坂本恵の発言 (法務委員会)

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○坂本参考人 本日はよろしくお願いします。福島大学の坂本と申します。
 お手元の資料の方ですけれども、私の陳述用のフリーペーパー二枚ワンセットと、韓国の雇用許可制に関するペーパーを、ちょっと分厚いものですけれども出させていただいております。
 二〇一一年から四年間、文科省の科研費基盤Bの方で、外国人研修・技能実習生の人権擁護のための日本ベトナム共同アクションプラン策定研究というもので研究代表を務めさせていただきました。
 本日は、三点について専門的知見を述べさせていただきます。
 まず、本委員会でも論じてこられました外国人技能実習生への深刻な人権侵害がなぜなくならないのか、その構造的理由と解決策ということです。
 熊本県を中心とした地震による被害が続いております。心よりお見舞い申し上げます。
 御案内のとおり、今回被害が集中しております阿蘇、天草地方は有数の農業地域で、その農業生産の中心を担ってきたのが外国人技能実習生でもございます。
 他方、この地域でも、実習生の権利が侵害されるということが繰り返されてまいりました。
 二〇一一年には、三人の中国人実習生が阿蘇のトマト農家で研修、実習しておりましたけれども、夏は非常に暑いハウスの中で就労し、冬は鳥肉加工の農家などに二重派遣をされて冷凍庫の中で仕事をする。余りに過酷な労働ということで、実習の場所をかわりたいということを受け入れ機関に申し出たものの断られて、支援団体に助けを求めて駆け込んだ。
 この件は、その後訴訟となりました。原告の一人は帰国後、中国の送り出し会社の方から、無断で受け入れ先を出奔したということで、この実習生の連帯保証人が裁判を起こされて、十五万元の支払い命令を受けております。十五万元は日本円で百八十万ですけれども、物価が違いますので、一千万円ぐらいの感覚かと思います。
 それから、二〇〇七年から八年にかけてですけれども、これは天草の縫製加工会社でしたけれども、同じく中国人実習生、同様の訴訟が起こされました。原告勝訴の地裁判決が確定しましたけれども、この裁判ではJITCOの責任も俎上に上がりました。
 現在、技能実習生は全国で十九万人ということですか。メード・イン・ジャパンの生産現場の一端を既に支えているのが外国人技能実習生であるということ、やはり、改めてそういう認識を持つ必要があるのかなと思います。
 最賃法違反それから残業の強要ということが全国至るところで起こっておりますけれども、その理由は、やはり構造的な理由が背景にあるということです。
 一つの理由は、現地派遣機関が徴収する高額な保証金の問題です。
 金額一万ドルから一万五千ドル、百二十とか二百万円ということです。海外の派遣機関が設定する場合もありますけれども、先ほどもちょっとありましたけれども、日本側の受け入れ監理団体がこの金額を現地の派遣機関に持ちかけるケースも少なからずございます。つまり、日本の監理団体が向こうの派遣機関に、これだけの金額を保証金として取ってほしいと言う。この資金の捻出に、現地の実習生家族は、田畑、家屋を担保に入れて、銀行や親族から借金をして工面をしてくるわけです。三年間逃げずに実習を修了すれば返金されるわけですけれども、いわゆる逃亡をすると取り上げられるわけです。
 つまり、保証金というのは、実習生を逃がさない、逃亡防止の目的で行われております。いかに最賃以下の違法な給与であろうが、過労死水準の二倍を超える残業をほぼ毎月強要されようが、逃亡することで保証金を取り上げられるということの恐怖心から、多くの実習生がそういう状況を甘受せざるを得ない状況に追い込まれている人権侵害の温床がここにあるわけです。
 問題なのは、JITCOがこの状況を知りながら、二国間協議の場でも保証金の根絶を一切求められない。新たに設置される技能実習機構も、保証金根絶をやはり明確に掲げられていないのではないか。保証金が放置されている限り、入管法を改定して保護法を新設しても、結局、問題は解決されることはないということなわけです。
 逆に、韓国が二〇〇四年に導入した雇用許可制に倣って、送り出し国との間できちんと二国間協定を締結して、韓国は雇用労働部といいますけれども、主管をして、入ってくるときの韓国語教育から帰国までの全てのプロセスを国が運営するということによって、ブローカーの介在する余地がなくなる。保証金を取った国は、逆に一定期間の受け入れ停止ペナルティーが科されたこともあります。保証金も根絶されました。
 この制度に倣うのであれば、やはり日本においても人権侵害を生じさせる最大の理由の一つを排除できることになるだろうと思います。
 ペーパーの方も後ほど御参照いただければと思います。
 二点目です。技能実習制度への介護の職種追加は、一体、日本の介護現場に何をもたらすと想定されるのか、どういう対策があるのかということです。
 現状ですけれども、既に幾つかの県では、昨年六、七月段階で、県内の介護施設に、介護実習生受け入れをうたう法人とか団体が外国人介護実習生の受け入れの意思があるのかどうかという項目と、受け入れる場合の必要人数などのアンケート調査が行われております。アンケート配布ですね。さらに、受け入れを表明した介護施設職員が、百五十名、二百名という規模で昨年秋段階で現地を訪問して、実質的な面談を行う面談ツアーが実施されているケースもございます。
 こういった受け入れ関係者は、事前に法務省、厚労省に出向いて担当官から説明を受けている場合があるので、両省は実情を把握されているかと思います。
 初の対人サービスとしての職種です。日本は、介護保険がありますから、在宅とともに施設介護が主流なわけです。しかし、中国、ベトナムでは、実態は家族のきずなを基盤にした親族間介護です。介護の発想も技術もやはり異なりますし、施設介護の経験を持った者の確保というのが、ごく一部専門学校等を除いて極めて困難です。
 もう一つは、介護は単一職種で非常に大規模な受け入れになることが想定されるということです。
 縫製加工とか自動車部品、農業というのは、地域で偏差があります。しかし、介護施設というのは、全国全ての都道府県に満遍なく存在するわけですね。福島県は二百万人ほどですけれども、例えば、要件を満たす介護施設が二百ぐらいあったとしますと、平均二名ずつ受け入れると、単年度に四百名です。もし掛ける三という発想をされるのであれば、三年ですね、千二百名です。これが四十七都道府県で起これば、三年間で少なく見積もっても五万六千四百名。これは大都市圏の要素をカウントせずにその数字ですので、さらに膨大な数になることが十分予想される。
 外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会における議論の中間まとめ、昨年二月に出していただきましたけれども、その中で、二〇二五年に向けて、最大で約二百五十万人規模の介護人材の確保がうたわれておりますけれども、外国人材に関しては、介護在留資格付与とかEPAの部分、緩和がうたわれておりますけれども、結局かなり限られております。実質は、技能実習生が海外介護人材をほぼ担うということは明らかです。
 一番末尾にちょっと添付をしました表なんですけれども、これはある県の海外介護士受け入れをうたう法人の介護技能実習生の受け入れスケジュール、導入費用なる資料なんですけれども、この給与シミュレーション、月額費用というところをよく見ると、左側の方ですけれども、組合監理費三万円と送り出し管理費五千円とございます。これは、一人の介護実習生につき、合わせて月三万五千円が受け入れ組合と送り出し機関に渡るということが明示をされております。
 今次法改正は、明示をされていれば事実上徴収可能とするものですので、こういう不当な利益を生む可能性のある受け入れ機関、派遣機関の役割を日本政府みずから追認することになる。
 同じく、この右側の上の表なんですけれども、給与欄には、二年目以降、実習生給与を十五万、これはいいんですけれども、その下に、よく見ると、夜勤手当一万五千円と書いてあるんですね。二十名程度の入居施設であれば、外国人技能実習生が単独で、単価三千円計算みたいなので、要は、月五回、夜勤を担うということが想定されているということです。
 日本語能力がN4とか、せいぜいN3レベルしかないような外国人実習生が、夜間に入居者の生命にかかわる事態が生じた場合に、例えば救急車がちゃんと呼べるのか、症状がきちんと伝えられるのか、非常に疑問が残ります。
 日本の技術の海外移転、これは実体のない看板になってきておりますし、不足する常勤の夜勤介護人材の確保の方策としかやはり映らないということです。
 介護人材の不足が叫ばれているという実態はよく理解できますし、介護施設の御苦労も十分理解しております。しかし、同時に、日本の介護システム、これをやはり中長期的に維持するというには、労働市場補完性、平たく言うと、日本人の優先雇用ということなんですけれども、この原則をやはり貫かれるべきです。日本人介護職の就労条件の改善を行わずに、外国人介護人材が安易な代替策ということになることがあってはやはりならない。
 年度ごとに介護分野の受け入れ上限、クオータといいますけれども、クオータを設定しない限り、外国人労働者の無制限な受け入れが続き、既に地方の若年層では、介護は三Kだということで、離職に歯どめがかからない傾向が一層加速させられることになるのではないかと考えます。
 ほかの職種はおくとしても、先行する形で、介護に関しては、とりわけやはり受け入れ上限、クオータ設定というのは必須の課題ではないかというふうに私自身は考えております。
 受け入れ上限の把握、これは可能です。日本でいうと、例えば介護施設がハローワークに募集をかけるわけですけれども、募集をかけても埋まらない部分が、応募がない部分があるわけですよね。ここの部分がクオータになるわけです。これを全国ないし県レベルで数字で算出するということはできるわけです。その埋まらないクオータの部分を海外からの人材で埋めるということにすると、日本人の優先雇用原則が維持できますし、本当に必要な海外人材の受け入れにつながるわけですね。
 現場の問題としても、入居者二十人とか四十人の施設で、四分の一とか五分の一が日本語能力の低い外国人実習生になると、施設の日本人職員の負担がやはり増すということが考えられるわけです。
 受け入れ上限が実現すると、法務省が言われる介護労働者へのイメージ低下ということも恐らく避けられると思いますし、各施設ごと受け入れ人数を厳格化すると、研修、実習の効率も上がるわけです。数は限定されますけれども、質の高い介護を利用者に提供することもできる。介護施設自体がメリットを本当に実感できることになるのではないかと考えます。
 最後ですけれども、アジア各国が経済成長して、いずれ少子化が訪れます。そういう中で、外国人単純労働者の争奪戦時代に既に突入しているという現状です。これは二年前にNHKが二つの番組で取り上げました。
 ベトナム、フィリピンなど、依然として送り出し圧力が強いので、募集人員が集まらないということを今想定するのはなかなか難しいですけれども、しかし、中国が一つの例です。中国国内の都市部給与が上昇すれば、多額の保証金を払ってわざわざ日本に行くという選択はしないわけですね。これが中国人実習生の割合の相対的減少の原因なわけです。
 派遣後進国のバングラデシュ、ミャンマーでも、保証金問題、人権侵害事案を解決もせずに、在留期間だけ五年に延ばそうという日本は、出稼ぎ先として魅力的ではやはりなくなってきているということなわけです。
 雇用許可制を導入して、高額な保証金もなくして、韓国は最長九年八カ月、台湾は十二年滞在でできます。そういう在留あるいは事業場移動の一定の自由化を実現した韓国、台湾などに、やはりそちらの方に行きたいと思うのは自然な選択ではないかと考えます。個人を単なる労働力とする見方を捨てて、就労環境の整備、移民政策を含めて、一人の人間として総合的な支援、こういう形でやはり国際的にも目に見える前進をする必要がある。単なる人権擁護の問題ということだけではなくて、日本経済の継続的な成長をどう維持していくのかということがかかった問題でもございますので、今次法改正での、本委員会での引き続く御審議を期待したいと思います。
 以上です。(拍手)

発言情報

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発言者: 坂本恵

speaker_id: 32725

日付: 2016-04-22

院: 衆議院

会議名: 法務委員会