林久美子の発言 (本会議)

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○林久美子君 民主党の林久美子です。
 民主党・新緑風会を代表して、先日の安倍総理の施政方針演説に対して質問をさせていただきます。
 まず、甘利大臣、御自身の金銭疑惑が報道されました。偽りのない説明が行われることを期待したいと思いますが、現金五十万円を二度にわたり合計百万円、お受け取りになったのかどうか記憶が曖昧であるということ自体、にわかには信じ難いというのが私の率直な感想です。
 しかも、年収二百万円以下のワーキングプアの方々にとってみれば、百万円というのは半年分の収入です。もし仮に、本当に記憶が曖昧なのだとすれば、少なくとも、大臣の金銭感覚は一般の国民から大きく懸け離れているということです。金銭疑惑について、甘利経済再生担当大臣の明確な御説明を求めます。
 さて、第二次安倍政権が発足してから三十七か月が経過しました。この間、安倍政権は、異次元の金融緩和と財政出動を行いました。確かに円安の影響などにより大手企業の利益はアップしましたが、この果実は必ずしも国民に還元されてはいません。
 小規模事業者を始め、地域で地道に経営している企業は苦しいままです。円安によって輸入する原材料や製品の仕入れコストがアップしたため、円安関連倒産は昨年上半期だけで二百三十一件となり、前の年に比べ一・六倍に急増しています。
 働く皆さんは、輸入物価が上昇した影響などにより、実質賃金のマイナスが続いています。総理は度々、女性活躍とおっしゃいますが、女性労働者のうちの四三%がワーキングプアで、その人数は、第二次安倍政権が発足して以来、およそ四十二万人も増えています。
 年金を生活の糧とされている方々は、物価や賃金の上昇に対して年金額の伸びを抑制するマクロ経済スライドが適用されたことにより、生活の苦しさが増していきます。さらに、厚生労働省の調査によりますと、子育て世帯のうち、およそ七割が生活が苦しいと感じています。
 つまり、総理が経済、経済、経済とおっしゃっている一方で、働く人、高齢者、子供を育てている人々は依然として厳しい状況に置き去りにされているのではないでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。
 安倍政権が行っている異次元の金融緩和と財政出動は、一時しのぎのカンフル剤にすぎません。この間に、しっかりと日本の現状に目を向けた構造改革に取り組むべきではないでしょうか。
 まず第一に必要なのは財政健全化です。
 今や我が国の借金は一千兆円を超えました。赤ちゃんからお年寄りまで、国民一人当たりおよそ八百四十万円の借金を抱えていることになります。平成二十八年度予算案においても、歳出の四割弱を借金に依存しており、公債残高の増加が続いています。我が国の財政は引き続き先進国で最悪の水準にあるのです。
 財政健全化を進めていくためには、楽観を排した経済見通しを前提とする必要があります。にもかかわらず、内閣府の中長期試算によりますと、中長期的に実質二%以上、名目三%以上の経済成長を見込んでいます。
 そもそも、最近二十年間の名目成長率の平均はゼロ%です。もちろん、このような現状に甘んじるべきだと申し上げているわけではありません。しかし、一方で、これまでの財政再建の試みは楽観的な見通しに基づいており、ことごとく失敗に終わったというのも事実です。
 先日の補正予算案の審議においては増えた税収の扱いについての議論がありましたが、税収は景気を後追いするものであり、増加が続くとは限りません。最初から税収増を政策の財源として当てにするのは、極めて無責任であると言わざるを得ません。
 財政健全化の取組においては堅実な前提を置くことが重要であると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 さらに、財政健全化には中長期的な年月を必要とするほか、歳出の抑制は既得権益との闘いでもあり、困難を伴います。しかし、今を生きる私たちは、次の世代のためにも財政健全化を達成しなくてはなりません。現在策定されている経済・財政再生計画は、目標などの変更が容易な閣議決定に基づく計画となっていますが、より実効性を高めるために、新たな法律を制定するなど、仕組みづくりが必要なのではないでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。
 そして、第二に、構造改革として取り組まねばならないのは、人口減少に立ち向かうということです。
 私たちの国日本は、かつて経験したことのない人口減少社会に突入しています。人口減少は日本の発展の最大の阻害要因にほかなりません。総理は希望出生率一・八の実現を掲げておられますが、そのためには、まず、今生まれてくれている子供たちを安心して育むことのできる環境をつくることが重要です。
 子供の相対的貧困率は上昇を続け、今や子供の六人に一人が貧困状態にあります。特に、貧困が深刻な母子世帯の再分配機能は極めて弱く、深刻な問題です。
 高齢者世帯の再分配前の平均所得は九十二万円ですが、社会保障給付の受給などにより、再分配後の所得は三百四十八万円です。これに対して、母子世帯の再分配前の所得は、母親の八割が就労しているため、高齢者世帯よりもおよそ百万円多い百九十五万円ですが、再分配された後の所得は高齢者世帯を九十万円も下回る二百五十八万円となっています。
 この原因についてどのように捉えていらっしゃるのか、塩崎厚生労働大臣にお伺いいたします。
 また、これではいつまでたっても母子世帯における子供の貧困は解消されません。よりダイレクトな現金給付や教育バウチャーの導入など、直接支援する対策が必要ではないでしょうか。併せてお伺いをいたします。
 また、文部科学省は、財務省の長期試算を基に、十五年後には国立大学の授業料が年間九十三万円程度にまで上がるという試算を昨年末に示しました。既に私立の理系では授業料は年間百万円を超えています。
 国による奨学金は全て貸与型で、三分の二は有利子となっています。奨学金を受けることで、卒業する段階で子供が五百万円のローンを背負うことになるケースもあります。そうした状況で大学の進学の夢を絶たれた子供たちもいるのです。OECD加盟国三十四か国のうち、返済の必要のない給付型奨学金を創設していないのは、大学の授業料が既に無料であるアイスランドと我が国日本、二か国だけです。
 希望する全ての子供たちに学ぶ機会を保障するため、諸外国のように給付型の奨学金を創設するべきであると考えます。馳文部科学大臣の御所見をお伺いいたします。
 そして、児童虐待の問題です。
 今、日本では、五日に一人の割合で虐待によって子供の命が奪われています。児童虐待などに関して調査、支援、指導を行うのは児童福祉司の皆さんです。日本の場合、児童福祉司一人につき百件を超えるケースを抱えているというデータも存在しています。欧米の先進国では平均およそ二十件であるのに比べるとはるかに担当件数が多く、十分に家庭訪問すらできないのが現状です。
 配置の基準を改善し、児童福祉司の皆さんが悩みを抱える家庭に丁寧に寄り添える環境をつくり、政治の責任として、小さな命を救っていくべきではないでしょうか。
 さらに、虐待や死別などにより実の親と生活することのできない社会的養護の必要な子供たちが入所している児童養護施設は、十八歳になると原則として退所しなければなりません。社会的養護を必要とする子供たちはおよそ四万六千人で、自立に時間を要するとの指摘もあります。しかし、今、施設を退所した後のサポートは極めて不十分です。
 私の地元である滋賀県では、志ある女性がNPO法人を立ち上げ、自立支援やシェアハウス事業を行い、まさに体当たりで若者たちをサポートしています。若者たちは、僕たちの夢は普通でいいねんと言うそうです。住むところがあって、御飯が食べられて、家族がいる、そんな当たり前の生活をただ求めているのです。このシェアハウスで暮らし始めると、若者たちは、不安を抱えながらも安心できる居場所を得て不思議なくらい元気になっていくそうです。
 六人の若者が住むシェアハウス、年間六百万円の経費が掛かりますが、行政からの支援は年間僅か十五万円だそうです。こうした社会的養護を必要とする若者たちをサポートしている皆さんへの支援もより充実していくべきではないでしょうか。塩崎厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。
 ただいま申し述べました幾つかの提案は、子供たちの置かれた格差を縮小することにもつながります。
 日本財団などによりますと、貧困家庭の子供を支援せずに格差を放置すると、現在十五歳の子供の一学年だけでも、生涯所得が二兆九千億円減少し、政府の財政負担は一・一兆円増加すると推計しています。しかし、格差を解消する政策を実行し、子供たちを社会全体で育むのであれば、こうした損失は生じることもありません。
 今回、政府は、低所得のお年寄りなどに一人三万円を支給されます。補正予算と当初予算を合わせて総額でおよそ四千億円です。恒久的な制度ではなく、一時しのぎのばらまきにほかなりません。こうしたばらまきにこれだけの税金を使うのであれば、未来を担う子供たちにこそ投じるべきです。今いる子供たちが安心して成長する環境を整えてこそ、これから子供を持つ方々にも安心を与えることにつながり、人口減少に立ち向かう力強い一歩となるのではないでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。
 結びに。
 我が国の第二十七代総理大臣は、ライオン宰相、浜口雄幸総理大臣です。当時、日本は不況の中にあり、金解禁や緊縮財政を行っていた浜口総理は、昭和五年十一月、東京駅のホームで銃撃されました。秋から続いていた国会に出席できない日々が続き、野党からは、総理が国会に出られない以上、政権を野党に渡せと言われます。今国会の会期中には必ず浜口は登壇すると時の与党は答えました。
 国会の会期末、浜口総理は病状が悪化して絶対安静の状態でした。それでも浜口総理は、何とか国会に行こうとする。しかし、靴を履くともう歩けない。靴が重くて倒れてしまう。それで、どうしたか。浜口総理は、布を靴の形に切って、墨を塗って、足に巻き付けて国会に立ったそうです。靴のように見えても靴ではない黒い布を足に巻き付けて国会に立ったのです。
 浜口総理はこうおっしゃったそうです。会期中に国会に出るという総理の約束は国民に対する約束である、国民に対する約束を総理が破ったら、国民は一体何を信用して生きていけばいいのか、だから、死んでもいいから国会に出て、国民に対する約束を果たすと。
 総理、総理は、私たち政治家は、国民の皆さんに対する約束を必死の覚悟で果たさなければなりません。安倍総理におかれましても、不都合な現実から決して目を背けるのではなく、是非、浜口総理のような真剣さで全ての国民に向き合い、より謙虚に、より誠実に職務に当たっていただきますよう心からお願いを申し上げまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 119015254X00720160128_018

発言者: 林久美子

speaker_id: 9546

日付: 2016-01-28

院: 参議院

会議名: 本会議