大久保勉の発言 (本会議)
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○大久保勉君 民主党・新緑風会の大久保勉です。
私は、会派を代表しまして、ただいま議題となりました日本銀行政策委員会審議委員の同意人事に対して、反対の立場で討論を行うものです。
その理由を申し上げる前に、今回の同意人事に関連して、政府に一言苦言を申し上げたいと思います。
今回の日銀審議委員の同意人事は、政府より二月四日の議運理事会に提示される予定でした。ところが、日経新聞朝刊が、日銀審議委員に原田氏を起用へと既に報道していました。
世耕内閣官房副長官は、一部マスコミに報道されたことは遺憾であり、今後関係者に対して情報漏えいがなかったか否かを調査すると釈明し、十日の議運理事会で、事前に情報を知り得た政府内の関係者十六名及び候補者本人に対して行った聞き取り調査では、報道関係者や第三者への情報提供や情報漏えいの事実は確認できなかったと報告しました。
一部マスコミにすっぱ抜かれて遺憾と言いつつ、聞き取り調査では原因が分からないとすれば、政府の情報管理に大きな疑問符が付くと言わざるを得ません。そもそも、政府の情報管理の不徹底は今回に限ったことではなく、過去にも日銀同意人事の事前報道がなされています。
安倍政権は、自分たちに都合の悪い情報は特定秘密保護法を盾に秘匿するとの批判を耳にしますが、まずは政府内の関係者の情報管理を徹底することが美しい国の政府のありようではないでしょうか。
さらに、同意人事の根幹に関わる問題が発生しています。これは、二年前の三月十五日に参議院本会議で行われました岩田日銀副総裁の同意人事の採決に関連するものです。
岩田氏は、十日前の衆議院議運委員会の場で、二年後の春、消費者物価の上昇率が二%にならなかったら辞任するという決意を表明されました。最も公式な場と言える国会に出席して、同意人事の判断に関わる決意を述べられたのですから、相当の覚悟があったのでしょう。同意人事の結果は、投票総数二百二十、賛成百二十四、反対九十六の賛成多数で同意されました。賛成会派には、自民党、公明党の与党のみならず、みんなの党や日本維新の会等、野党の一部も加わりました。
その岩田日銀副総裁は、本年二月四日、仙台市内での記者会見の席上、二%の物価目標の達成時期は二〇一五年四月には間に合わない、しかし、説明責任を果たせば辞任は不要であるとの趣旨の発言をされました。アベノミクスの一本目の矢の目標達成に期待していた人にとっては、岩田日銀副総裁の変節は落胆に値する事柄と思われます。
しかし、今回の問題はそこにとどまるものではありません。国会での決意表明が簡単に撤回されるのであれば、何を信じて同意人事の判断を行うべきですか、説明責任を果たせば辞任は不要という本人の判断は妥当なものであるか、以上二点に関しまして、今日は問題提起にとどめ、今後の国会での議論に委ねたいと思います。
それでは、今回の同意人事に反対する理由を述べたいと思います。
原田氏は、日銀による積極的な金融緩和の必要性を主張してきたいわゆるリフレ派で、前述した岩田副総裁との共編著もある方です。
第一の反対理由は、日銀が国債を買えば政府債務を減らすことができると主張されている点です。これは財政ファイナンスの容認とも取れる主張です。確かに、政府と日銀の統合バランスシートで見れば、日銀が国債を全部買えば、政府債務は日銀の資産ですから、連結すれば相殺されます。しかし、日銀の負債、すなわち日銀券と準備預金という民間資産は相殺されません。
仮に、新円切替えで今の日銀券を無効にしたり、準備預金を封鎖したりすれば、日銀の負債は消せますが、それは民間銀行を始めとする民間資産の全額毀損を意味します。そのことは、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するという日銀の基本理念に反することは言うまでもありません。
第二に、原田氏は、本年一月の朝日新聞のインタビューで、仮に日銀が物価目標を達成して、国債を買う量を減らせば、日銀が持っている国債価格も理論的には含み損を抱えます、財務の健全性は大丈夫ですかとの質問に対して、日銀は国債をコストを掛けずにただで買っている、十兆円分の国債を購入して、仮に二割損してももうけは八兆円あるとの回答をしています。
複式簿記で日銀の会計処理を行えば、そのような打ち出の小づち的手法が不可能なことは明白です。日銀法二十三条では、審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから任命されることとされております。安倍政権はどのような基準で候補者の選定を行っているか甚だ疑問です。ただ単に、リフレ派で、総裁、副総裁等執行部に盾突かない人ということであれば、安倍総理のお友達人事ではないでしょうか。
第三に、原田氏は、著書「「大停滞」脱却の経済学」の中で、国債価格の下落に関連して、貸出しをせず国債ばかり持っている銀行は日本経済のためには役に立っていない銀行である、そのような銀行が破綻しても日本経済に何のマイナスにもならない、むしろこのような銀行が破綻することこそが最大の構造改革であると述べられています。
日銀法第一条では、日銀は、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とすることが規定されています。すなわち、日銀は、物価の安定だけではなく、金融システムの安定にも同等の責任を有するものです。そのため、金融機関の考査等を担う金融機構局の総勢は三百名以上の大世帯となっております。
さらに、日銀法第二十一条では、審議委員は日銀の役員であると規定しており、中央銀行業務について運営の責任の一端を担うとしています。その審議委員が、国債ばかり持っている銀行の破綻こそが最大の構造改革という持論では、金融機構局の運営や金融システム安定に大きな障害をもたらすことになるでしょう。
最後になりますが、今回の同意人事の採決に当たり、日銀の信認並びに円の価値が暴落することにならないように願うとともに、与党の皆さんにおかれましては、今回の同意人事を無批判かつ自動的に同意することで事が足りるかを再考をお願いして、私の反対討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)