清原慶子の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(清原慶子君) ありがとうございます。
 東京都三鷹市長の清原慶子です。
 三原委員長を始め委員の皆様におかれましては、本法律案を審議するに当たり、基礎自治体の市長の一人であります私に意見陳述の機会を与えていただきまして、深く感謝を申し上げます。
 改正法案につきましては幅広い内容が含まれていますが、本日は、障害者福祉の現場の自治体の立場から、御配付をしておりますこの六ページの資料に沿いまして、幾つかの論点に絞って意見を述べさせていただきます。
 初めに、三鷹市の概要と障害福祉施策における特色について申し上げます。
 三鷹市は、平成二十八年五月一日現在、人口十八万四千六百七十五人、世帯数九万一千八百八十六世帯です。平成二十七年三月三十一日現在、障害者数につきましては、手帳保有者、身体障害者四千二百八十人、知的障害者九百五十七人、精神障害者一千七百人です。
 障害者権利条約では、障害者を相互に同じ社会において共に生きる一員として、必要な配慮や技術の活用により、平等に暮らし、働き、学び、活動できる社会の実現に向けて様々な取組を推進することとされています。三鷹市では、誰もが障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生できる町の実現を目指して、障害者福祉施策において市民参加と協働による町づくりを進めてきました。
 次に、その理念に基づいた三鷹市における障害当事者や関係団体との協働の取組の事例を御紹介します。
 三鷹市障がい者地域自立支援協議会、三鷹市防災会議、農業公園運営懇談会、青少年問題協議会等の審議会には障害当事者の皆様に委員として参画をしていただいています。また、長年にわたり、手話通訳養成講座、心のバリアフリー啓発推進事業、障害児者対象の水泳教室などを関係団体と市が協働で実施しています。加えて、障害者相談事業、地域活動支援センターⅡ型については、当事者スタッフが多く在籍するNPO法人に運営委託しています。本年四月の障害者差別解消法の施行を踏まえた職員対応要綱に基づく職員向け差別解消研修も当事者にお願いをしました。
 このように、障害者計画策定に関する検討を始め、審議会等における障害当事者の参画は、当事者抜きに障害者のことを決めないという趣旨に基づくものです。
 それでは、改正案について四つの論点に絞って申し上げます。
 一、自立生活援助の創設について。
 これまでは、地域生活移行に向けてグループホームから一般賃貸住宅等へ移行する際には、支援メニューに不安を覚え、単身生活に移行しにくいという事例がありましたので、本制度の創設による状況の改善は地域移行を支援するものとして期待されます。
 ただ、当該支援を実施する事業所は、新設なのか、従来の事業所を活用するのか、現状では曖昧な印象です。実効性があり、効率的な事業所の在り方の具体化が必要です。今後は、グループホームをより障害の重度化に対応するものとする方向性が示されているとすれば、軽度の障害者は一般賃貸住宅で単身生活をすることとなるので、適切なきめ細かい支援策を講じない場合、当事者の不安が懸念されるところです。
 二、就労定着支援の創設について。
 三鷹市の就労支援センターでは、就労に関する相談、ハローワーク三鷹と連携した求職活動支援に加えて、就職後の定着支援についても実施してきています。実は、就労の定着に対する支援と生活支援の境界は曖昧ですので、総合的な支援スキルがスタッフにも事業所にも求められます。これは、これまで就労支援機関が奮闘してきた分野ですので、就労支援と定着支援、生活支援が明確に分離され、支援メニューとして位置付けられた点は評価できると思います。
 ただ、課題としては、就労支援事業所や就業・生活支援センターといった従来の事業所がある中で、当該支援の事業所を新設するのか、従来の事業所に財政的な確かな裏付けが担保されてより良い制度となっていくのかが曖昧です。この辺は、是非、実施主体が増加する中で、機関同士の連絡調整の在り方、情報共有のことも含めて取り組むことが必要です。
 特に、従事者の専門性を明確にし、人材育成が課題です。これは、ハローワーク等との情報交換や人材の交流等についても制度の中で明示されることを要望します。
 三、六十五歳到達による介護保険移行の一部見直しについて。
 六十五歳時の介護保険適用と障害福祉適用との関係については、市町村における支給決定の実態に相違があると認識しています。自治体の障害施策の在り方や財政状況等の実情によって、障害者の高齢化や重度化への対応に差が存在するのではないでしょうか。
 そこで、介護保険適用となった場合において、同一事業者によるサービス提供の継続や所得による自己負担の軽減などが盛り込まれた点は評価できると思います。
 課題としては、低所得者が多い傾向にある障害者にとって、生活を支える仕組みの障害福祉適用から保険制度への移行は大きな変化です。したがって、六十五歳になった時点で介護保険という異なる制度に移ることに伴う精神的不安、一部負担が前提という経済的負担などにきめ細かい対応が必要です。
 特に、介護保険利用時の本人負担について、低所得等の事由で還付するというスキームが想定されているようですが、本人には支払の負担、自治体には償還払いの事務量増加、事業所も支払種別の増加による事務量が発生します。改正案に基づく事業全体を俯瞰して、関係者、機関に増加する労務コストが多くなることによって当事者に不安や御迷惑が掛からないように、この施行までの間の具体的な配慮ある取組が期待されます。
 四、保育所等訪問支援の支援対象の拡大について。
 集団生活に適応できない発達障害等の子供が増えている現状では、このような取組は大変重要です。保育所等訪問事業については、障害児支援の強化の一環として平成二十四年度から創設された事業ですが、実は未実施の団体が多いのです。東京都内でも僅か十二事業所です。もちろん、支援対象施設の拡大により専門的な支援を受けられる対象児が増え、早期支援、早期療育につながることが期待されます。
 三鷹市でも、来年度、子ども発達支援センターの開設に合わせてこのような取組を重視しているんですが、人材確保の面、それから報酬単価の引上げ等による財政面での支援が課題です。乳児院から養護施設まで拡大するのであれば、報酬単価の整理、障害児通所支援事業所を支援した場合の双方の利用料の算定を認めることや、同一日複数障害児支援減算の見直しなど、実は専門職員が高度化することが求められておりますので、報酬を含め財源の裏付けが課題です。
 障害福祉サービスである保育所等訪問支援事業は、保護者の同意が何よりも重要です。自治体や事業者は、保護者に対する早期の寄り添いが必要です。必要な支援をどこまで実現するかということは大きな課題と思っています。
 最後に、法改正に伴い検討すべき論点について簡潔に申し上げます。
 一点目。三鷹市の生活保護制度の経験から、精神障害者の関わりでは福祉サービスと経済的支援が特に必要であると認識しています。障害者が地域で安全に安心して暮らせるために、ケースワーカーのスキルアップも求められます。財源保障の取組を国がしっかりしていただくことで、経済的支援も含めた包括的支援が重要です。
 二点目、障害者福祉の担い手としての人材育成の重要性と報酬の保障です。
 この間、骨太の方針、一億総活躍プランで障害福祉分野の職員の確保も高齢者や保育士とともに明示されています。新任職員の確保のみならず、現職職員の体系的な研修とケースカンファレンスの力量アップとともに、報酬についても御検討をお願いします。
 三点目、相談事業の充実と包括的なサービスの在り方についてです。
 高齢者の分野では多職種連携による地域包括ケアシステムの具体化が、また、子ども・子育て支援新制度においては妊娠期からの切れ目のない包括的な支援が検討されています。どうぞ、障害者福祉分野においても多職種連携による包括的なサービスの検討が不可欠と考えます。
 結びに、障害福祉サービスの現場である地域における検証に基づく自治体の意見の聴取のプロセスを踏まえた法改正の継続についてお願いします。
 施行まで時期もあります。障害者が安全に安心して生活することを目指すために自治体も頑張りますが、法改正のたびに制度が複雑になってはいけません。何よりも、制度の改正と国の財源の保障がセットでなければなりません。自治体の財政力によってサービスに差が出てはいけないのです。私たちは、とりわけ当事者の声、そして自治体の声をお聞きいただく今回の委員会のお取組に感謝しつつ、今後も継続していただき、何よりも制度に伴う国の財源の裏付けの確保に大いなる御活躍をお願いいたします。
 以上です。
 本日は発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

発言情報

speech_id: 119014260X02120160523_009

発言者: 清原慶子

speaker_id: 5636

日付: 2016-05-23

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会