志位和夫の発言 (本会議)
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○志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。(拍手)
冒頭、甘利大臣に、政治と金の疑惑について一問伺います。
あなたは、二回にわたる五十万円の受け取りについて、記憶を整理したいと述べておられます。それは、五十万円を受け取った記憶はあるが、それを正当化する整理がつかないということですか。それとも、受け取ったかどうかの記憶自体がない、この程度の金銭の授受は日常茶飯事で、記憶にとどまるようなことではないということでしょうか。しかとお答えください。
総理、甘利大臣の疑惑は、大臣どころか議員の資格にかかわる深刻な疑惑です。本人の説明を待つのではなく、任命権者として真相解明の責任を主導的に果たすべきであります。その覚悟はありますか。答弁を求めます。
安倍政権は、昨年九月十九日、国民多数の反対の声を踏みつけにして、安保法制、戦争法の強行成立をさせるという暴挙を行いました。
戦争法ばかりは、数の暴力で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことは決してできません。
戦争法は、まず内容の面で、憲法九条を踏みにじって、自衛隊の海外での武力行使を行う仕組みが幾重にも盛り込まれている違憲立法です。さらに、やり方の面で、戦後六十年余にわたる、憲法九条のもとでは集団的自衛権を行使できないという政府の憲法解釈を、一内閣の勝手な判断で百八十度覆すという、立憲主義の破壊が行われました。
戦争法は、内容もやり方も二重に憲法違反であり、廃止するしかありません。
安保法制、戦争法は、日本に極めて重大な危険をつくり出しています。
第一は、日本の自衛隊が戦後初めて、外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれているということです。私は、差し迫った重大な危険として、二つの問題について総理の見解を問うものです。
一つは、アフリカの南スーダンのPKOに派兵されている自衛隊の任務が拡大されようとしていることです。
改定されたPKO法では、PKOに参加する自衛隊に、安全確保業務、駆けつけ警護という二つの任務を新たにできるようにするとともに、任務遂行のための武器使用もできるようにしています。総理、南スーダンに派兵されている自衛隊に、こうした任務の追加を行うことを検討しているのですか。
仮にこうした任務拡大となれば、極めて危険な事態となることを強く警告しなければなりません。
二〇一三年十二月以来、南スーダンでは、大統領派と副大統領派の武力衝突が起こり、住民を巻き込んでの激しい内戦状態に陥っているからです。数千人が殺害され、二百四十万人が家を追われ、虐殺、レイプ、拷問などの残虐行為が行われ、多数の子供が少年兵として戦うことを強制されています。複数回、停戦が合意されたものの、そのたびに戦闘が再開され、昨年八月下旬の和平合意後も戦闘が続いています。
こうした状況下で、南スーダンのPKOの主要な任務は住民保護とされ、そのために必要なあらゆる措置をとる権限、武力行使の権限が与えられています。住民保護のためにPKOみずからが交戦主体、戦争の主体となって武装勢力と戦う、これが南スーダンのPKOの実態なのです。
総理、南スーダンが内戦状態に陥っているという認識はありますか。南スーダンでは、停戦合意を初めとするPKO参加五原則が崩壊し、自衛隊の派兵の法的前提がなくなっているのではありませんか。にもかかわらず、自衛隊の派兵を続け、その任務を拡大するならば、自衛隊が武力を行使し、武装勢力と戦うことになるではありませんか。武装勢力といっても、軍隊と民間人の区別はつきません。自衛隊が一たび少年兵や民間人を撃ってしまったら、取り返しがつきません。
このような活動は、海外での武力行使を禁止した憲法九条のもとでは絶対に許されないと考えますが、いかがですか。日本の貢献は、憲法九条に立った非軍事の人道支援、民生支援に徹するべきであります。総理の答弁を求めます。
いま一つは、過激武装組織ISに対して、米国を初めとする有志連合が行っている軍事作戦に、自衛隊が参加する危険です。
ISのような残虐なテロ組織がどうして生まれたか。きっかけになったのは、二〇〇一年、米国等が開始したアフガニスタン報復戦争でした。対テロ戦争は、テロを根絶するどころか、その温床を広げる結果となりました。さらに、二〇〇三年、米国等が開始したイラク侵略戦争は泥沼の内戦をつくり出しました。この二つの戦争の混乱の中からISという怪物のようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大していったのです。
戦争でテロはなくせない。テロと戦争の悪循環をもたらし、世界じゅうにテロを拡散した。総理、この事実をお認めになりますか。米国によるアフガン、イラク戦争に無条件の支持を与えた自民党政府は、厳しい反省が必要ではありませんか。
この歴史的教訓に照らしても、今、一部の国が行っているISに対する空爆など軍事作戦の強化では、問題は決して解決しません。それは、多数の罪なき人々を犠牲にし、憎しみの連鎖をつくり出し、テロと戦争の悪循環をもたらすだけではありませんか。
安保法制、戦争法との関係で私が強く危惧するのは、政府が、ISへの空爆などへの自衛隊の軍事支援について、政策判断として考えていないとしつつ、法律的にはあり得ると答弁していることです。
総理に伺います。そういう政策判断をしている理由は何ですか。米国が、対IS軍事作戦を拡大し、日本に支援要請をしてきた場合に、それを拒否できますか。戦争法がある以上、拒否できず、軍事支援を行うことになるのではありませんか。
テロと戦争の悪循環、憎しみの連鎖に日本自身が入り込み、日本国民をテロの危険にさらす、そのような道は断じて許すわけにいきません。
世界からテロをなくすために何が必要か。私は、国際社会が一致結束して、次の四つの対策に取り組むことを提唱します。
第一は、国連安保理決議を厳格に実行し、テロ組織への資金、人、武器の流れを断つ断固たる措置をとることです。
第二は、貧困や格差、民族的、宗教的差別など、テロの土壌となっている問題をなくしていく努力を払うことです。
第三は、ISが支配地域を拡大してきたシリアとイラクでの内戦を解決し、平和と安定を図るための政治的、外交的努力を尽くすことです。
第四は、シリア国民の半数以上が難民として苦しむもとで、難民の人権を守り抜く国際的支援を抜本的に強化することです。
どれも困難を伴う大仕事ですが、この道しかないのではありませんか。総理の見解を求めます。
第二の危険は、安保法制、戦争法を強行したことによって、日本の政治が立憲主義の破壊という深刻な事態に直面しているということであります。
立憲主義とは何か。たとえ国会で多数を持つ政権党であっても、憲法という枠組みは守らなければならないということです。国家権力が憲法を無視して暴走を始めたらどうなるか。独裁政治の始まりとなります。
これは誇張ではありません。例えば、安倍政権が沖縄に対して行っている暴政は、憲法を無視し、法の支配を無視する独裁政治そのものではありませんか。
昨年十月、沖縄県翁長知事は、知事選挙、総選挙などで繰り返し示された県民の圧倒的民意を踏まえて、名護市辺野古の米軍基地建設の埋立承認を取り消しました。それに対して、安倍政権は、国民の権利救済が目的の行政不服審査法を悪用し、埋立承認取り消しの効力を停止するという違法行為で応えました。さらに、知事にかわって埋立承認取り消し処分を撤回する代執行訴訟を起こしました。
総理、これらはどれも、憲法が保障する地方自治と民主主義を根底から覆すものではありませんか。安保法制、戦争法と沖縄に対する暴政は、立憲主義の破壊という点で根が一つだと考えますが、いかがですか。
翁長知事は、歴史的にも現在においても、沖縄県民は自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされてきました、私はこのことを魂の飢餓感と表現しています、政府との間には多くの課題がありますが、魂の飢餓感への理解がなければ、それぞれの課題の解決は大変困難ですと訴えています。
総理は、翁長知事のこの訴えにどう応えますか。名護市辺野古への新基地建設を中止し、移設条件なしに普天間基地は閉鎖、撤去すべきであります。答弁を求めます。
安保法制、戦争法の強行によって、日本が、殺し、殺される国になる危険が切迫しています。立憲主義が壊され、法治国家としての土台が壊されつつあります。このような独裁国家、戦争国家への道を断じて許すわけにいきません。
日本共産党は、憲法違反の戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、日本の政治に立憲主義と民主主義を回復することを強く求めるものであります。
暮らしと経済の問題について質問します。
総理は年頭の記者会見で、この三年間で雇用がふえ、高い賃上げも実現し、景気は確実に回復軌道を歩んでいると、アベノミクスの成果を自画自賛しました。しかし、一月の読売の世論調査でも、国民の七一%が、安倍内閣のもとで景気の回復を実感していないと答えています。
確かに、大企業は、二年連続で史上最高の利益を更新し、内部留保は三年間で三十八兆円もふえ、初めて三百兆円を突破しました。
一方で、国民の暮らしはどうか。
総理は、二〇一二年十—十二月期から二〇一五年七—九月期で就業者が百十七万人ふえたと言います。しかし、同じ時期の同じ統計によれば、正社員は一万人減っています。結局、ふえたのは不安定な非正規雇用だけではありませんか。
総理は、高い賃上げが実現したと言います。しかし、物価上昇を差し引いた労働者の実質賃金はこの三年間でマイナス五%です。年収四百万円のサラリーマンでいえば、年間二十万円もの賃金が目減りしているんです。
総理は、実質賃金の低下はパートの比率がふえたからだと言いますが、パートを除く一般労働者で見ても、名目賃金の伸びはわずか一・七%、物価上昇分にはるかに及ばず、実質賃金は大幅マイナスです。高い賃上げの実現と言いますが、事実は全く異なるではありませんか。
総理、都合のいい数字をもてあそぶのはいいかげんにやめるべきであります。国民の暮らしの現実に立ったアベノミクスの三年間の検証と真摯な反省が必要です。大企業をもうけさせれば、その恩恵がいずれ庶民の暮らしに回るという古いトリクルダウンの考えに立ったアベノミクスの破綻は、もはや明らかではありませんか。総理の見解を問うものです。
暮らし最優先の経済政策への根本的転換が必要です。その際、私は、日本社会の大問題となっている貧困大国からの脱却という問題をしっかりと政策目標に据えることが極めて重要になっていると考えます。
日本の相対的貧困率は一六・一%。年を追うごとに悪化し、OECD加盟三十四カ国の中で悪い方から数えて六番目です。一人親家庭の貧困率は五四・六%。OECD加盟国で最悪です。国民の多くが、突然貧困に陥る危険と隣り合わせで生活しているのであります。
貧困大国からの脱却は、全ての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した憲法の要請であるとともに、家計という経済の最大のエンジンを暖めて経済の好循環を生み出す鍵となります。
私は、あらゆる経済政策の是非を判断する物差しとして、貧困と格差の問題を据える、すなわち、その政策の実行が貧困と格差を是正する方向に働くのか、逆に拡大する方向に働くのかを、経済政策の基準に据えるべきだと考えます。総理の見解を求めます。
日本共産党は、この立場から、貧困と格差を正し、暮らし最優先で日本経済再生を図る四つの提案を行うものです。
第一は、消費税の一〇%増税の中止です。
政府が軽減税率と喧伝しているものの実態は、食品などの税率を八%に据え置くというだけで、一〇%への増税で、総額四・五兆円、一世帯当たり六万二千円もの大増税となることが明らかになりました。所得が低いほど重くのしかかる逆進性がさらに強まることも政府は認めました。一〇%への増税が景気悪化への引き金を引き、貧困と格差に追い打ちをかけることは明瞭ではありませんか。
その一方で、大企業に巨額の減税ばらまきが行われています。安倍政権がこれまで実施した企業減税は三兆円、来年度以降、さらに一兆円。しかし、その結果は、賃金にも設備投資にも回らず、内部留保が積み上がっただけではありませんか。
庶民から増税で吸い上げ、大企業に減税をばらまく、逆立ちした税制を根本から改めることを強く求めるものであります。
第二は、社会保障を削減から充実に転換することです。
安倍政権の三年間で、社会保障費の自然増が毎年三千億から五千億の規模で削減され、介護報酬の削減、生活保護の切り下げなど、貧困と格差に追い打ちをかけました。社会保障をぼろぼろにする自然増削減路線は中止すべきではありませんか。
年金削減の中止、医療費の窓口負担、国民健康保険料の軽減、特養ホームの入所待ちの解消、保育所の待機児ゼロなど、安心できる社会保障の実現を強く求めます。その財源は、まず何よりも、富裕層と大企業への優遇税制を正し、応分の負担を求める税制改革で賄うべきであります。総理の答弁を求めます。
第三は、人間らしく働ける雇用のルールをつくることです。
この三年間、総理が日本経団連にお願いしたにもかかわらず、実質賃金は大きく低下しました。総理は、その原因はどこにあるとお考えですか。
私は、その最大の原因は、労働法制の規制緩和によって、低賃金、不安定の非正規雇用が四割を超えたこと、過労死を生み出す長時間過密労働の蔓延、この二つの雇用破壊が進んでいることにあると考えますが、いかがですか。
労働者派遣法を抜本改正し、均等待遇のルールを確立し、非正規から正規への転換を進めるべきです。残業代ゼロ法案を撤回し、サービス残業の根絶、長時間労働の規制を図り、ブラック企業、ブラックバイトを根絶すべきです。フルタイムで働いても貧困から抜け出せない最低賃金を抜本的に引き上げるべきです。答弁を求めます。
第四は、TPP交渉から撤退し、日本の経済主権を回復することです。
二〇一三年の国会決議では、農産物の重要五項目、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖は、関税撤廃を認めない、すなわち聖域にするとしています。そして、自民党は、この決議を守ることを国政選挙の公約にしたはずです。
ところが、大筋合意では、重要五項目のうち三〇%の品目で関税が撤廃され、米でも関税ゼロの特別輸入枠を新たにつくっています。これは明白な国会決議違反、公約違反ではありませんか。
日本の食料と農業、食の安全、経済主権を米国に売り渡すTPP交渉からの撤退を強く求めます。農産物の価格保障と所得補償を組み合わせて、安心して再生産できる農業をつくることこそ、政府の責任ではありませんか。
以上、四点の我が党の提案に対して、総理の見解を問うものであります。
最後に、憲法改定について質問します。
総理は、大規模な災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るため、国家そして国民みずからがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く大切な課題と述べ、緊急事態条項の新設が憲法改定の重要なテーマになるとの考えを示しています。
そこで、伺います。
第一に、自民党改憲草案の緊急事態条項では、戦争や大規模災害の際に、首相の緊急事態の宣言のもと、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる、何人も、国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない、すなわち、内閣への権力集中と国民の基本的人権の制約を行うことを明記しています。
総理は、こうした規定を憲法に明記することが必要だと考えているんですか。
第二は、災害対策が緊急事態条項の理由になるかという問題です。
東北弁護士連合会は、災害対策を理由とする国家緊急権の創設に反対する会長声明を発表し、次のように述べています。
確かに、東日本大震災では、行政による初動対応のおくれが指摘された事例が少なくない、しかし、その原因は、行政による事前の防災計画策定、避難などの訓練、法制度の理解といった備えの不十分さにあると言われている、日本の災害法制は既に法律で十分に整備されている、国家緊急権は、災害対策を理由としてもその必要性を見出すことはできない。
この批判に、総理はどう答えますか。
緊急事態条項は、独裁政治、戦争国家に道を開き、憲法九条改定につながる危険きわまりないものであります。
日本共産党は、解釈改憲とともに、あらゆる明文改憲に断固として反対いたします。日本国憲法の平和主義、立憲主義、民主主義を貫く新しい政治、全ての国民の個人の尊厳を守り、大切にする社会の実現を目指して全力を挙げる決意を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕