマイナンバー制度を考えると、外国のいろんな経験というのはやはり参考にしなければいけない対象であるというふうに考えております。
 イギリスは、二〇〇六年の三月にIDカード法という法律が制定をしまして、アイデンティティー・カード・アクトという名前なんですけれども、それに伴ってID登録簿、ナショナル・アイデンティティー・レジスターというシステム、こういう国民登録制度が創設をされました。国民の基本的情報に関する全国的な規模のデータベースということになります。これに伴い、いろんな目的で利用できるICチップ内蔵のIDカードも発行し運用するということになりました。
 ID登録簿には、二〇一三年までにイギリスに住む十六歳以上の全ての人の基本的な情報が登録され、それに加えて、顔、それから指紋、虹彩、こういうものについての生体認証の情報も登録することが要請されました。さらに、旅券の交付や再申請などの情報も全てID登録簿に記載されるということになっていました。
 また、基本的な情報と生体情報がICチップ内蔵のIDカードにも登録されて、公共サービスを受ける際にはこのIDカードを提示する義務が生まれることになりました。さらに、ID登録簿の情報及びIDカードの情報は、警察や治安機関などの国家機関から情報提供の要請があれば、法律に定める要件を満たす限り、本人の承諾なしに提供されるということになりました。ID登録簿の情報が正しいかどうかについてチェックするために、他の省庁が違う目的で持っている情報を提供させることも法律により可能になります。
 もしこれが実現されると、先進国でこれだけ徹底した住民登録とIC化されたID制度が法制化されるというのは恐らく初めてのことになるんだろうというふうに言われました。
 ところが、このような新たな国民登録制度の創設に対して、市民団体などから、国民を対象とした全国規模の巨大データベースを作り上げて、他のもろもろのデータベースと結合することによって、政府が国民のあらゆる情報を利用できることを可能にする仕組みではないかというふうにかなり強い批判が向けられて、これはプライバシーを始めとする市民的自由に深刻な脅威をもたらすということで非常に強く警鐘が鳴らされてきたんですね。
 こういう中で、実は二〇〇六年に制定したのは労働党政権だったわけですけれども、二〇一〇年に総選挙によって政権交代がなされて、労働党政権が敗北して、保守党と自由民主党の連立政権が実は生まれたわけです。連立政権はIDカード法の廃止法案を提出して、新たな国民登録制度はこれでおしまいにするという形で挫折を余儀なくされるというのはイギリスの経験なんですね。
 すなわち、番号制と結び付けられた国民登録やIDカードの制度というのは、国家の過剰な情報管理とプライバシーを始めとする市民的自由の侵害の危険を伴っているのではないかという危惧の前で、イギリスの場合には、創設はされたものの短い期間にあえなく挫折をしてしまったということなんですね。しかも、反対をしている人たちは、リベラルや左派の人たちでは必ずしもなくて、保守的な人たちも含めてかなり強い抵抗、批判がなされて、一度つくったものをひっくり返すという経験なわけです。
 私たちは、この経験というのは余り日本では強く紹介はされていないんですけれども、共通番号制の導入、あるいはその運用ということ、あるいは更なる改正を考えたときには、私たちもしっかり共有をして、受け止めるべき教訓の一つとしてあるのではないかなというふうに考えております。

発言情報

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発言者: 田島泰彦

speaker_id: 14962

日付: 2015-06-02

院: 参議院

会議名: 内閣委員会