阿部信泰の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(阿部信泰君) 阿部信泰でございます。今日は、こういう機会をいただきまして誠にありがとうございました。
私は、国連の関係を中心に、国連の基本的機能がどういうことがあるのかということと、そこにおいて、では日本はどういう役割を果たすべきかということを申し上げたいと思います。会長から忌憚のない意見をということなので、今日は私の考えるところ、好きなところを申し上げさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
国連、去年、設立七十周年を迎えまして、七十年やってきたんですが、元々は第二次大戦という大変悲惨な戦争を経て、何とかこの世界平和を維持したいということで、加盟国全部が集まって力を合わせて世界の平和を維持するという、集団的安全保障ということを目的にしてつくったわけでありますね。そのために、そういう安全保障の問題については安全保障理事会が責任を持つということで、これは憲章に書いてありますけれども、国際の平和と安全に対する脅威というものも安保理事会が認定をしまして、それがもし脅かされておるとなれば国連が適切な措置をとると、こういう仕組みで始めたわけでありますね。
したがいまして、時々いろんな国の外務大臣とか何かが国際の平和と安全が脅かされているという発言をするということは、要するにこれは安保理がアクションを取るべきだと、こういう意味なんですね。これはそういう意味でのキーフレーズでございまして、これはよく使われる言葉でございます。
どうしても平和が維持できないとなったときには強制措置をとると。これは、基本的には経済制裁で何かを止めるかやってもらうか、あるいはそれも駄目なときは軍事行動を取ると、これが強制措置なわけですね。
そのために、国連憲章は、国連の常備軍をつくる、国連加盟国が軍隊を拠出して、それでもって国連が軍隊を持つ、で、必要なときにはそれを使うという構想が憲章にあったんですけれども、これは実現しませんでした。
それから、常任理事国にはいわゆる五大国が常任理事国として入っておりまして、この五か国の意見が一致しなければ決定できないと、こういう仕組みになっていまして、これを拒否権と言っているわけでございますね。
それから、これも大事なことですが、国連加盟国には強制的な決議は実施する義務があります。これは国連憲章に書いてあります。国連加盟国は国連が定めた義務的な行為は実施しますという約束をしております。
また、参考までに、時々混乱しちゃうんですけれども、集団的安全保障というのといわゆる集団的自衛権というのは、これは言葉は非常に似ているんですけれども違いまして、集団的安全保障というのは国連のようなグループの国がみんなで協力して安全保障を維持するという仕組みでございまして、集団的自衛権の方は自衛権の行使を幾つかの国が協力して集団で行うと、これが集団的自衛権でございますね。
次に、ページをめくりまして、こういう理想でスタートしたんですけれども、国連が設立されて間もなく冷戦が始まりまして、東西の激しい対立が続く中でこの安全保障理事会は機能しなくなりました。ソ連がしょっちゅう拒否権を行使する、場合によってはアメリカ側も行使するということでお互い拒否権を行使し合うので、拒否権によってなかなか動かないという事態が生じました。それから、常備軍をつくるということも規定があったんですけれども、これもできることはありませんでした。
そこで、しかしながらいろんな紛争が起こるので、それに対して何か措置をとるということには、応急措置としてPKO、国連の平和維持機能ということで対応してまいりました。ただ、これは御承知のようにあくまでも任意の規定でございまして、それに参加するかどうか、あるいはそれを紛争当事国が自分の国に受け入れるかどうか、これはあくまでもその国の任意でございますので、前の国連の規定のような強制的な義務はないという弱さがございます。
結局、国連の現実がどうなっているかと申しますと、各国は、国連そのもの、その中心である安保理が有効に機能しない、有効に安全を保障してくれない、自分の国の平和も守れないかもしれないということで、結局、各国が独自に個別の自衛権を行使するか、あるいは集団的自衛権の枠組みに属することによって自分の国の安全を確保すると、こういうことをやってきたわけでございますね。
同時に、その間に、国連の事務総長が、しかしながら時々いろんなところで発生する紛争というものを何とか収めたらいいじゃないかということで、事務総長の機能というのが成長してまいりまして、事務総長がいろんなところで紛争の解決のために仲介努力をしたり、あるいは特使を任命してあっせんをするというようなことをするようになりました。それがいろんなところの和平協定にもなりますし、それを実施するために必要なときにはPKOを派遣すると、こういう仕組みができました。
ただ、私も、国連の事務次長として三年近く中で働いていたんですけれども、悲しいかな、今の世界、国連の情勢は、国連憲章に定めていて義務的に実施しなければいけないという例えば経済制裁の決議、あるいは何らかの軍事行動を取るという決議についても、なかなか加盟国がやってくれないというのが実は悲しい現実でございまして、それもあって、国連の加盟国それから事務局もいろいろ知恵を出してまいりました。
一つの方法は、決議を決めます、ある国には核兵器関連のものを輸出しちゃいけないという規則を決めますが、なかなか守ってくれないし、どうもいろんなところで抜け道があるようだということで、これは、それじゃ各国に、あなたの国ではどうやっていますかという報告書を求めると。それを、しかも今度は国連の安保理の下に専門の委員会をつくりまして、この国はこういう報告をしてきたけれども本当だろうか、どこか落ちているところはないかといろいろ調べると。これは、淺田先生が以前国連に行っていまして、そういう仕事をなさったことがありますけれども。そういうことで、できるだけ何とか決議の実効性を上げるという努力をしてまいりました。
しかしながら、今の国連の現状を見ますと、いろんな世界の難題は全部国連に持ち込まれていますね。シリアの平和を何とかしろ、アフリカのいろんなところで戦争が起こっているじゃないか、そういう平和の問題、あるいは最近のシリアの難民の問題ですね。それから、世界の貧困、この問題を解決すべきだ、あるいはアフリカでも最近エボラとか疫病がはやりましたけれども、それに対しても早く手を打てということが出てくる。最も最近では、気候変動の問題に対して国連が指導力を発揮すべきだという声も出てくると。
しかしながら、こういういろんな難しいことがいっぱい持ち込まれるんですけれども、ただ、国連の全体として何か動こうとすればこの安全保障理事会の枠組みで決めてもらわなきゃいけない、しかし、そこには五大国がいて拒否権がある、なかなか物事が決まらないという状況があります。
それから、そこまで至らなくても事務総長が事務局を引っ張っていろんなことができるじゃないかということなんですけれども、これ、今年の国連の予算額見ましたけれども、年間予算が二十五億ドル、日本円にすると三千億円弱ですね。もう日本のその辺の県の予算よりも少ないぐらいですよね。そんなもので世界のいろんな問題に全部対応できるはずがないんですね。でも、国連事務総長には、これはおまえの責任だ、やれやれと、何かうまくいかないと、事務総長がちゃんとやっていない、こういうことを言われると。これが今、国連の現実でございます。
なぜ予算が増えないかといいますと、やっぱり加盟国がなかなか義務的に出せというお金を増やすのは嫌なんですね。みんななかなか抵抗するものですから。実は日本も抵抗しております、日本も厳しい財政状況が続いているので。日本の国もゼロ成長予算だというんだから国連もゼロにしろということで厳しくやっておりまして、そういった声が主にたくさん分担金を払っている先進国から出まして、なかなかその結果予算は増えないと。
そうしますと、事務総長以下の事務方はどうするかというと、何とか、それじゃ、義務的お金じゃないけれども任意拠出というお金ですね、各国からの寄附、贈与みたいなものですけれども、それを集めていろんな課題に当たろうじゃないかと。例えば、難民高等弁務官というところが難民の問題をやっています。UNDPは開発問題をやっています。そういったところはみんな基本的には任意拠出を集めてそれで事業をすると、こういうことでやっています。実際上は、集計すれば恐らくそっちの方が正規の予算よりも多いぐらいのお金が集まっていますね。ですから、逆に言うと、事務局はそういった国にお願いをしてお金を出してもらわないと何も仕事ができないと、こういう状況になるというのが国連の現状でございます。
ページをめくりまして。近年、こういったことで理想を掲げ、しかしながら挫折し、いろいろ困難に直面している国連ですけれども、一つ新しい動きが出てまいりました。人道的介入という言葉で表現されます。いろんな国で悲惨な人道的な状況が起こっているときには、元々は国連は内政不干渉の原則ということで国内問題には介入しないということでスタートしたんですけれども、しかしながら、やっぱり余りにも大規模な殺りくが行われていたり大規模な人権侵害がある、あるいは人道的に必要な食糧、医薬品の支給も届かないというような状況が出てきたならば、やっぱり国際社会は黙って見ているべきではないということで、そこには人道的介入ということを考えるべきだと。
これはもう一つの言葉では、保護する責任、R2Pと書いてありましたけれども、英語でレスポンシビリティー・ツー・プロテクトと言っているものですからR2Pと言っていますけれども。要するに、国家、そこには国があって指導者がいて、まあ支配者がいるわけですけれども、これは何をしてもいいということにはならないんだと、そもそも基本的にそういう指導者は自分の国の国民を守る義務があるんだと、それをちゃんとやっていないときには国際社会は最悪介入することができると。
これはなぜかといいますと、一九九四年にルワンダの大虐殺事件というのが起こりました。これは例のフツ族とツチ族の部族対立で大変な殺りくが起こりました。それから、旧ユーゴスラビアでもスレブレニツァというところで、国連が保護をしていた難民をセルビア軍が殺りくするという虐殺事件が起こりました。こういった事件を踏まえて、こういうことに対して国際社会はほっておくべきじゃないんだということでできた原則でございます。
ただ、これは原則としてうたわれておりますけれども、まだ確立しておりません。アメリカその他西側の国はこれはやるべきだと言っているんですけれども、ロシアとか中国は懐疑的でございます。それから、非同盟の国も懐疑的な国が多いですね。ですから、必ずしも意見は一致していない。
そうこうするうちに、その後、例のテロ事件をきっかけにアフガン戦争が起こりまして、それからイラクでも戦争があった。
なぜここにちょっと書いておきましたかというと、この結果、アメリカは地上軍を出してひどい目に遭うわけですね。その結果、アメリカは国内でもう地上軍を出して外国に介入するのはやめるべきだという空気が非常に強くなりまして、ユーゴスラビアの頃はアメリカの義務だと言っていたんですけれども、その後、介入はできるだけやめようという方向に来て、二〇一一年にリビア危機というのが起こるんですけれども、例のアラブの春を受けてリビアでも民主化を求める動きが起こったんですが、そのときに安保理が決議を採択しまして、非戦闘員、一般の市民もかなり犠牲になっているということで、これを保護するために介入すべきではないかということで、それを認める安保理決議が通りました。ただし、これにはNATOが参加するんですけれども、アメリカは軍は直接送りませんでした。
このときもロシアと中国が批判していたんですけれども、結局、これは今批判されていますけれども、元々、非戦闘員、一般市民を守るためということで介入を許したのに、どうも途中から目的が独裁者カダフィの打倒ということにすり替わって、NATO軍がかなりそれを助けたということがあって、結局彼は逃げて捕まって殺されちゃうわけですけれども。そういった面で、これは安保理が決めた決定を超えているということで、ロシア、中国が批判しております。
その後に起こったのはシリア危機でございまして、これもアラブの春の余波で起こったわけですけれども、今でも続いておりますね。いろんな虐殺事件があり、あるいは化学兵器を大量に使うという事件もありました。その都度、これは断固たる措置をとるべきだという声は上がるんですけれども、なかなか安保理がまとまりませんで、そういう措置はとれません、とれないでおります。
その間、それじゃ停戦を仲介すべく特使を任命しようじゃないかということで、前のアナン事務総長、その後はブラヒミさんという特使、今はデミストゥラさんという特使がやっていますけれども、何とか停戦、和平を実現しようということでやっておりますが、なかなか難航しております。
さてそこで、最後のページになりますが、日本が何ができるのかということでございますが、日本は安保理の常任理事国ではありませんので、そういう意味においては強い権限を持っていろんな決定を左右することはできません。
しかしながら、いろんな決定が安保理あるいは国連総会でなされるときに、その決定がいろいろ難しい状況に陥ることがよくあるんですけれども、そこで日本が中に入っていっていろいろ、こういうアイデアはどうか、この辺でまとめたらどうかというようなことをやって、まあ外交努力でございますね、これが私は日本の果たせる一つの役割ではないかと思います。つまり、国連の意思決定、コンセンサス成立のために協力をすると。
それから、日本はいろいろ経済的には苦しんでおりますけれども、依然として世界の中では非常に豊かな国の一つ、経済的に大きな国の一つでございまして、やはり日本には経済的にも支援してほしいという期待がありますので、任意拠出に依存する活動に対して資金援助を行うということが次の日本のできることではないかと思います。難民問題、保健衛生の問題、あるいは教育の問題とかですね。それから、東京に唯一国連の機関がありまして、国連大学というところが青山にありますけれども、あの資金、あの活動も全てこれは各国の任意拠出で、持ち出しのお金でやっております。
そういう意味において、一番のお金を出しているのは日本政府でございますけれども、これを引き続き続ける、あるいはできることなら増やすということが一つの貢献の道かと思います。
それから、平和維持については、例の平和維持活動というのがなされていますので、これにもできるだけ積極的に参加すると。今、たしか南スーダンに日本は参加しておりますけれども、それが一つの道かと思います。
こういった、ある意味では基本的、地道な貢献に加えて、私はこの日本がもう少し大きな夢を持っていいんではないかと。
一つは日本が安全保障理事会の常任理事国になるということで、これは長年日本がトライしていますけれども、依然として実現しておりません。これは、なかなかこの実現は難しい。しかしながら、私はこの目標は堅持して諦めずにやっていくべきだと思います。達成は容易ではございません。
次に、国連事務総長をひとつ日本から出してはどうかというのが次の高い目標でございます。ただ、これも容易ではございません。一つは、事務総長というのは安保理の常任理事国からは出さない。つまり、常任理事国でもう既に強い力を持っているわけですから、加えて事務総長までやるとこれはやり過ぎだということで出さない。確かに、歴史を見てみますと誰も出ておりません。
そこで難しいのは、日本は、でも常任理事国になりたいと言ったじゃないですかということで、逆に、それじゃ事務総長を引き受けるということは、じゃ、あなた諦めるんですねと、こうなっちゃうので、ここはなかなか難しいところなんですけれども、別にこれは紙に書いた鉄則ではありませんので、その辺は臨機応変にできるかと思います。
それから、これも紙には書いていませんけれども、地域的にできるだけいろんな地域に回すんだというのが軟らかな原則としてございます。今、潘基文さん、韓国の人が事務総長をやっていますので、すぐ後とかすぐ近くはなかなか難しいと思いますね。しかしながら、将来、次に今度アジアから出すというときには是非とも日本から出せれば非常にすばらしいと思います。
ただ、これも、日本でも今まで例えば緒方さんを事務総長にどうかというような声が掛かったことがありますし、あるいは明石さんのように大変成功した方もおられます。そういった方が、うまい人が出てくれば、是非ともこの人にやってもらおうじゃないかというのを担いで動き回れば私は非常にいいチャンスだと思いますね。
将来、そのためにはそういった事務総長候補になり得るような人をふだんから養成しておかなきゃいけないんですね、いきなりぽんとそういう出てくるわけじゃないので。そのためには、例えば国連職員になる、あるいは外務省の職員でもいいですけれども、いろんな国際会議に出る。あるいは、別にそういう公的機関でなくても、会社でも企業でも、あるいはNGOでもいいんですけれども、いろいろ国際的に活動した経験を持つ人、それから、そういう意味で国際的にいろいろあの人はよくできると、よくやるということを認められるような人をふだんから養成しておくということがこの将来の可能性を開くためには大事と思いますので、そういう意味において、長い目で見て人材を養成する努力をすべきだというのが私の最後の提言でございます。
ありがとうございました。