郡司彰の発言 (本会議)
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○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司彰です。
私は、会派を代表して、安倍総理の施政方針演説に対して質問いたします。
質問に先立ち、安倍内閣の政治姿勢、政治手法について考えを述べさせていただきます。
総理は、決める政治を標榜し、全ては意思と行動に懸かっていると発言してきました。私の語感では、決めるとは、真摯な議論を重ね、批判に耐え得る内容とした後のことであります。しかし、安倍総理が決めるのは、常に国会が開かれない中で閣議の名においてでありました。国民の代表者は少数であれ尊重されなければなりませんし、ましてや国会は政府や与党の追認機関ではありません。
その結果は、この二年余だけでも、強行採決が連続し、違憲の解釈を押し付け、与党自民党の中でさえ、物言えば唇寒しとばかり、以前のような闊達な論争は影を潜めているではありませんか。これは立憲主義、民主主義に反する安倍内閣の本質です。
二十七年度補正予算が成立しました。その内容は、財政健全化を先送り、いや、そもそも財政健全化を考えていないのでしょうか。そして、五月、六月に三万円を配るとの露骨な選挙目当てのばらまき、軽減税率導入の歳入も定まらずに説明もできない国民への不正直、これは我が党の岡田代表がただした安倍総理の政治姿勢です。
そして、総理は、集団的自衛権行使に踏み込んだ安保法制の議論の際、政権公約の政策インデックスに書いてある旨の発言をされました。私は、後で読んでびっくりの取説公約、つまり取扱説明書公約と話しています。これは、中国のことわざにある羊頭狗肉戦術ではないのですか。これが安倍総理の政治手法の一つです。
実は私が一番気になるのは、安倍総理の政治スタイルです。敵がい心をあおり、憎悪をかき立て、扇情的な言辞によって一部の国民を鼓舞することです。
昭和が去り、ベルリンの壁が崩れ、そしてバブルがはじけて今年で二十五年が過ぎました。一九九三年からの就職氷河期世代が四十代になろうとしています。物心付いた時代から日本の高度・安定成長期を知らない世代も三十代になっています。この世代にとって、景気の良い話や元気の出る話題は新鮮に映るものだと思えますし、それは必要なことだと思います。
一方で、米国大統領選挙の候補者選びやフランス地方選などに見られる動きは、低成長や人口減、高齢化などによる財政的な危機や格差の問題が根底にあると言われています。私たちは、私たちの国はこのような時代背景にあるからこそ、丁寧で優しい寛容な社会をこそ目指すべきではないでしょうか。
平成二十八年度予算における赤字国債発行の根拠となる特例公債法の扱いについて質問いたします。
三年前、野田内閣が成立させた特例公債法によって、平成二十四年度から二十七年度までは新たな立法措置がなくとも赤字国債の発行が認められることになっています。あのときの決断は、予算の執行が困難になりつつあった状況において、民主、自民、公明の三党のぎりぎりの折衝の結果でありました。しかし、現在の政治的状況は全く異なります。
これまでの特例公債法は、単年度立法の慣例が続いてきたものであります。それは、野田内閣以前のねじれ国会においても守られてきたのです。今なぜ財政規律を形骸化させる措置を維持しようとするのですか。
今から四十年前の昭和五十年度補正予算において、苦渋の決断をもって赤字国債の本格的な発行に踏み切った大平大蔵大臣は、そのことを万死に値すると思い悩み、総理となられてからも最後の最後まで罪の意識を持ち続けてこられたと聞いております。当時も特例公債法の複数年度化は立法技術的に不可能ではなかったと思います。しかしながら、大平先生を始め歴代の大蔵大臣は、あえて単年度立法という狭き道の選択を続けてこられたのです。大平総理が今の惨状を御覧になったら、どのように思われるのでしょうか。
このような歴史的な経緯も踏まえ、今回、特例公債法の複数年度化を続けることになった理由について、総理の答弁を求めるものであります。
TPPについて質問します。
十月五日に大筋合意された環太平洋経済連携協定は、二月四日にニュージーランドで十二か国の署名式が開かれることが明らかになりました。各国は、それぞれの議会、日本の場合は国会ですが、承認手続とそれに並行して必要な国内法の整備を行うことになります。その後、批准となるわけです。
まず、総理に、この一連の流れを第百九十回国会内で行う準備と意思があるのかを伺います。
次に、これまでの交渉経過は不透明であり、大筋合意のきめ細かい正確な説明や情報の開示は行われていません。したがって、発効に伴う経済効果や影響評価も前提条件や対策の評価次第によって大きく変化し、多くの不安や懸念を払拭するには至っていません。これでは内容の伴った思いやりのある対策はできません。総理、特に農業関係者の心が折れようとしているのです。本当に総理は、国益が守られたと自信を持って言えますか。また、衆参農林水産委員会の決議が守られたとお考えか、改めて伺います。
また、攻める面からも、自動車分野など不満が出されています。
総理、選挙目当ての得点稼ぎにTPPを使ってはいけません。そして、同様に、国会での承認がなされる前に、平成二十七年度補正予算、平成二十八年度当初予算でTPP対策費と称して、従来の事業継続を計上するのは不適切です。
私は昨年も、無駄遣い、ばらまきではない省庁の枠を超えた国としての経済連携に関する総合的な法体系を整備するべきだと主張してきましたが、その考えはあるのか、改めて伺います。
昨年の質問で、私は農林水産大臣の辞任を求めました。残念なことに今年は、TPPの審議に欠かせない甘利大臣の政治と金の問題が露見いたしました。そもそも、首相として甘利大臣から事実関係を確認をしましたか。現金を大臣室で受け取ったか否かを覚えていないというのは、全く理解不能です。既に国会審議に支障が出ています。このままではTPPの審議が進まないことになりませんか。任命責任を含め、総理の考えをお答えください。
次に、安全保障法制について伺います。
憲法学者や歴代の内閣法制局長官が安全保障法制は違憲であると表明し、世論調査では国民の八割が政府の説明は不十分と答えていた中で、与党は強引に法案を成立をさせました。これは、戦後日本の立憲主義と民主主義に大きな汚点を残すものであったと言えます。
法案の成立後、現在もなお政府は法律についての説明責任を十分に果たしていません。また、政府は安保法制の施行に向け様々な準備を進めているようですが、国民の理解が十分に得られていない状況において、本当に自衛隊員を危険な任務に就かせてよいのですか。安倍総理の認識をお伺いします。
また、安倍総理は、安保法制について多くの国が理解や支持を表明していると述べていますが、肝腎の近隣諸国の理解は十分に得られていますか。中国やロシアの反応はいかがですか。また、韓国政府は、我が国による集団的自衛権の行使について、仮に米国の要請があったとしても、自衛隊が朝鮮半島周辺に展開するには韓国政府の許可が必要であり、場合によっては自衛隊の展開を拒否することができると主張している。こうした点において、安倍総理はどのように受け止めておられますか。
さらに、南スーダンの国連PKOに派遣している陸上自衛隊の部隊に対していわゆる駆け付け警護の任務が付与される方向であるが、その時期は今年の秋以降になる見通しと報じられております。方針と準備状況について、総理、答弁願います。
また、安保法制の内容を反映させるための日米物品役務相互提供協定の改定についても、国会提出が秋の臨時会以降に先送りになると報じられております。参議院選挙前に安保法制が再び国会で争点になることを避けるためにそうした先送りを考えているのであれば、それは国民に対する説明責任を避けようとするこそくな対応ではありませんか。安倍総理の見解を求めます。
中東情勢の緊迫化や北朝鮮の核実験などを踏まえて、強行採決した安保法制の下で安易な発動を考えてはいないのでしょうか。
民主党は、存立危機事態に集団的自衛権の行使ができるとの安倍政権の考え方は憲法違反と捉えており、今国会に安全保障関連法案廃止法案を提出をいたします。
財務省がまとめた国の中期の財政見通しは、前提として三%の高成長を実現するとしていますが、それでも社会保障費の膨張が続き、二〇年度の基礎的財政収支は赤字としています。財政赤字が引き続き累増する中、財政赤字対GDPの限界はどの程度と考えているのか、答弁願います。
総理は、施政方針演説の中で、二〇二〇年度の財政健全化目標を堅持しますと述べました。他方で、一昨年、昨年の国会で安易な基金造成については是正の意思を示しましたが、さきの補正予算では、改善どころか逆に増えているのではないですか。答弁願います。
中国経済の減速、正月以来の株安が企業の業績悪化などに波及をすれば、税収の下振れも予想されます。それに立ち向かう実効性の高い対策は国や日銀にあるのでしょうか。二〇年のプライマリーバランスゼロは実現できるのか、総理の答弁を求めます。
さらに、軽減税率の議論がされていますが、その前提たる来年の消費税一〇%への引上げは確実に実施するのか、明確に答弁願います。
災害は忘れなくてもやってくる。まさに現在の状況はそのとおりの発生件数となっています。
昨年九月の関東・東北豪雨では、およそ四十五年に一度とされる洪水により、鬼怒川が破堤し、甚大な被害が生じました。
直轄管理の鬼怒川の河川整備においては、百年に一度の洪水を目標としながら、当面は三十年に一度の洪水に対応することを目標としており、十年に一度の洪水にも耐えられない区間から優先的に整備していたとのことです。しかし、近年の異常気象の規模や頻度を踏まえれば、計画的かつ着実に河川整備を推進すべきであります。
一方、自然災害のリスクはハード対策だけでは解消されないのではないでしょうか。人の命を守るという意味では、ソフト対策の充実も重要であります。
平成二十二年に中央防災会議が、首都圏の大規模水害において、利根川、荒川、江戸川の全ての堤防決壊パターンを重ね合わせると要避難者が最大四百二十一万人となると試算をしています。こうした大規模な災害で広域避難を実施する場合には、ハザードマップを含め現在のソフト対策で十分対応ができるのでしょうか。五年前の震災発生後の都心における帰宅困難者の動態や、企業によってまちまちであった対応は改善をされているのか、国交大臣に伺います。
今後、国として、それぞれの地域でどのような自然災害のリスク、被害があるのか試算、評価した上で、行政、住民、企業等が防災意識を共有し、社会全体で正しい判断と適切な行動が取れるようにしていくことが喫緊の課題であると考えます。また、住民を、自分で避難ができる人、人の助けが必要な人、他人を助けられる人に分類をしていくことも重要です。政府として、自然災害による被害を最小限にとどめるために、ハード、ソフトの一体的な防災対策をどのように講じていくのか、総理にお尋ねします。
昨年十一月三十日から十二月十三日まで、フランスで国連気候変動枠組条約第二十一回締結国会議、いわゆるCOP21が開催され、百九十六の国と地域が合意に達し、パリ協定が採決されました。
日本は、二〇〇〇年以来受賞してきた、交渉の足を引っ張る国に贈られる化石賞の受賞を免れました。これは評価が上がったのではなく、それほどに存在感が低下をしたからと指摘をされています。我が国のCOP21における交渉姿勢について、どのような指示をされたのか、安倍総理に伺います。
しかし、パリ協定は、全ての国が参加する枠組みができた一方で、各国の削減目標の実施について法的義務は課されず、実効性に疑問符が付いています。日本はこの分野でどのようにリーダーシップを取っていくのでしょうか。
先立つ七月には、二〇三〇年度までに二〇一三年度比で二六%を削減するとの目標を掲げました。さらに、第四次環境基本計画では、二〇五〇年までに八〇%削減を目標としています。これら中長期目標に対して総理は抜本的かつ具体的な政策をお持ちでしょうか、伺います。
COP21の開催国であったフランスでは、昨年八月にグリーンエネルギーへの転換推進のための法律が制定され、例えば建築物のエネルギー効率向上のための大規模改修を二〇一七年までに五十万件実施をする、個人所有の建築物は二〇三〇年を目途として一立方メートル当たりの年間平均エネルギー使用量が三百三十キロワットを下回るよう改修するなど、全八章にわたり、太陽光、水力、風力等の積極的な行動が開始されました。総理が指導力を発揮すべきはこうした分野であるべきと考えますが、いかがですか。
近年の世界的な異常気象とCOP21との関係について、さらに日本の貢献の度合いについて総理の答弁を求めます。
地方創生に関して質問します。
昨年は統一自治体選挙がありました。地方創生はアベノミクスの失敗を取り繕うための突貫工事であり、かつ四月の選挙対策だとも言われました。この一年間で実は上がったのでしょうか。ある新聞は皮肉を込めて、地方創生でできたのは地方創生大臣だけだと評しています。
そもそも地方は、斬新なアイデアを生み出す前に、現実の日常に忙殺されているのではないでしょうか。政府も交付金の増を考えているようですが、民主党が導入し全国の自治体から好評を博したものの、安倍政権になって廃止された一括交付金を真剣に考える時期ではないですか。総理、お答えください。
地方の現状についてお尋ねします。
例えば空き家対策です。全国で賃貸用以外の空き家は約三百二十万戸で、そのうち四十八万戸が使える空き家と言われています。どの県が多いかは高齢化率と密接な関係があり、総理の地元である山口県も最高ランクの一二・五%を超える状況です。高齢者が鬼籍に入る、相続時に空き家が発生、更地にするには少なくとも百五十万から三百万の費用が掛かり、その後は宅地の税額が約六倍となる。つまりはそのまま放置するケースが増えるわけですが、雪国では倒壊が現実のものとなり、雪国以外でも火事や犯罪の温床になる可能性があり、撤去は特措法の許可を待てずに自治体が独自に行う事例が増えています。
四十八万戸の活用はNPOなどのアイデアも積極的に活用すべきです。一方、二百七十万戸は国の政策で処理する仕組みを検討すべきと考えますが、総理、お答えください。
麻生大臣は七日の参議院本会議において、我が党の前川議員が軽減税率に関わって、ミネラルウオーターと水道水の税率がそれぞれ八%、一〇%になることをただした際に、水道水は公共料金として配慮されている旨の答弁をいたしました。
その上で水道料金の実態を調べてみると、自治体により大きな格差が生じていることが分かります。群馬県のある町は月十立方メートルで三千円、一方、兵庫県赤穂市では十分の一の三百六十七円なのです。しかも、ほとんどの自治体の水道は高度成長期に設備されたものです。今後の改修や保守点検、さらに長寿命化の費用が捻出できないことが予想されます。
東日本大震災を持ち出すまでもなく、水は重要な生活インフラです。また、人口が減少する社会にあってインフラを維持するコストをどうすべきか、料金と今後の自治体の企業会計の在り方について、麻生財務大臣の答弁を願います。
昨年師走の新聞各紙に、子供の貧困放置なら生涯所得が二・九兆円減との記事が掲載されました。これは日本財団が発表したもので、二〇一三年時点で十五歳の子供に貧困対策を行わなかった場合の生涯所得で、税金など将来の政府の収入も一・一兆円減るとしています。つまり、子供の貧困対策は経済対策であるというものです。
他方、十月に、財務省は全国の公立小中学校の教職員定数を二〇二四年度までの九年間に原則として約三万七千人削減する方針を固めたと報じられ、その際の財務省は歳出削減が狙いとしていました。
また、二〇一三年に公表された政府の日本再興戦略の中では公設民営について触れています。米国は、一斉テストを行い、その結果に応じて、つまり年度ごとの達成率に到達しなかった学校の補助金カットを行い、改善がないと判断されれば、七年後には公立学校としての閉校と、チャータースクールへとリニューアルされるという仕組みです。このようなことになれば、資源に乏しい我が国にとり、人を、子供を育てる柱がどこにあるのか疑問に思わざるを得ません。
第一次安倍内閣では教育の安倍と自認していた総理の、子供の教育に関するビジョンを示していただきたい。
また、連絡の取れなくなっている行方不明の児童生徒の実情とそれへの対策について、家庭の経済状況との関連があるのかを含め、現状認識を総理にお尋ねします。
「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢつと手を見る」、現在もなお多くの人の共感を呼ぶ、御存じの石川啄木「一握の砂」であります。
NHKが今年に入って成人の日にちなんで報じた、あなたは競争社会と平等社会のどちらが良いと思うかとのアンケートの回答は、ほぼ半々でした。私は、競争のある社会は悪いこととは思いません。ただし、前提として皆が同じスタートラインに立ってから競争することが必要だと考えています。
現実は、正規と非正規、都市と地方、大企業と中小零細企業、男と女、そして親の収入、年金収入などにより格差の固定化が進行していると言えます。平均的な勤労者の半分以下の収入で生活する、いわゆる相対的貧困に分類される層が徐々に増えているのが我が国の現状です。この人たちに希望が持てるためにと、政府もいろいろと政策を打ち出しています。しかし、不十分です。
民主党は、「能力の発揮を阻む格差の壁を打ち破り、支え合う力を育む」と題した共生社会創造本部の中間取りまとめを全党で論議中であります。個人の努力ではどうあっても乗り越えられずにいる壁があります。もとより格差は特定の人の問題ではありません。今は安定した生活を送っていても、立場が変わることは容易に想像されます。
総理に伺います。大きな理念として、人への投資を軸とする公正な分配にかじを切ることへの決意がありますか、お聞かせください。
総理は夏の参議院選について、与党、つまり自民、公明両党に加え一部野党を含めて改憲に必要な三分の二の議席を目指すと発言されました。
私も改選を迎える身ですが、全国の安倍総理の政治を終わらせようとする人たちと連帯し、その野望を打ち砕くために奮闘することを申し上げます。
昨年の報道の自由度ランキングで日本は六十一位でした。パリにあるNGO国境なき記者団の発表ですが、二〇一五年は二〇一四年より二つ順位を下げ、留意すべき問題があると指摘されました。なぜなのでしょうか。記者も懲役刑を受ける可能性のある特定秘密保護法の施行に加え、自民党がテレビ局幹部を呼び出したりしたことが影響したのではと推測されています。
報道の自由が大切なのは、自由が束縛されれば権力を持つ側が国民に説明責任を果たさなくなるからです。総理、政府の提案する政策や予算、そして法律は、野党の批判や提言を尊重し、議論を重ねてこそ国民に納得されるものになるのだと思います。
総理は、反対する声があれば闘志が湧くと発言されたようですが、これは権力を持つ者が口にするべきではないと申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕