荒井広幸の発言 (国の統治機構に関する調査会)

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○荒井広幸君 新党改革の荒井広幸です。
 一院制と二院制との比較でよく引用されるのがシェイエス。シェイエスはフランス革命のときの理論的指導者です。彼はこう言います。第二院は何の役に立つのか、もしそれが第一院に一致するならば無用であり、もしそれに反対するならば有害である。これが極めて有名な二院制否定論の原点にあります。しかし、そこには第一院が常に正しいという前提が置いてあってこそ成り立つ話です。
 与党の場合、法案を国会提出するときに、あらかじめ党の政務調査会や総務会で細かく審査して了承を得る事前審査、承認制度が慣例化されております。参議院も政党化が強化されることになったのは、ここに由来します。結局、衆議院と同じようなやり方で党の中で議論をもみますから、法案の賛否を国会で議論する前に決められている。結果、国会審議は甚だ形式的なものになっています。だから、二院制は必要のない議論とも言えるわけです。
 政権交代を経験して、我が国も、それぞれに与党内での事前審査制度を持つようになりました。非常に不安を覚えます。あらかじめ決められた党の方針に従うということで党議拘束が徹底されていくからです。法案の賛否については、憲法に保障される議員の個人の意見は軽視されがちです。つまり、制度論より、未熟な政党、与党が国会を形式的、形骸化をつくっているという現状を、少数政党の党首ではありますが、反省の念を込めて申し上げたいと思います。
 一方で、英国の政治学者で貴族院議員でもあったブライスは、第二院が議案に対し再度の検討を行い、恐らくは改善をも与えるものであるから、単なる拒否よりも好ましいものであると二院制を評価しているのは有名な言葉です。
 参議院は、再考の府、良識の府と言われますが、権威の府です。解散がありません。政府から一定の距離を置き、国民と将来に対して、数の力ではなく理性の力によって大所高所から時間を掛け諸課題を解決に導いていくことができる、その可能性を持っています。
 さらに、賢者の府でもあるべきです。政府と衆議院が衝突すればそれを緩和し、国民に不安があればそれを緩和し、一緒になって、政府の暴走をしかねないときには参議院が、衆議院が暴走しかねないときにはこの参議院が安全装置の役割を果たすことができる大いなる可能性を持っております。これが参議院の使命ではないでしょうか。
 例えば、官僚主導とよく言われる弊害は、まさに行政国家の問題です。我々国会が、立法府であるにもかかわらず、細かい細部においては官僚にその法案作成、省令、政令を委ねてしまっているという、委任立法をしているというところが最大の問題です。参議院はそれをせず、きちんと細部にわたって法制化していくことによって、行政国家、官僚が力を持つということに歯止めを掛けることができると考えます。
 また、昨今の安全保障法制です。戦争法案とも我々は呼びませんし、平和安全法制とも呼びません。安全保障法制と呼ばさせていただいています。
 衆議院の段階では、戦争の反省から、政府と自衛隊に対する暴走の歯止め措置がありませんでした。それは国会の関与です。国会が事前に自衛隊を派遣する場合の是非をただす、国民とともに監視をする、その必要性の是非をきちんと明らかにするのが国会に求められています。これが戦争の教訓です。衆議院ではなし得ませんでした。我が参議院において国会の事前承認という歯止めをつくったということは記憶に新しいところであろうと思いますが、そうした役割が現在も行われているということを申し上げたいと思います。
 では、どのような解決策が更にあるだろうかと、こう考えますときに、一つは、会派ばかりでなく個人が法案の提出権を持つことにする、党議拘束はこれを廃止する、決算重視の審議を強める、そして請願審査のための常任委員会をつくり、民意を吸収することに徹底する、同意人事は参議院だけに与える、こうした改善点が考えられます。そのためには、思い切って我々も権威の府として権力を手放さなければなりません。参議院は首相の指名権を返上する、そして閣僚を送り出すことをやめるということを提案して久しくなります。
 最後に、国民の熱狂が国論の暴走を生み、国民自らを苦しめたという歴史を学びます。
 戦後、GHQは衆議院のみを提案しましたが、多くの教訓から参議院を置く二院制にこだわりました。よって、天皇の国事行為、第七条の四、これには国会議員の総選挙を公示するとあります。一院制を前提にしていたからです。衆議院は総選挙ですが、参議院は通常選挙です。
 このように、諸先輩は参議院を置くことにこだわりました。近衛文麿総理は、軍部の力をバックに、国家総動員体制のため全政党を解党して大政翼賛会をつくり、太平洋戦争にのめり込みました。ドイツは、ナチ党のヒトラー総統がワイマール体制下の民主主義選挙によって国会で多数派を形成し、その結果、排外主義は第二次大戦の引き金を引くことになりました。どちらにも共通するのは国民の熱狂的な支持です、熱狂的な支持。
 私は、小泉人気と言われるこの熱狂を痛感した一人でもあります。政府と衆議院、あるいは国民にまでも冷や水を浴びせる役割があろうと思います。憲法国会で、我々の先輩は、この冷や水を浴びせろということを国会で議論しているようです。熱狂しやすい国民に冷や水を浴びせる府という役割を自覚していきたいものと思います。
 政党はもとより、我々国会議員一人一人の見識によってまだまだ生かせる制度がこの二院制であると考えて、意見開陳を終わります。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 荒井広幸

speaker_id: 667

日付: 2016-04-06

院: 参議院

会議名: 国の統治機構に関する調査会