上川陽子の発言 (本会議)

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○国務大臣(上川陽子君) 仁比聡平議員にお答え申し上げます。
 まず、冤罪は、憲法と刑事訴訟法に反する警察と検察の違法捜査によって生み出されてきたという認識があるのかとのお尋ねがありました。
 犯人でない人を処罰することはあってはならないことと認識しています。無罪判決が言い渡される理由は様々であり、その原因を一概に述べることは困難ですが、いずれにしましても、検察当局においては、今後とも、法と証拠に基づく基本に忠実な捜査、公判の適正な遂行に努めることが必要であると考えています。
 次に、誤判の原因を検証、究明するための第三者機関を設置することについてお尋ねがありました。
 個別の事件につき第三者機関が裁判所による誤判の原因究明等をする制度については、裁判官の職権行使の独立性の観点から問題が生じ得ますし、原因究明の過程で刑事事件の記録や証拠を第三者が使用することは、関係者の名誉、プライバシーの保護の観点から問題を生ずるおそれもあります。したがって、御指摘のような第三者機関の設置については慎重な考慮を要するものと考えています。
 次に、取調べの録音・録画制度について、密室での取調べへの反省を踏まえると、捜査上の支障が生じるなどとして、対象事件を限定したり録音・録画義務の例外事由を設けるのは不当ではないかとのお尋ねがありました。
 本制度は、裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象としています。これは、本制度が捜査機関にこれまでにない新たな義務を課すものであり、捜査への影響を懸念する意見もあることなどから、制度の対象とならない事件についても運用による取調べの録音、録画が行われることをも併せ考慮した上で、録音、録画の必要性が最も高いと考えられる類型の事件を対象としたものです。制度と運用とを併せて見ると、録音、録画の範囲は必ずしも狭いものではないと考えています。
 また、本制度においては、原則として取調べの全過程の録音、録画を義務付けつつ、録音、録画の拒否等の言動により、録音、録画をすると被疑者が十分に供述できないと認められる場合などを例外事由としています。本制度については、録音、録画により、取調べで供述が得られず、真犯人の検挙、処罰ができなくなることがないようにするとの観点も重要であり、このような例外事由は不可欠であると考えています。
 次に、冤罪を生み出す危険のある恣意的な録音、録画は防止されるのかとのお尋ねがありました。
 本制度においては、対象事件について、原則として取調べの全過程の録音、録画を義務付けた上で、先ほどお答えした理由から一定の例外事由を設けることとしていますが、公判で例外事由の存否が問題となったときは、裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任で例外事由を立証する必要があります。そのため、捜査機関としては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たると判断して録音、録画をしないことはできません。したがって、取調べの録音・録画制度が恣意的に運用される余地はなく、御指摘のような懸念はないものと考えています。
 次に、黙秘権の実効性を保障するものとして、全事件、全過程の録音、録画を義務付けるべきではないかとのお尋ねがありました。
 先ほどお答えした理由から、本法律案の取調べの録音・録画制度においては、対象事件を裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件とし、原則として取調べの全過程の録音、録画を捜査機関に義務付けつつ、一定の例外事由を設けることとしているところであり、その内容は適切であると考えています。
 次に、冤罪の防止には不十分であるとの声にどう応えるのかとのお尋ねがありました。
 取調べの録音、録画には、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証に資する、取調べの適正な実施に資するという有用性があります。本制度は、このような録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象として、一定の例外事由を設けつつ、原則として取調べの全過程の録音、録画を捜査機関に義務付けるものであり、真犯人の適正、迅速な処罰とともに、誤判の防止に資するものと考えています。
 次に、米国の司法取引の運用上の問題点をどのように捉えているかとのお尋ねがありました。
 米国においては、誤判事例の中に、司法取引に基づき犯行告白を聞いた旨の供述を同房者から得た事例が存在することや、司法取引の事実が陪審に開示されていないという問題があることなどを指摘する民間団体の報告があるものと承知しています。
 しかしながら、米国と我が国では刑事司法制度や事実認定の在り方などが異なる上、本法律案の合意制度の下では、一般に、被疑者、被告人の事件と他人の事件との間に何らの関係もない場合には、被疑者、被告人が当該他人の事件について信用性が認められるような具体的で詳細な供述をすることができるとは考えられないため、基本的に合意をすることは想定されないと考えています。また、合意に基づく供述が他人の公判で用いられるときは、合意内容が記載された書面が当該他人にも裁判所にもオープンにされ、供述の信用性が厳しく吟味される仕組みとしています。
 これらのことなどから、米国の司法取引の実態と言われるものが我が国の合意制度にそのまま当てはまるものではないと考えています。
 次に、合意制度を導入する趣旨についてお尋ねがありました。
 合意制度は、組織的な犯罪等について、手続の適正を担保しつつ、首謀者の関与状況等を含めた事案の解明に資する供述等を得ることを可能にするものであり、証拠収集に占める取調べの比重を低下させ、取調べ及び供述調書に過度に依存した状況の解消に資すると考えています。
 次に、合意制度の理論的な根拠についてお尋ねがありました。
 合意制度は、現行法上、検察官に広範な訴追裁量権が認められており、被疑者、被告人が他人の刑事事件の捜査、公判に協力したことをも、刑事訴訟法第二百四十八条の犯罪後の情況として被疑者、被告人に有利に考慮し、これを訴追裁量権の行使に反映させることができることを根拠とするものです。
 次に、合意制度の下での虚偽供述の危険についてお尋ねがありました。
 合意制度については、いわゆる巻き込みの危険が生じないようにするため、協議、合意の過程に弁護人が常に関与する仕組みとすること、合意に基づく供述が他人の公判で用いられるときは、合意内容が記載された書面が当該他人にも裁判所にもオープンにされ、供述の信用性が厳しく吟味される仕組みとすること、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合について罰則を新設することといった制度的な手当てをしています。したがって、御懸念は当たらないものと考えています。
 次に、通信傍受が通信の秘密等を制約するものであることに関する認識についてお尋ねがありました。
 通信の秘密を侵されないことは、憲法で保障された重要な権利であると認識しています。通信傍受は通信の秘密等を制約するものでありますが、犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づいて、必要最小限度の範囲でこれを制約することは許されると考えています。最高裁判所も、通信傍受法制定前に実施された検証許可状による電話傍受について、一定の要件の下では、捜査の手段として憲法上全く許容されないものではないと解すべき旨判示しています。そして、通信傍受法による通信傍受については、厳格な要件の下で裁判官の発する傍受令状により行うことが許されるもので、通信の秘密の制約は必要やむを得ない範囲に限定されていることなどから、通信の秘密等の保障に反しないものであると考えています。
 次に、通信傍受は、あらかじめ強制捜査の対象を特定し得ず、憲法第三十五条等に反するのではないかとのお尋ねがありました。
 先ほどもお答えしたとおり、最高裁判所も、電話傍受が憲法上およそ許されない捜査手法であるとの考え方は取っていません。憲法第三十五条の特定性の要請の趣旨は、捜索する場所及び押収する物を令状に明示することにより、裁判官が捜索や押収によりプライバシー等の権利利益を制約する正当な理由があると認めた場所や物を明らかにし、それ以外の場所や物について捜索や押収の処分が行われないことを保障することにあります。通信傍受の場合には、令状に捜査機関がその内容を知ることにより通信の秘密を制約することが許される通信を明示することが要請されますが、この点は、傍受令状に傍受すべき通信が記載されることにより明らかにされます。したがって、通信傍受は憲法第三十五条等に反するものではありません。
 最後に、通信傍受法改正案が対象犯罪を拡大し、立会人を要しない傍受の手続を導入することの合憲性等についてお尋ねがありました。
 本法律案において通信傍受の対象犯罪に追加することとしている罪は、いずれも通信傍受に伴う通信の秘密への制約に見合う重大性を備えたものであると考えています。さらに、これらの罪については、傍受令状の発付要件として、現行通信傍受法の厳格な要件に加えて、一定の組織性の要件を満たすことを要することとしています。また、捜査機関の施設において立会人を置かずに通信傍受を行う場合でも、特定電子計算機の機能などにより、立会人がいる場合と同様に、傍受の手続の適正が保障されることとなります。
 これらのことから、本法律案は、現行通信傍受法と同様に、通信の秘密等を保障する憲法の規定に反するものではないと考えています。
 なお、警察において、通信傍受の実施に関し、当該事件の捜査に従事していない警察官等による必要な指導が行われることは、手続の適正について万全を期する上で望ましいものと考えています。(拍手)
   〔国務大臣山谷えり子君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 118915254X03620150821_027

発言者: 上川陽子

speaker_id: 1920

日付: 2015-08-21

院: 参議院

会議名: 本会議