中谷元の発言 (憲法審査会)
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○中谷(元)委員 自由民主党の中谷元です。
本日は、憲法制定の経緯と憲法公布七十年を振り返って、これまで憲法の果たしてきた役割と、今後審査会で議論するべきテーマなどにつきまして、自由民主党を代表して意見表明をいたします。
日本国憲法は、ことし十一月三日に公布七十周年を迎え、来年五月三日には施行七十周年を迎えます。この七十年の間に、戦後の我が国の進むべき方向性を示した日本国憲法のもと、我が国は、戦後の荒廃を乗り越え、今日の自由で民主的な社会を築き、また経済の繁栄を実現してまいりました。また、国際社会における法の支配の実現に向けた取り組みを進めるなど、国際社会においても重要な地位と役割を担うようになりました。
戦後の我が国を築いてきた日本国憲法は既に国民の生活に定着したものとなっており、特に国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という日本国憲法の基本原理が我が国の国際社会における民主主義国家、平和主義国家としての礎を築く上で果たしてきた役割は極めて大きく、将来も継承していかなければなりません。
しかし、憲法制定後七十年が経過し、国民の生活意識や行動の変化、テロなどの新しい脅威の発生、ITや生命医療などの科学技術の進歩、東日本大震災を初めとする大規模災害や地球レベルでの環境問題、国際貢献への期待の高まりなど、我が国の社会や安全保障環境の変化など、憲法を取り巻く環境は大きく変化しており、憲法と社会の実際にずれが生じてきている部分があります。
そこで、日本国憲法の基本原理を堅持しつつ、改正の必要性のある項目に関し、国民の代表者である国会議員が熟議を重ね、国民の憲法改正への合意形成を目指していくべきとの観点から発言をいたします。
次に、日本国憲法の制定経緯について述べます。
日本国憲法の制定の原点はポツダム宣言にあります。連合国からは、「日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スべシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルべシ」という要求が出され、これを日本国政府は受諾、調印いたしました。
その後、幣原内閣の松本烝治担当大臣のもと、憲法問題調査委員会が憲法改正案を作成し、一九四六年二月八日にGHQに提示いたしましたが、二月十三日、GHQ民政局が作成した草案が日本側に手交され、それをもとに日本国憲法の草案を起草するように指示をしたことなど、日本国憲法の制定過程においてGHQが関与をしたことは否定できない事実であります。
しかし、GHQ草案が提示された後の交渉の過程におきまして、一院制の提案を二院制に変更、違憲審査制のあり方の変更、地方自治をどうするかなど、日本国政府による検討と修正も相当程度盛り込まれております。
国会での審議の段階では、婦人参政権を含む完全な普通選挙により、改正案を審議するための国会を構成する衆議院議員が国民によって直接選挙され、衆議院における審議過程で、国民主権の表現の明確化、九条の文言の修正、国民たる要件を法律で定める規定と納税の義務の規定を新設、生存権の規定、勤労の義務規定、国家賠償の規定、刑事補償の規定の追加、選挙資格と被選挙資格の規定の修正、国務大臣の過半数を国会議員とする規定の追加、皇室財産の国庫帰属に関する規定、最高法規の規定の修正などがありました。
また、貴族院の審議過程で、前文の字句の修正、公務員の選挙で成年者による普通選挙を保障すること、法律案の議決に際して両院協議会の規定、国務大臣は文民でなければならない規定の追加などがされました。
さらに、施行後の段階でも、極東委員会からの指示で、施行一、二年以内に改正の要否を検討する機会が与えられながら、日本国政府は改正の要なしという態度をとったほか、制定以来、日本国憲法の基本原理は国民の間に定着をしているといった社会的事実も認められます。
このような指摘も踏まえ、平成十七年の衆議院憲法調査会報告書においても、日本国憲法の制定に対する一連のGHQの関与の事実ばかりを強調すべきではないという意見が多く述べられているところであり、このような意見を考慮に入れることも重要であります。
次に、自由民主党の憲法議論の歴史について述べます。
自民党は、昭和三十年の結党以来、六十年余りの憲法議論を積み重ねてまいりました。当時の政綱などによると、結党当時から、日本国憲法の基本原理を堅持することを明確にした上で、自主的な憲法改正に向け努力を重ね、真摯に議論を重ねてまいりました。
そのような自民党の憲法議論の成果として、昭和四十七年の憲法改正大綱草案や昭和五十七年の日本国憲法総括中間報告、さらには、憲法の全体像を条文の形であらわした平成十七年の新憲法草案や平成二十四年の日本国憲法改正草案を初めとして、数々の公式文書を世に問うてまいりました。
制定後七十年の間に憲法と社会の実際にどのようなずれが生じてきているか、そのために憲法の改正が必要であるか、改正するとして、改正内容をどのようにすべきかといったさまざまな点で、各党各会派でさまざまな意見があるところであります。
そこで、憲法調査会以来の議論の蓄積を踏まえ、議論を深めていくべきでありますが、それは決して改正ありきの改正項目の絞り込みではなくて、改正の必要性が指摘されている項目について、改正の要否という観点から議論を深めていくべきものであります。
その際、近代立憲主義の見地を踏まえて議論を進めることは当然の前提であります。そもそも、近代立憲主義とは、権力の分立により、また、基本的人権を保障するという近代憲法の基本となる考え方であり、自民党も全面的にこれを肯定するものであります。
近代立憲主義を踏まえながら、今後議論を進めていくに当たり、テーマといたしましては、例えば、昨年五月七日の憲法審査会の自由討議によってほとんどの会派が議論の必要性について言及していたのは、環境権、知的財産権、犯罪被害者の権利などの新しい人権、財政規律を含めた統治機構の改革、緊急事態条項でした。その他、合区解消、また、統治機構の中でも特に地方自治、私学の助成、また、自衛隊の認知などについてもよく言及をされております。また、参議院には総選挙がないことから、国会議員の総選挙を国会議員選挙と改めることなど、表現を整理することも必要でしょう。
いずれにせよ、どのようなテーマについて議論をしていくかにつきましては、現段階におきましては白紙でありまして、本日の自由討議、あるいは次回、十一月二十四日の自由討議を踏まえて、各会派がそろう幹事会等で協議していくべきであります。
自民党としては、日本国憲法が我が国の民主主義国家、平和主義国家としての礎を築く上で七十年間果たしてきた役割をしっかり踏まえ、憲法審査会の場を通じ、各党各会派との間で憲法改正の必要性とその内容についての熟議を重ね、我が党を初めとする国会議員がその理解を深めるとともに、国民に憲法改正の議論を深めていただき、国民の憲法改正への合意形成を目指していく所存であります。
以上です。どうもありがとうございました。