星野俊也の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(星野俊也君) 本日は、大変権威のある本調査会で発言をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。大変光栄に思っております。
本調査会が、核軍縮や国連などを通じて我が国のマルチ外交、その課題とそして外交力強化に向けた取組を考えるということでございますので、私は、本日、阿部参考人の後を受けまして、国連との関係において特に我が国の外交の現状、課題ということについてのお話をさせていただこうと思っております。
まず最初に、我が国にとっての国連と国連にとっての我が国というもの、二番目に、我が国の国連外交はどういうふうに対応していったらいいのかというふうなポイントと、第三番目には、マルチ外交、多国間外交という話ですので、多国間外交というのは二国間外交とどう違うのかというところもちょっと御紹介をさせていただき、最後に、国連改革に向けた現状、課題といったようなものにも多少触れてみたいというふうに思っております。
まず、我が国にとっての国連ということでございますけれども、今年、二〇一六年は国連に加盟をして六十周年という非常に大切な節目の年でございます。十二月の十八日が記念日になります。十年前の国連加盟五十周年のときには、天皇皇后両陛下も御臨席の下に大きな式典が開かれました。ですから、今年も、六十周年ということでございますので、十二月十八日に向けていろんな形で日本と国連の関係を考えるべき年だろうなというふうに思っております。
そしてまた、今年は、一月一日から二年間で非常任理事国、安保理の非常任理事国としての任期も始まっております。さらに、伊勢志摩サミットということもございますので、外交力を強化して、日本が国際社会においてプレゼンスを示すという意味でも非常に大きな意味がある年だと思います。
その二〇一六年が国連加盟の六十周年ということですが、どういう意味があるのかといった場合には、三点考えました。
一つは、一九五六年、国連に加盟したことで日本が戦後の国際社会に完全に復帰したという一つの大きなシンボリックなものになったと思います。
国連は、御存じのとおり、ユナイテッドネーションズですね。これはそのまま訳すと連合国になるわけで、中国は今も連合国という漢字を使って国連のことを称しておりますが、その連合国に日本が入って、今や安保理のメンバーにもなるというのは、これは非常に大きな象徴的なことだと思いますが、そういったような意味で、国際社会で日本のプレゼンスを示すという意味では非常に大きな意味があります。
そして、今、我が国にとって国連というのは本当に不可欠な外交のツールというふうに思います。
一つは、国連が持っている普遍性です。つまり、平和ですとか開発ですとか人権、様々なそういう大きなビジョンに関わるものを体現している組織です。そして、国連は正統性があると言われています。それは普遍性とも関係するんですが、百九十三か国が加盟をしていて、そこで決定されたことであるということは大きな国際社会における公的認証を受けるというふうな意味があると思います。
それから、三番目に効率性。これはちょっと誤解を招くので注意を喚起しないといけません。国連が効率的だと言っているわけじゃないんですけれども、日本にとっては国連は効率的なんです、つまり、一か所に行くことによって百九十三か国といろんな話ができるという意味で。そして、国連総会の場などに参りますと、他国の首脳もたくさん出てきておりますので、一か所に行くだけで様々な国との二国間会合もできる、そんな意味で非常に使い勝手のいい、そういう意味で大事な組織でございます。ですから、我が国にとりまして不可欠なツールということは言えると思います。
そして、日本が国連の中で果たしてきている役割は、先ほど申し上げましたように、旧敵国から今はもう国連メンバー、しかも安保理のメンバーということになっていますけれども、他の先進国と違うのは、痛みの分かる国だということですね。国連の支援を受けて日本は戦後復興をしてきました。援助を与えられる側の思いも分かる、そういった中で国際協調をこれから進めていく、あるいは積極的平和主義を進めていくというふうなことですので、ほかの先進国とはちょっと違った大きな役割があるんじゃないかと思います。
他方、国連にとっても我が国は非常に不可欠な存在だというふうに思います。
私は大学を二年間ほどお休みをして、二〇〇六年から八年までは国連の日本政府代表部というところに、外務省に出向して政務を担当させていただきましたが、そして国連の数々の会合に出させていただいたときに感じたことは、日本が非常に尊敬をされている、そして日本は発言した内容が極めて良識的であると。つまり、国連の中で自己主張をする国はもうたくさんあるわけなんですけれども、日本も当然、国益を基にした自己主張はしますけれども、と同時に相手の意見も聞くし、そして国際社会の公益は何かということも考えて発言することが多いんですね。そういう意味で、非常に尊敬されているということがまず言えるんですけれども、その上で、大口の財政拠出国でもありますし、またそういったこともありますから、安保理の非常任理事国ではこれまで最多の選出国になっているということです。
この一月から第十一回目の任期ということで、二年間でございます。つまり、過去六十年のうちに十一回も非常任理事国として選出されているということは、もうその三分の一以上の時間を安保理の中で過ごしていることではあるわけですね。これだけ選ばれている国なのですから、やっぱりもう常任の席を安保理の中で持ってもいいのではないかということを主張することは十分可能だと思います。日本は、一九五六年に国連に加盟したと申し上げましたが、もうその翌年には非常任理事国に選出されて、一九五八年から二年間は非常任理事国の任期をしているというぐらいのものです。
先ほどの通常の国連の予算の分担率でいきますと、加盟当初は一・九七%でございました。それが二〇〇〇年には、そのときがピークだったんですけれども、二〇・五七%、そして二〇一三年の段階で一〇・八三三%、そして現在二〇一六年は九・六八%。常に拠出国としては二位を保っておりますけれども、やっぱり金額ベースでいきますと、そして分担率のベースというのは国民総所得に連動しておりますので、ちょっと経済力を反映しているのかなというふうな気はいたしますけれども。
しかし、大口の拠出国であり、また非常任理事国の最多選出国であるということがありますが、もう一つ更に申し上げますと、国連で働いている日本人の職員は極めて優秀であり有能であり実直であると。やはり、世界中の皆さんが国連で仕事をしているわけですけれども、この中でどこの人たちが一番能力があって実際に仕事ができるかというと、日本人というのは定評があるんじゃないかなというふうには思います。
しかし、その国連にも限界があります。私は不可欠な組織だと申し上げますが、しかし完全な組織だとは毛頭申しません、不完全な組織だろうというふうに思います。やはり時代錯誤で、日本がまだ、そうですね、なかなか安保理の常任理事国になれないというふうな状況もあります。そして、いろんな問題が政治化されてしまうことによって機能不全が起こるということもあります。また、巨大な官僚組織であったりとか、無駄と書いてしまいましたが、非効率であるというふうなところは否めない。そういうところがこれから改革の課題というふうになるのではないかと思っております。
ところで、我が国が国連を考えるときには、是非お考えいただきたいのは、国連には二種類あるということでございます。二つの国連があると言ってもいいのかもしれません。
一つは、日本もその加盟国の一つとして、各国の国益を主張する政治的な組織、つまり政府間の集団的な意思決定をする場面としての国連でございます。ですから、ここで議論をするのは各国の外交団、あるいは外交の代表団というふうになります。もう一つの国連というのは、それぞれの国の国益からは離れて、国連事務総長という方が一番そのトップにいるわけですけれども、国際公務員として、あるいは国連職員として不偏、中立の立場で国連が掲げる諸目的を実施するという国連。実は、この国連の二つの顔というのが時々ごちゃごちゃになってしまうということがありますので、まず最初に、二種類あるということは指摘させていただきたいと思います。
その上で、政府間の集団的な意思決定機関としての国連としてはどういうことが我々としてはできて、またすべきなのかということは、第一は、やはり我が国の外交目標とするもの、これは国益を当然含みますけれども、先ほど申しましたように、バランスの取れた形で国際公益に係る議論、こういうものを、我が国の外交目標を追求するという場でございます。
そのテーマとしましては、今お話のありました核軍縮や不拡散というのも当然ございますでしょうし、今の時代でしたらテロとの闘いというのもあるでしょうが、国際社会における環境の問題、気候変動の問題、貧困、感染症、様々な問題もあります。さらには、ダイレクトに日本に関係する、今同時進行で進んでいるものとしては北朝鮮のケースとか、そういったものを普遍的な場で、国連という正統性を背景に議論する場であるということだと思います。
そしてもう一つは、我が国の外交目標にも関連しますけれども、グローバルな共通の課題というものに対して、これは一国では対応できませんので、集団的な取組を進める、そのための新しい規範を作ったり政策を作ったり活動を進めたりというふうなことがあるんじゃないかと思います。
そしてもう一つは、安保理等の主要なフォーラムでの議長ポスト、議席をまず持つこと、議長のポストを取ること、あるいはリード国になると、いろんなそういう形でプレゼンスを示すというのも大変重要なのではないかなというふうに思っております。
後ほどもマルチ外交の場で議長を取るというのは非常に重要だというふうな話もさせていただきますけれども、今朝のニュースでは、宇宙飛行士の向井千秋さんが国連宇宙空間平和利用委員会の小委員会の議長に選ばれたというのがあるんですけれども、そういうことがあることによって本当に日本の存在というのが示されます。
今年、日本が非常任理事国のメンバーであるということによってもまた日本の存在が示される、あるいは、いろんな委員会の議長であるということによってその議事を進行する上での権限が与えられる、そういうようなところを活用するというのも政府間の集団的意思決定機関としての国連の中で日本が果たすべき役割ではないか。日本がそういう立場にあれば、やはり最初に申し上げましたとおり、多くの国は信頼を向けてくださると私は確信しております。
もう一つの国連は、国連が掲げる諸目的を実施する機関として、これは開発や人権、難民、公衆衛生、様々な分野があるのは御存じだと思いますが、ここで私が懸念を持っていることの一つは、余りにも日本人の職員が不足しているということでございます。
先ほども申しましたように、日本人というのは最も国連の中で優秀で有能で実直な仕事をするのは多分間違いないと思うんですけれども、しかし少ないと。過小代表、アンダーレプリゼンテーションというふうな言葉が使われます。
確かに、国連憲章の中には百一条というところに、国連の職員は公平な地理的配分に基づいて配置されるというふうに書かれております。ですから、日本人が余りにもたくさん占めることは望ましくないのかもしれません。しかし、常に日本は国連の分担金、分担率でいきますと第二位を占めておりますので、その分担金の比率と職員の比率でいきますと、やはり望ましい職員の数には至っておりません。
今ここで、二〇一五年の国連関係の邦人職員の数は七百六十六名であるという数字を出しました。いや、この数字だけですと、申し訳ございません、大きい数字なのか小さい数字なのかというのが分からないかもしれませんが、しかしこれが、国連には、お手元にお配りさせていただいたように、国連システムというところで百ぐらいもうたくさんいろんな機関がございます。ここに例えば三万人仕事をしている国連のプロフェッショナルがいるとする、そのうち七百人しかいないというふうに考えますと、これはやはり日本は過小代表ということになるのではないかと思います。
そして、国連の本部がニューヨークにございますが、本部の事務局で本当にプロフェッショナルと言われる方たちの数は多分三千人程度じゃないかと思いますけれども、その中で、でも日本が占めている人数というのは八十人程度なのではないか。やっぱりこれも少ない。
先ほど申し上げましたとおり、望ましい職員数でいくと、現在百八十六人から二百五十二人はいてもいいのかもしれないというふうに国連では言われておりますが、その半分にも満たない数の国連職員しか日本人はいないというふうな状況だと思います。
更に深刻なのは、幹部がいないということだと思います。先ほどの七百六十六名のうち、Dレベル、つまりディレクターレベル以上というのは七十二名でございました。そういう意味で、阿部参考人は以前に軍縮担当の国連事務次長をされましたけれども、そういった形で国連の執行部で仕事をする方が限られている、ですから阿部参考人の活動は非常に大きかったわけですけれども、そういうメンバーをこれから増やしていくということが、国連の中の存在感を示すという意味で重要なのではないかなというふうに思っております。
もちろん、事務総長を出すということも重要かもしれませんが、事務総長に至らなくても、事務次長、事務次長補、部長、そういったレベルで幹部として国連を引っ張っていくという人材があってもいいかもしれません。
さらに、国連は、PKO、平和維持活動というのを進めておりますが、そのPKOの部隊として自衛隊が参加する形は割と定着をしてきておりまして、私も非常に喜ばしく思っておるわけですけれども、事務総長の特別代表ですとか副代表、官房長、そういったPKOの執行部に就く日本の人も少ないというふうなことでございます。緒方さんは国連のUNHCRのヘッド、国連事務総長特別代表としてPKOのヘッドをしたのは明石代表と長谷川祐弘さんのみという状況ですね。これをこれからも変えていく必要があるのではないかというふうに思っています。
ところで、多国間外交は二国間外交と違っていろんなところで興味深いものがございます。これは是非知っておいていただくこともいいのではないかと思います。
一つは、参議院もそうでしょうけれども、会議体の外交であるということでございます。その会議体の外交も、国連ですとかG7、G20、そういう形で、総会があり理事会があり委員会があり、そこでどういう意思決定をしていくかというふうな会合もありますし、最近でいえばTPPもございましたが、気候変動、軍縮・不拡散、開発、人権、分野別に会議をしていく外交、これは多数の国々がその場で、一か所で集まってかんかんがくがく議論をするということでございます。
そこで何が重要になってくるかというと、私は選挙だと思うんですね。そして、そこには必ず表決という、投票という行為が関わります。そして、最終的に成果文書として決議や声明や宣言を出していくと。このためにはやっぱり、先生方でしたらばぴんとくるんだと思うんですけれども、多国間外交の運営のためにはいろんなスキルですとかノウハウですとかが必要になってくる。そういったところを日本としても蓄積していくことがとても大事なのではないかと思います。
まず、会議ではビューローというのが組織をされて、議長や副議長、ラポルトゥール、事務局で議題をどうやって決めるか、そして手続をどういうふうに運営をするかということがなされます。その上で、グループで非公式の討議から公式の討議をしていって、最終的には決議、宣言などの採決に至ると。
こういったところでの外交手腕を発揮できるような人脈、そして情報、根回し、貸し借り、説得力、人望、語学力、そういったものを蓄積するようなことが必要だと思います。そういった意味で、やはり政府、民間双方から人材を発掘、育成していくというふうなことも必要ですし、議会に関わる皆様も実力を発揮できる部分があるのではないかと思います。
時間が大分限られてまいりましたので、国連改革について簡単に申し上げますと、まず、安保理改革というのは現在進行形で、やはり非常に重要なものと考えております。議席を拡大するということ、そして我が国としては是非、常任理事国の地位になる。これは、その地位が大事だとか、その地位に就くことが日本にとってふさわしいという問題ではなくて、日本が安保理の中で常任の理事国としての役割を果たせば、恐らく非常に良識的な堅実な仕事をするだろうと、これは国際社会において非常に大きな役割を果たすに違いないというふうに確信があるからでございます。
しかし、今このタイミングを逃すと、なかなか日本を推してくれる国は少なくなるんじゃないかと思うんですね。なぜかというと、経済的な分担率のものもどんどんどんどん下がっているというふうなこともございますし、ちょっと過去の貯金をやや減らしがちなところもあるかもしれません。そして、日本が立候補するためにはアジアの地域から推薦されなければいけないんですが、アジアも今経済成長している国々が多くなって、自分がなりたいという国が増えてきているわけなんですね。そういう意味で、是非早い段階で安保理改革が進んで日本の常任理事国入りができるということが望ましいと思っております。
残りの二つは、国連の効率性を改革するためにマネジメントレベルでの改革をすることと、国連のシステム一貫性といいまして、同じ場所で仕事をしている国連機関はできるだけ共同で物事を進めるというふうなことによる効率化を図ると、こういうことは日本としても大口の拠出国としてやっぱり指摘するべき点じゃないかと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。