岡部宏生の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(岡部宏生君)(陳述補佐) 日本ALS協会の岡部と申します。このような機会をいただいたことに感謝申し上げます。
最初に、私のコミュニケーションの方法について御説明をさせていただきます。
岡部が行っているのは口文字という方法なんですけれども、日本語は母音の口の形が最後に残りますので、例えばこんにちはと言いたければ、「こ」のとき、「こ」の口といいますと、「お」の口の形が残ります。ヘルパーさんはその「お」という口の形を読み取りまして、「お」の行を横に読み上げていくんですね。お、こ、そ、と、の、ほ、も、よというふうに読み上げていく。「こ」のところで岡部が合図をしております。通常まばたきで合図をしてくれて、そこで一文字確定していく方法を取っております。
この方法で一文字ずつ作ったものですので、どうぞお聞きください。
代読いたします。
日本ALS協会の岡部宏生と申します。本日は、こうして参議院の厚労委員会で参考人としてお呼びいただいたことに感謝申し上げます。
さきの衆議院の厚労委員会で私の参考人意見陳述が実現しなかったことについて、私は率直に驚き、今後、国会で障害を持った人に対する参考人招致の対応などについて改善をお願い申し上げました。それを関係者の皆様が御理解くださり、こうして参議院の厚労委員会に参考人として出席することがかないました。あわせて、今後の対応についても、早速、衆参両院の議長にお会いして、検討を約束していただきました。重ねて心より感謝申し上げます。
本日は、私のコミュニケーション方法も含めて御覧いただきたいと思います。
今回の障害者総合支援法の改正法案の中には、私たちALS協会が長い間厚労省に要望してきた入院時のヘルパー付添いについても盛り込まれているので、特にそれについてはこうして私自身から直接お伝えしたいと思っていました。コミュニケーションにどれほど特別な技能が必要かを見ていただければ、その必要性も理解していただきやすいと思ったからです。
私はALSのことにしか詳しくありませんが、世界的に見て、日本のようにALS患者がこのように生活できる国は世界にもほとんど例がなく、その制度と文化を強く誇りに思っております。私のように重度のコミュニケーション障害を持った者は、こうして意見を伝えるためには通訳者の能力が大きく影響するので、特にうまい人を二人そろえることが必要です。ほかに幾つかの具体的な工夫がありますので、後ほど関係者の皆様にお伝えします。
障害には様々なものがあるので、障害者全体のことを考えればいろいろな方法もあるかと思います。議員が病院において参考人としての患者の意見陳述を聞くことも是非実現してほしいです。要は、その人なりの方法が選択できることが大事だと考えます。それと併せて、私たち障害を持った者もその能力に応じた努力が必要だと思います。私は、私にできる方法でこのような生き方もあることを発信することで、皆様に様々な障害に思いをはせていただければと思っています。
さて、厚生労働委員会の参考人意見陳述における障害者、難病患者への合理的配慮の整備に関する要望ですが、本年四月一日より障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が施行され、障害者への合理的配慮が定義付けられています。障害者が国会審議の場等において参考人として意見陳述ができることは、合理的配慮の好例と考えます。今後、私の件を契機として、衆参両院において障害者や難病患者に対する合理的配慮に取り組まれることを要望いたします。
では、衆議院の厚労委員会でも述べた意見を要約してお伝えいたします。
私どもALS患者の多くは障害者総合支援法を活用して生活しておりますが、今回の改正を評価する立場から二点考えていることを述べます。一つは、法律改正案(概要)の一、障害者の望む地域生活の支援の(三)項の重度訪問介護について、医療機関への入院時も一定の支援を可能にすることに関して、もう一つは、(四)項の六十五歳に至るまで相当の長期間にわたり障害福祉サービスを利用してきた低所得の高齢障害者が引き続き障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合に、障害者の所得の状況や障害の程度等の事情を勘案し、当該介護保険サービスの利用者負担を障害者制度により軽減(償還)できる仕組みを設けることに関してです。
一、重度訪問介護について医療機関への入院時も一定の支援を可能にする(法案第五条第三項関係)ことに関して。
現在、在宅のALS患者の多くは、介護保険と重度訪問介護を利用し、患者の支援に慣れたヘルパーから、コミュニケーション支援、喀たん吸引、体位交換や胃瘻を使っての栄養注入などの介護のため長時間付き添っていただいて生活していますが、入院時はその患者の介護に慣れたヘルパーの付添いができないことが多く、また、一部の自治体では地域支援事業として一定時間のコミュニケーション支援しか利用できず、個別性に即した適切なケアが受けられないことなどにより体力を消耗し、かえって体調を崩すことがあります。特に、医療スタッフとのコミュニケーションの難しさが時には生命の危険につながるような事態も生じています。
このため、協会としては、長年にわたって在宅療養患者の介護に慣れたヘルパーが入院中にも付き添えるよう要望し続けてきましたが、今回、重度訪問介護によるヘルパーの付添いが法律として全国で認められる動きになり、患者は一日も早く施行されることを望んでいます。
施行に当たっては、地域によって重度訪問介護ではなく居宅介護を利用している地方患者が多いことに対する御理解をいただき、現在利用している地域支援事業でのコミュニケーション支援も併存し、どちらを利用するかについては優先関係が発生しないよう、特段の配慮を希望します。
また、現時点では障害者支援区分六の者を対象とする予定と聞いておりますが、対象範囲の拡大などについては法案成立後も引き続き厚生労働省と議論させていただきたいと考えております。
二、六十五歳に至るまで相当の長期間にわたり障害福祉サービスを利用してきた低所得の高齢障害者が引き続き障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用する場合に、障害者の所得の状況や障害の程度等の事情を勘案し、当該介護保険サービスの利用者負担を障害者制度により軽減(償還)できる仕組みを設ける(第七十六条の二の第一項関係)ことに関して。
今回の改正案の重度訪問介護や居宅介護などの障害福祉サービスを六十五歳前に一定期間利用してきた高齢の障害者に対して介護保険の利用者負担を軽減することについては評価しております。現在のALS患者の年齢構成は六十代後半の高齢者が最も多くなっています。しかしながら、重度障害者で重症難病患者であるALS患者は今回の改正の負担軽減には該当しないようになっております。
ALS患者は、現行の介護保険と障害者総合支援法の制度を利用しており、介護保険では四十歳から六十四歳までの二号被保険者(十六特定疾病)と六十五歳からの一号被保険者に該当し、介護保険サービスを障害福祉サービスに優先して利用するという規定があるため、病気が進行し、障害がより重度化した場合に障害福祉サービスを上乗せ利用しております。介護保険要介護五で支給限度額まで利用した場合、月当たり一割負担の約三万七千円の自己負担が生じます。
また、若年発症のALS患者は、四十歳まで障害者福祉サービスを利用して、四十歳からは介護保険サービス優先となり、その自己負担が発生します。介護保険と障害福祉サービスを併用する場合に高額障害福祉サービス等給付費による自己負担軽減措置がありますが、今回の改正による介護保険負担分を障害福祉で全額負担軽減する措置は受けられません。
ALS患者は医療費等の出費も多く、学齢期の子供がいる世帯などにおいては介護保険の自己負担は家計を圧迫し、子供の進路にもしわ寄せが生じています。中には自己負担を減らすために介護保険サービスの利用を抑制する場合もあり、必要な重度訪問介護等の障害福祉サービスの上乗せ利用ができない患者も少なくありません。
四十歳以上で介護保険サービスと障害福祉サービスを併用している場合も、今後、改正案と整合性のある対応策を講じられるように附帯決議等を要望します。
法案の内容には、今後の課題として残った部分はあるものの、入院中のヘルパー派遣や高齢障害者の利用者負担の軽減など評価できる部分が多いことから、この法律改正を是非今国会で成立させていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。